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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
世界の真実を知る
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第246話―ツバキの力に気付く―

 その後、皆が風呂から出て、それぞれ部屋へと戻ったり、シロウやアヤメ達は帰宅していった。

 ナズナやコスケを始めとした、花街の者達や牙の旅団、そして、トウガ達が寝泊まりしているという、裏の洞窟とやらに行ってみると、明らかに、外から見た以上の広さを要する空間がそこにあった。


 広間のような足場があり、側面の壁には蜂の巣のように無数の穴が開いている。一つの穴の中を見てみると、畳が敷かれていて、人が寝泊まり出来るようになっていた。


 闘いが終わった後に、コモン達でそのようにしたという。これで、屋敷に入りきらない人数の者達でも、安全に過ごせるようになったようだ。


 呆然としながら、その光景を見ていると、一番奥の方に、球体の黒い魔石のようなものが置かれている。ミサキから貰った亜空間コアだ。


「未だに、この亜空間コアの原理がよく分からないな……」


 隣に居るコモンに、亜空間コアについて、一体どういう仕組みなのだと聞くと、どうもこうも、周りに空間を作り出す特性を持っているとのことだ。

 実を言うと、コイツもよく分かっていないらしい。

 というか、これを生み出した、ミサキもよく分かっていないらしい。自ら編み出した、空間魔法を組み込み、どんな場所でも、ものでも、異界の袋のように、見た目以上の収納能力を発揮するためにしたとのことだが、一から説明すると、複雑な魔法の説明だったり、魔法同士の組み合わせや、調整などで頭が爆発してしまうとのことだ。

 う~ん、と頭をひねった後、ミサキから出てきた言葉は、


「何となくやってたらできた!」


 とのことだった。何となくで、こんなものを作るんじゃねえと笑ってしまうな。それと、同時に、やはり、俺に魔法は合わないなと、ほんのわずかに残っていた魔法への未練が吹っ切れた感覚になった。


 恐らく、神族たちが使っていたという、亜空間を生み出す魔法を何かのきっかけで、再現してしまったのだろう。改めてミサキの底知れなさに脱帽する。


 ちなみに、自然界にこの亜空間コアがある場合はこのように洞窟にあることが多いという。見た目以上に、洞窟の中が広く感じた場合、そこにはこの石があることもあるので、そういう状況になったら、辺りを鑑定スキルで調べてみては、とのコモンからの言葉に頷いた。


 こうして見ると、便利と言えば便利だからな。気が向いたら、また探してみよう……。


 さて、その後、洞窟で夜を過ごす者達と別れ、部屋に戻ろうとした。


 その際に、十二星天の一人、レオパルドが、俺に声をかけてくる。そういや、初めて会話するなと思い、立ち止まり、レオパルドの方を向いた。


「挨拶が遅れてすまなかった。十二星天の“獣皇”レオパルドだ。アンタのことはミサキから話は聞いている。会えて光栄だ」

「こちらこそ。仲間が世話になったな、レオパルド」

「レオで良い。少しばかり、天狼たちと共に世話になるな」

「ああ。ゆっくりしていってくれ」


 俺達はそのまま、ガシッと握手する。ニカっと笑うレオパルドを見ながら、なるほど、サネマサと息が合いそうだな、と何となく思った。

 レオパルドは、トウガ達を指さしながら、口を開く。


「アイツらに聞いたんだが、本当に皆と知り合いだったんだな。どういう関係なんだ?」

「まあ、それについては、おいおい説明する。今言っても、恐らく混乱するだろうからな」

「そうか……天狼たちと、迷い人であるアンタが知り合いってところで、既に混乱しているからその辺りはどうでも良いんだが……まあ、良いや! わかった!」


 トウガ達の関係については、後でシンキと合流した後に皆に話すつもりだ。その方が順を追って話せるので、やりやすいと思ったが、レオパルドが納得してくれたようで、安心した。何とも、物分かりが良い、性格のようだ。

 コイツも、どこか、俺の知っている奴に似ている気がするな。


 そして、レオパルドは、あ! と、何か思い出したように声を上げると、再びニカっと笑う。


「そういや、以前俺の所から、貴族が持ち出したワイバーン、倒してくれたんだっけな。こっちの不手際だったのだが……ありがとな」


 シンキから聞いていた精霊人の森の一件についてのことだ。突然頭を下げられて、少し驚いたが、素直にレオパルドの感謝を受け入れた。


「気にするな。そこはまあ、成り行きってやつだったからな。ただ、改めて精霊人の森に、詫びくらいはしておけよ」

「ああ。最近、どっかの誰かが、簡単に災害級の魔物ばかり倒して、もう一度生態調査の洗い直しをしろと、セインに頼まれて忙しかったからな。それもひと段落したし、ここでの一件が終わったら、行くつもりだ」


