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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
世界の真実を知る
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第252話―最近の闘鬼神を知る―

 ガヤガヤとする中、たま達が作った飯を食べ、あの湖の水から作られた、大銘水を飲んだ。

 ……美味い。前よりも、あっさりとした舌当たりながら、米の香りは前よりも一層強く、鼻を通り抜けていく。


 ただ若干、料理によっては、味を打ち消し合い、合わないなと思うものもある。しかし、うちの料理は、いつも多種多様。合わない料理には、別の酒でと思い、違う徳利から他の酒を注いで、更に飯を食っていく。


 ……あ、ヴァルナとアヤメが、酒を飲みながら目を白黒させている。そして、満足げに大笑いし、そのまま二人で更に飲んでいるのが見える。隣からコモンと、ジゲンがほどほどにと言っているようだが、聞く耳を持っていないようだ。


 それぞれ、天宝館の若い職人と、シロウを巻き込みながら、向こうで酒盛りを始めている。俺と同じく、元々の大銘水が好きな二人には、やはり大いに喜ばれたようで俺も満足だ。


そして、ジゲンもコスケや牙の旅団、ナズナを含めた高天ヶ原の妓女たちと美味しそうに酒を呑んでいる。あまりに美味しそうに飲むので、たまと、何故かショウブが、徳利に手を伸ばそうとしているが、ジゲンと、ナズナに止められていた。

どうやら、ショウブは酒に弱いらしい。不貞腐れるたまとショウブに、リンネが駆け寄り、森で採ったのだろうか、甘い木の実を渡している。

 たまの方は喜び、機嫌を直したようだが、ショウブは未だ機嫌が悪そうに、そっぽを向く。だが、ここから、凄く喜んでいる顔が見えて、安心した。


 湖の水質を変えるということで、どうなるかと思ったが、結果良ければ全て良し、そう思い、更に酒を飲んでいると、隣からリアの呆れる声が聞こえてくる。


「頭領、呑み過ぎじゃない?」

「こんなもん、俺にとってはほぼ水だ。それに美味いのだから仕方ないだろう。なあ?」


 そう言って、ダイアンの肩を叩く。ダイアンも徳利から酒を注いでは、赤ら顔でニカっと笑って頷く。


「そうだぞ~! こんな美味い酒を飲まねえなんて、もったいない! お前らも頭領見習ってもっと飲んどけって!」


 ダイアンは、そのままリアとカサネの盃にも、酒を注いだ。二人は、呆れながらもしょうがないなあという顔で、受け入れている。


「ささっ! 頭領も!」

「お、すまねえな……」


 空になった俺の盃にも、酒を入れて、ダイアンは満足げに再び酒を飲み始めた。何となく察しは付くが、もう酔い始めているようだ。少し心配にはなるが、以前のように喧嘩を売ってこないだけありがたいと思い、俺もダイアンと共に、酒を酌み交わした。


 そうしていると、隣で酒を飲みながら、カサネとリアの話す声が聞こえてくる。


「ふう……ですが、こうやって皆さんと美味しい料理とお酒が呑めるとは、あの時は思いませんでしたね……」

「あら、私は思っていたわよ……頭領がいたからね」

「む……そう言われると、まるで私が頭領を信じていなかったと言っているように、聞こえますが……」

「そんなこと言ってないでしょ。私は信じていただけよ……」


 フッと笑って、酒を飲むリア。何だか納得がいかない様子のカサネは、そんなリアをジトっと見ている。

 なかなか微笑ましい光景だなと二人を眺めていると、カサネと目が合った。すると、カサネは慌てた様子で口を開く。


「ち、違いますよ! 僕だって、頭領のことを信じていましたから!」

「何も言っていないが?」


 そう言うと、ハッとしたカサネ。そのまま黙り込んでしまった。面白い奴だなと思い、俺は笑った。


「まあ、なんにせよ、またこうやって飯を囲むことが出来て嬉しいのは俺も一緒だ。三人とも、大きなケガなどしなくて本当に良かった。特にリアは、ここに帰ってきたときはボロボロだったのに、傷痕も残っていないようだからな。安心するよ」

