第303話―新しい無間の試しを行う―
俺の手の中に収まる無間は、前と見た目は何も変わっていない。新しく作り直された分、新品のように綺麗になったくらいだ。これは、ちゃんと手入れしていかないといけないな。
ただ、伝わってくる力は、前の無間よりも上……というより、妙に俺に馴染む気がする。
修復した際に組み込んだ、天界石と、冥界石の影響だろうか。前よりも気を流しやすい感じがする。
それに、手にもよく馴染む。これは……ほとんどコモンのおかげだろう。前と同じく、エンヤのさらしが巻かれているので、これもまた、要因の一つだろうな。
少し持ち上げて、重さを確かめる。重すぎることも無く、軽すぎることも無く丁度いい感じだ。背中の大刀を外して、新しい無間を背負ってみる。
久しぶりの感覚に、何となくだが、安心感を覚えた。
「……ありがとう、コモン。良いものを作ってくれたな」
「いえ。やはり、頭領の背中には、無間が一番お似合いです」
俺が無間を背負った姿というのは、長く、敵からは脅威とされ、民衆からは畏敬の目で見られていたが、誰からも恐れられていたが、この姿が一番似合っているというのは、何となく複雑だ。
ため息をつきながらコモンを小突くと、揶揄うように笑われた。
「にしても、先ほどから気になっていたのですが、そちらの刀は何ですか?」
「ああ。ヴァルナから貰った刀が折れたんでな。間に合わせで買ったものだ」
「え……九怨が折れたのですか? 何があったのですか!?」
食い気味な様子で尋ねてくるコモン。そして、俺の刀のことは知っていたガーレンも、慌てた様子で詰め寄ってくる。
「前の刀が折れた!? 何か、変な魔物でも出たか!? そういや……今日は鉄鋼蟹の討伐だったな!? 海王蟹でも出たか!?」
あ、「海王」を冠した魔物の名前が出てきたな。恐らく、馬鹿でかい蟹の事だろう。
カタフロクラブは出てきたが、そういうのは出てきていないが、その蟹も強固な外殻を備えているのだろう。それで、九怨が折れたとでも思っているのだろうか。
……ん? そうなると、ジーゴの奴、俺がカジノで負けたことについては言いふらしていないみたいだな。何となく感謝する。
俺はため息をつき、二人に事情を説明した。最初は憤っていたガーレンだったが、徐々に落ち着いていき、最終的にコモンと共に、腹を抱えて笑い出した。
「ハハハッ! すげえな! アダマンタイトを斬るとは! 金も10倍で返って来たんだから良かったじゃねえか!」
「まあ、その「獄焔刀」はそれ以上の価値がありますけどね~」
「そうなのですか!? 流石は、天宝館ですねえ!」
時折、俺に対して馬鹿にしたような目つきになりながらも、コモンに対して、妙にへりくだる大の大人である、ガーレンに腹が立つ。新しい無間を受け取ったばかりの良い気分が台無しだ。
ケラケラと笑う二人に舌打ちをして、ガーレンの肩を掴む。
「痛ててて! な、何をするんだ!?」
「笑いすぎだ。新しい無間の錆にしてやろうか?」
無間の柄を掴みながら、ガーレンを睨みつける。若干顔色を悪くしたガーレンとは裏腹に、コモンは、何故か明るい顔をして、ポンと手を叩く。
「あ、それは良いお考えですね。僕もどうしたものかと悩んでいたのですが……」
「は? こ、コモン様! 何を仰るのですか!?」
「お、コモン。今日は俺の味方か?」
「いえ、そうではなく、無間の試しについて色々と考えていたのですが……」
ああ、そっちか。今日はコモンと一緒にガーレンを弄れるのかと思ったが、違ったらしい。
コモンによれば、俺が無間を使うに当たり、試し斬りというか、ちょっとした手合わせを誰に頼もうかと思っていたらしいが、ジゲンは、クレナで少々忙しいらしく、そもそも、勘弁してくれと返事をもらっているらしい。
シンキとサネマサにも頼んだが、どちらも王都での仕事で忙しいという。特にシンキは、無間の修復で遅れたジェシカ達との仕事や、自分の仕事を片付けている最中であるという。
本当に、後できちんと礼をしておこう……。
というわけで、頼める人間も居ないので、困っていた所、今の状況になったという。
俺が、なるほどと頷いていると、ガーレンがコモンに青い顔をして懇願している。
「こ、コモン様! 私では無理です! 身が持ちません!」
