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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
クレナの動乱を斬る
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第215話―ケリスが奥の手を使う―

 辺りの魔物たち、神兵を蹂躙したジゲンとサネマサ。このままケリスに向かって行ってもいい。

 だが、新たに魔物たちを召喚、もしくは創造させられると、手薄な屋敷の方が危険な状態となる。ジェシカが居るとはいえ、けが人も、療養中の者も多い。

 ここはいったん様子を見ようということで、二人はケリスの動向を伺っている。


 ケリスは、召喚した超級をも含める魔物の群れが、たった二人に壊滅させられたことに、大きな怒りを覚えていた。


「貴様ら……図に乗りおってええええッッッ!!! ここまで来るのにどれだけの時間を有したと思ってる!!! どれだけの力を使ったと思っておる!!! あと少しでクレナを我がものと出来たのに!!! 我の計画を邪魔しおってええええッッッ!!!」


 何とも自分勝手な暴言を吐くケリス。ツバキを人質にし、傷ついたジゲンたちに神兵を召喚し、余裕しゃくしゃくだった態度はどこへやらと、ジゲンは呆れた。

 だが、サネマサはケリスの言葉に、怒りを覚え、刀を突き付ける。


「ふざけんじゃねえッ! 図に乗っていたのはテメエだろうッッッ! テメエの役割は貴族共の統制だろうがッ! それを怠り、アヤメの統治に口を出し、あまつさえ闘宴会という私兵を囲い、街の実権を握ろうとしていたことなどすでに判明している!

 何よりッ! 俺の……俺達の牙の旅団を壊滅させ、ジロウに深い傷を負わせた!

 もう……テメエが神人だろうが、貴族だろうが関係ない! 俺の故郷を……親友達をめちゃくちゃにした罪……ここで償わせてやるッ!!!」

「たかだか500の兵隊を退けただけで粋がるな、人間!!! まだまだ召喚してやるッ!まだまだ魂は残っているッッッ!!!」


 サネマサの怒号に返すように、ケリスは先ほどと同じく手にした魔石を掲げ、魔力を込める。

 そして、辺りには魔法陣が浮かび、そこから先ほど以上に大量の魔物が出現した。

 さらに、ジゲンたちが先ほど倒した魔物の死骸から神兵の軍隊を作り出す。

 数は、ざっと見たところで、先ほどの三倍以上。つまり、2000以上の敵が現れた。


 ジゲンとサネマサは刀を構え直し、臨戦態勢に入る。


「……すまねえ、ジロウ。怒り過ぎて、あいつをさらに怒らせちまった」

「構わん。儂が言いたいことを言ってくれて感謝する。

 それに……どうせ、こ奴らも相手にしなくては、ケリスには届かん。

 ……なら、一気に喚んで貰って、一気に叩いた方が良いじゃろう。奴は言った、まだ魂は残ってる、と。つまりは、残らない時というのが必ず来るというわけじゃ。それまで、刀を振り続けるぞ……サネマサ」


 ジゲンの言葉に、サネマサは強く頷く。歳は食って体力が落ちても、冷静な分析力は変わらないなと思った。

 こうやって、昔から突出する自分のことを助けてくれたんだよなと、懐かしい気持ちになり、ニカっと笑う。


「了解だ、ジロウ! 俺はそれしか能が無えからな!」

「そこは胸を張るところかの? まあ、お前らしくて悪くはないのう。

 ……では、行くぞッ!」

「オウッ!」


 二人は再び駆け出し、魔物たちを倒していく。


 今回ケリスが召喚した魔物はもはや下級から中級の魔物は居ない。地上にはトロールやオウガ、更にその上位種たちに、ベヒモスなんてのも居る。

 そして、空にはワイバーンの大群に、全身から瘴気を発し、毒の風を引き起こす怪鳥、ドクガラスの上位個体、腐蝕カラスという魔物も居る。


 そこで、体力があり大量の魔力を持つサネマサが、スキルを使って空へ飛び、空の魔物を倒しつつ、地上で戦うジゲンを援護するという作戦となった。

 ジゲンの方は、体力が落ちているとは言え、超級下位のオウガロードや、ギガスなどは問題なかった。流石にベヒモスはきついとのことで、サネマサが空から対応する。


 今回も並み居る魔物たちを順調に倒していく二人だったが、気になることがあった。


 それは神兵という存在。スケルトンのような、死霊軍に属する魔物に似ているが、それとは違う気配を醸し出している。

 召喚主が神人で、「神兵」という呼称、更には背中から生える翼を見て、ジゲンには嫌な予感がしている。

 今のところ、サネマサや自分にとっては、難なく倒せる存在だが、これが一体でも屋敷の方に向かうと危険だと思い、ジゲンは優先的に斬っていく。


 サネマサの方は闘いながら、先ほど倒した魔物と違って、自分の攻撃をただただ受けるのではなく、避けたり、あるいは防いだりする個体が居るということに気付く。

 超級という存在の魔物にはそういうのも多いが、それにしてはと違和感を抱きながら、魔物たちを狩っていった。


 しかし、ジゲンが一人の神兵に斬りかかったとき、予想していなかったことが起こる。


 ガキンッ!