「それは……まあ、薬と、ジェシカ様のおかげね……」


 見たところ、大きな傷跡はどこにもない様子のリア。身を預かる者として、嫁入り前の娘の身体に傷を残すというのはいかないからな。

リアの言うように、他の者達も、大きなケガも傷痕も残らなかったことは、本当にジェシカに感謝だな。


「カサネもそんなに落ち込むなって。お前も、よく帰ってきてくれたよ」


 未だシュンとしているカサネに盃をかざすと、カサネは小さく頷き、自らの盃を俺にかざした。


「ええ……ありがとうございます」


 そして、フッと笑うと、そのまま酒をくいっと飲んだ。機嫌は直ったらしい。


「さて、湿っぽくなりそうな話はまた今度だ。お前らは今どんなことをしているんだ?」


 この際に、最近の闘鬼神の動きを把握するため、三人に聞いた。それぞれ、街の修繕だったり、討伐依頼をこなしているということは聞いていたが、具体的なことはよく分からないからな。

 三人は俺の質問に頷き、口を開く。


「まあ、前とあまり変わらないっすよ。雷帝龍様や、神獣様、それにレオパルド様と一緒に、クレナのあちこち行って、魔物をちょこちょこ倒しているくらいっす」

「ほとんど、雷帝龍様たちの露払いみたいな感じだけどね」

「ですから最近は、皆さんも、街に残る方と、外に出る方と分かれるようにはしています。ただ、レオパルド様だけは、外に出ることが多いですね」


 ああ、やはり魔物の討伐に関しては、カドルとトウガ達が居れば、余裕なのか。闘鬼神の皆は何をしているかと言うと、カドル達が打ち漏らした魔物を狩ったり、対象の魔物を見つけたりすることくらいだという。

 うちの冒険者たちは小間使いじゃないんだがなと呆れた。

しかし、それはカドル達も思っていたことだそうで、最近はなるべく冒険者たちが前に出て闘うように工夫してくれているそうだ。


 そして、たかだか中級くらいの魔物を倒すのに、わざわざ全員が出る必要は無いということで、外に出る神獣と街に残って働く神獣に分かれているそうだ。主に、トウケンが街の修繕に残ることが多く、更に、今日はカドルも残ったという。

 ただ、どちらにせよ、神獣達が外に出ると、何かとややこしいことになるので、レオパルドは、常に外に出て闘鬼神たちと行動を共にしているとのことだった。


「なるほど……では、街に残っている者達は何をしているんだ?」

「今は、妓楼の再建が主っすね。住民の家はほぼほぼ完全に仕上がっているそうです」

「妓楼が出来たら、天宝館、そして、貴族の家ということになっていたけど、そこは今後もクレナに住む貴族限定ということになったわ」

「アヤメ様と、ジゲンさんが目を光らせるこれからのこの街に、居を構えるという気骨のある貴族は、まだ、名乗り出ていませんけどね……」


 カサネの言葉に、リアとダイアンは、笑って頷く。

 現在最優先で進められている妓楼が完成すれば、今度はコモン達の仕事場となる、新たな天宝館の建設が始まる。これに関しては、自分たちが働く場所は自分たちの手で作りたいということで、天宝館の職人たちとコモンだけで行う。そこからは闘鬼神も基本的には自由だそうだ。

 貴族の家は最後に行うということは聞いていた。が、少し様子は変わったらしい。現在、俺の屋敷近くに、皆とは別に過ごしている貴族たちについては、明日以降、ジェシカが王都に送る。その後どうするかは、不明だ。

 そんな状況で、家を作っても意味がないとして、これからもこの街に住むと、希望を出された時に、作るという方針に変わったそうだ。

 ただ、今まで汚い貴族たちによって、めちゃくちゃにされていたトウショウの里。ここに住む、ジゲンやシロウ達、そして、領主アヤメは、再びそういったことが起きないようにと、その際に、ここを管理する貴族を振るいにかけることにしたらしい。


