第31話―ミサキがたたかう☆ー
タイトルの☆は特に意味はないです。
ミサキ様なので・・・。
ハクビの攻撃で、ルーシーとかいう奴が消されていったのを見届けた。……すげえな、あの技。敵の攻撃を吸収し、己の力とするような感じだな。斬波でもダメかもしれないが、近接だとわからない。……いや、あの狼に突っ込むこと自体が難しいか。
などと、目の前に立つゼブルそっちのけで、ハクビ達の様子を眺めていた。最初は、苦戦していたようだが、ミサキが何やら魔物を呼び出した辺りから、戦況も変わったな。
そして、ミサキの魔法により、ハクビの姿も変化している。狂人化した時と同じ感じだが、目の色は金で、暴走もしていない当たり、あれが、ハクビが狂気スキルを極めた時の姿なのだろう。そう言えば、精霊人の長老も、スキルの効果を上げる魔法を使っていたことだしな。
あの姿のハクビは今に比べてやはり、格段に強い。洞窟の外で、ミサキの龍言語魔法を目にした時に、目指すべき力が何なのか、見失っていたようだが、改めて、自分がどうなりたいのかということを確認できて良かっただろう。
そして、ミサキが呼び出した魔物……獅子と鷲を合わせたような、とても雄々しい姿をしている。何と言うか……カッコいいな。そして、伝わってくる強者としての気配も大きい。ああいうのも、この世界には居るんだなと、苦笑いした。
「おい、どこを見ているッ!」
ふいに、ゼブルの喚く声が聞こえてくる。振り向くと、俺に蹴られた傷を治し、腕を再生させたゼブルが、爪を振り上げて、こちらに突っ込んできていた。
「ただの人間風情が……引き裂いてくれる!」
「チッ……雑魚が!」
俺は、爪の一撃を躱し、ゼブルの四肢を切り裂いた。
「グギャアアアッッッ!!!」
「おとなしく……してろッ!」
空中で苦しみ、悶えるゼブルの腹に、無間を突き刺し、そのままゼブルごと、奥の壁に投げる。ゼブルは、無間によって、洞窟の壁に、打ち付けられた。
「……今、良い所なんだよ。ハクビはあの女を倒したし、次は、ミサキの番だからな……」
「なん……だと……!? ルーシーが!?」
ゼブルは苦しみに満ちた顔をし出した。あの女がハクビに倒されたということが信じられないらしい。
それほど、あの女、ルーシーの力を過信し、ハクビの力を見くびっていたようだ。
確か……2000の魂を食ったと言っていたな。生き物の魂は、そのまま、その者の力の全てを意味する。それを食らうことで、魔物たちは、その力を吸収し、強くなるようだ。
……そう言えば、この山の魔物たちの姿が見えないことが気になっていたし、妙に整備された様子の森がどうしても気になっていたが、恐らく、魔物も、人もここに住んでいた者達、全員、コイツ等が食ったんだろうな。
人間が食われたのは致し方ないと思っている。人間も、魔物を狩るからな。その辺りは、納得する。だが、同族にまで己の強化のためだけに食ったとなれば、話は別だ。
……何となく腹が立った……
俺は、湧きあがる怒りをいったん抑え、未だにルーシーが倒されたことを信じられない様子のゼブルの前に立った。
「意外……か? 矮小な人間風情が自分ら高等なデーモンを倒せない、とでも言いたそうだな」
「あ……たり前だッ! 人間と我らとでは種が違う! 我らは全ての魔物たちの頂点たるデーモン族だ! 貴様ら如きが敵うことがあっていいわけなど無いッ!」
「だが、事実だ。……てめえらも他の命を奪っているんだ……命を奪うってことは、命を奪われてもいいと認めていると考えていいよな?」
「貴様が……我を殺すと……? クッ! 魔力もろくに持たない人間風情が戯言を!」
ゼブルは口を大きく開ける。ワイバーンなどのように、そこに魔力を溜めだした。未だ、再生しきれていない腕の代わりに、と言ったところか。
放出された攻撃を、屈んで躱しながら、足元の泥を掴み、ゼブルの目に思いっきりぶつけた。