「む……おっと!」


 ジゲンの一太刀を受け止めた神兵。すると、その神兵がしゃがみ、後ろからもう一体の神兵が斬りかかってきた。

 すんでの所で、ジゲンはそれを躱し、斬波を放つ。

 だが、避けた先で、後ろから斬りかかる神兵が現れた。ジゲンは刀を逆手に持ち、その神兵を突き刺す。神兵は前のめりにジゲンにもたれかかるように倒れた。

 ジゲンは刀を抜き、神兵をどかそうとする。しかし、その瞬間を狙い、オウガ、トロールがそれぞれ、鉈とこん棒をジゲンに振り下ろしてくる。


「ジロウッ!」


 すんでの所で、サネマサが割って入り、オウガとトロールを蹴散らした。ジゲンは神兵をどかしながらサネマサに顔を向ける。


「すまなんかったのう」

「いや、気にすんな……それより……」

「うむ……何か妙じゃの……」


 ジゲンとサネマサは、再び背中合わせとなり、魔物達と向かい合った。


 先ほどから魔物たちが、連携して襲って来たり、先ほどまでは受け止めることさえ出来なかったジゲンたちの攻撃を受けたり、避けたりと強くなっている気がする。

 この魔物たちは先ほどケリスが召喚したばかり、つまりは初見の魔物だ。自分たちの技など見たことが無いだろう。

 しかし、オウガにしろ、トロールにしろ、上級にしては手こずるなとジゲンとサネマサは感じている。


 とは言いつつ、どちらにしてもここに居る魔物たちは、倒さなければならない。二人はなおも、魔物たちに向かって行く。一応、ジゲンが先ほど危ない目にあったので、一回目と同じく、背中合わせになって、闘い始めた。

 空の敵は、地上からサネマサが、魔法や気弾を放ったり、ジゲンが刀精の力を借りて、雷を落とし対処している。地上の敵も、やりづらさは感じるものの難なく倒すことが出来ている。


 しかし、やはり魔物を倒しても、残っていくのは神兵たち。それぞれ闘いの中で、ジゲンとサネマサが、大きな技を使う時などに、目配せしたり、事前に攻撃を察知したりして、魔物たちが散っていく中、神兵達だけは残っていく。


「あ~! 焦れったいなッ! ジロウッ! 少しだけ本気を出して良いかッ!?」

「少しだけじゃぞ……」


 なかなか倒れない神兵にしびれを切らしたサネマサは、刀を構え、体中に力を溜める。すると、サネマサから出ていた闘気が少し多くなった。


 サネマサは地面を蹴り、神兵に凄い速さで近づく。神兵はサネマサの動きについてこられず、その場で切り伏せられる。

 一人の神兵を斬ると、サネマサは他の神兵の元に移動し、回転し、強力な刃風を起こしたり、得意技の一つである、気を獅子の形にして放出したりして、神兵を倒していった。


 サネマサが戦っている間、他の敵を倒しながら、ジゲンは冷静に敵の様子を伺っている。一応、今のところは神兵よりもサネマサに分がある……というか、圧倒的にサネマサの方が上だった。

 しかし、やはり一回目と比べると、明らかに神兵は強くなっている。何が原因なのか分からない。

 次にケリスの様子を伺う。相変わらず、少し離れた所で自分には危害が無いように、闘いを傍観していた。サネマサの乱入から、先ほどまでは動揺し、焦りや怒りをあらわにしていた割には随分と落ち着いた雰囲気だとジゲンは感じている。時折、顔に微笑を浮かべながら、サネマサの闘いを眺めている。


 明らかにおかしい様子に、ジゲンは戸惑う。仮に神兵を強化して召喚したのであったなら、この状況は、ケリスにとって不都合なはずだ。なのに、嬉しそうにしているというのが、理解できない。