「大丈夫ですって。ムソウさんも、そこまでの無茶は……しないとおもいますので……」
「何ですか、その間は!? 無理です! どうしてもと仰るのでしたら、コモン様もお願いします!」
「あ、それは構いませんよ。元々、その予定ですので」
コモンは、大金槌を手にして、ガーレンにニコッと笑う。流石にガーレンも、コモンが自分に味方をしてくれるということに、安心したのか、ふう、と胸を撫で下ろしたようだ。
「それならば、安心です。ですが、私達相手となると、この男の身がもちますでしょうか?」
「と、仰っていますが、頭領、どうですか?」
一気に余裕な感じのガーレンに、少々困ったように苦笑いするコモン。俺は頷いて、ニカっと笑った。
「まあ、善処するよ」
「分かりました。では、早速、ここの闘技場に向かいましょう」
「はい! では、こちらへ……」
ガーレンに促されるまま、俺達は部屋を出る。そう言えば、コモンと手合わせは初めてだな。
ケリスとの一件の際に、ジゲンは闘ったみたいだが、呪いの所為で、本来の力を感じることは無かったと聞いた。
だから、実際のコモンの本気というのはよく分からない。この際にしっかりと見極めておこう。
一応、俺達の本気に耐えられるように、ミサキの結界魔法、それも、最上級の魔法である、「天岩戸」が封じられた魔道具を持ってきているとのこと。
ミサキの最強の魔法でようやく壊れる結界だ。これなら俺も本気を出せるなあと思っている。
……まあ、鬼神化はしないがな。あれは、今度また、一人でやっておこう。
さて、ガーレンに連れられて、そのまま階段を下りていくと、下から冒険者達の歓声が上がる。
「お! 本当にコモン様だ! 朝居た奴らが言っていたのは本当だったんだな!」
「何しにこちらへ!?」
「隣の男は……あれ!? ザンキのオッサンだ! 何やらかしたんだ、アイツ!?」
「そういや、さっき、シアちゃんが連れて行ってったけど……」
流石十二星天……クレナでは珍しい光景も、これが当たり前なんだよなあと、ガーレンの時と同様に感じている。
少し照れ臭そうに、しかし、どこか誇らしげにするコモン。申し訳ない、といった感じに、おずおずと頭を小さく下げるコモンに、女の冒険者は顔を赤らめている。
……やはりモテるんだな、ああいう男は。母性がくすぐられるとか、何とかで。そう考えると、うちの女中たちは本当に運が良いんだなと、改めて感じた。
まあ、コモンは良いだろう。元々目立っている、というか、目立つ存在だしな。
問題は、一緒に居る俺だ。こないだ関わった者達は、キョトンとした顔で俺のことを見てくる。
「オッサン……本当に何かしたのか?」
「いや、べつに……」
「さっき、背負っていた刀とは違うものを背負っているわね……ひょっとして、天宝館から盗んじゃったとか?」
「なわけねえだろ。天宝館に刀の修繕を頼んでいたから、それを届けてくれただけだ」
「え……コモン様が直接? そんなこと、あるの?」
「ゔぅ……」
喋れば喋る程、ぼろが出てくる気がする。面倒なことになったなあと、コモンに視線を送ると、クスっと笑みを浮かべたコモンが近づいてきた。
「あ、皆さん。ムソ……ザンキさんの仰ることは事実です。先日、ザンキさんに頼まれた武器の修繕が終わりましたので、ここまで届けに来ました」
「コモン様が直接ですか? ただの冒険者に?」
「ええ。転送魔法で、すぐに」
「いえ、そっちではなくて、コモン様が、直接オッサンの武器を直したのですか?」
「はい。少し前まで天宝館は忙しかったので、僕も他の方々の手伝いをしていたのです。まあ、今はもう落ち着きましたけどね」
疲れたようにう~んと、背伸びをするコモン。なるほど、と頷く冒険者の皆は、俺の肩にポンと手を置く。
「何だ、そうだったのか~。オッサンも幸運だったな」
「コモン様に直接修繕していただけるとは、羨ましいです」
「てっきり、俺達はザンキさんが、何かやらかして、十二星天様の怒りに触れたのかと思っていたぞ」
「心配かけやがってよ」
数度しか会っていない者にまで心配されるとは、なかなか嬉しいものだと感じる。
「ありがとう……と、礼を言えば良いのか分からないな」