 しかし、皆の思いに応えるような、いわゆる、汚くない貴族は現時点では居ないようで、そいつらが住む家も作らなくても良いのではないかということになっている。

 確かに住む奴が居なかったら作る意味も無いもんなと、俺も皆と一緒に笑った。


「なるほどな。大体皆の動きが分かったよ。ありがとな」

「いえいえ。ところで、頭領は明日から、どうするのですか?」

「ん? まあ、お前らと一緒だな。レオパルドたちと一緒に、討伐の依頼をこなすつもりだそれしか出来なさそうだからな」


 俺がそう言うと、確かに、と笑うカサネとダイアン。不器用な俺が、街の復興に携わることが出来ないというのは、この屋敷を建てるときからすでに分かっているといった風の二人。若干腹が立ったが、何も言えないので黙っている。

 すると、隣でぼーっとしていたリアが意を決したように頷き、俺に顔を向けてくる。


「だったらさ、頭領たちに私もついていって良いかな?」

「え……」


 突然の申し出に戸惑う俺。一体どういう了見かと聞くと、単純に腕を磨きたいからとのこと。

 なんでも、エンミから貰った弓を使いこなすために、今は少しでも多くのことを経験したいとのことだった。

 それならば、別に俺に着いてこなくても良いのではと言うと、リアはクスっと微笑み、口を開く。


「だって、頭領と一緒に居たら、面白いことが起きそうじゃない?ほかにもいろんなことを教えてくれそうだしね。

 今よりも、もっと強くなるために、私は頭領に着いていきたい」


 リアは、今回の一件で、自分の力の無さと言うものを痛感したようだ。俺からすれば、仕方ないと感じては居たが、雷雲山に一人残され、ダイアンが来るまでの間も、いずれ救援が来ると、心のどこかで甘えていた部分があったと語り、更にダイアン達と合流した後も、二人の呪いを解くことが出来ず、ここを目指して逃げるだけだった自分が嫌だったと語る。


「もう……あんな思いはしたくないんだ。

 この中で一番強いのは、頭領でしょ? だから、私は頭領に着いていきたい。今よりももっと強くなって、皆を護れるように……。

 ……お願いします」


 リアはそう言って、頭を下げる。急な行動に少し戸惑ったが、リアの覚悟を感じ、俺は頷いた。


「分かった。ただ、俺はあまり弓に詳しくない。それ以外の方法でお前を強くしてやるが、良いか?」


 俺の言葉に、リアは笑って頷いた。詳しくないと言うか、得意ではない。出来ないことは無いが、リアに教えられるほどでは無いだろう。

 ただ、コイツには、別のやり方で強くさせたいと思っていた方法がある。丁度いいから、この際に教えておこう。


 さて、強くなりたいと言って、俺に着いてくることを申し出てきたリア。こちらについては問題ない。

 しかし、残る男二人は、俺に着いていくなんてすごいなという目で、リアを眺めていた。


「……で、お前らはどうする?」


 そんな二人に、俺と一緒に来るかと尋ねると、二人はう~んと、悩み始めて、首を横に振った。


「いやあ……頭領に着いていきたいという気持ちは分かるが、俺達は今、別に稽古をつけてもらっているからな……」

「ええ、毎日くたくたです」

「稽古? 誰に?」


 二人は苦笑いしながら、牙の旅団を指さす。聞けば、討伐に出たり、街の修繕をしていて、時間が余ったときなどに、牙の旅団の皆と、闘鬼神で鍛錬しているという。

 先ほども言っていたように、やはりカドルやトウガ達、それに牙の旅団が一緒に動くと、あっという間に魔物たちを倒してしまい、かなり余裕があるということで、暇つぶしにと始めたらしいのだが、元々クレナ最強の傭兵たちに手ほどきを受けているので、皆苦労しながらも、着実に力をつけているという。

 ちなみに、ダイアン、カサネ、リアは、依頼先からここまで闘いながら帰ってきたということもあったり、特にダイアンなどはデーモンロードなどの強大な敵に立ち向かい、精神的にも強くなった為か、それぞれ、得意なスキルの熟練度が大幅に上がったという。

