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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
ツバキが里帰りする
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第310話 ムソウ不在の闘鬼神 ―“聖母”の弟子になります!―

 シロウとナズナの祝言が決まり、同じ日に牙の旅団が刀精になるということをダイアンから聞かされた闘鬼神。ダイアンやリアを始め、牙の旅団の武具を継ぐ者達は、前よりも一層、鍛錬に集中する。

 他の者達も、自身の力を高めるために、難しい依頼にも取り組んでいく。

 時折、怪我をすることも増えて、屋敷に貯めている薬を使い過ぎないようにと、回復魔法を使うことが出来るロロが、簡単な怪我をした者達を治していく。


「ありがとう、ロロ。これくらいで薬使ったら、勿体ない気がしてなあ」

「いえいえ、ダイアンさん。でも、前に出て闘う皆さんは、怪我をすることも多いから、気を付けてくださいね。

 私の魔力も、無限ではありませんので」

「じゃあ、ロロは魔法の特訓もしっかりしないとね。回復役が居たら、私達も安心できるからね」


 リアの言葉に頷くロロだったが、回復魔法の使い手は、闘鬼神の中にはロロだけであり、少なくとも仲間に頼ることは出来ない。

 牙の旅団にも居ないので、ロロは毎日、攻撃用の魔法の練度を上げることしか出来なかった。


 そんなある日の事、屋敷の縁側を歩いていたロロは、庭を見ながら茶をすするジゲンとたまを見つける。二人で楽しそうにお話ししているという光景は、ロロを大層ほっこりとさせる。

 顔を赤らめながら、ほのぼのと二人を眺めていると、ジゲンと目が合った。


「む? ロロ殿か。どうかしたのかの?」

「はっ! ああっ、いえ! どうぞ、お二人で……」


 この雰囲気を邪魔したくないと思ったロロは、慌ててその場を去ろうとし、振り返る。


「あっ……」

「キャッ!」


 しかし、背後に居た人物とぶつかってしまい、ロロはしりもちをついた。

 慌てて、たまが駆け寄ってくる。


「ロロおねえちゃん! だいじょうぶ!?」

「あ痛たたたた……私は大丈夫です……」


 心配してくれたたまに苦笑いするロロ。そして、誰にぶつかったのかと、顔を上げると、そこには、仕事をしていたジェシカの姿があった。


「あ、ジェシカ様! 申し訳ございません! ちょっと急いでいたもので……」


 すぐさま、ロロはジェシカに頭を下げた。しかし、ジェシカはフッと笑みを浮かべて、ロロの肩に手を置く。


「大丈夫ですよ、ロロさん。私は怪我しておりませんので……」


 そう言うと、ジェシカはスキルを使った。ジェシカの手から、優しい光が放たれ、ロロの体を優しく包み込むと、体の痛みがじんわりと引いていく。


「あ、ありがとうございます……」


 再びロロは、ジェシカに頭を下げた。


「ふむ……ジェシカ殿は、今日も薬を王都へ運んでいたのかの?」


 茶を飲みながら、ジゲンはジェシカに顔を向けた。


「はい。一応、シンジさんとの話し合いで、王都から人界各地へと薬を行き渡らせる算段が付きましたので、いったん、私の治癒院へ運ぶことになりました。

 それが終われば、モンクのリエン商会に売り込むつもりです」

「ほう……リエン商会と言うのは、こないだのムソウ殿の伝令魔法でも言っておったのう。安心できるのかの?」

「ええ。ムソウさんはどう思っているのかわかりませんが、治癒院や、天宝館の商品をギルドを介さずして流通させるために、私達もよく利用していますよ」

「そうか。ならば、問題は無さそうじゃの」


 あまり関わり合いになりたくないと聞いていた割には、むしろ関係を持った方が良いのでは、とムソウを思うジゲン。本人は目立つことは嫌だと言っていたが、既に本人の知らないうちに目を付けられているかも知れないなと笑った。

