第297話―休日を過ごす―
翌朝、今日もリンネにくすぐられながら目を覚ます。俺は依頼で疲れていて、リンネは仕事の為にと、早起きになったのか、最近、立場が逆転してしまったな。
やれやれと思いながらリンネをくすぐり終えると、既に起きて、朝めしの用意をしていたツバキと顔を見合わせる。
「あ、おはようございます、ザンキ様。え~と、御着替えですけど、居間で父が待っております」
「ん? 分かった」
まだ少し眠いなあと欠伸をしながら、居間へと向かうと、昨日頼んでおいた服が並べられている。タクマは、ニコリと笑って、俺を出迎えた。
「おはようございます、ザンキさん。一応、今日はこちらを着ていただくとして、他にいくつかお持ちしました」
「ありがとう。え~と、確か、銀貨三枚だったか?」
「はい。よろしくお願いします」
タクマにもやれやれと思い、銀貨を渡して、今日着ない分の服は異界の袋に入れて、ツバキが選んでくれた服を着てみた。
前開きの部分を色とりどりのボタンで閉じるというものだがそこまでの窮屈さは感じられない。履物も、少し大きめのものらしく、ゆったりとした履き心地だ。ただ、腰回りは少し大きかったので、皮で出来た帯を締めてもらい、ずれ落ちないようにした。
一応、これらの着物も、魔物の素材で出来ているらしく、今まで着ていたものには劣るが、身体能力向上など、いくつかの付与効果があるとのことだ。
だが、今日は闘うのではなく遊びにいくのでそこまでの心配はしていない。一応、刀は持っていくつもりだが、と専用の器具を取り付けて刀を腰に差した。
すると、タクマは何故だかクスっと笑う。
「ああ、それですと、海賊のようになってしまいますね」
「そうか……ただ、冒険者と言えば、そう見えるだろ?」
「まあ、そうですね。腕輪もありますし……」
それでもタクマはクスクスと笑うのを辞めない。恐らくだが人相が悪いということを言っているのだろう。
流石にこの辺りはどうすることも出来ないので、今日は出来るだけ愛想よくいこうと思った。
その後、起床したメリアと、朝めしを作り終えたツバキとリンネも居間にやってくる。リンネには似合っていると言われたが、メリアとツバキには、タクマと同様に海賊みたいだと笑われた。流石、親子である。
「はあ……陸に居る時は、山賊と呼ばれ、海に行けば海賊呼ばわりとはな……」
「まあ、親御さんが、山賊ですからね……」
ツバキは斬鬼を手に取りながら、クスっと笑った。お前の所為でこうなったんだぞと、斬鬼を小突く。心なしか、その中に宿るエンヤもニカっと笑っている気がしてきて、逆にイラっとした。
「ところで、ザンキ様。海で泳がれる際はどうするのですか?」
「どうって、このままだろ。裸になるわけにもいかねえからな」
まあ、俺は泳ぐ予定は無いにしても、一応、着替えとなる服も一応持っていくつもりだ。海で泳ぐということも、あまり無い……というか、無いな。
海に面した玲邦、興那の出身であるエイキやゴウキに、波があるから湖や川よりも気持ちが良いと、誘われたことはあったが、結局行かず仕舞いだ。
今日はリンネも居ることだし、時間があれば泳ごうとも思っているので、着替えは用意してあると言うと、ツバキは首を傾げる。
「あの……水着はどうなさいますか?」
「水着? 何だ、それは?」
「海などで泳ぐための衣服です。ご存じないので……?」
キョトンとするツバキ。何故、さも当たり前にあるかのような顔をしているのだろうかと、疑問に思ったが、タクマ達も同様に少し驚いた顔になっている。ふむ……こちらの世界にはそういうものもあるのか。
俺の世界では泳ぐとき等は、行衣か、湯浴み着、もしくは褌一丁とかだったからな。水場で泳ぐためだけの衣服など無かった。もしくは、安備に無かっただけで、興那や玲邦にはあったかもしれないが、俺が知らないだけなのかも知れない。