「おいおい、心配してたってのに、つれないなあ~。まあいい。にしても、それが直してもらった刀か? さっき持っていたやつの方が良いんじゃないか?」
「いや、この刀には思い出が詰まってんだよ。愛着もあるしな」
「あら、素敵なことを言うのね、見た目と違って。今度は大切にするのよ?」
「分かってる。これから、コモン様に試し斬りに付き合っていただくから。その時に、色々と確認してみるよ」
「お……なら、邪魔しちゃ、悪いな。酒でも飲みながら待ってるからな~!」
「また、後でね~」
そう言い残し、冒険者はぞろぞろと、酒場の方に向かう。ガーレンが、飲むくらいなら働けと怒鳴るが、もう、今日の仕事は終わったと、言い返され、ガーレンはやれやれと肩をすくめる。
それを見たコモンはクスっと笑った。
「ここでも、ムソウさんは人気者の様ですね。それに、クレナに比べると、冒険者の質が素晴らしいです」
「あそこと比べるのが可哀そうな気がするくらいだがな。ガーレンの指導が良いんだろ」
「ですね。ガーレンさん、お疲れ様です」
「いえいえ、勿体ないお言葉です! さ、こちらへどうぞ」
コモンに褒められたガーレンはウキウキ気分で、闘技場へと案内していく。やれやれと思いながら、俺とコモンはガーレンに続いた。
そして、闘技場に着くと、コモンは結界魔法の魔道具を起動させて、闘技場全域に結界を張る。魔力を込め続ける者が居ないので、出来るだけ早めに決着をつけると、三人で示し合わせて、俺は二人と向かい合わせになるように立った。
「さて……久しぶりに、暴れるとするか……」
無間を抜いて構えると、コモンとガーレンは、ごくっと唾を呑み込む。
「頭領と、こうやって向かい合うのは初めてですね……なるほど……僕も少し本気を出さなければ……」
「私は、最初から全力で行います……」
ガーレンは、ゆっくりと背中の大剣を抜いて構えた。コモンは、大槌を構え、自分の周りに、炎を展開させる。
ガーレンが前衛で、コモンが後衛という布陣だが、どうなるか分からない。武器の扱いでは、恐らくコモンよりも俺の方が上だ。
だが、本気のコモンのEXスキルは未知数である。ジゲンとやり合った時以来に、緊張感をもって、手合わせをしよう。
「準備は整った! 行くぞ、コモン! ガーレン!」
「お願いします! ムソウさん!」
「行くぞ! ウオオオオオ~~~ッッッ!!!」
雄たけびを上げながら、駆け出すガーレンは、大剣を中段に構えている。俺もガーレンに向けて駆け出し、徐々に互いの間が詰まっていく。
すると、ガーレンの後方から、コモンがいくつもの炎を放ってくる。まるでリンネの狐火だ。炎に対処しようとすれば、ガーレンからの攻撃が、ガーレンの攻撃に対処しようとすれば、炎が当たると思われる。
装備のおかげで、炎の方は何となると思い、ガーレンだけに対応しようとした。
だが、コモンの作り出す炎は、魔法によるものではなく、スキルによるものだ。小さくても、温度は桁違いである。馬鹿には出来ない。
俺は、走りながら無間を振った。
「大斬波ッ!」
無間から放たれた刃は、今までと同じくらいの力で振ったつもりだったが、予想以上に大きく、ガーレンとコモンの炎に向かって放たれる。
技の威力は格段に上がっているらしい。ガーレンは立ち止まり、突き技を繰り出すように、大剣を引く体勢になる。
「大豪神突ッッッ!!!」
ガーレンが思いっきり、大剣を突き出すと、切っ先から、大きな気の塊が飛び出し、俺の斬波とぶつかり合う。
ギリギリと音を立てていたが、徐々に俺の斬波が押していく。
「チッ! 凄い威力だな」
「ガーレンさん! 退いてください! 焔龍嵐舞ッッッ!!!」
コモンの指示に、ガーレンが応えて、いったんその場から離れる。
ガーレンの技を打ち消した斬波を避けながら、コモンは炎を操り、それをいくつもの大きな龍の形にして、俺に向けて放ってきた。
「援護します! 地縛!」
俺が、炎の龍に向けて対応しようとしていると、ガーレンが地面に手を置いて、魔法を発動させる。
俺の足元の土を、縄のように細く伸ばし、俺の足に向けて巻き付かせてきた。二人して、俺を殺す気らしい。コモンは分からないが、ガーレンは本当に本気だな。
「なるほど……ならば……」