 ジェシカは、少し休憩だと言って、縁側に座る。ロロも、この場を去るような空気でも無かったので、ジゲンの横に座り、膝の上にたまを乗せた。

 屋敷で共に過ごしているとは言え、未だに、正体が明らかになった“刀鬼”ジロウと、十二星天である“聖母”ジェシカの前では一人だと緊張する。せめてもと、たまを抱くことで、安心し、ロロは落ち着いていく。


 しばらく、四人で談笑していると、そう言えば、とジゲンは口を開く。


「ロロ殿は、コウシ達の武具を継ぐのかの?」

「いえ。私は、皆さんの後継者になっておりません。ですので、私は私で、別の方法で強くなることにしました」

「別の方法か……魔法ならば、タツミに師事すれば良いぞ。ショウブと共に鍛錬してみてはどうじゃ?」

「タツミさんは、風魔法特化で、しかも攻撃魔法ばかりですからね……私としては、回復魔法の練度を上げたいと思っておりまして……」

「ふむ……回復魔法か……難しいのお……」


 ジゲンは頭を抱える。何でもできそうなジゲンが、悩むことについて、不思議そうな顔をするたまに、ジゲンは回復魔法について説明した。

 魔法により、炎や風を生み出すことは、魔法使いにとっては基本的な事であり、基礎を覚えれば、大体の者が行使することができる。

 しかし、回復魔法は少々難しい魔法の一つであり、炎や風などを生み出し、相手にぶつけるだけの攻撃魔法と違い、地属性の魔法と、水属性の魔法を合わせて、対象を癒すという魔力の操作には、かなりの神経を使う。

 単純な操作で敵を倒すということに特化したジゲンや、タツミにすら出来ないものだ。

 だからこそ、牙の旅団には薬師のサンチョが居た。魔法に頼らずとも、ジゲン達の周りを、敵に察知されないように動き回り、薬を受け渡す存在が居たからこそ、ジゲン達も安心して闘えたというものである。

 しかし、回復魔法を使うことが出来れば、魔力の続く限り、一人でも戦うことが可能で、なおかつ傷を負った仲間達もあっという間に治癒することが出来るので冒険者の一団にはそういう存在が一人居るだけで、戦況は大きく変わる。


 たまは、ジゲンの話を聞きながらも、少々分からない所が多かったからか、う~んと頭を抱えた。

 しかし、回復魔法というものは凄いということは伝わったのか、キラキラとした目で、ロロを見つめる。


「ロロおねえちゃん、すごいんだね~!」

「い、いえ、回復魔法を使える方は、世界中に多く居ますし、私なんて、大したことないです!」

「いいや、ロロ殿は、大したものじゃと思っておる。魔法に関しては、闘鬼神一じゃとムソウ殿も言っておったことじゃし、自信を持っても良いぞ」

「そ、そんなこと、ありません! 私も、出来ないことが多いから、出来ることを伸ばしているだけです」


 たまに続き、ジゲンもロロを褒め始めるが、ロロは二人の言葉を否定し続ける。

 そして、たまをギュッと抱きしめながら、ゆっくりと口を開いた。


「本当に……私は、大したことない魔法使いです……私がもっと強かったら……どんな状態の方でも癒すことが出来る力があったら……皆さんを、あそこまで酷い状態にさせることはありませんでしたから……」


 ロロはガクッと項垂れ、ケリスの一件にて、樹海でスケルトンや、デーモンロードに襲われたこと、冒険者達に襲われていたことを思い出していた。

 あの時も、年も若く、力の無い自分は他の冒険者に護られていた。傷つき、倒れていく仲間達を見ながら、自分は恐怖のあまり、何も出来なかった。

 必死で助けようとしても、自分が使える回復魔法はせいぜい、下級の回復薬程度で、その場に居た皆の傷を癒すことなど到底不可能であり、自身も、倒れていった。


「あの時のようなことは、もう、起こしたくありません……治す力はあるのに、治せないなんて……それは、本当に辛かったです……

 運よくここに帰ってきて……目を覚まさない頭領を見て……今度は、頭領や、ジゲンさん、ダイアンさんやリアさん、ルイさん……皆がどんな怪我をしても、私が治すって決めたんです……でもっ……!」


