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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
世界の真実を知る
244/534

第243話―久しぶりに家族全員で宴会をする―

 その後、風呂に入りながら、俺は皆にエンヤ達から聞いた邪神大戦の話を聞かせた。トウガはそうでもないが、やはりカドルやジゲンは話の内容に驚きを隠せないでいた。


「ふむ……ムソウ殿が、シンラ殿の父、そして、サヤ殿の夫だったとはな……」

「ああ。まさしく奇縁ってやつだな」


 カドルの言葉に、トウガはそう言った。奇縁か……。確かにそう言われると、おかしなものである。世界を越えて、遠い過去のこの世界を救ったのが、ことごとく俺に関係する者達だったというのは、本当に、奇妙なめぐりあわせだったんだなと感じた。

その中心に居たのが、俺の家族ということについては、未だに俺も、戸惑っているような気分になる。


「爺さんは何か思うところはあるか?」

「……正直なことを言うと……信じられないの一言に尽きるのお……」


 ジゲンは、カドルやトウガと違い、神族、鬼族、人族の三つ巴の闘いである、100年戦争というものがこの世界であったということしか知らない、この世界に生きている者である。

古くから聞かされていたこの世界の歴史の根本的なところが、全て偽りだったということに、なかなか納得できないでいるようだった。


「……じゃが、太古から生きておる天狼殿や、雷帝龍殿がそういうのなら、間違いはないのじゃろうな……」


 しかし、カドルやトウガからの話を聞き、ここで起こったことを思い、ジゲンもこの世界の歴史が変わっていたことに納得した。


「じゃが、初代人界王の父が、ムソウ殿ということは、現在の人界王、オウエン様の祖先もムソウ殿ということになるのか……本当に、ムソウ殿は“規格外”だったのじゃな」


 ジゲンは微笑みながらそう言った。確かに過去の世界でカンナが人界王になり、その後も、その血が絶えていないところを見ると、そういうことになる。

 ただ、カンナにとっては未来の世界に、俺が居るということで、若干複雑だなと思いながら、俺は頷いた。


「まあ、それに関しては、俺も驚いたな……だからって、今更王族に干渉する気は全くないがな……」


 前の世界に居た時と同様、俺はやりたいことを自由にやりたい。仮に、今の人界王がこのことを知ったとしても、俺は冒険者として、この世界で過ごしたいと思っている。

そう言うと、ジゲンはそうか、と朗らかに笑った。


 そんなジゲンを、トウガは、興味深げに眺めていた。そして、フッと笑みを浮かべる。


「ふむ……“刀鬼”と、ムソウは本当に良い仲のようだ。何となく安心する。やはり強き者には、同じく強き者がつどうものなんだな……」

「ムソウ殿と儂では、つり合いがとれぬと思うが……」


 トウガの言葉に、ジゲンは謙遜する。すると、トウガとカドルは、ジゲンの強さについて、邪神大戦の時に生きていたとしても、充分通用するほどの力だと説いた。

更に、全盛期のジゲンならば、カンナやエンヤ、シンキと共に最前線に立つことも出来るほどの腕前だと感嘆する。 

 シンキの言っていたことはやはり本当だったんだなと思っていると、ジゲンは少し、不思議そうな顔をしていた。


「ふむ……儂の力がそのくらいということは、人族の力が衰えているということは無いのだな?」


 ジゲンの疑問は俺も抱いていたものだった。数千年前の戦乱の世に生まれていた者達よりも、平和な時代に生まれた、この世界に生きる者達の力は、衰えているのではないかと感じた。

 だが、エンヤも、シンキも俺やジゲンのような者達は、過去のこの世界でも稀だと言っていた。

しかし、俺も自分でこの世界のいわゆる平均的な力よりも上の力を持っているという自負はあるし、ジゲンだってそこらの冒険者達よりも強いと思っている。リンネの話を聞く限りでは、今回だって、最初から最後まで最前線で戦い、サネマサにも引けをとらず、呪われていたとは言え、コモン、アヤメ、ショウブを一気に相手取ったくらいだ。

あまり参考にはならないと思っている。

 実際の所はどうなのかと思っていると、トウガとカドルは少し間をおいて、口を開く。


「正直に言うと、人族全体の力はそこまで変わっていないはずだ。むしろ強くはなっている。今の時代では、魔物の素材を使用した武具を身に纏い、闘う者が多いからな」

「だが、本当にそれはわずかなものだ。人族自体は変わってはいない。

……しかし、そんなただの人族である“刀鬼”殿が、そこまで強くなっているということを見る辺り、この世界の人間の力の上限は上がっていると、我らは感じている。お主は、もう少しその自覚を持っていた方が良いぞ」


 そう言って、二体は笑った。確かにジゲンはサネマサや俺と違ってこの世界に元々生きている人間で、EXスキルを持っていない。いわゆる素の状態でここまでの力を持っている。