 具体的には、ダイアンは狂気スキル、カサネは隠蔽スキル、リアは眼力スキルと、砲術スキルが若干上がったという。

 ただ、未だに極めるまでには至っていないので、牙の旅団の修行には積極的に参加しているそうだ。

 ふむ……コウシ達が皆をいじめているわけではないことに安心した。それに、俺と皆との間には大きな差がある。ゆっくりとその差が埋まっていくのなら、その方法が良いだろう。

そもそも、俺は人にものを教えるのがあまり上手くないからな。ダイアン達は、このまま、奴らに任せておこう。


「だが、それだとリアも、エンミに教わった方が良いのではないのか?」

「一応、頼んでみたけど、断られたわ。エンミさん、意外と忙しいみたいだし……それに、その弓はもう、貴女のものだから、貴女なりに使いこなしてね、って言われて」


 つまりは、丸投げだということか。エンミはシズネと共に、この屋敷でたま達の手伝いをしていることが多い。これだけの人数の為の飯の用意や、屋敷と裏の洞窟の掃除など、ここでの仕事もかなり多い。

 ……むう、そういうことなら、俺の方もたま達の仕事について少し考えなくてはいけないな。あまり、皆に負担はかけたくないし。

そろそろ、毎晩ここで宴会するというのも、辞めさせるか。


 ……いや、皆が喜んでいるところ、それは申し訳ないな。当初の予定通り、妓楼の完成までということにしておこう。一応、皆からの不満も聞かないからな。


 まあ、そんなこともあり、エンミはリアに弓の使い方などを教えることが出来ないということになっている。それなら暇なリアを、俺達が連れまわしても良いということになるのか。


 さて、ということで、明日はリアも俺達に同行する、他の奴らは今まで通りに動いてもらう。

ただ、リアのように進んで俺達についてくるという者が居れば、今後はそのようにしようと言うと、ダイアンは頷き、皆に広めると笑った。

 その後、現在皆はどんな魔物を狩っているのか聞いてみた。すると、強くてオウガやトロールなどの上級くらいだという。

もしくは、中級の魔物の群れだ。超級以上は今のところ確認されていないらしい。

 アヤメによれば、魔物の数自体が、この一週間ほどで激減しているという。ケリスが死んだ影響か、カドルやトウガ達が居る影響なのか、はたまた、今回の一件で異変を感じた魔物が、クレナから移動したのか、それは定かではない。

 近隣の領と連携を図ると共に、近々大規模な調査隊を編成し、領の調査を行いたいとのことらしい。

 無論、調査隊として登録されている闘鬼神の協力も欲しいということだ。


「ふむ……今回は、その調査依頼からとんでもないことになったのだが、お前らは大丈夫なのか?」

「おう! むしろ、あれで何でもできるって自信がついたっす!」

「なら、良いが……」


 まあ、流石に、そう何度も変なことがあってたまるかと、ダイアン達に頷いた。今日獲ってきた迷彩龍の装備は、それまでに、皆に行き渡るようにしてもらおう。


 さて、ダイアン達とこれからのことについて話していると、色々な事が分かってきた。こういうのもなかなか悪くないなと思っていると、突然背中に、何かが覆いかぶさってきた。


「おししょーさまー! あそぼー!」


 どうやら、食べるのに飽きたリンネが遊んでほしくてここまで来たらしい。もう少し、皆と色々話したいと思っていた俺は、リンネに振り向く。


「悪い。今はちょっとコイツらの話を――」


 リンネの頼みを断ろうとすると、俺の言葉を遮り、三人は口を開く。


「あ、良いっすよ、ご自由に~」

「こっちはゆっくり、ご飯食べているから……」

「僕らは、頭領とリンネちゃんを眺めています」


 そう言って、ダイアン達は思い思いに料理を食い出した。呆気に取られていると、ニコ~っと笑っているリンネが目に入る。


「あそぼ~!」

「はあ……わかった。何しようか?」

「おりがみ、おしえて~!」


 リンネは懐から、綺麗な紙を何枚か取り出した。聞けば、ジゲンにも何か教えて貰って、最近ハマっているそうだ。


「折り紙か……あまり得意ではないんだが……切り絵なら出来るんだがな……」

「きりえってなにー?」

「紙を折って何かを作り上げるのが折り紙で、切り絵は何かの形を切り取って紙に絵を描くというものだ。はさみか、小刀か持ってないか?」

「……もってない」


 リンネは、自分の身体を調べながら、残念そうにしている。ふむ、ここまで話しておいて、やらないというのは、少々可哀そうな気がしてくるな。部屋に取りに行こうかと思っていると、横からリアが肩を叩く。