 ロロは項垂れたまま、泣き始めた。ジゲンは肩を落とし、ロロを見つめる。たまはロロの腕の中で心配そうに顔を上げた。

 普段は自分やリンネに対し、いつもニコニコと笑顔を振りまき、事あるごとに頭を撫でさせて、とか、ほっぺをぷにぷにさせて、等と言っては、だらけ切った顔をするばかりのロロが、辛そうな顔をしているという姿に、たまも胸が締め付けられていた。


 どうにかならないのかという顔でたまは、ジゲンに視線を移した。

 ジゲンは、頭を抱える。先ほども言ったが、牙の旅団でも回復魔法を使える者は居ない。魔物などの殲滅特化部隊だった為か、わが身を護ったり、傷を癒すことよりも、敵を倒すということに神経を使っていた為、誰もがロロの力になれそうにないと感じていた。

 更に言えば、回復魔法を使える者自体が、ロロが思っているよりは少ない。それだけ難しい魔法である。だからこそ、ジゲンがロロを褒めたのは、お世辞でもなく素直な気持ちだった。

 そんなロロが、そのような思いを抱いているとは……何とか力になってやりたいと頭をひねるジゲン。


 すると……


「コホン……あの……皆さん? 何か、お忘れではありませんか?」


 突然、それまで黙っていたジェシカが咳ばらいをして、全員の視線を集める。ジゲンはハッとして、ロロの肩を叩いた。


「そうじゃ! 今、ここにはジェシカ殿が居る! ロロ殿! ジェシカ殿ならば、お主の希望通り、回復魔法の稽古も可能じゃ! それに、お主の適正属性は水と地、ジェシカ殿も、同じじゃ! ロロ殿も強くなることが出来る!」

「へ?」


 ジゲンの言葉に、顔を上げるロロ。強く頷くジゲンを見て、ロロは自信満々に胸を張るジェシカに目を向けた。


「はあ……私の前で、回復魔法が上達できないとか、師事する人が居ないとか言ったり、ジロウさんに関しては、頭を抱えたりと、よくぞ、出来ましたね。私って、そんなに存在感がありませんか?」

「い、いえ……」


 ニコッと笑って、ロロの顔を覗き込むジェシカ。ロロが慌てて首を横に振ると、ジェシカはクスクスと笑った。


「怒っておりませんよ。少し揶揄いたくなっただけです。

 ……さて、ロロさん。私は、闘うことがあまり得意ではありません。しかし、ジロウさんの仰るように、回復魔法や等、闘いながら仲間達を癒すということに関しては、この世界でも一番だという自覚はあります。条件次第では、貴女の力になることは出来ますが、どうしますか?」

「条件……」


 流石に十二星天に師事するとなると、重く厳しい条件を満たさないといけないのかと思い、ロロは顔色を悪くし、体を強張らせた。

 しかし、ジェシカは優しい微笑みを崩さないまま、クスっと笑う。


「そんなに緊張しないでください。ごく簡単なことです。

 条件というのは二つ。一つは、私の弟子になったとしても、貴女はムソウさんが率いる闘鬼神の一員ということを忘れないでください。もう一つは、その上で私が仕事を手伝って欲しいと言えば、手伝ってください。意外と一人で薬の運搬をするというのも大変ですので……」


 ジェシカの提示した条件にロロはぽかんとした。どちらも、自分にとっては簡単なこと以前の問題だった。

 師事したいのは、闘鬼神という仲間の為であり、それを忘れるなと言うのは当然の事だ。

 ジェシカの仕事を手伝うということは、ジェシカと関わる時間が多くなるということで、こちらとしても、それは願ったり叶ったりだった。


 そんなことで良いのかと思うジェシカだったが、ふと、自分の掌を、たまがギュッと握った。


「ロロおねえちゃん!」


 その言葉と、満面の笑みを浮かべるたまにハッとしたロロは、ジェシカに向き直り、コクコクと頷いた。


「は、はい! ジェシカ様のお手伝いもきっちりこなします! 弱音は吐きません! 私は頭領や皆さんがどんな怪我をしても、絶対に死なせないって決めました! お願いします、ジェシカ様! 私を弟子にしてください!」