過去の世界でも、邪神大戦で活躍した者達というのは、ことごとく、今で言うところの迷い人だった。

 正直な話、この世界の人間たちは、俺達のような違う世界の人間たちよりも弱くは感じる。

だが、ジゲンの存在により、この世界の人間たちも強くなるという可能性が示唆されている。カドルとトウガ曰く、間違いなくジゲンは、この世界最強の人間だと言いたいらしい。


 話を聞いたジゲンは、自らの手を眺めながら、ゆっくりと口を開く。


「人界最強……か。確かに一度はその称号に憧れたことはあるのう。

……じゃが、実際にそうなっても、出来なかったことは数多くある……」


 少し落ち込んだ様子のジゲン。過去のことを思い返しているようだ。名実共に、最強と謳われていても、結局はケリスの仕組んだことにより、全てを喪った。

どれだけ力を持っていても、空しいだけと何度も思ってきたという。

 そんなジゲンの肩を叩き、俺は笑った。


「それでも、今の状況の為に、今まで頑張ってきたと考えれば良いんじゃねえか? 色々あったが、結果として今のお前には、牙の旅団も居るわけだし、アヤメたちも居る。そして、たまが居る。

……それで、良いんじゃねえか?」


 色々あって、辛いことも多かった人生だったが、今、幸せならそれで良いと俺は思っている。ジゲンには今、かつての親友達もそばに居るわけだし、決して不幸な状況というわけではない。

 今のこの、幸せな時間の為に、これまで闘い続け、最終的に最強と呼ばれるようになったと考えれば、それで良いのではないかと感じる。

 俺と似たような生き方をしているジゲンに、そう言うと、ジゲンは静かに頷いた。


「……まあ……そうじゃの……ケリスも居らんことじゃし、これからは、改めてこの最強の力というもので、皆を護っていくというのも悪くはないのう……。

 ……ムソウ殿、此度の一件……本当に、ありがとう……」


 ジゲンは、ケリスを倒せたことについて、改めて俺に頭を下げた。軽く頷くと、優しくジゲンは微笑んでいる。

いつもと同じ表情だが、どこか憑き物が落ちたというような顔をしている気がする。

 長年、胸に抱えていたものが取り払われたのだ。いくら人界最強と言えども、ジゲンは老齢。本当のことを言うと、これからは、ゆっくりと過ごしてもらいたいものだと感じた。


「さて……皆の話を聞いて、幾つか疑問に思うことがあるのじゃが、良いかの?」

「うむ。構わぬよ、“刀鬼”殿」


 カドルと、トウガが頷くと、ジゲンは口を開いた。


「伝え聞いていた神族というのが、邪神族というのは分かった。となれば、ケリスはその邪神族の末裔ということかの?」


 先ほどから、ケリスって誰だという顔をするトウガに、説明しておいた。ここを襲った首謀者である神人で、神族と人族の間に生まれた種族の末裔であると。魂を操る力を持ち、神怒を起動させ、天門を開き、邪神兵や邪神将、さらには多くの魔物を創造した者であると伝えると、トウガは、カドルを見ながら項垂れる。


「むう……そのような男が居たのか。知っていたか? 雷帝龍」

「いや……ムソウ殿たちからそのような男が居るということは知っていたが、我もここに来て、天門と神怒を目にするまでは、信じられなかったな……」


 トウガ達曰く、邪神族というのは、大戦において全て亜空間に閉じ込めたはずで、大地には一人も残さなかった。だからこそ、カドルは、トウショウの里に着いた時に邪神兵の姿を見て、驚いたという。


「となれば、その時の生き残りがいて、子を成したか、あるいは、既に子を成していて、子孫に邪神族のことを継承させ、自らは封印されたと考えた方が良いのか?」

「いささか、信じられない話だが、そうだろうな……ちなみに、そのケリスという男が確認されたのは、どれくらい前の話なのだ?」

「ケリスが、というよりは、ゴウン家は元からあったように覚えておるのお。クレナに来るまでは、儂もその存在は知らんかったが……」

「てことは、ケリスの親がどんな奴らだったかとかは、知らないんだな?」


 ジゲンは頷く。ちなみに、トウガが王都にある魔獣宴という場所に住むようになったのは、最近のことであるから、王都に居る貴族については詳しくはないとのことだ。

 それまでは、現在ミサキ達が居る、オウキという領の山奥で静かに暮らしていたらしい。

カドルについては、ずっと雷雲山で過ごしていたらしく、こちらも、王都での情勢などは知らないらしい。


 なんでも、カドル達龍族も、トウガ達神獣も、邪神大戦が終わり、鬼族と神族がそれぞれの世界へと向かった際に、大地のことは人族に任せ、自分たちは大地に極力干渉しないとして、それぞれの住処を見つけ、今まで生きてきたらしい。