「グギャっ! ちぃっ! 小癪な……」
目を拭うことも出来ないゼブルは身をよじらせるしかない。小細工だと揶揄されようと、これで、もうしばらくは、大丈夫だろう。
こいつを殺すのは、二人を助けたことが確認された後だ。
そう思い、ミサキを探す。どこ行った? ちゃんとやってるのか? あいつ……。
◇◇◇
「よいしょ、と」
私は十字架に括り付けられていた、二人を下ろし、地面に寝かせた。鑑定眼で視たら、生きてはいるみたい。でも、魔力の消費で二人とも呼吸が弱い……。同じ、十二星天のジェシカさんに聞いたことがある。人は、魔力を過剰に失うと、体力も落ちて、放っておけば、命の危険もあるって。
私は二人に魔力回復薬を急いで飲ませた。ゆっくりだけど、確実に二人は回復薬を飲み、身体がほんのり光り出す。
レイカちゃん、だっけ? エルフの女の子は、だんだんと呼吸が落ち着いてくる。けど、男の子の方、ウィズくん……だったかな?この人は変わらず呼吸が弱いままで、顔色も悪い。
なんでだろう。回復薬は効いているはずなのに……。
もう一度、集中して鑑定眼で視てみる。すると……
「え、なにこれ!? すごい!」
私はウィズ君の魔力を視て、驚いた。ウィズ君の魔力の最大値は普通の人の何十倍も高く、それは私よりも高いみたいだった。ムソウさんと比べるのが、恥ずかしくなるくらい、強大なもので、正直に言えば、デーモンよりも高いと感じる。
この人、ただの人間だよね? エルフのレイカちゃんも遥かに抜いている。だから、魔力回復薬でも駄目だったのか~。これはどんな人間に対しても、一定の量しか回復しないからね~。
でも、どうしよっかな。回復薬だけでは治せないっぽいし……。あ、そうだ!
私は彼の胸元に手を当てて、魔力を注ぎ込む。
「足りるかな? ……ま、いっか! 魔力譲渡」
私の中の魔力を消費し、相手の魔力を上げる、支援魔法。これなら、大丈夫そうだけど、代わりに、私の魔力が無くなりそう……。
う~、頭痛くなってきたな~。この分だと、結界を張るのもやっとになりそう。
でも、ここまで来たんだもん! ムソウさんは二人を助けるためにここまで来たんだから……。ハクビさんも、私達に、必死になって二人のことや、デーモンたちのことを伝えてくれた。最後に私が足を引っ張ってどうすんの!
「負けて、られるかあ~!」
私は気合を入れて、ウィズ君に魔力を注ぎ込んだ。ウィズ君の表情はだんだんと平静を取り戻していき、呼吸も安定してくる。もう少し……もう少しだ!
ガシッ!
突然、私の手をウィズ君が掴んだ。
私は驚いて魔力譲渡を止めてしまう。
「……もう、大丈夫です……俺の魔力が溜まる前に……貴女が倒れては……意味がないです……もう大丈夫ですから……」
ウィズ君は苦しそうにそう言った。
「でも、君の魔力を回復させないとわたし、またムソウさんに怒られる~!」
私はもう一回、自分の残り少ない魔力をウィズ君に渡そうとした。すると、ウィズ君は何故かフッと笑みを浮かべる。
「……ムソウさん……来てくれてるんですね……その時は一緒に……怒られましょう」
そう言って、ウィズ君は私にニコッと笑った。
私の心の中で何かが弾けた……。
何、このイケメン!
私は思わず顔が熱くなった。え、今まで気づかなかったけどすごくイケメンじゃん! 爽やかで、女性に優しくて強いなんて完璧じゃん!
「ほ、本当にダイジョブなの?」
やばい、舌噛んだ……。こんなイケメンと話するの何十年ぶりだろ? いやあ、こんなことなら、もっときれいな服着てくるんだった~。
「……ええ……大丈夫です……ミサキ様ですよね……十二星天の……」
「そ、そうだよ!ど、どうして、わわ私のこと知ってるの!?」
「……子供の時に……お見掛けして……俺あなたに憧れて……魔術師を目指したんです……とても……光栄です」
やー! 私のこと知ってる上に、私に憧れているなんて! ……これは勝った!