 ロロはその場でジェシカに深く頭を下げた。ジゲンとたまが見守る中、ジェシカは静かに頷き、ロロの顔を上げさせた。


「もちろんです、ロロさん。これから、よろしくお願いします」


 そう言って、ロロの手を優しく包み込むジェシカ。じんわりと伝わる温もりに感極まったロロは、涙をぽろぽろと流す。今度は、嬉し泣きだ。


「あり゛がとう゛……ござい゛ま゛す……」


 顔中しわくちゃになりながら、何度も頭を下げるロロ。その頭を今日は、たまが優しく撫でていた。


「ふむ……すまぬのう、ジェシカ殿。本来ならば、儂らがどうにかせんといけないものを」

「いえいえ。ムソウさんやジロウさんを始め、闘鬼神の皆さんにはお世話になっておりますので。

 それよりも、ジロウさん?」

「む? 何じゃ?」

「これで、ロロさんが私に匹敵する治癒士になれば、ジロウさんも安心して刀を振っていけますね!」

「それは……勘弁じゃの……」


 やれやれと肩をすくめるジゲンだったが、ひとまずロロの件が片付いて良かったと胸を撫で下ろす。

 にしても、闘鬼神から十二星天の弟子が出るとは思っておらず、それがロロになるとは、と長く生きていれば、面白いことがあるものだと、またしても笑っていた。


◇◇◇


 ロロがジェシカの弟子になったという話は、その日のうちに屋敷中に広まる。

 闘鬼神の皆は、驚きながらもロロの弟子入りを喜んだ。


「……皆さん……そろそろやめていただいては、くれませんか?」


 夕飯を食べているロロに冒険者や、女中たちが集まり、ロロの頭を一人一人撫でていく。それぞれ、大したものだとか、頑張ってなどと、激励の言葉をかけながら、ニヤニヤとした顔で撫でている。

 ロロは顔を真っ赤にさせながら、小さくなっていた。


「いやいや、凄いわよ~。ジェシカ様の元で修行だなんて、私も鼻高々ね~」


 いつもとは正反対の態度で、ロロの頭をくしゃくしゃと撫でるルイ。嬉しいが、いつも窘められている行動をしてくるルイに、少しだけ悪寒が走っていた。

 ダイアンとリアもロロの頭を撫でながら、それぞれ厭らしい笑みを浮かべていた。


「頭領も驚くわ……いや、世界中が驚くわね。ジェシカ様に弟子だもの。十二星天様の弟子になるという大それたことを、まさかロロがするとはね~」

「今の所、一番の出世頭だぞ?」

「ロロおねえちゃん、えらいね~」


 たまにも頭を撫でられ、皆に褒めちぎられながらも、そんなんじゃ、ありませんと、叫ぶロロ。

 嬉しいのやら、悲しいのやらと、皆は更に笑っていた。


 その光景を少し離れた所で、ジゲンと、ジェシカ、コモン、サネマサ、シンキが眺めている。普段は、アヤメの家で夕飯を食べているサネマサや、王都に帰るシンキも、ジェシカの弟子入りという報を聞き、今日の所は屋敷にて、宴に参加することになった。

 その代わりに、牙の旅団は、今日はアヤメの家に居る。余計な気遣いをしやがってと、頭を掻いているのだろうなとジゲンは笑っていた。


 十二星天は、皆に囲まれるロロを眺めながら、それぞれ口を開く。


「ジェシカに直属の弟子か……今まで、そんなことしなかったよな? どういう風の吹き回しだ?」

「ロロさんにあそこまで志願されては断る道理も無かったものですから。それに、皆さんを見ていて、私も弟子というものが欲しいなって……」


 現在、十二星天の中で、自らが「弟子」と呼ぶような存在が居るのは、サネマサ、コモン、ミサキの三人だけである。

 武王會館や天宝館、治癒院で働く者達とは違い、自らが直接指導するという存在は、十二星天の者達それぞれが、自身の目で選び抜いた者達ということで、世界規模で見ても一目置かれるという存在である。

 ジェシカもそういうものには興味なかったのだが、コモンがギリアンやヴァルナを弟子に持ったことから始まり、サネマサとロウガン、ミサキとウィズ、ハクビ、レイカを弟子に持ち、それぞれが楽しそうに自分のやりたいことを行っている様を、どこか羨まし気に眺めていたという。