そう言えば、ソウブに行った時に、そんな感じの格好をしていた漁師を見たような気がする。下着姿で歩いているとか言ったら、あれは違いますとツバキに呆れられた記憶がある。あのことか……。
なるほど、と納得していると、ツバキはクスっと微笑んで嬉しそうに口を開く。
「ちなみに私は、今日はこちらを持っていきます」
と言って、ツバキが取り出したのは、筒状になった布と、ハクビが履いていたような、大事なところは隠されるが、太ももから下は全て見えるという。よく分からない形状の、履物だった。
普段では着ないようなそれを、今日は着ることが出来るからなのか、ツバキは嬉しそうにしている。
「お前はそういうのが好きなのか?」
「行衣よりは動きやすいので」
「敵に襲われたらどうするんだ?」
「今日は闘いに行くわけではありませんし、スキルもありますから大丈夫です。というか、普通の女性も、このような恰好を致しますので……」
「まあ……そうだよな……」
俺も、今日はいつもよりも軽装だ。闘いの用意などはしていない。これはこれで良いのかと納得していると、ツバキは更にクスっと微笑む。
「ザンキ様、以前、湖で遊んだ際に、私の格好に色々と文句をされてきましたが、今日はよろしいので?」
「あ? ……まあ、それくらいはな。そういう格好の奴は冒険者にもよく居るようだからな。ただ、お前のそういう姿はあまり見たことが無かったから、少し驚いた」
「フフッ。私の新しい一面を楽しみになさってくださいね」
どんな一面なのだろうか。特に気にはならないが、以前、ゴウキが言っていた、海という場所は、解放的な気持ちになれる、という言葉を思い出して、少々呆れつつも、楽しみにしていると、ツバキに頷いた。
ちなみに、メリアも水着を持っていくとのことだが、ツバキのものよりも、扇情的なものだったので、辞めさせようと思ったが、先にタクマが珍しく、優し気な口調で真っ向から否定していたので、メリアは少し地味なものを持っていくことになった。
流石夫婦だなと、俺とツバキは笑っていた。
……いや、ツバキは笑ってんじゃねえ。子供なら、親が危ない恰好するのは止めろって。
リンネは、コモンが作った、依頼に取り組む用の武闘着を着て泳ぐらしい。一応、身体能力向上の効果もあるみたいだからな。頑張って泳げるようになりたいと意気込むリンネを皆で撫でた。
その後、朝めしを食べて、色々と用意を整え、俺達は家を出る。
そして、俺はリンネを肩車して、ツバキ達と共に、最初に船を確保するために、ツバキの友人であるハンナが居る市場を目指した。
「急に言って、出してくれるものなのか?」
「大丈夫だと思うわ。元々、観光客向けに、海へ出るってこともしてるからね」
メリアによると、ハンナ等、ここの漁師は、漁や市場での店を営むかたわら、船に釣り人を乗せたり、近くの無人島などに休暇を楽しみに来た観光客を連れて行ったりと幅広い商売を行っているそうだ。
一応、ハンナの家では、父親とハンナが漁など海の仕事を行い、母親が市場の仕事をこなしているという。先日は、海での仕事が昼から無かったため、ハンナは市場でも作業をしていたらしいが、基本的に漁は、昼前には終わっているということで、これから市場に向かい、隣接する港にてハンナを探して、船を出してもらうという。
「どのくらいかかるのだろうか?」
「お金? そうね~……銀貨三枚くらいだったかしら。あ、でもね、その場で釣った魚とか、魚型の魔物を捕まえて、船主さんに船賃代わりにするって手もあるわよ」
なるほど。あくまで、釣りだけを楽しみたい客向けの形式だな。釣果が小物ばかりなら、数を稼がないといけないが、大物だと一匹で、船賃免除ということもあるらしい。
それをタダで受け取って、後で市場で売れば、大儲けだもんな。よく考えられた制度である。俺だったら、銀貨三枚渡した方が良いな。