 いくら考えても答えが出ないジゲンは、カマをかけようと、ケリスに向けて六道斬波を放つ。闘いを傍観していたケリスは自らに近づく斬波を見て、苦々しい顔をした。


「チッ、死にぞこないの老いぼれが……」


 そして、手を斬波に向ける。すると、サネマサの周りに居た神兵が何体か斬波の前に躍り出て、ケリスを護るように、斬られていった。


「ふむ……どうしても、自分に攻撃が届かないようにしているのか……」


 ケリスはどうしても自らが前に出て、危険にさらされるようなことはしたくないようだ。ならばと思い、ここはサネマサに任せて、ケリスに向かおうとする。

 だが、やはり屋敷の方が気になるジゲンはその場に踏みとどまり、残る神兵を斬っていった。


 そして、辺りに再び神兵が居なくなると、サネマサが息を整えながら、ジゲンに近づいてくる。


「ふぅ~……少しばかり本気を出した所為で、少しだけ疲れたな」

「まだまだ余力は残しておいた方が良いじゃろう。儂が倒れた時の為にの」


 サネマサはジゲンの言葉に頷き、活力剤を飲む。そして、間髪入れずに、ケリスに向けて走り出そうとした時だった。


 二人の上空で、ケリスは喉を鳴らし、笑っていた。


「ククク……予想以上の働きだな、“武神”、そして、“刀鬼”……」

「あ? 何がだよ。ひょっとして、もう打ち止めか? なら残るはテメエだけだ、糞野郎が……」


 邪悪な笑みをたたえるケリスにサネマサが吠え、刀を向ける。ジゲンは本当にこれで終わりなのかと疑問に思いながら、ケリスに向き直る。


「最後のあがき……しておくのなら今のうちじゃ、ケリス……」


 サネマサと同様、ジゲンもケリスに刀を向けて睨みつける。

 しかし、ケリスは臆することなく、両手を広げて、高らかに笑い出した。


「最後のあがき? 違うな! 最後のとどめだ! 貴様らはこれで終わりだ!

 龍言語魔法・吸いつくすもの(デス・アブソーブ)!!!」


 ケリスは、自分と近くに倒れている、まだ、息がある三体の神兵に魔法を起動させる。ケリスと横たわる神兵に魔法陣が描かれ、宙へと浮かんだ。


「龍言語魔法じゃと!? むうっ!」


 魔法が起動され、危険な予感がしたジゲンは魔法を止めようと、神兵達に向けて駆け出そうとする。

 しかし、サネマサがジゲンの前に立ちふさがり、それを止めた。


「ジロウッ! 止まれ! あの魔法に巻き込まれたらお前も取り込まれるぞ!」


 サネマサの言うように、ケリスが発動させた魔法は、辺りに居る生き物の生体、死体問わず対象に吸収させるという魔法である。

 以前、ムソウが倒したヒュドラもこの魔法によって生まれた。

 サネマサはこの魔法のことを、同じく精霊人の一件で知り、ミサキから聞いていたことで効果を知っていた。ジゲンを止めた後、サネマサは振り返り、防御の態勢をとる。


 その瞬間、ケリスと神兵に浮かんでいた魔法陣から、黒い手のようなものが無数、放たれた。サネマサは、刀を振るい、自分たちに迫ってくるそれを斬っていく。


 その他の黒い手は、長く伸び続け、サネマサとジゲンが倒した、魔物や神兵の死骸を掴んでいった。

 そして、黒い手はすごい勢いで、引っ込んでいき、魔法陣が描かれている神兵とケリスに魔物たちを取り込んでいく。


「ぐうっ! クハ……クハハハハハハッ! これは……良い……想像以上だッ! 力が……力が溢れてくるッッッ!!!」


 ケリスは魔物たちを取り込むたびに、自らの力の上昇を感じ、狂喜に満ちた顔をする。

 そして、そのまま更に、魔法をかけた神兵達に手をかざした。


「さらに……奥義・神将召喚ッッッ!!!」


 ケリスが技を発動させると、神兵達の体が怪しく輝きだした。神兵達を召喚した時のように、天から黒い光の柱が降ってくる。

 すると、光柱の中で、神兵達の姿が変化していく。普通の人間の戦士くらいだった身長がさらに伸び、ジゲンたちの倍くらいとなる。

 その分、全身の体つきも大きくなり、オウガのようになった。背中には新たに一対の羽が生え、合計四枚となった。

 そして、身に纏う漆黒の鎧兜は更に禍々しい様相となり、胸の辺りに赤い魔石のようなものが怪しく光るようになる。

 三体の神兵達が手を掲げるとそれぞれ、大きな矛、大刀、大斧を手にした。その後、光の柱が収まると、先ほどよりも圧倒的な存在感を放ちながら、ジゲンとサネマサの前に立つ。


「ぬう……これほどとは……」

「ああ……少しやべえかもしれないな……」


 サネマサは刀を構え直しながら呟く。ここまでの存在感、圧迫感を放つものはそうは居ない。天災級とまではいかないが恐らくは、デーモンロード並み、すなわち、災害級と相対する感覚だ。サネマサは、刀を握る手に力を込める。