 そこへ、壊蛇の襲来という人界の危機が発生し、十二星天という、かつての仲間達の力を受け継いだ者達が現れたことをきっかけに、人族と共に、壊蛇に立ち向かったということだ。


 ちなみに、壊蛇の襲来に際し、トウガ達と共に戦ったのがレオパルドということで、奴の持つスキルは、もともとアキラが使っていたものだという。


 そして、カドル達龍族と共に戦った者が、十二星天の“龍心王”と呼ばれる、エレナという少女らしく、その者は、こちらに召喚された場所が、龍族達を束ねていた存在が居た場所だったらしく、エレナがこの世界に来た時から、世話をしていたらしい。

その関係で、大地に干渉しないという龍族達は考えを改めて、ほとんど、エレナの為にこの世界の表に出てくるようになったという。


 エレナの功績が、龍族との和解と聞いていたが、龍族が元から敵では無かったということで、若干おかしいなと感じていたが、そういうことだったか、と納得した。

 ただ、エレナも邪神大戦のことについては知らない。


 これは、ラセツ達との約束を守るべく、事実を封印し、大地に干渉しなかった理由として、ラセツ達が作った歴史のように振舞おうと、その時の龍族の長が決め、カドル達がそれで納得したということになったという。


 さて、というわけで、カドルもトウガも、自身が人界から離れた所で過ごしていたということもあり、人族の動きに関しては詳しくないとのことらしい。


「ただ、そうは言っても、天狼は知っていたのではないか? お主は、現在は王都に住んでいると聞いたのだが……?」


 カドルは何やら疑惑を向けるような目で、トウガをジトっと見る。確かに王都に住んでいるトウガならば、ケリスの存在に気付いたって良いはずだ。

そして、邪神族の存在も知っているのなら、それこそシンキと協力して、ケリスの監視をすることだって出来たはずだと思っていると、トウガは鼻を鳴らし、雷帝龍からそっぽを向く。


「そんな目をするんじゃねえよ。確かに神人が居るって話はレオからも聞いていた。おかしいなとは思ったが、それは神族の末裔であって、邪神族の末裔とは思わなかった。

そんな気配、無かったからな。それこそ、貴族たちと接する機会も多くなったシンキでさえ気づかなかったんだ。俺に気付くわけないだろ」


 ブスッとした表情をして、鼻先でカドルを小突くトウガ。言われると確かにそうだな。最初から邪神族と分かっていれば、シンキだって黙ってはいないだろう。幾つかケリスに制限を付けて監視するということもしたはずだ。


 だが、ケリスの正体には気づかず、自分たちの仲間である神族の末裔と思ったために、シンキを保護という形で誰からも、干渉できないようにして、クレナを任せたと考えた方が良いか。

そういう結論になると、やはりジゲンは表情を暗くする。


「むう……その所為でこちらがどれだけの迷惑を被ったか……」


 若干、怒っているようだ。言いようのない威圧感のようなものが、ジゲンから伝わってくる。

敵討ちは済んだとは言え、やはり、ケリスがトウショウの里で行ってきたこととかを考えると、そう簡単には怒りは収まらず、そして、ケリスが居ない今、そういう状況を作った元凶ともいえる王都に対し、ジゲンは呆れを通り越しているようだった。

 少しだけ張り詰めた空気に、俺もカドルもトウガも少しだけ真顔になり、慌てて口を開いた。


「ま、まあ、その辺りのことは、今度シンキが来るから聞いてみることにしよう。その時に、爺さんから奴に説教してやれば良い。アイツも悪人では無いから、多分これからは、上手くやってくれるさ」


 心の中で、またしてもシンキに謝りながら、ジゲンをなだめると、大きく息を吐いて、気を落ち着かせたジゲンは頷いた。


「そうじゃの……というよりも、そもそもそれが普通のことじゃの……」


 そう言って、ジゲンはフッと微笑んだ。相変わらず怖い爺さんだなと思っていると、トウガが俺に近づき、耳元でボソッと呟く。


「やはり、この爺さんは最強だ」


 伝説の神獣と呼ばれる存在が、人族の老人に具合の悪そうな表情を浮かべている様というのは、見ていてなかなか面白いが、俺も何となくトウガの気持ちが分かり、静かに頷いた。


「さて……次は、コウカ様が言っていたという、初代人界王シンラ、ムソウ殿の奥方、さらにムソウ殿の仲間であった、タカナリという者の魂の場所についてじゃが、天狼殿と、雷帝龍殿も居場所が分からないということで良いんじゃな?」

「ああ。これについては俺達も分からねえ」

「当時、人界のあちこちを皆で探しのだが、結局見つからなかった」


 ジゲンの言葉に、トウガとカドルは重々しく頷く。これについては、シンキも分からないと言っていた。一応、ジゲンにも、事情を説明し、何らかの知恵を借りたいと思っていたのだが、やはり神族でも、鬼族でもなく、ましてや、過去の世界のことなど、今の今まで知ることもなかったジゲンでも分からないかと思っていると、ジゲンはふと、なにかを思い出したように、口を開く。