「それで、ロロさんを選んだのですか?」

「私が選んだわけではないですよ。ロロさんが私を選んだのです。弟子の期待には応えないといけませんね」

「この中でも特に若いようだな。何歳くらいなんだ?」

「ロロさんは……十五と言っていましたね。闘鬼神でもたまちゃんに次いで若いです。これから大変ですよ?」

「望むところです」


 ジェシカは自信満々に酒をくいっと飲んだ。ほとんど子育てに近いなと男衆は笑いながら、微笑んでいた。


「まあ、ひとまずジェシカが弟子を持ったという話しはまた、後でするとして、三人が居るなら丁度いいか。領主会議や、天上の儀についてだが、今話しておこう」


 シンキの言葉に、コモン達はいったん箸を止めて、耳を傾ける。


「え~と、いつものように、前々日までには各領の領主様とギルド支部長を王都にお連れするのですよね?」

「ああ。割り当てについては、また後で報告する。それぞれ、転送魔法でも良いし、陸路と海路を使って来ても良い。だが、その場合は護衛を手配しておけよ」


 領主会議などの要人が集まり、王都で会議をする場合は、十二星天が、それぞれ懇意にしている領の領主を転送魔法で送ることが多い。

 例えば、コモンならこの世界の故郷であるゴルド領、サネマサならクレナ領、レオパルドならオウキ領を担当している。

 ジェシカなどの召喚者は、自分が召喚された領を担当することが多い。

 他の領については、十二星天全員が、護衛の騎士や馬車を手配したり、人員を領主と、ギルド支部長、場合によってはその家族を転送魔法で送り届けたりしている。

 その割り当ては事前に話し合って決めることになっており、コモン達はシンキの言葉に頷いた。

 すると、サネマサが、あ、と言って、手を上げる。


「チャブラはどうする? あそこは、新しい領主だから勝手がわからないだろ?」

「あそこは、俺が行くとする。すでにオウエンからの了承は得ている。陸路と海路を行きながらゆっくりと来るついでに、色々と説明しておくつもりだ」


 チャブラの領主は、代わったばかりであり、今回の領主会議が初となっている。なので、人界の宰相自らが、会議の流れや、王都での過ごし方などを移動の間に説明するとのこと。

 それなら、安心だとサネマサは頷く。その横でコモンがクスっと笑みを浮かべながらシンキに視線を移した。


「助かります。いつもは王都で待っているだけでしたからね……」

「いじめないでくれ、コモン。俺に出来ることはやらないといけないからな」


 じゃないと後が怖いと、シンキはコモンが着ている着物の、闘鬼神の紋章を顎で指す。

 あれだけ約束したのだから、人界の為に出来ることをやり遂げると言うシンキに、コモンは笑って頷いた。


「分かってます。それで、議題については、前に頂いたものでよろしいのですか?」

「ああ。転界教については、もはや、人界全体で取り組まないといけない問題だからな。騎士団はもちろん、ギルドにも話を通さないとな」

「セインさんがうるさそうですが……」


 ジェシカの言葉に、コモンとサネマサも暗い顔をする。今までも、こちらの意見に関しては、何かにつけて理由を言っては反論することも多く、議場が荒れたことがしばしあった。