ただ、この制度はなかなか面白いと思う。釣れば釣るほど、俺達にとってはお得だからな。それに船主にとっても、自分は仕事をせずに、勝手に市場で売り出す商品が増えるということになるので、嬉しいはずだ。
「じゃあ、今日は出来るだけ金は使わないように、楽しむとするか。タクマ、頑張って大物を釣るぞ」
「良いですね。頑張りましょう!」
「リンネも、泳ぎに慣れたら魚でも捕まえて来いよ。その時はたくさん褒めてやるからな」
「ほんと!? じゃあ、リンネ、がんばる!」
うきうきとした様子で、俺の肩の上で踊るリンネ。期待していますと、ツバキと、メリアもリンネを撫でながら、俺達はマルドの街中を進んでいった。
そして、人が多く行き交っている大通りの先にある大きな市場に辿り着き、一昨日ここで買い物をしたメリアとツバキの案内で、ひとまずハンナの家族がやっている店へと向かった。
そこかしこに並ぶ、水揚げされた魚や、魚型の魔物の切り身などが入った箱を見ると、リンネは俺の肩から手を伸ばす。
「こらこら。売り物だから、触るんじゃねえ」
「おいしそ~……」
「どれも近海で獲れたものだからね。ひょっとしたら、リンネちゃんも捕まえられるかも知れないよ」
「ほんと!? じゃあ、がんばって、およがなきゃ!」
タクマの言葉に、リンネは目を輝かせる。今日の昼飯はお前にかかっていると、少々圧力をかけると、おししょーさまもたくさんつらないとだめだよ、と逆に圧力をかけられたので、可笑しくなり笑っていた。
その後、メリアとツバキは市場の中の出店の前で立ち止まる。すると、作業をしていた中年の女が、二人を見て、ニコリと笑った。
「あ~らあ、メリアちゃんにツバキちゃん、いらっしゃ~い!」
「こんにちは、マーマイさん」
「なに? 今日もうちで買い物してくれるの~? 嬉しいわあ~」
「いいえ、今日は家族で遊ぼうと思ってね。ハンナちゃんはどこ?」
店にはハンナという女の母親しか居ないようだ。メリアの言葉に、首を傾げるマーマイは後ろに居た俺達に視線を移す。
「あら、今日はタクマ君と……誰?」
俺と目が合うと、更に首を傾げるマーマイ。少し、不審がるような顔をしている。
すると、ツバキが俺を指して、口を開く。
「こちらは、私がお世話になっている冒険者のザンキさんと、娘さんのリンネちゃんです。私の里帰りのついでに、モンクに行きたいとの事でしたので、一緒に来ました。
今日は私達家族と一緒に、少し遊ぼうということで……」
ツバキの紹介に、マーマイはなるほどと納得した様子で頷く。俺の娘という設定になったリンネは目を輝かせて、肩の上から俺の顔を覗き込んできた。俺は、内緒にしていようなと笑うと、リンネは嬉しそうに頷く。
すると、マーマイは俺のそばまで来て、リンネの頭を撫でながら朗らかに笑った。
「冒険者さんだったのねえ~。てっきり、ツバキちゃん達を脅している海賊さんかと思っちゃったわ。海賊にしては可愛らしい女の子を連れていると思ったけどね」
「大きなお世話だ」
む……この格好をしていると、どんな人間もそう見てくるのか。いつもの格好でも別に良かったのではと、今更ながら頭を掻く。
「それで、マーマイさん。ハンナちゃんは、今日は休みなのですか? 釣りをしようと船に乗せていただきたいのですが?」
「あ、タクマ君。え~っと……ハンナは父ちゃんと一緒に港で水揚げをしているはずよ」
マーマイの言葉に、ツバキ達は頷き、その場を後にした。離れ際に、たくさん釣れたら、うちに卸してねと言うマーマイに俺達は手を振って頷く。
すると、ツバキが俺の横に立ち、クスっと笑った。
「すみません。少し、嘘をついてしまいました」
「気にすんな。即興にしては良かったぞ。なあ、リンネ?」
「うん! おししょーさまは、きょうだけ、リンネのととさま~!」
リンネは俺の肩の上ではしゃいでいる。結構嬉しかったらしい。