 レオパルドは、そう言って、俺の頼みに頷く。

 ……なるほど、つまり俺の所為で忙しかったというわけだな。この野郎、と笑いながら、レオパルドの胸を小突いた。

 だが、軽口は叩きながらも、精霊人の森には行くようなので、安心する。


 その後、レオパルドは大きな欠伸をして、寝所にしている部屋に向かっていった。トウガ達も、またな、と俺に行って、レオパルドに続く。

 俺と、コモンも屋敷に戻り、それぞれの部屋に向かった。


 そして、部屋の襖を開けると、ツバキとリンネが、明日の準備なのか装備を整えている。ツバキは刀の様子を確かめ、リンネはボロボロになった俺の鎧や手甲を、磨いている。

 二人は俺が部屋に入ると、作業を止めて、顔を上げた。


「お疲れ様です、ムソウ様」

「おししょーさま、おかえり~!」


 二人に頷き、腰を下ろした。リンネの前に置かれている鎧や手甲は、意識を失う前はボロボロだったのだが、綺麗に修復してあった。俺が寝ている間にコモンが直してくれたらしい。

 ただ、足りない素材があったらしく、以前よりは強度が落ちているとのことだ。

 ちなみに、替えがある着物はまだ良いが、羽織も同様らしい。これに関しては、取りあえず、見栄えは前と同じにしてくれたらしいが、付与効果などは下がっているという。

 現在、マシロのギリアンに、素材を発注しているとのことで、それが届き次第、修復にあたってくれるとのことだ。

 まあ、鑑定スキルで視る限り、そこまで力が下がっているというわけではないので、問題は無い。


 しかし、ふと見ると、ツバキが手にしている刀は、どこか違和感があった。


「お前の刀、そんなだったっけ?」

「いえ……今回の一件で、どうやら紛失したようで……」


 なんでも、闘宴会に囚われた際に、鎧と共に薄刃刀も奪われてしまったらしく、その後も、発見されないままだという。恐らく、神怒による街の崩壊と共に、ツバキの装備も、破壊されてしまったのではないかとのことだ。

 というわけで、今ツバキが手にしているのは先ほど、牙の旅団のコウシから借りたものだという。初めて使うものなので、念入りに状態を確かめているとのことだ。


「大丈夫そうか?」

「ええ。少し癖があるようですが、気になる程ではありません。

 ……ただ、私としては、やはり前の刀の方が良いですね。こちらは、私には少し重たいです」


 ツバキの戦い方は、速度で敵をかく乱したり、隙を突いたりするものだ。刀が重いと、それも難しくなると言うが、明日は何とかこの刀でも大丈夫だということだ。

 ただ、今後のことを考えると、前と同じような刀を新しく作った方が良いと判断し、街の復興が終われば、コモンとヴァルナに作ってもらうとのことらしい。


「う~む……アイツらには世話になりっぱなしだな……」

「ですね。しかし、ヴァルナさんは、ギリアンさんの刀を超えるものを作りたいとやる気に満ちておりましたので、むしろ良かったのではと思っております」


 ああ、そういうことなら何も、気にすることは無いか。ギリアン曰く、あの刀は強度を保つ限界の状態まで研磨して出来たものと言っていた。そこまでの繊細な作業をして、なおかつ、前の刀を超えるなど、出来るのだろうかと、少し楽しみに思い、ツバキと共に笑った。


「鎧の方は大丈夫なのか?」

「そちらは問題ありません。私にはあの力がありますので」

「ああ、アレね……」


 防御面については、屋敷を護ったあの力があるので大丈夫と微笑むツバキ。詳しくは聞くなと言われたが、一応どんな力なのか、確認してみると、ツバキは頷き、手を前に出した。すると、そこから光り輝く一枚の板上のものが出現する。


「私の力は、このように大小自由に変えられる強力な障壁を生み出すものですね」

「ふむ……魔法とは違うのか?」

「みたいですね。魔法は一つの効果を持った一つの結界しかできませんが、私の場合は、あらゆる攻撃を無効化する障壁を無数に出現させたり、大きな一枚の障壁を作り出すことが出来るようです」