「そ、そうなんだね! それより、本当に大丈夫なの!?」
「ええ、……先ほども言ったように……ミサキ様! 危ない!」
突然、ウィズ君は握ったままの私の手を引いて、私を引き寄せ、私の頭に手を当てる。
きゃあああああ~! ウィズ君ったら、大胆!!!
すると、私達の上を、大きな火の玉が通り過ぎていった。火の玉は壁にぶつかり、炎を上げる。
見ると、さっきムソウさんにぼこられたデーモンキング……アークって奴が、口を開けていた。
口から火炎弾を撃ってきたらしい。
でも、そんなことより、今は! 今は~!
私とウィズ君は密着したままだ。ウィズ君の心臓の音が聞こえる。うん。もう大丈夫みたい!
そう、私はウィズ君の体調を確認してるだけであって、この状況を楽しんでいるわけじゃないからね!!!
「大丈夫ですか!? ミサキ様!」
はあ~、こんなになっても私を気遣うウィズ君、素敵……。そして、喋り方も安定してきたみたい。
た、体調管理だから!
「お~い! ミサキ殿、無事か~!」
ハクビさんの声が遠くから聞こえる。向こうの戦いは終わったみたいだね。
「……って、何をやっているのだ?」
私達の側に、下りてきたぴよちゃんと、ハクビさんは、私の体調チェックを眺めながらぽかんとしている。ウィズ君は、ハクビさんに目を移すと、また、安心したように笑みを浮かべた。
「ああ……ハクビさんも……来てくれてたんですね……怪我の具合は……どうですか?」
「あの時のは、とうに治っているが……それよりこの状況は一体?」
「今……あのデーモンが……攻撃してきて……それで……」
「ウィズ君がかばってくれたのー!」
「そ、そうか……」
ハクビさんは困惑した顔で、納得してくれた。
「やれやれ……」
ぴよちゃんは呆れたように首を傾げる。
「では、二人の無事も確認できたところで、私はあのアークと闘う。ミサキ殿、支援を頼めるか?」
ハクビさんは、アークに向き直り、爪を構えたルーシーってえっちぃサキュバスを倒したから、勢いに乗っているみたい。ウィズ君を治すのに、魔力を使っちゃったから、嬉しいのは嬉しいけど、このままでは終われないと思って、顔を上げる。
「……待って! ここまで来たら、私もあいつを倒したい!」
ハクビさんの問いかけに私は首を横に振った。ムソウさんとハクビさんも戦ったんだ。私も戦ってみたい!
べつに、さっき助けてくれたお返しじゃないよ! ウィズ君にいいとこ見せようとしたいわけじゃないよ!
「だが、あのデーモンが纏っているのは、どれも魔法を無力化するもののようだ。さすがにミサキ殿と言えども……」
「それに……俺の回復で……あなたの魔力は……微量……なのでは? 強力な魔法も……使えないかもしれませんよ……」
はあ~、あ、こんな時でも、まだ私の心配してくれるなんて……イケメンて、いいな~。あ、ハクビさんもね!
「大丈夫! 一発だけだけど、ちゃんと近接攻撃になって、なおかつ、一回であいつを倒せる技もあるから!」
二人はキョトンとしている。もし、私の魔力が少なくなってきた時のための技なんだけどねー、楽しいんだよねー、あれ。
取りあえず、ハクビさんに回復薬を渡して、ウィズ君を任せた後、魔法戦士のように、矛に魔力を込め始めているアークを見据えた。
すると、さっきまで私に呆れていたぴよちゃんが、フッと笑いながら、私の横に立つ。
「ミサキ様……我はいつでも大丈夫です」
お、ぴよちゃんは私が何をするのか分かったのか~。感心感心!