 ジゲンの方も同様だ。これまでの敵とはわけが違う。果たして自分がどこまでやれるかと考えていた。


 しかし、これだけではない。新たに召喚された、神兵の上位種ともいえる存在、神将と向き合っていると、頭上から笑い声が聞こえてくる。


「ククク……よもや、我を忘れてはおらんだろうな?」


 ケリスの声にハッとした、サネマサとジゲンは声のする方を見た。


 そこに居たのは、先ほどまでとはこちらも、姿形の違うケリスだった。

 全身を黒い気がまとわりついており、手足の爪は伸び、鋭くとがっている。目は赤く輝き、頭からはデーモン種のようなねじ曲がった角が生えていた。一番の違いは、ケリスの神人の特徴ともいえるべき背中の羽だ。

 純白だった羽は、相対している神将の羽のように、真っ黒となり、更にケリスの場合は新たに二対の羽が生え、合計六枚の羽が、背中から生えていた。

 そして、先ほどまでとは打って変わり、ケリスからも、強い存在感というのを感じている。目の前の神将以上の強さを持っているだろうとサネマサとジゲンは感じた。


 だが、二人はこの人界において、数少ない歴戦の強者と呼ばれる者達である。敵が急に強くなることはよくあることだと、意外にも、冷静だった。

 それと同時に、ある一つの仮説、結論に行き当たる。多くの魔物と遭遇し、実際に見て、実際に闘ってきて培われた観察眼によるものだった。

 上から自分たちを見下ろしながら得意げに笑みを浮かべるケリスに、最初にジゲンから口を開いた。


「なるほどのう……魂の吸収か」


 ジゲンの一言に、ケリスはピタッと笑みを止めて、ジロっと、ジゲンに視線を移した。

 どうやら、図星らしい。


 牙の旅団を壊滅させたときのように、ケリスには魂を操る何らかの能力があるとジゲンは踏んでいる。更に、迷彩龍のように、ケリスは魔物を召喚、あるいは作り出すことも出来るという可能性も示唆していた。これは、先ほどからの戦いで立証された。


 恐らく同じ方法で、神兵を生み出し、今まで自分たちと戦わせていたと考えている。

 そして、今回使った魔法で、三体の神将を生み出し、更には自身も強くなった。これは、先ほどの魔法で、今まで魔物や神兵に使っていた、全ての魂を吸収したことで強くなったという結論に達する。


 この世界に生きる者達の魂には、スキルの力や、魔力も同様に宿っている。それを何千人分も集め、自らの力にすることが出来れば、誰でもあっという間に強くなることが出来る。


「早い話が、デーモン種と同じ理屈じゃの。あ奴らも、襲った者達の魂を糧につよくなるからのお」

「ああ。更にテメエらが取り込んだ魂ってのは、最初から最後まで同じものだろ? 急に強くなったり、技見切ったりしだしたのは、既に受けたことがある技だったからだな?」


 ジゲンの言葉に、サネマサも続ける。

 二人が戦った魔物たちのうち、中には一度殲滅した魔物たちの死骸から、再生された個体も数多く居た。

 魔力によるもの、その種族の本来備わっている能力によるもの、様々だが、傷を負ったり、体の一部が失われても、自らの力で再生する魔物は居る。

 だが、それも死んでしまってはそれまでだ。いくら他者が再生しても、死は死、動くことは無いし、力を使うということもない。

 恐らくは、肉体的に死んだ時点で、魂が抜けているからと、現在のこの世界では推測されている。


 しかし、今回ケリスは、魔物や神兵を作り出す際に、魂が肉体に固定されるような何らかの力を使ったのだとサネマサ達は考えている。

 ゆえに、一度肉体的にはバラバラになっても、その魔物の魂が残っている限り、一度死ぬ前に受けた攻撃というのが理解でき、それに対応できるということだ。


 二人に自らの力の大半を推理され、更には強大な力を手にした自分に恐れることなく、淡々としている様子に、口をあんぐりと開け、呆然とするケリス。

 それを見た、サネマサは吹き出したように笑った。そして、刀を担ぎながら、ゆっくりと口を開く。


「まあ、種が分かれば問題ないな。今まで以上の力を以て、テメエらを倒せば良いだけの話だ」

「じゃの。まさしくこれが最後じゃ。儂も本気を出そう」


 そう言って、サネマサとジゲンは力を解放させる。


 ジゲンの刀が輝き始め、ジゲンの体に雷が纏わりついた。これはジゲンの刀、「帝釈天」の力であり、この雷は持ち主の体を護る鎧となったり、自動で、敵を攻撃する第三の目であり、手となる能力だ。