 なるほど。ミサキのように、結界魔法を複数使えるとしても、魔力の量の関係で、多くても、四つの魔法しか、同時に発動できないがツバキの場合は、その上限を超えて、力の在る限り、無数に生み出したり、一つの大きく、強力な障壁を生み出すことが出来るようだ。

 ただ、ツバキはこの力に目覚めたばかりなので、上手く使いこなすことも出来ず、俺が駆け付けた時は、邪神族の男に壊されていたようだがな。

 しかし、これも鍛錬すれば何物にも壊されず、どんな力でも防ぐことが出来る障壁を作り出すことが出来るようになるという。

 他にも、色々と応用が効くようだが、大体の能力は、そのようなところだとツバキは語った。


 話を聞きながら、何となく思ったことを、ツバキに言ってみる。


「まるで、EXスキルだな……」

「え……ムソウ様、鑑定スキルを使ったのですか?」


 ツバキは、信じられないという目で、俺を見てくる。約束を破られたと思い、落ち込んでいるようだ。


「違う。話を聞いていたら、誰だってそう思うだろ」


 そう言うと、ツバキはハッとした様子で、今度はしまった、という顔をして、頷いた。


「そう……ですよね……」

「ったく……というか……やはり……」


 再度確認すると、ツバキは、黙って頷く。改めて、鑑定スキルを使い、ツバキを視てみた。


 ……


 名前:ツバキ

 年齢:18

 出身:モンク

 職業:騎士(マシロ師団)

 種族:人族

 所持武器:魔刀「阿修羅」

 スキル:剣術、武術、心眼、眼力、隠蔽

 EXスキル:護るもの

 技:斬波

 抜刀術

 瞬華

 鬼蜻蛉

 奥義・雀蜂



 ……


 お、薄刃刀が無くなった代わりに、所持武器が、コウシの刀の名前になっている。毎回思うが、どういう仕組みなのだろうか……っと、こんなことはどうでも良い。


 ……やはりかと思い、目を見開く。スキルの所に、EXスキルというものが加わっている。

 これは一体どういうことなのだろうか。EXスキルについては、エンヤや、シンキから聞いて、取りあえず、他の人間の魂に継承できるということは知っている。というか、十二星天はそうやって、こちらの世界に転生、あるいは召喚される際に、EXスキルを与えられたと聞いた。


 ということは、何らかの影響で、ツバキにもEXスキルが誰かから与えられたということになる。

 ……誰だ? かつて、邪神大戦で活躍した、俺の仲間の誰かか、あるいは、その他の奴らか……それに、何がきっかけなんだ?


 思いを巡らせてみたが、まったく見当がつかない。ただ、ひとまずは、ツバキに新しい力が宿り、その力を以て、この屋敷が無事ということは事実だ。それに、今もこうして、ツバキは自由にスキルを使うことが出来ているので、特に問題は無いか。


「……なるほど。また、よく分からないことが起き始めているようだな」

「そうみたいですね。ムソウ様のおそばに居ると、そういうのにも、慣れ始めてきますが……」


 ツバキは障壁を仕舞って、クスっと笑った。ほっとけと言うと、はい、と頷く。


 何にせよ、これなら当面、鎧が無くても何とかなることは分かった。ひとまず、ツバキに宿ったEXスキルについては、後でよく調べることにして、俺もツバキとリンネと共に、明日の準備を行う。


 そして、装備の確認と、荷物の確認が終わると、リンネは、小さな獣の姿に戻り、ツバキと一緒に布団をかぶった。どうやらこの姿の方が眠りやすいらしい。

 それから、普段は気付かないが、獣人の姿や、大きな獣の姿で居続けるというのは、僅かではあるが、力を使い続けているということらしいので、屋敷でも遊ぶときなどは、この姿になって、時々休憩しているという。

 リンネは大きな欠伸をかいて、そのまますやすやと寝息を立て始める。


「やはり、疲れていたようだな……」

「今日は色々ありましたからね。私も……疲れました……」


 そう言って、ツバキもゆっくりと目を閉じていき、そのまま眠り出した。


 俺が起きたからには、もう、あまり二人には負担をかけさせまいと思い、二人に感謝しながら、頭を撫でた。


 その後、部屋の明かりを消して、俺も布団をかぶり、就寝した……。


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