 今回もそうなるのではと、ため息をつくと、シンキが自信満々に胸を張る。


「俺が黙らせる。邪神族と転界教が繋がっている可能性がある以上、俺も見過ごせない」


 すでに誤解も解けているシンキの言葉。今度こそ頼むぞ、とサネマサはシンキの肩に手を置いた。シンキが任せろと頷くと、三人は安心したようで、胸を撫で下ろす。

 すると、再び、サネマサが気になることがあると言って、口を開く。


「その、邪神族の事はどうする? まだ、秘密にしておく気か? 俺としては、封印がもうすぐ解かれるってんなら、公表しても良いと思っているんだが……?」

「それを話し合うんだ。正直、俺はラセツやエンヤ達との約束もあって、今の人界に対して、どうすれば良いのか分からないでいるからな。

 最終的に皆の意見が聞きたいから、天上の儀までにそれぞれ思いを固めておいてくれ」


 魔物の活発化に端を発し、壊蛇の災害から、転界教の出現と、ここ数百年の間に、邪神族の動きが活発になっていることも明らかだ。

 確かに、そろそろ人界に邪神族の存在と、邪神大戦の事を明らかにする必要があると、シンキも思っている。

 しかし、それはラセツや、その後の平和を祈り、支え続けたエンヤ達との約束を破るということにもなる。

 シンキにとって、それは良いことなのか、悪いことなのか判断が出来なかった。一応、この場で、ナツメ、トウヤ、エイシンの刀精になったかつての仲間達は、シンキ及び、今を生きている者達に任せるという思いをコモンから聞いた。

 だから、尚更、皆の意見を聞いて行動した方が良いと、シンキは結論付ける。

 この場で決めるよりは良いかと、三人とも、シンキの頼みを承諾した。


「かしこまりました。あと……ムソウさんの褒章については?」


 こちらは、最後の議題。今までや、今回の事で明らかになった冒険者ムソウの活躍について、そろそろ王都も黙っているわけにはいかない状況まで来ていた。

 他の冒険者達の為にも、また、人界の民達から、王城への反感を買わないためにも、ムソウに褒章を渡すべきかという話は上がってきている。

 恐らくそう言った目的で、このことについて議論するのかと思っていたジェシカの予想に対し、シンキは首を横に振った。


「これは殆どおまけだ。今回の一件に関して、改めてムソウに褒章を渡すかどうかで、十二星天内で、アイツに対して害と思っている者がどれだけ居るか、益と思っている者がどれだけ居るかを判断することが主な目的で、ムソウに褒章がどうのは二の次だ。本人が嫌がっているというのはすでにわかっているからな」


 つまりは、十二星天、及び、今の王城がムソウに対して有益か、害かということを見定めるということだ。

 一応ムソウも、十二星天のそれぞれ、個人については色々な思いを抱いているが、十二星天という組織、ひいては、王城という組織については関わらない方が良いと考えている。

 有益でも無いし、有害でも無いということから、結局のところ、よく分からないから、こちらから関わることは無いという結論だ。

 では、誰が味方で敵なのかということについては、把握する必要があると考えたシンキは、この議題を提示した。


「なるほど……ですが、それは分かり切っていることなのでは?」

「まあ、ミサキの話だとそうだったな。だが、一応、はっきりとさせておく必要がある。ムソウの為にもな。

 セインやリーは分かり切っているし、俺やここに居るお前ら、それにミサキとレオも分かっているが、エレナ、ジーナ、ミーナはよく分からない。セインに与しているというのは明らかだが、それがそのままムソウを敵対視しているということにはつながっていないかも知れない。以前の俺のようにな。ジーンに関しては……あいつもよく分からない。何も言わないからな」

「確かに。それで、振り回されてきたもんな……分かった。じゃあ、それまでに……」


 といった感じに、十二星天内の話し合いは、盛り上がっていく。話の中心は、意外にもサネマサだ。疑問に思ったことはきちんとシンキに確認している。

 最近まで、目の敵にしていたのに、よくぞここまで変わったものだと、コモンとジェシカは苦笑いしていた。

 隣に居たジゲンも、分からないことがあれば聞けとは言ったが、ここまでとはと、少し複雑な思いになる。


 牙の旅団を率いていた時も、こうやって作戦会議をしていたなら、そこまでの苦労はしなかったかも知れないと、やれやれと思い、ジゲンは肩をすくめ、ふう、とため息をついた。


 ◇◇◇


「そして、ジェシカ様の弟子になったということで、私もここに来ることが出来ました。

 以上が、頭領がここに来てからの四日間で起こった、クレナでの様子です」


 ああ、そうか……まだ、四日か。この旅でも、こちらに来てから、一日、一日が色々あって、もうずいぶん前に来たような錯覚があるな。

 そして、それはクレナでも同じようだ。まさか、俺が出ていった直後から、ここまで、面白いことが起こっていたとは予想もしていなかった。


 シロウとナズナが正式に祝言を挙げるということで、ツバキとリンネも喜んでいたが、俺達がクレナに帰らないと祝言が挙げられないということで、ツバキが若干、顔色を悪くする。