俺は、無間を下段に構えて、その場で動くことなく力を込める。そして、炎の龍が迫ってきた瞬間、無間を思いっきり振り上げた。
「焦熱斬波ッッッ!!!」
振り上げた無間から、今度は黒い斬波が放たれる。それは、以前は鬼人化した時にしか使えなかった、鬼火で出来た斬波。通常時は使えなかったが、新しい無間になってからは、普通の状態でも、こういうことが出来るようになったようだ。
組み込んだ、二つの石のおかげだろうな。気を込めると、天界と冥界、二つの波動を使った技が可能になる。もっとも、思い通りの形になったりは出来ない。斬波か、豪神突くらいしか、影響を及ぼすことが出来ないみたいだがな。
まあ、それで充分だと思っている。コモンが作り出した火龍を黒い炎で焼き切り尽くす斬波を見ながらそう感じた。
そして、ガーレンからの拘束を解き、二人に近づいていく。コモンは炎で、ガーレンは地面から壁を作り出し、俺を防ごうとした。
「しゃらくせえ真似だな! 奥義・無斬!」
―すべてをきるもの発動―
無間を振り回しながら、壁の切れ目を斬っていく。重さは本当に丁度いい。思い通りに、切れ目を斬っていける。体も自然に動くことが出来る。
徐々に土の壁が小さくなっていき、威力の上がった一撃で、炎の壁が払われて、二人の姿が露となった。
「大焔槌ッッッ!!!」
その瞬間、大きな炎を纏わせた金槌をコモンが振り上げながら、突進してくる。そして、俺とコモンはそのままぶつかり合った。
「ちぇ……威力の上がった無間を受け止められるとはな……」
「ギリギリです……爆ッ!」
しばらく、俺とぶつかっていたままのコモンの金槌に纏っていた炎が、強い熱波と共に破裂する。
「熱ッッッ!」
その衝撃で、俺は吹っ飛び、投げ出される。それを狙って、ガーレンがどこかからか俺に襲い掛かってきた。
「そらそらそらッッッ!」
「今ですッ!」
ガーレンからの、大剣からの連撃を対処していると、コモンも金槌を俺に向けて振り回してくる。
「面白い……!」
炎を纏わせた大金槌と、気を込めた大剣で俺に攻撃してくるコモンとガーレン。下手に、派手な技を使わない分、向こうも間断なく攻撃出来ているので、俺は捌くのがやっとで、俺も、大きな攻撃を出すことが出来ない。
だが、手に馴染み、力も使いやすくなった無間での対処は、意外と楽しい。半ば、遊ぶような気持で、二人の攻撃をいなし続けていた。
切れ味が良すぎて手加減できそうにない斬鬼と、魔物の素材ということで、俺の力に耐え切れるか怪しい他の武器に比べると、精神的に安心できる。これで、これからも安心して、色んな奴と手合わせという遊びが出来るなあと、ガーレンとコモンの相手をしている。
二人も確かに強い。だが、ガーレンはコモンとの連携は上手いが、個人の技量としては、ロウガンやアヤメに劣る。コモンは、思ったように、スキルは厄介だが、サネマサやジゲンに比べるとやはり、技量は劣っている。
最終的に、派手な技を使わなくなったことで、今はコイツ等の方が不利だなと思っているが、俺としては、二人の攻撃をさばきながら、乱戦でも新しい無間は大丈夫そうだなと、感じていく。
「さて……オラアッ!」
「ガッ!?」
「くっ……!」
そろそろ、この状態にも飽きてきて、俺は二人に無間を思いっきり振り、距離をとる。
俺が、無間を肩に担ぐと、コモンがハッとした様子で、ガーレンに顔を向ける。
「ガーレンさん! 来ます!」
「え……何がですか?」
「ムソウさんの本気です! 僕たちも出来るだけ大きな技を!」
コモンは慌てた様子で槌を俺に向けて、その先端に炎を貯めていく。
む……流石と言うか、何と言うか、俺が本気になる瞬間というのは分かるのか……。
まあ、良いやと思いながら駆け出す。ガーレンがハッとした様子で、大剣を振り上げ、大きく気を溜めて振り下ろしてきた。
「止まれッ! ザンキっ!」
「邪魔だッ!」
迫る大剣を、叩き折り、そのまま顔に蹴りを入れる。
「ガフッ!」
吹っ飛んでいくガーレンを横目に、コモンに向き直り、スキルを発動させた。
―かみごろし発動―
無間が黒く輝き、光に包まれた俺は、鬼人化する。それと同時に、無間が真っ黒になっていく。
これも冥界石の影響だろうな。鬼人化して無間を使うのは、実はこれが二回目なだけに、前と比べても、よく分からない。