「……では、魂の気配が無くなる時というのは、どういった時なのか、聞かせてもらおうかの?」

「いくつかあるが、この大地から魂が無くなったとき、例えば、ムソウのように違う世界に渡ったときなどは存在そのものがこの世界に居ないわけなので、気配も感じないな」

「後は、冥界や天界に渡ったときも感じない。実際、恐らく今でも生きているであろうが、ケアル様も、エンマ様もその魂は感じられないな」


 ケアル達については、空間そのものが別のジゲンにあるので、天界も冥界も、一種の異なった世界ということになるので、人界からは魂の気配を感じられないという。

 だが、エンヤが言っていたように、冥界か天界にカンナ達の魂が居るのだとしたら、必ず連絡が来るはずとのことのなので、その線は薄い。ジゲンは一体、何を確認したいのかと思っていると、最後にもう一つ、と言って、口を開く。


「ちなみにじゃが、ムソウ殿の刀である斬鬼に憑りついたと思われるエンヤ殿の魂は、今でも感じることが出来るかの?」


 カドルとトウガは、目を見開き、お互いに顔を見合わせて、瞑想した。そして、ハッとした様子で、慌てて口を開く。


「……いや、感じないな」

「ああ……どうなってんだ? おい、ムソウ、本当にエンヤは、お前の刀に憑りついたのか?」

「あ、ああ。少なくとも、エンヤはそうするって言っていたが……どうなってんだ?」


 魂の回廊から、こちらに戻る際に、エンヤは確かにそう言っていた。しかし、カドルとトウガの言葉に俺も若干動揺した。

 アイツ、来ていないのか? どこか、遠くに行ったのか? などと思い、二体と慌てていると、俺達をジゲンが制する。


「落ち着くのじゃ、ムソウ殿。儂には何となく理屈がわかってきたぞ」

「分かったって……何が?」


 困惑する俺達に、ジゲンは自らの考えを語り始める。特に俺とカドルの方に向き直り、自分が考えていることが正しいか確認するようにいくつか、質問してきた。


「エンヤ殿は元々、ムソウ殿の無間の刀精として、この大地に留まることが出来たという話じゃったが、それは事実じゃな?」

「ああ。アイツはそう言っていたな」

「そして、雷帝龍殿は、あの日、一日中ムソウ殿と闘っておったのじゃな?」

「うむ。常にそばに居たつもりだが……」

「では、その時に、ムソウ殿の無間から、エンヤ殿の魂を感じることは出来たのかの?」


 ジゲンにそう言われて、目を見開く俺とカドル。そして、カドルは首を横に振った。


「そう言えば……確かに感じなかったな。今の今まで、あの大刀にエンヤ殿が憑りついていたことなどみじんも思わなかった……」


 つじつまが合ってきたという顔をするジゲン。そして、俺達を安心させるように朗らかに笑った。


「恐らくじゃが、刀精などのように、新たに肉体以外のものに宿った魂というのは、神獣にも、龍族にも、ましてや鬼族や神族にも感知されないのではないのか? 常にムソウ殿のそばに居た雷帝龍殿が、エンヤ殿に気付かなかったことが証拠じゃ。

後は、シンキ殿もムソウ殿の斬鬼にエンヤ殿が憑りついたことにも気づいておらんかったようじゃしのう。

 つまり、何か物質に宿るために精霊化した魂を感知することなど、元々無理な話なのかもしれん」

「じ、じゃあ、カンナ達の魂は……」

「可能性として考えられるのは、エンヤ殿と同じく、何らかの刀精や、ものに宿っているのじゃろうな。

……ひょっとしたら、行方が分からないとされている他の者達も、そうやって生き延びているのかもしれんぞ」


 ジゲンはフッと笑いながらそう言った。先ほどまで取り乱していた頭の中がスーッとさえわたっていく感覚があり、何も言えなかった。

カドル達も同様に、硬直しながら、ジゲンの顔をまじまじと見つめている。

 しかし、突然トウガとカドルの身体が震え、勢いよくジゲンに詰め寄っていった。


「それだ! 間違いない! その通りだ! “刀鬼”!」

「ああ! 大したものだ! “刀鬼”殿!」


 長く抱えていた謎が解けたと感じた二体は、喜びながら、ジゲンの肩をバシバシと叩く。流石にジゲンが痛そうだったので、やめさせたが、トウガとカドルは、未だ興奮冷めやらないと言った様子で、笑い合っていた。