 さらにジゲンは自らに身体能力向上の魔法をかける。後がきついが、そうも言ってられないと横で心配するサネマサに笑った。


 そのサネマサの方は、赤い気を放出させる。それはシロウが刀の力を借りて行うものと似ている。

 サネマサの場合は獅子の形にして、全身に纏い、気の力で、身体能力を上げている。


 二人は準備を終えると刀を構え、眼前の神将、そして、ケリスを睨んだ。


「では……牙の旅団団長“刀鬼”ジロウ・クレナ……」

「同じく、牙の旅団団長兼十二星天“武神”サネマサ・タケダ……」


 二人が名乗りを上げると、空に居るケリスは、手にした魔石を使い、辺りに未だ残っている神兵達を癒した。

 そして、二人を指さし、神兵、神将に号令をかける。


「者共! 殺せッ! 襲えッ! 我が目的を果たす者どもを根絶やしにしろッッッ!」


 ケリスの号令に、神兵達は二人に向かって駆けてくる。


「「参るッッッ!!!」」


 ジゲンとサネマサは、地面を蹴って敵軍勢に向けて飛び込んでいった。


「ウオオオオオッッッ!!!」


 サネマサは、走りながら、向かってくる神兵を斬っていく。自分たちの考え通り、やはり先ほどまでよりは幾分か強くなっている。

 しかし、己の力を解放させたサネマサは、EXスキル極めしものの効果により、極められたスキルを駆使し、難なく神兵達を制圧し、神将に迫っていった。


「……!」

「ッラアアアアアッッッ!!!」


 サネマサは、一体の神将が振るう大斧を受け止める。衝撃で、地面は砕かれ、突風のような余波が発生し、他の神将たちが吹き飛ばされていく。


「はあッッッ!!!」


 吹き飛ばされた神兵はジゲンの放つ斬波、もしくは雷に打たれ、地面に落ちていく。


 そして、ジゲンの方は更に駆け出し、ケリスの前へと立った。

 すると、ケリスを護るように残った神将が立ちふさがる。


「ククク……貴様如きが……我が生み出した神将を――」

「邪魔じゃッ! 奥義・落星脚!」


 ケリスが、ジゲンを嘲笑おうとした瞬間、ジゲンは跳躍し、神将に気を溜めた足で、強烈な一撃を放つ。

 倒すことは出来なかったが、神将は前のめりに倒れる。


 その先に居るのは、もう一体の神将を相手にするサネマサの姿だ。サネマサは、大斧の神将を弾き飛ばすと、踵を返して倒れ込む神将に刀を振るう。

 僅かに外殻が砕ける程度の状況にサネマサは舌打ちをし、再度刀を振るおうとした。しかし、そこに大斧の神将が背後から攻撃を仕掛けてくる。

 ハッとしたサネマサは、振り返り、神将の攻撃よりも早く前へと飛び出した。


「獅子牙連斬ッッッ!!!」


 素早く懐に入り込んだサネマサはそのまま刀を振るい、二刀での連撃を加えていく。まるで、大岩を斬っているような感覚だとサネマサは思った。

 しかし、着実に神将の外殻は減っていく。サネマサはとどめとばかりに、刀を交差させて神将を斬った。

 神将の外殻は砕け、屈強な体つきの肌が露になる。サネマサは更に刀を振るい、一太刀加えようとした。

 しかし、その瞬間、横から他の神将が大矛をサネマサに突き刺そうとしてくる。


「チィッ! あと少しだったんだがな」


 サネマサは大矛を刀で逸らしながら、身を翻す。

 思うように技が効かない。そう感じたサネマサは、神将一体一体はそれぞれ災害級以上の魔物級だと判断した。

 やはり、荷が重いかとジゲンの方を見る。ジゲンは空中でケリスと、ケリスを護るように散らばる、数多くの神兵達と対峙していた。


「……さて、あの大きな奴らはサネマサに任せるとするかの」

「ほう……親友を置き去りにするとは、“大侠客”が聞いて呆れる」


 ケリスは、ジゲンに対して、再び揺さぶりをかける。かつて、親友達を殺させたときの絶望感を想起させるような言葉……。これにより、ジゲンが動揺し、隙を見せる瞬間を伺った。

 しかし、ジゲンの方は、サネマサに一瞥もすることなく、刀を構え直し、ケリスを睨んだ。


「置き去り? ……違う。儂は……サネマサを信じておるだけじゃよ。あいつだけじゃない。

 ムソウ殿も……闘鬼神の皆も、きっと帰ってくる。儂はそれだけを信じ、皆を迎えるために、貴様と闘うだけじゃ」


 ジゲンは、ケリスに突っ込んでいく。すると、周りに居た神兵達が、ジゲンに一斉に襲い掛かってきた。

 先ほどまでに比べるとやはり、強く感じるが、本気を出し、更には身体能力を上げ、昔の感覚を取り戻しつつあるジゲンには、さほど脅威とは感じていなかった。様々な技を駆使し、神兵達を倒していく。


 死角に回り込まれ、ジゲンの見えないところから斬りかかってくる神兵も居るが、ジゲンが身に纏っている雷に撃たれ、地面へと落ちていった。すかさずジゲンは、落ちていった神兵達に手をかざす。