 しかし、俺が滞在する期間を先に言っていたおかげで、ひと月は待ってくれるらしいので、あまり気にするなと伝えると、ツバキは顔色を良くして頷いた。


ロロがジェシカの直弟子になったという話は、本人が言っていたようにとても面白いものだと感じた。だから、ロロはここまで来れたんだな。暇だったからというわけではないので安心した。

 自分の能力を伸ばしてくれるような師が見つからない中でも、強くなりたいと思い、自らジェシカに頼み込んだ辺りは、素直に素晴らしいと感じた。

 若い分、期待も大きいが、ロロはそれに応えてくれそうだ。屋敷での皆と同じ様に、俺とツバキ、そして、リンネはロロを褒めながら頭を撫でていた。

 ついでにメリアも撫でると、ロロは顔を赤らめながら、恥ずかしそうにしていた。


 さて、ロロはその他の、俺の耳に伝えておいた方が良いというものを事前にジゲンと確認し合っていたと言って、そのことについて語り出した。

 まず、無間の修復が終わったということで、クレナを拠点に活動していたシンキは、今日から仕事の拠点を王都に戻すことにしたという。

 屋敷の者達や、関係者に挨拶を済ませた後、シンキはトウショウの祠にて、何かを確認した後、苦笑いしながら王都に戻っていったという。

 何を確認したのか、また、後で聞いておこう。


 そして、ジェシカも薬の運搬を終えたことで、拠点を王都の治癒院に戻したという。

 とは言うものの、一日の始まりと終わりに、ロロを治癒院に送ったり、屋敷に返したりするため、これからも毎日顔は見せるという。

 というわけで、ロロも王都とクレナを行ったり来たりするようになるらしい。大変そうだが、本人は喜んでいるようなので、何も気にならなかった。


 サネマサとコモンは今まで通り、トウショウの里を拠点に、仕事を続けていく。もっとも、転送魔法が使える十二星天に、そもそも仕事の拠点というものは無いのかも知れないがな。


 そして、闘鬼神についても今まで通りだが、具体的に牙の旅団が刀精になる時期が確定したので、前よりもジゲンやたまは、空いた時間で牙の旅団の者達と買い物に行ったり、どこかで遊んだりとするようになっているという。

 カドルも、それまでは俺の家でゆっくりするとのこと。

 雷嫌いのハルキを克服させるために、時折鍛錬に参加しているという。これからしばらく、俺の屋敷から落雷による大きな音と、ハルキの絶叫が聞こえるだろうと、ロロは笑っていた。

 俺が戻るまでには直して欲しいな、いい加減。


「なるほど……特に変わったのは、シンキとジェシカくらいか……二人にはよろしく伝えておいてくれ」


 王都へ行くことが多いロロに、二人への伝言を頼むと、快く受け入れてくれた。


 その後、飯を食べ終えた俺達は、宿に行くロロを見送った。やはり送って行こうかと思ったが、ロロが大丈夫ですと自信満々に言っていたので、信じてみることにした。

 別れ際、ツバキがロロに何かを渡していた。何だろうかと気になったが、大した用事では無いそうなので気にしないことにした。


 そして、俺達も部屋に戻り、眠りについた。ひとまずこれからしばらくは、今まで通り依頼をこなして、適度に金を貯めつつ、スーラン村の一件に取り組む準備をしようと考えていた。


闘鬼神全員の名前、実は考えていないんですよね……。

もっと言うと、冒険者の男女比もそんなに気にしていないです。

一応、リア、ルイ、ロロ以外にも、何人か女性冒険者は居ます。一度限りで名前を出したような覚えが……。


というわけで、闘鬼神のメンバーもスキルと同じ様に、皆様から募集したいと思います。名前と性別と、どんな人間かを感想欄に書いて下さると嬉しいです。

無論、既存の名前持ちの人間と仲が良い、みたいな、設定とかもOKです。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] ジーンって結局どうなったのですか? 近くにいると言う話ではなかったでしたっけ?  間違ってたらすみません
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