「グオオオオオオオオオオ!」
む? 向こうの準備が出来たらしい。黒い炎のような魔力波を上げている矛を構えながら、アークが雄たけびを上げて、こっちに来てる。
私は皆の前に立った。
「じゃあ、見ててね! ウィズ君!」
つい、本音が出て、私はウィズ君にウインクした。慌てるハクビさんたちの前で、魔導神杖を掲げる。
「いっくよ~! 四神召喚! 出てきて! がおちゃん! ニョロちゃん! かめじい! ほうちゃん!」
杖に残りの魔力を込めると、目の前に4つの魔法陣が現れる。それぞれ白、青、緑、赤の色をしている。
そこから、私が契約した、4体の魔物が現れる。
白い魔法陣から出てきたのは、大きな白い虎のような魔物。二又の尾を持ち、大きな牙と爪をもつ、災害級の魔物、白虎、名前はがおちゃん!
青い魔法陣から出てきたのは、大きな青い龍のような魔物。胴体は長く、口の中には何本も鋭い牙を生やしている、頭に角を持った災害級の魔物、青龍、名前はニョロちゃん!
緑色の魔法陣から出てきたのは、大きな亀のような魔物。甲羅には大樹を背負っており、皮膚は鋼よりも固いと言われる災害級の魔物、玄武、名前はかめじい!
赤い魔法陣から出てきたのは、燃える炎の翼をもち、尾は長く、頭には冠羽をたたえた災害級の魔物、不死鳥朱雀、名前はほうちゃん!
「この4体の召喚を以って、四神召喚! そして~……」
私は、四神とぴよちゃんを目の前にして固まっているアークを指さして、号令をかける。
「奥義・やっちゃえ!皆~!」
私の合図とともに、がおちゃんとニョロちゃんが突進し、アークの防具を砕く。そこをかめじいが踏みつぶし、アークをボロボロにさせる。
最後にほうちゃんが火の雨を降らし、ぴよちゃんがそれに竜巻をぶつけて、アークを燃やし尽くす。
「ギ、ギ、ギャアアアアアアアアア!」
アークは炎の竜巻の中で、雄たけびを上げながら灰燼となっていった。
「皆~、お疲れ~!」
この技は、私の技というよりも、皆の合体技だからね。基本的に私は何もしない。だから、私の為に闘ってくれた皆を労った。
すると、昔のように、皆はキャッキャと私の方に寄ってくる。
いくつになっても、可愛いなあ~、と、思っていた……。
何かおかしいな。皆はじとーッと私を見ている。
「な、なによ?」
何か残念そうなものを見る目で、私を見ている皆に説明を求めると、後ろからハクビさんに肩を叩かれた。
「……ミサキ殿。確かに、凄まじい攻撃だったが……その名前、どうにかならないのか?」
ハクビさんがそう言うと、皆は、うんうんと頷く。
「……そこの白餓狼の女の言うとおりだ。ミサキのネーミングセンスは悪い!」
「そうだ。一応は我も四神に数えられる青龍だ。だがなあ……」
「ワシ等、その名前で呼ばれるとの……なんというか、気が抜けるというか……」
「ミサキ様の命により召喚されることは苦ではありません。ですが……」
「しかも、今日ばかりはそこの人間の男の件もあります。我もさすがに微妙な気持ちですな……」
四神達は口を揃えて言った。
「なにさ、なにさ! 皆、小さいときは可愛かったのにー! 突然、そうなるんだもん!」
私がそう言うと、皆(と、ハクビさん)は、はあ、とため息をついた。だって、小さいときに付けた名前って愛着あるじゃん!ずっと使いたいって思うじゃん!
初めて会った時のぴよちゃんなんて、私の掌に乗るくらいのサイズで、ピヨピヨ鳴いて、私の肩とか頭の上で楽しそうにしていたのに~!
皆からの文句に私が、反論すると、それは違うとか、言ってくる四神たち。本当に、昔は皆、可愛かったのになあと、頭を抱えた。
「……アハッ!アハハハハハハ!」
すると、突然ウィズ君の笑い声がした。……笑うポイントあったかな?
……まいっか。ウィズ君の笑顔も見れたし……。
ひとまず、ウィズ君とレイカちゃんは無事に、取り戻せたし、ハクビさんと私、そして、ぴよちゃんたちにけがは無し。こっちの目的は果たせた。
残るは、デーモンロードのゼブルだけ。相手によっては、私達でも苦戦する災害級の魔物。
……ムソウさん……大丈夫かなあ……。