「奥義・緊箍児ッッッ!!!」


 ジゲンの手から気で出来た輪が飛び出し、地面に落ちた神兵達の体にはまり、動きを封じた。

 これで、神兵達を倒される以外の方法で、無力化することが出来る。更に強くなって復活するというケリスの策を防ぐという狙いだ。

 ジゲンは同様の方法で、神兵達を倒しては、輪っかを飛ばし、次々と無力化していく。


 そして、あらかた神兵達が居なくなると、ケリスに向き直った。


「後は貴様だけじゃッ!」

「老いぼれが……我自らが、引導を渡してくれる!」


 ジゲンがケリスに向けて突っ込んでいくと、同時に、ケリスも魔剣を振りかざし、ジゲンの方に突っ込んでいく。

 二人は段々と近づいていき、近くに衝撃をまき散らしながら、刀を合わせた。


 刀を合わせながらジゲンは感じた。やはり、ケリスも強くなっている。神将や、神兵に魂を与えるだけでなく、デーモン種のように、自らにも魂を取り込んで今までの闘いの記憶と共に、魂に刻まれたその者の魔力を身に宿しているという自分の考えは当たっていたらしい。

 伝わってくる力、感じる存在感、これらを統合し、ケリス自身も、災害級、下手をすれば天災級に匹敵するものだということを理解した。


 だが、ジゲンは退かない。諦めるわけにはいかない。この男は必ず自分の手で葬る。二十年間、ずっと仲間達のことを想っていたジゲンの刀は止まることを知らなかった。


 そんなジゲンの戦いぶりをサネマサは目を見開き、眺めていた。

 そして、刀を握る手に力を込めながら、眼前に迫る三体の神将を見据える。


「……なるほど……動きを封じれば良いのか。相変わらず頭いいな、あいつは。俺も負けてられねえ。もう少しだけ本腰入れるかな!!!」


 サネマサは、気合を入れて、全身からさらに強く、大きな闘気を放出する。そして、正面に居る大刀を持った神将に向けて走り出した。

 神将は臆することなく、大刀を振り上げ、サネマサに振り下ろす。


「フンッ!!!」


 サネマサは避けることもせず、それを受け止めた。地面が砕けるほどの衝撃を受けても平然とし、刀と刀を合わせている。

 そして、一瞬力を緩めて、その大刀を地面へと受け流した。

 急に力を抜かれ、前のめりに傾く神将。その隙を突き、サネマサは大刀の腹に突き技を放つ。


「神突ッッッ!!!」


 刀の切っ先、一点にのみ強く気を集中させたこの技で、神将のもつ刀の腹に、一つの小さな穴が開いた。

 そして、サネマサは素早く自らの指に気を集中させてその穴に向けて、気で出来たひものようなものを通す。


「剛縛ッッッ! さらに、縛樹ッ!」


 気で出来たひもは穴と地面を縫い付けるように結ばれ、大刀は固定された。更にサネマサは地面に手を置き、そこから植物の蔓のようなものを無数に出現させる。蔓は絡まりながら大刀を包んでいき、完全に神将の得物を封じることに成功した。

 大刀を封じた蔓はそのまま神将の手から腕へと渡っていき、神将の体全体を覆っていく。


 そして、一体の神将の動きを封じることに成功したサネマサは、自らに迫ってくる、大矛を持った神将に刀を振った。


「次はてめえかッ! 獅子爪連斬ッッッ!!!」


 サネマサは大矛による攻撃を躱し、横に回転しながら飛び、刀を振るった。サネマサが一度刀を振る度に刀に平行して二本の気で出来た刃が浮かび、一度に三つの衝撃を矛に与える。それを連続で行っていくうちに大矛はそこで斬られ、バラバラになった。

 ハッとした様子で斬られた矛を眺める神将。サネマサはその隙に、跳躍し、神将の顔に当たる部分を掴んだ。

 そして、勢いそのままに、神将を頭から地面に叩きつけ、先ほどの神将にしたことと同じように、気でできたひもで地面と縫い合わせ、更に魔法で蔓を生み出し、神将の動きを完全に封じた。


 残るは大斧を持った神将だけ。その神将は、先ほど動きを封じた神将に纏わりついている蔓を斧で斬ろうとしていた。

 しかし、思うようにいかないようだ。蔓は固く、斧での攻撃を弾いている。


「無駄だ。魔法に練った気を流しているからな。そう簡単には斬れねえよ」


 サネマサは魔法を使用した際に、蔓の中に、先ほど放った気のひもを編んで、縄のようにしたものを仕込んでいる。魔法の耐久性を上げるためにしたことだったが、功を奏したらしい。

 この世界に現存する全てのスキルを身に着け、更には極めているサネマサならではの戦い方だ。魔法に気を練り込むことくらいわけない。

 そして、どれだけ正体が分からなくても、初めて見るような敵でも、鑑定スキル、心眼スキルにより、その悪条件も関係なくなってくる。

 生み出された神将たち、やはり種族的には一緒のようだが、最後に残した大斧の神将は他の二体に比べて、少ない魂が入っているらしい。いくばくか頭の方は悪いという情報が視えてきた。