言葉を話すようになった当初、リンネは、父親という存在がどのようなものか分からないから、俺のことを「おししょーさま」と呼んでいると、チャン達に聞いたことがあったが、あれから、ジゲンの姿を見たり、ここ最近はツバキの家族を見ながら、父親というものがどういうものかを理解してきたと感じる。
いずれ、俺のことを自然に「ととさま」と呼ぶ日も来るのだろうかと、心のどこかで期待した。
さて、そのまま市場を抜けて、すぐそばにある船着き場にて、タクマとツバキはキョロキョロを辺りを見渡していた。数隻の漁船が、獲れた魚を揚げていたり、大きな客船のような船からは、多くの人間が下りてきている。
リエン商会のような、倉庫もいくつか並んでいる。倉庫それぞれには紋章が描かれているが、見たところ二種類しかない。恐らくどちらかが、マルド商会で、どちらかがターレン商会なのだろうなと思いながら、それらを眺めていた。
レイヴァンの港ほどではないが、ここでも多くの作業員が船から荷物を下ろしたり、船に荷物を積んだりしている。
リンネと共に、港を眺めたり、間近になった海を見ながら遊んでいると、ツバキが、あ、と言って、俺の肩を叩いた。
「見つけました。行きましょう」
「おう」
「は~い!」
リンネは俺の肩から飛び降りて、地面に立つ。
そして、ツバキと手をつないで、ニコニコと顔を覗き込んだ。ツバキもフッと笑い返し、タクマとメリアの二人と共に、一隻の船に近づいていく。
そこでは、恰幅の良い中年の男と、褐色肌の若い女の二人が作業している。よく見ると女の方は、冒険者の腕輪をしており、手にした異界の袋から、魚を出しては側の荷車に置かれた複数の箱の中に入れていく。男の方は、漁の成果でも記録しているのか、魚を眺めながら、紙に何かを書いていた。
「親父~、これとこれはどうする?」
「ん? ああ、お前が獲った、二頭ウツボか。バラして店に並べておこう。それより、依頼の方のやつは分けてるか?」
「大丈夫だ。それは分けてるよ。あと、問題なのは、金剛シャコ貝だな。うちで出す?」
「いや……うちに来る客はこんなの買わねえだろ。リーマさんの所にでも持って……ん? お、ハンナ、お前に客みたいだぞ」
「は? ……あ! ツバキちゃん!」
水揚げの作業をしていた二人は、俺達に気が付くと、作業の手を止めて女の方がツバキに手を振る。ツバキはクスっと微笑み、女……ハンナに近づいていった。
「おはよ、ハンナちゃん。ちょっと、良いかな?」
「ああ! 親父、良いよな?」
「ああ。残りの作業は俺がやっておく」
ハンナの父親は、異界の袋を受け取り、作業を再開させ、ハンナはニカっと笑いながらツバキと手を合わせていた。
「驚いた~。今日も、買い物?」
「ううん。ちょっと、ハンナちゃんに用事があって……」
「用事? ……って、タクマさん達も居るな。それに……」
ハンナは、タクマ達に小さく礼をした後、その後ろに居た俺と、ツバキのそばに居るリンネを見てキョトンとした。
「ツバキちゃん、この子は? それに、あの海賊みたいなおっさんは?」
ハンナの言葉に、ツバキとタクマ、それにメリアはクスっと笑った。俺は、もう特には気にしなかった。
「あちらの方は、私がクレナでお世話になっている冒険者のザンキ様、そして、この子はザンキ様の娘さんのリンネちゃんよ」
「よろしくー!」
ツバキの紹介にリンネは片手を上げて、ニコニコとハンナに顔を向けた。マーマイ同様、ハンナと、ついでに後ろで作業をしていた父親の方も、ああ、なるほどと頷いた。
「そっか。それで、今日はどうした?」
「うん。今日はね、皆でお休みにして、海で遊ぼうかと思って。ハンナちゃん、船出せる?」
「急だな……ちょっと待ってて」
ツバキに頷いたハンナは、そばに置いてあった船に乗り込み、そこに置いてあった書類のようなものを覗き込んでいる。そして、頷き、ツバキに明るい顔を向けた。
「大丈夫だ。今日は一日、予約なし!」