ただ、先ほどまでと、あるいは他の刀よりも、冥界の波動を流し込みやすい気がする。
そして、それを増幅もさせている気がする。俺の力を増幅しているというよりは、無間からの冥界の波動と合わさっていると言った方が良いか。
結構使いやすいなあと、無間に更に冥界の波動を込めていき、額の角の先にも冥界の波動を溜めていく。
「さて、行くぜ、コモン! テメエの炎と、俺の鬼火……どちらが熱いのか勝負だッ!」
「くっ……望むところです! 奥義・日輪ッッッ!」
少しばかり、苦しい顔をしながらも、コモンは金槌の先の炎の球体を撃ち出した。地面を焦がしながら近づいてくるそれは、まるで小さな太陽のようだ。
相変わらず、恐ろしい奴だと笑みを浮かべ、俺は角の先の冥界の波動を撃ち出し、それに向けて無間を振るった。
「奥義・焦熱地獄ッッッ!!!」
無間から、幾つもの刃の形をした鬼火が放たれ、先に放出した、鬼火に吸収されていく。それは、真っ黒な球体となり、コモンが作り出した球体とぶつかった。
二つの巨大な球体がぶつかった衝撃が、俺とコモン、そして、結界内のガーレンを襲う。
すると、次の瞬間、俺の鬼火がもぞもぞと動き出し、中から凄い勢いで、刃の形をした鬼火が飛び出してくる。
「なッ!?」
出てきた幾つもの鬼火は、コモンが作り出した球体を斬っていき、更には、結界を斬っていき、消えていく。
ボロボロになった炎の球体は、俺が作りだした鬼火の球体に呑み込まれていき、俺の技と共に消滅していった。
「ほう。敵の技を無効化しつつ、こちらの攻撃は普通に放つって技か……結構使いやすいかもな」
「ぼ、僕の、太陽が……ど、どんな技ですか……それに、いともたやすく、あの結界を……」
お互いの技を放ち終えた後、ということで、何となく力が抜けたついでに、結界魔法を砕いたことにより、これ以上の続行は不可能と判断し、手合わせは中止。コモンとは、決着付けられず終いとなったが、俺は満足だった。
ミサキの結界を簡単に打ち砕けるとは思わなかったからな。無間を新しくしたおかげか、それぞれの技の威力は格段に上がっている。
斬波なども気を込める時間も短く出来ているし、その割には威力がデカい。
言うことは無いなと、無間を見つめる。激しい手合わせではあったが、傷一つついていない。冥界石の影響はほとんどないみたいだと安心し、無間を収めた。
「いい仕事をしたなあ、コモン。結界に関しては、あれだ、スキルを使ったんだよ」
「は、はあ……なるほど……」
正直、奥義に関しては、力を込め過ぎたのか、あそこまでになるとは思わなかった。
本来は、相手の攻撃を相手にぶつけて防いでいる隙に、大量の斬波を浴びせるという技だったが、最終的に鬼火にコモンの炎が呑み込まれるとは思わなかった。呑み込まれたというよりは、鬼火に包まれて消えたというべきか。
あんな感じになるのなら、ハクビの技のように、相手の力を取り込んで威力を上げて欲しいものだと感じる。
まあ、コモンの奥義を打ち消せるほどの技なら文句は無いか。
何か腑に落ちない様子だが、ムソウさんがそう言うのなら、とコモンは、首を傾げるのを辞めた。
「それで、新しい無間はどうでしたか?」
「完璧だ。新しい刀という気分ではあるが、体に馴染む感覚が強いからな。技も上手く使えるようだし、俺の思ったように切れる。流石、コモンだな」
今回の手合わせの感想と共に、感謝すると、コモンは、フッと笑みを浮かべて、嬉しそうな顔をする。
「どういたしまして……あ、こちらにも」
コモンは、大金槌を俺に向けてくる。
「ああ。トウヤも、ありがとう。数千年ぶりの無間はどうだった? 親父さんを越えるって夢は、これで叶っただろ? まあ、これからも頼りにしてるからな」
変な感じだが、大金槌を撫でてやると、コモンと共に、何だか可笑しな気持ちになり笑った。
すると、俺達が立っていた場所から少し離れた所から、ガラガラと、音が聞こえる。
何だろうかと思っていると、瓦礫の下から、ガーレンが姿を現した。
「助けてくれると……ありがたいんだが……」
「「あ……」」
やれやれと頭を掻くガーレンに、俺とコモンは、流石モンクのギルド支部長だ。運が良いなと笑っていた。