 初見の相手でも、スキルの力で今回も何とかなっている。


「……まあ、だから頭を使わなくなった分、馬鹿になったんだがな」


 サネマサはどちらかというと、そうやって、スキルに身をゆだね、直感的に戦うような男だ。作戦を立てるというのは苦手である。

 目の前に居る大斧を振り回しながらなおも蔓を斬ろうとする神将を見ながら、何となく自分と似ているなあと思ったサネマサは、苦笑いした。


「……自分で言ってて悲しくなるな……さっさと終わらせようッッッ!!!」


 サネマサは地面を蹴り、ありったけの気を刀に纏わせる。蔓を斬っていた神将は近づいてくるサネマサに気が付くと、怒気をまき散らしながら、サネマサの方に振り返る。よほどイラついたらしい。斧を無造作に振り回しながら、駆けてきた。


 繰り出される斧の一撃、一撃に、サネマサもそれ以上の力と気を発散させながら、斧に刀をぶつけていく。


「獅子牙連斬ッッッ!!!」


 重たい一撃を斧に浴びせていくと、段々と相手の斧からきしむような音が聞こえてきて、更にピシッというひびが入る音が聞こえてくる。

 そして、最後の一撃にと、刀を二本同時に振り下ろすと、神将の持っていた斧はバラバラに砕けていった。


 砕かれた斧を見て狼狽したような態度をとる神将。サネマサは素早く神将の懐に潜り込み、押し倒した。

 そして、先の二体と同様に、魔法で蔓を生み出し、更に気を編み込んで放出し、神将の動きを封じた。


「さて、これで神将とやらは全員何とかなったな。後は……」


 三体の神将が完全に止まっていることを確認したサネマサは周りを眺める。残っているのは、未だ多くの神兵、そして、敵の総大将ケリス。

 ケリスはジゲンの猛攻に耐え、威力の高い魔剣での攻撃や、強力な魔法でジゲンを翻弄している。


 だが、ジゲンも、刀や、気を上手く使い、ケリスの魔法を弾いたり、流したりして、自分の身はきちんと守りながら闘っていた。

 そして、襲い掛かってくる神兵達には雷を撃ったりして対応している。地面に落ちた神兵には引き続き、気で出来た輪っかをはめていき、動きを封じていた。


 自分よりも歳はとっているはずなのに、よくやるなあとサネマサは再び感心していた。

 しかし、そのままでは良くないので、サネマサもジゲンの加勢に加わるべく、周りに居る神兵を蹴散らそうと空へと飛ぼうとした。


「ジロウも居るし、コモンも居るんだよな。ことが済んだら俺もあそこに拠点を移そうか。それとも月一くらいには遊びに行こうかなあ……」


 などと呟きながらムソウの屋敷を眺める。住むというのはまだしも、遊びに行くくらいなら良いかも知れない。

 その時は、ムソウも歓迎してくれるだろうし、ジロウも居るし、ジロウが言う、たまっていう子にも会ってみたいしと、この一件が終わった後のことを考え、フッと笑った。


「……あのツバキって奴の誤解も……ん?」


 先ほどジゲンから聞いた、武王會館出身のツバキが、何となく自分に誤解を抱いているということを思い出し、まずはそれからどうにかしようと思ったサネマサ。


 しかし、屋敷の方を眺めながらあることに気付いた。急いで眼力スキルを使い、更に慌てて、ケリスと闘うジロウの方に振り向いた。


「ジロウ、マズイッ! 何体かの神兵と魔物が屋敷に向かっている!!!」

「何じゃとッッッ!? すまない、すぐに向かってくれッ!」


 ジゲンの指示にサネマサは頷き、屋敷の方に向けて飛び立とうとする。だが、そこでジゲンと闘っていたケリスは、舌打ちをしながら口を開いた。


「チィっ! 気付いたか。だが、そうはさせんッッッ!!!」


 ケリスの言葉に反応した神兵達は、サネマサの前に立ちふさがる。ジゲンとケリスを取り囲んでいた神兵達も、全員移動して、サネマサを取り囲んだ。一気に自分の周りには今残っている夥しい数の神兵が自分だけを狙っているという状態になる。


「逃がさんぞッ! “武神”!!!」

「ハッ! 俺には転送魔法があることを忘れたか? 一瞬であの屋敷の所まで――」


 ケリスの言葉に挑発気味に笑うサネマサ。そして、魔法を起動させようとすると、サネマサの言葉を遮って、ケリスが口を開く。


「ほう……この死地に“刀鬼”一人を置いていくとはな……。

 貴様も最後は仲間を捨てる人間のようだな!!!」

「ッ!」


 サネマサは魔法を止めて、立ち止まる。ここで、サネマサが去れば、ジゲンはケリスと自分と取り囲む神兵達を纏めて相手にすることになる。

 そうなることだけは嫌だったサネマサはその場に立ち尽くした。

 すると、ケリスと闘っていたジゲンがサネマサを一喝した。


「サネマサッ! 何をしておる!? 早く行くのじゃッ!」

「無理だ! お前を置いてはいけないッ!