「本当!? じゃあ、良いかな?」
「ツバキちゃんの頼みならもちろん! ちゃちゃっと仕事を終わらせるから待ってて!」
ハンナは、そう言って、作業を再開させた。父親の方が、別に良いのにと言っているが、二人でやった方が早いと、手際よく、魚を分けていくハンナ。なかなかな孝行娘だなと感心しながら、俺は近くにあった長椅子に腰かける。そばでは待ち時間の暇をつぶすように、リンネとツバキが遊んでいた。
タクマとメリアは、ハンナ親子と何か話しているようだった。
「いきなり来て、すみませんでしたね……」
「気にすんなって、タクマ君。いつも世話になってんだからな。それよりも、ツバキちゃん、美人になったなあ、メリアちゃんに似て」
「ええ、本当に、ね」
メリアはタクマと顔を見合わせながらクスっと笑った。まあ、娘がこれだけ美人なら、普通に嬉しいよなと聞き耳を立てていると、ハンナは、ジトっと、メリアを眺める。
「おばさん、それ、自分で言ったら――」
その瞬間、メリアは、ハンナを笑顔で見つめた。笑顔だが、何となく黒い波動を醸し出しているように見える。
「……おばさん?」
「い、いや、メリア姉ちゃん、何でもない……にしても、今日はあんなおっさんも居るのか。親子水入らずが良かったんじゃないの?」
まるで話を逸らすように、ハンナは俺を指さしている。リンネはまだしも、この中に俺が居るということに違和感を抱いているようだ。
まあ、俺も端から見たら、そう思うよなあと頭を掻いていると、タクマ達は口を開く。
「それは問題ないわ。何せ、ザンキさんは、ツバキが呼んだんだからね」
「ああ。だから僕たちも気にしないよ。寧ろ、更に楽しくなったかな。それにね……」
タクマは、ハンナと、ハンナの父親に近くに来るように促す。二人が、何だ? とい顔で近づいていくと、タクマとメリアは、コソコソと話し出した。
すると、二人は、え!? と言って、目を見開き、こちらを見てくる。タクマ達の顔を見ると、ニヤニヤと笑みを浮かべている。
……あの二人、余計なことを言ったな……
俺がため息をつきながら頭を抱えていると、タクマは更に続ける。
「今日は二人にとっても良い一日にしないといけませんね」
「そういうことなら……ハンナ、今日はたっぷりと面倒を見てやれ。店のことは俺と母ちゃんに任せな」
「わ、わかった……にしても、ツバキちゃん……どんな趣味してんだ……?」
ハンナは、未だにため息をつきながら、ツバキにどこか、憐れむような視線を投げる。それに気づいたツバキは、不思議そうな顔をしながらも、ハンナに手を振る。
何となく、タクマ達の会話が聞こえていなかったようで安心した。俺が頭を掻いていると、リンネが、俺の顔を覗き込んで、ニコ~と笑っていた。
「おししょーさま、きょうはたのしくなりそうだね」
「お前……聞こえていたのか?」
元気に頷くリンネ。念のためと思い、聞こえてきたことはツバキには内緒だと言うと、リンネは、どうしようかな~、と言いながら、タクマ達の方に駆けていく。
身近なところに思わぬ伏兵が居たと思いながら頭を掻きながら、皆の輪の中に入って、ハンナに自己紹介しながら、置いてある魚の種類を尋ねたりしているリンネを眺めていた。
すると、なおも首を傾げながら、ツバキが近づいてくる。
「皆、何かあったのでしょうか?」
「さあ……まあ、今日は、楽しい一日になりそうだぞ?」
「へ? ……は、はあ、そうですか……では、私達も、行きましょうか」
ツバキに頷き、俺もタクマ達の方に向かった。
未だ、クスクスと笑っているタクマとメリアにため息をついていると、しっかりやんな、とハンナの父に背中を叩かれる。
ハンナの方は、今日の予定を説明していくツバキに、少し戸惑いながら頷いていくがチラチラと俺に視線を移していたことを、俺は見逃さなかった。
海の上ではしっかりやってくれよと、更にため息をついていた。