 そんな二体を横目に、俺もジゲンの考えに感嘆の声を漏らす。


「すげえな、爺さん。よくぞ、そういう考えに至ったな……」

「まあ、きっかけは、刀精の正体について聞いた時に違和感があったでな」

「違和感?」

「うむ。皆は、刀精というのは、その武具に思い入れのある者の魂が宿ったもの、と説明したが、儂の刀は、元々「零の刀」じゃ。「帝釈天」に思い入れのある者は、儂しかおらんはずじゃが、ならば、「死神鬼」はどう説明するのかと考えてのお……」


 ジゲンは、長くクレナに伝わるという、「偶像術」という技を使う。ジゲンだけではなく、アヤメや、ナズナなども使っていたが、あの技は、武具に宿っている刀精を具現化し、その力を行使するという技だ。これまでは、武具にも元々精霊というものが宿っており、その力を大地に顕現させるという技だと思われてきた。

 しかし、エンヤ達の説明では、ものにはそもそも魂など宿っておらず、後から死んだ生き物の魂が、武具に宿った姿を刀精と呼ぶことが分かった。

 ならば、ジゲンの持つ刀の精霊というのは誰なのかという疑問が浮かび、今までに何度も自分の刀精を具現化させて闘ったり、刀精の祠で、実際に刀精を見てきたりもしてきたが、過去のこの世界についても、刀精についても知らなかったことに違和感を覚え、もしかしたら、偶像術で現れる者と、刀精として宿った者は別物と判断したという。


 そして、カドルやトウガがこの屋敷に来て、かなり経つが、ジゲンの刀に宿っている魂に皆は何も気づいていないようなそぶりだったし、シンキと相対した時も、シズネや、アヤメたちも刀精を出したにも関わらず、シンキは何も気づいていなかった。

このことから、神族や鬼族であろうとも、刀精と、精霊化した魂たちというのは、区別がつかないものと推理し、実際のところはどうなのか、現在、カドルやトウガはエンヤの魂を感じることが出来るのかと確認してみたらしい。


 予想は当たったようで、ジゲンは安堵し、先ほどの考えに至ったというわけである。


「なるほど……だが、そうなると、今度は爺さんたちの刀精というのがどういう存在なのか、分からなくなるな」

「まあの。じゃが、精霊の声が聞こえるというコモン君には、儂らの武具の声が聞こえていたようじゃし、精霊ということは間違いないのじゃろうな。

ひょっとすれば、何らかの拍子に憑りついた魂なのかも知れんのお……」


 ああ、確かにコモンは、エンヤの声も聞いていたようだし、アヤメと手合わせした時も、アイツの刀の精霊の声を聞いていた。コモンはまだ、刀精の正体を知らないはずだから、全ての声を精霊によるものと思っているのだろう。

 ジゲン達の刀に宿る魂も、何らかの形でたまたま宿った魂なのかも知れないな……。


「だが、そういうことなら、大体絞れて来るな。当時から残っているものを片っ端から調べれば、いずれ三人には会えるということか……」

「だな!」

「うむ!」

「やれやれ……それがどれだけ大変か、気づいてはおらぬようじゃの。……じゃが、皆の力になれて良かったわい……」


 ジゲンの推理を聞いて、ようやくコウカとの約束が果たされるし、俺も家族に再び会えるかも知れないと感じ、嬉しく思った。早いところ、シンキにこのことを伝えようと思い、トウガ達と喜び合う。

 確かにジゲンの言うことももっともだが、それこそ当時から残っているものなどそんなに無いものだろうと思っているので、案外早く見つかるのではないかと思っている。

シンキとも予想以上に早く出会えたことだしな。それこそ、数千年もかからないと、トウガ達は笑っていた。


 これで、もう心配することは無いだろうなと思い、ジゲンに深く感謝をした俺達は、風呂を出た。

 やはり、この爺さん、恐ろしいだけでなく、非常に頼りになる男だと改めて、感じていた。


 ◇◇◇


 風呂から出た後は、いつものように居間で休もうかと考えていた。しかし、屋敷中どこも大勢の人が居て、休めるという状況では無かった。更には、俺達が風呂から上がることを確認した者達が我先にと、風呂場へと向かっている。

 皆が忙しい時に、ゆっくりしすぎたなと少しだけ反省し、俺達は縁側で涼むことにした。そして、可能性の段階だが、タカナリ達はどんなものに憑りついているだろうか、どこを探せばいいのだろうかと話していると、後ろから声をかけられる。