「はいこれ」


 リアの手には少し先が細くなっている小刀が握られている。何で持っているんだろうかと思ったが深く気にせず、リアから小刀を受け取った。


「ありがとう……さて……」


 俺はリンネから、白地に花の柄が描かれている紙を受け取り、そのまま切り絵を始める。下書きは要らない。何となく頭の中に浮かんでいるように、紙に小刀を入れた。

早彫りのように、宙に投げるわけではない。きちんと卓の上に置いて、ひたすら紙を切り抜いていく。

 リンネは俺の作業をじいっと見ている。ふと気が付くと、ダイアン達も俺の手元を覗き込んでいるようだ。


 切り絵に関しては少し自信がある。そこまで披露したことは無いが、何で、これに関しては器用なことが出来るんだと、昔エイシンに突っ込まれた時に、何と言って良いのか分からなかったが、隣でサヤに、


「刃物を使うからじゃない?」


 と、言われて複雑な気持ちになったことを思い出した。確かに、早彫りにしろ、料理にしろ、刃物を使うからな。だからこういうのは得意なのかと、何となく自分の特技が残念に思ってしまった。

 まあ、その時はカンナが純粋に喜んでくれていたから、それだけは嬉しかった。

だから、今回もリンネが笑ってくれるならやろうと思い、俺はなおも、紙に小刀を入れていく。


 そして、しばらく経った後、小刀を置き、一息ついた。


「ふう……出来たぞ」


 俺は切り絵を描いた紙を、黒い紙の上に置いた。すると、俺が切り抜いたところが黒く染まり、絵が完成した。


 それは、俺の世界に伝わっていた九尾の狐の絵。丘の上に立ち、九本の尾を風になびかせて、下界を眺めているという様子だ。

 リンネが成長したら、こういう風になるのかと思い描いてみた。なかなか上手く出来たんじゃないのかと思い、リンネに見せる。


 すると、リンネの目が段々と見開いていき、その絵をまじまじとみだした。そして、パッと顔を上げて、興奮気味に口を開く。


「すごい! おししょーさま、かかさま、じょうず!」


 かかさま? ……ああ、母親のことか。実際に会ったことが無いから分からないが、やはりこんな感じだったのだろうか。


「いや、これはお前の母親ではないのだが……こんなだったのか?」

「うん! にてる! すごい! おししょーさま!」


 ふむ……やはりリンネの親も九尾の妖狐だったのか。ということは、このまま成長するとリンネも九尾になるのかな。

 にしても俺の世界の伝承に準じた想像のものだったが、やはり妖狐というのはどこの世界もこんな姿なのだな。

 リンネは俺の切り絵を大切そうに抱えて、嬉しそうに笑っていた。親のことを思い出して、泣き出したらどうしようかと思ったが、そんなことも無さそうなので安心する。


 ……本当に、リンネは強い子だなと、頭を撫でた。俺は未だに、そんなこと出来ない……。


 すると、それを横から眺めていたダイアン達も、感心したように口を開く。


「おお、これは本当に大したもんっすね……」

「下書きも無しに、こんな短時間で……天宝館の職人にも引けを取らないんじゃないの?」

「こういう時は器用なんですよね……どうしてでしょうか……?」


 カサネの言葉に、ダイアンとリアも確かにと言って、首を傾げる。コイツ等も、俺の不器用なところしかあまり見たことが無いからな。

 俺は、リンネの頭を撫でながら、小刀を手に取り、フッと笑った。


「刃物を使ってるからじゃねえか?」


 その言葉に三人は、ああ、と言って頷いた。


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