表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
最強傭兵異世界に落とされる
3/534

第2話―かわいいけどかわいくないやつを斬る―

 でかいトカゲを倒した場所からしばらく歩くと、一本の道に出た。


「これは……道、だよな? 人が整備したみたいだが……」


 今まで歩いてきた荒れた地面ではなく人が整備したような感じだし、よく見ると足跡も残っている。

 街道だよな、うん、間違いない。


「じゃあ、この道を歩いていくか。村でもあれば最高だな」


 俺は、この道を歩いていくことにした。整備した道があるという事は、この先に人が住んでいる集落があるということだからな。

 ひとまず、そこを目指して、進むとしよう。


 ただ、ここに来るまでの間、さっきのトカゲのようなもの以外の生き物に遭っていない。トカゲに恐れているのかどうかは分からないが、人間にも会っていない。戦った直後、ということもあるし、早いところ、街に着いて、ひとまずは泊まれる場所を確保しないとな。こんなところで野営なんて冗談じゃない。一睡も出来ねえよ……。

 まあ、いざとなりゃ、()()を使うか……などと考えていると、進行方向に、あるものが見えてきた。

 木で出来た車輪に、荷台、幌……あれは、馬車だ。ということは……


「おっ、人だっ!」


 読み通り、馬車の前に人影が見えた。馬も……居るな。ちゃんと馬だ。怪物のような見た目をしていない。どうやら、俺達の世界と変わらない生き物というのも居るようだ。

 何にしても、助かった。これで、情報収集が出来るなと思い、更に近づいていくと、その先から、悲鳴が聞こえてくる。


「助けてくれえええ!」


 何事かと思い、俺は無間を抜いて、すぐさま走っていくと馬車の前になにやら奇妙なものが三つ並んでいた。


 色は透明、ぷるぷると震えている。目、鼻などの感覚器官はないが口みたいなものはあり三つとも。なにやら不気味な笑みを浮かべているように口角が上がっている。


「……なんだ? こいつら」


 この三つのなにかは明らかに弱そうだ。……生き物かどうかすら怪しい。違う世界の俺から見ても、弱いというのがすぐ分かる。


 ……なんとなく抱きしめたくなるような、そんな体をしている……。要は、どちらかと言うと、可愛いという感じだ。先ほどのトカゲよりも幾分か、親しみが湧く。夏の暑い日などは、膝の上に乗せて、一日中触っていたいような見た目だ。


「あ! そこのあんた! 刀を持っているということは“冒険者”かなんかだろ!? こいつらを追い払うか、倒すかなんとかしてくれえっ!」


 可愛い物体を眺めていると、馬車の持ち主であろう、商人風の男が頼み込んできた。


「……え? いや、なんというか、こいつら、可愛いじゃねえか。斬ったり出来ねえよ。このままで良いんじゃねえか?」

「あんた、何言ってんだ!こいつらは――」


 こんな奴らを斬るなんてとんでもないことを言うなあ。このまま見過ごそうと思い、男の言葉を無視していると、三つのなにかのうち一匹がブルブルと震えだし、大きく口を開け、二頭いた馬のうち一頭を丸呑みした。


「……は?」


 俺が唖然としてる中、半透明のなにかの体の中で馬は一瞬で骨になっていった。


 ……え、何だ?……え、こいつら、かわいくない……。


 ……俺は無間を抜いた。


 三つのなにかは俺の方に向き直り、口を大きく、馬車と男、もう一頭の馬諸共呑み込むように、開き、襲い掛かってきた。


「……」


 男が荒ぶる馬を必死に抑えようとしている中、俺は黙って無間を横薙ぎにし、そいつらを斬り伏せた。


 なにかは3つともその場で破裂し、汚く、生臭い体液をまき散らしながら、消滅していく。俺は無間を盾のように使い、体液から身を守った。その匂いは、生臭く、少し酸っぱいような匂い……胃酸のような匂いで、吐き気がしてくる。


 しばらく呆然とし、懐から手ぬぐいを取り出し、身体を拭っていると、馬車の男が俺に口を開いた。


「……いや、助かった。ありがとう。スライムを一撃で斬るなんてすげえな」


 男は俺に感謝しているようだが、俺は、斬れた手綱の先を見ながら、首を横に振った。


「……いや、すまない。俺がもたもたしてたから馬が一頭死んでしまった」

「馬一頭で済んでよかったよ。スライム三匹も居たら、もう一頭も俺も死んでいたかもしれないからな」

「え、さっきのそんなにやばい奴らなのか?」

「ん? お前……スライムを知らないのか? ……いや、ちょっと待てよ……」


 男は俺のことをジッと見てきた。すると、段々と目を見開いていき、何かに納得したような顔になる。


「ああ~! お前「迷い人」かあ! 珍しいなあ」

「迷い人?」

「ああ……お前違う世界から来たんだろ?」


 男の一言に驚いた。俺自身違う世界から来たということが未だに半信半疑なのに、男は平然とそれを口にした。なんだ? こちらの世界では、違う世界から人間が来るというのは、当たり前に日常茶飯事で起こっているのかと思っていると、男は続ける。


「ごくまれにいるんだよ、お前みたいに違う世界から来たっていう人間が。

 そいつらをこの世界じゃあ迷い人と呼んでいる。そいつらは神族(しんぞく)による召喚、鬼族(おにぞく)が行う転生によってこっちに来るみたいだ。

 後は時空間魔法による(ひずみ)に巻き込まれてってのがあるらしい。人族の一商人の俺には よくわかんねえけど」


 しんぞく? しょうかん? おにぞく? てんせい? まほう? ……よくわからないがこの世界にはそういう種族もいるのだろう。さっきのかわい…………凶暴な得体の知れないものもいたわけだし。 それで、そんな奴らが何かしらの方法で違う世界からこの世界に人間を呼んでいるということだな……。


 俺がこの世界に来た理由はわかった。まあ、多分どれかだろう。だが、目的は…………わからねえな。この男も知らねえだろう。それよりもまず気になることがある。


 それを確かめた上で、次の情報収集に移るとしよう。


 しかし、この男は見ず知らずの奴に、よくここまで話をするな。

 というか、口が上手く、舌が良く回るだけのようだ。商人を名乗っているだけのことはある。俺は感心しながら、その男を眺めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