 振り向くと、そこには、ダイアンと、カサネが立っている。


「頭領、少し話があるんすけど……」


 ダイアンは気まずそうな顔をして、俺の方を見てきた。カサネもダイアンと同様に、何かばつの悪そうな顔をしている。何となく何を言いたいのか察した俺は、二人に笑った。


「何だ? 今回の一件について、謝りてえってんなら、俺は聞く耳を持たねえが……?」


 そう言うと、ダイアンとカサネは目を見開く。


「だ、だが、俺達は頭領を……」

「あんなの、襲ったうちに入らねえよ。正直、皆と手合わせした時の方が苦労した。別に俺は気にしてねえよ」

「しかし! それでは、僕たちの……」

「知るか。俺が気にするなと言ったら気にするな。俺が良いと言えば、それを飲み込め。お前らは、俺の部下だろうが。黙って俺の言うことを聞いていればいい」


 納得していない様子の二人にそう言うと、ダイアンとカサネは口を大きく開けて、俺を見つめてきた。

マシロの時もそうだったが、例え、俺を襲ったとしても、それは呪われていたからだ。

だから、本心から俺を殺したいとは思ってはいないはずだ。そうなると、呪った奴が悪くて、呪われた奴は何も悪くないと思っている。ゆえに、ダイアンとカサネについては何も思っていなかった。


「俺に謝罪を受け入れてほしかったら、もっと強くなって、俺を本気で困らせて、俺の身体に傷をつけて、俺に謝って欲しいと思わせるくらいになってから、ようやく謝罪しろ。……良いな?」


 固まる二人にそう言うと、ダイアンとカサネはフッと笑みを浮かべて頷いた。


「かしこまりました。僕たち……頭領の期待に応えられるように頑張ります」

「あんまり、期待しないでもらいたいっすけど……」


 ダイアンの言葉に、ジゲンやカサネは、そこは頑張れと笑った。だってよ~と言い返すダイアンを指さしながら俺も笑い、二人の方に向き直る。


「何はともあれ、お疲れさん、二人とも。よく帰ってきたな」

「はい……ありがとうございます」

「頭領も、おつかれっす」


 聞けば、女中たちはもちろん、外に出ていた冒険者たちは全員無事だという。

そして、現在この屋敷には、俺含めてすべての人間が揃っている。俺も目が覚めて、ようやく全員が揃ったと、ダイアン、カサネ、そして、俺の代わりに屋敷を守り続けていたジゲンと共に笑っていた。


 その後、二人は女中たちの作業を手伝いに、庭へと向かった。何故だか前以上にアザミにへこへこするダイアンを不思議に思いながら眺めていたが、ジゲン達は何も教えなかった。大したことでも無いと思い、俺もそこまでは追及しなかった。……というか、大体気付いている。

 そういや、もうすぐ春なんだよなあと、皆の光景を見ながら笑っていた。


 さて、そうこうしているうちに、飯の準備が整ったようで、女中たちが皆を呼びに屋敷の中へ入っていくのが見える。すると、ツバキとリンネ、たまが俺の元に来て、手を引っ張った。


「おししょーさま! いこ!」

「おじいちゃんも~!」

「はいよ。行ってやるから、そう引っ張るなって」

「どこへも逃げはせんからのお」


 俺とジゲンはそう言って、二人の手を思いっきり引っ張り、身体を浮かせて、そのまま、俺はリンネを、ジゲンはたまをおぶった。それぞれの背中ではしゃぐ二人を連れていると、横からツバキに、


「本当に、親子みたいですね」


 と、笑われた。そばに居たトウガも、カドルも、ツバキの言葉に頷きながら、クスクスと笑っていたが、不思議と、嫌な気持ちはしなかった。


 そして、皆はそれぞれ自分の席に座る。ジゲンとたまは、ぎこちない笑顔を俺に向けてきている牙の旅団の者達の所へと座り、俺は皆の正面に座った。両脇にはツバキとリンネが居る。

 ふと、周りを見渡すと、アヤメ、ショウブ達、ギルドや自警団が固まっているのは分かるが、少し離れた所で、ナズナとシロウが隣り合って座っていた。にやにやと二人を見ていたアヤメたちの顔を見て、何となく事情を察した俺は、静かに二人を祝った。

 本当に、俺が寝ている間に色々な変化が起こったようだ。


 コモンは、ジェシカと、トウガ達に囲まれている男のそばに座っている。状況から見るに、あの男がレオパルドなんだろうな。トウケンと共に、目の前の料理を心待ちにしている様子を見て、神獣達と仲が良いんだなと思った。

 ギルドのミオンや、天宝館のヴァルナ、高天ヶ原の四天女とコスケの姿も確認できて、少なくとも、俺の知り合いは、皆無事だったということがこの時分かった。後は、サネマサが帰ってくれば、もう、何も気にすることは無いなと思っていると、俺の盃に、ツバキが酒を注ぐ。


「如何ですか? ムソウ様。皆様のお顔をご覧になった感想は……」

「ああ。安心したよ。本当に皆、よく頑張ったな」


 そう言うと、ツバキはニコッと笑い、リンネは俺に抱き着いてくる。


「おししょーさまがいちばんがんばったよ~!」

「そうか? そう言われると嬉しいものだが、ここを護ったのは、ジゲン達だ。皆を救ったのは、リンネ……お前だ……本当に、よくやったよ」


 抱き寄せながら、頭を撫でると、嬉しそうな顔をしてリンネは喜んだ。


「えへへ……うれしいなあ~……」

「……さて、そろそろ飯だろ。それまで待っておこうぜ」

「うん! ツバキおねえちゃんも!」

「はい!」


 リンネに手を引かれ、ツバキは頷いて、俺の隣に座った。俺は、ツバキのから酒の入った水差しを受け取り、ツバキの盃に注いだ。こういうのも、悪くないですねと言うツバキに笑っていると、リンネが器を俺達の前に差しだす。


「リンネも~!」

「「だめ」」

「ぶ~! いじわる~!」


 不貞腐れるリンネをツバキと小突いていると、周りからクスクスと笑う声が聞こえてくる。見ると、皆の準備が終わったようで、先ほどから俺達の様子を伺っていたようだった。ジゲン達は、今や遅しと急かすように、盃を俺に向けてくる。


 俺は立ち上がり、皆に盃を掲げた。せっかくの機会だから、乾杯の口上でもやってみようと思い、一つ咳ばらいをして、口を開く。


「皆……おかえり。……で、俺は起きたばかりだからまだ、よく分かってはいないが、街の復興など、やることも色々あるだろう。俺も出来ることなら――」

「ムソウ殿に出来ることは無いと思うぞ」

「むしろ、何もしないで欲しいものです」


 俺の言葉を遮り、ジゲンとコモンが呟く。無視して、口上を続ける。


「けが人も多いという。薬の方は俺が――」

「いえ、大丈夫です。間に合っていますよ、ムソウさん」

「俺も協力してるからな。心配しなくても良いぞ~」


 ジェシカと、牙の旅団の中に居る男、サンチョがそう言って頷いている。

……ふむ、薬の方は大丈夫なのか。まあ、良いこと……だな……。


「各地の魔物の被害には――」

「そこは俺達で間に合っている。な? お前たち」

「あ、ああ……」

「振るんじゃねえ……」

「俺は……知らねえよ……」


 ニカっと笑うレオパルドを見ながら、トウガ達神獣は、俺とレオパルドの顔を見比べながら、視線を外していく。

やはり、アイツらは違うな。俺の気持ちが大体伝わっているらしい。

 三体の最後の優しさは嬉しかったが、もう、特に何も言うことが思い浮かばなかった俺は、黙って盃を空に掲げた。


「皆、お疲れ……乾杯」

「「「「乾杯~~~!!!」」」」


 俺の言葉と共に、皆は盃をそれぞれで合わせながら、酒を飲み、目の前に並べられた料理に手を付け始めた。妙に納得がいかなかったが、まあ、良いやと思い、俺も飯を食い始める。

そういや、何日も寝ていた身であるのだが、大丈夫なのだろうかとふと思った。しかし、昼飯も良かったのだし、酒も飲めたし、大丈夫だろうと信じ、また、それを言ってしまったら、ツバキやジェシカに止められてしまう恐れもあったので、黙って箸を進めていった。


 さて、俺にとっては微妙な感じに始まった宴会だったが、皆の方は盛り上がっている。やはり数日共に過ごしたり、毎晩こんなことをしていたということで、身分の差などは関係なく、皆が打ち解け合ったりして、仲良さそうに話したりしていた。

 しばらく俺の隣で飯を食っていたリンネも、あそんでくる~、と言って、たまと共に、コモン達が居る十二星天の席に行き、四天女やコスケ、ジゲン達牙の旅団の者達と楽しそうにしている。

 ツバキの方は、アヤメやナズナとショウブ、それにシロウ達自警団の者達に囲まれ、何か話しているようだ。

よく見ると、クレナの騎士の格好をした者達も輪の中に入っている。後で聞いた話だと、エンライの指示で、街の復興の手伝いに来た者達だそうだ。今後の打ち合わせでもしているのだろうな。後日、俺もシンムの里に行って、礼をしておこう。


 さて、ツバキとリンネが居ないということで、ゆっくりと飯を食っている。俺もどこかへ移動しようかとも思ったが、既にそれぞれで楽しそうにしているので、良いやと思い、動かないでいた。

 感覚としては、一日も経っていないのだが、やはりずっと眠っていたということもあり、たま達の飯が懐かしく感じる。本当にありがたいことだなと思った。


 ふと、庭や屋敷に目を向けてみる。ここでも少しばかり戦闘があったのか、門壁が少し崩れているようだ。ただ、屋敷自体は、これだけ街がボロボロになっているのに、不思議だというくらいに無事だった。皆が護ってくれたおかげだなと思いつつ、やはり、俺の家なのだから、俺自身が護らねえと駄目だよなと改めて反省する。


 前の世界の時には、俺が居ない間に、山賊の屋敷になっていたり、最後には俺自身で燃やしたりと散々だった。


 ……仮に、俺もカンナとサヤに再会することがあったら、本気で謝っておこう。






 ……そう……俺も、二人に会えるかも知れないんだ……。






 コウカやシンキ、それにエンヤを二人に会わせたいということで頭がいっぱいだったが、こうやって落ち着いて考えたら、俺も二人に会うことが出来るかもしれない。

二人だけでなく、エイシンや、タカナリ、それにハルマサ達にも、再び会えるかも知れない。

 そのことに、今更ながら気づき、俺の目にこみあげてくるものがあった。


 ぐっとそれに耐え、酒を飲む。これは、その時に取っておこう……。歳をとると、色んな所が緩んでくるという話はどうも本当らしい。今日のシンキの様子を見たときは若干呆れたが、人のことは言えないなと、一人笑っていた。


「どうかしたのか? ムソウ殿」


 突然、横からジゲンに声をかけられる。振り向くと、ジゲンとコスケが揃って、俺の隣に来ていた。


「ん? どうしたんだ?」

「気づけば、ムソウ殿が一人で寂しそうだったからのう。儂らが相手をしようかと思っての」


 ジゲンがそう言って、二人は俺の横に座り、空いた盃に酒を注いでくれた。


「俺のことなど、気にしなくて良いのにな。たまの相手をしてやれよ」

「たまは、高天ヶ原の今の四天女や、コモン君にべったりじゃの」

「リンネちゃんも居ますからね。たまちゃんと、四天女の皆は、早いうちに打ち解けましたよ」


 コスケとジゲンは揃って皆の居る方を見た。二人は、まるで孫を見守る老人のような目で、たま達を眺めている。

 俺もそちらを向くと、皆の輪の中で、たまとリンネが嬉しそうに何かを話し、時々俺達の方を指さしては、楽しそうにしていた。すると、コモン達は笑ったり、驚いたりと色々な表情を見せている。……少し何を話しているのか気になるな。後で聞いておこう。

 しかし、二人の少女が、皆を楽しませているという光景は確かに和むなあと思っていると、ジゲンとコスケの笑い声が聞こえてきた。


「ほっほ、ムソウ殿。リンネちゃんを見る目が、父親のそれだぞ」

「高天ヶ原に遊びに来られた時も、そんな感じでしたね」


 俺が二人に思っていたことと同じようなことを言われた。そういや、高天ヶ原にも当分行ってないんだよな。用事が無いから、行かなかないだけなんだが、ああやってはしゃぐリンネを見ると、偶に連れて行こうという気にもなってくるな。


「あ……そう言えば、ケリスも居ないことだし、爺さんもこの街に居るってことも周知の事実となっているし、もう街を三分するということもなくなるのか?」


 ふと、思ったことを聞いてみた。トウショウの里を、下街、上街、花街の三つの区画に分けて、それぞれを門で封鎖していたのは、ケリスを筆頭とした貴族たちである。その影響で、トウショウの里は長く自由に行き来することすらできなくなり、花街には浮浪者が溢れていった。

 しかし、今となっては、ケリスも居ないし、闘宴会も解体、更にジゲンがトウショウの里に居るということもあり、貴族たちが容易に手を出せない状況になっている。わざわざ、街を分割する必要もなくなるのではと思っている。


「まあ、元々そうする必要すら無かったからのお。儂が一言言えば、前のようにはならんじゃろう」


 俺の言葉にジゲンが頷く。ジゲンは今更、この街の統治に口を出す気は無いと前から言っていた。

しかし、どうしても気に入らないことについては、アヤメを補佐するという名目で、今後は関わっていきたいと話す。

 手始めに、貴族たちへの牽制と共に、街の分割を廃止すると言って、笑った。今回の一件で、色々と吹っ切れた所もあるらしいなと思っていると、隣でコスケも頷いている。


「皆も改めて、ジロウ様の恐ろしさを思い出したようですからね。きっと上手くいきます」


 そう言って、コスケはジロウの盃に酒を注いだ。礼を言いつつも、どこか微妙そうな顔をするジゲン。


「むう……お前は、儂のことを信頼してくれていると思っておったのじゃが……」

「ええ。ここに居る誰よりも信頼しているという自信はあります……と、同時に、誰よりもあなたの恐ろしさを知っているという自信もあります」


 コスケの言葉に、更に顔色を悪くするジゲン。

 少し、興味が湧いて、俺は身を乗り出した。


「何か、あったのか?」


 毎晩開かれるこの宴会の目玉は、ジゲンの過去の話と聞いた。

 コスケは、ここに居る誰よりもジゲンと付き合いの長い人物だ。恐らく、まだ話したことが無いジゲンの話を知っているだろうと期待していると、コスケは笑って頷く。


「ええ。あれは確か……」


 コスケはどこか、懐かしいものを思い出すかのような表情をして、昔話を語り出した。それは、壊蛇の襲来で、前の領主、つまりアヤメの両親が死んで、幼かったアヤメが領主の任を引き継いだころに遡る。


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