 もう俺は……俺の知らないところで誰かが死ぬのは嫌だッ! 向こうにはジェシカも居る! アイツを信じよう!」


 牙の旅団が壊滅した際、自分は王都に居た。ケリスや他の貴族がアヤメの統治に口を出し、トウショウの里、ひいてはクレナ全体が混乱していた今までも、自分は故郷を離れて王都で弟子たちに手習いをしていた。

 自分の居ない所で、故郷、クレナ領で起こっていた数々の問題、悲劇……。サネマサは自分があの時、そこに居れば、と何度悔やんだか分からない。

 今日、再会したばかりの親友を敵軍の真っただ中に置いて、離れるということはしたくなかったサネマサ。

 しかし、その親友は、そんなサネマサの態度に、更に激高する。


「ジェシカ殿だけに、屋敷の者達を護りながら、儂らの闘いを覚えた神兵を倒せと!?

 こんな時にも……ここで馬鹿をさらすな!

 早く行けッ! ()のことは心配するな! 俺が何を護ろうとしているのか考えろッッッ!」


 昔のようにサネマサを叱責するジゲン。ジゲンの言ったことは全て正しい。


 確かに十二星天と言えども、けが人の治療を担っているジェシカに、その者たちや、トウショウの里の住民たちを任せた上で、あの数の魔物たちの相手をするのは無理がある。ジェシカはまだしも、誰かは必ず傷つく。最悪の場合、何人も死人が出る。

 それはジゲンが、今まさに護りたいと思っている者達である。仮にここに残って、二人でケリスを倒したとしても、誰かが死ねば、ジゲンの心に再び大きな傷をつける結果となってしまうだろう。それはサネマサも嫌だった。


 だが、二十年前と同じく、自分が居ないところで仲間が危機に陥り、何も出来ずにジゲンを喪うということも嫌だったサネマサは、どうしたら良いのか分からず、その場を動けずにいた。


 こうしている間にも、敵影が屋敷に近づいていくのが見える。ジゲンは歯ぎしりをして、刀を振った。


「奥義・六道斬波ッッッ!!!」

「ぬうっ!」


 零距離で六つの斬波を帯びた状態で、刀を合わせると、その数だけの衝撃を与え、ケリスを吹っ飛ばすジゲン。その隙にジゲンは、群がる神兵を蹴散らしながらサネマサの横に立った。


 そして、立ち尽くすサネマサの襟を掴む。


「これで、文句はないだろう!? 急いで、転送魔法を起動させろ!」

「お、おうっ! 転送――」

「させるか! 神兵共! 間断なく二人に襲い掛かるのだ!」


 ケリスの言葉に、二人の近くに居た神兵達が向かってきて、刀を振るう。ハッとしたジゲンとサネマサは、魔法を中断し、応戦していった。

 神兵達は、倒しては次の神兵が、また倒しては次の神兵がと次々に襲ってくる。更には倒した神兵も起き上がり、二人に向かってきた。

 矢継ぎ早に襲ってくる神兵達の所為で、サネマサも魔法を使うことが出来ない。

 サネマサは、今になって、先ほど動くことをためらってしまったことをひどく後悔した。


「す、すまない、ジロウッ! 俺が――」

「謝る暇があったら、立て! 敵を倒せ! 行くぞッッッ!!!」


 ジゲンはサネマサの謝罪を無視し、屋敷の方に向けて駆けながら、敵を倒していく。サネマサも、ジゲンの後に続き、刀を振り続けた。

 だが、多勢に無勢、進んでは後退し、一向に屋敷に近づいているという感覚がしなかった。


 一心不乱に刀を振るう二人の頭上で、ケリスが笑い声をあげる。


「良いざまだな……これが貴様らの友情というやつか。まったく……感服しているぞ、“刀鬼”。

 だが、その所為であそこに居る者たちを見捨てることになるとは笑えるな」


 ケリスの笑い声に応えるように、ジゲンは目をカッと開き、刀を空に掲げた。

 上空に黒い雲が集まり出し、そこから極太の雷が幾本も降り注ぎ、敵軍に風穴を開ける。

 笑い声を止めて、舌打ちをするケリスに、ジゲンは口を開いた。


「何を言う!? 俺とサネマサなら、この程度何とでもなる! もう、貴様の思い通りにはさせん!!!」


 ジゲンは更に力を放出し、雷を辺りにまき散らすと同時に、刀を振るっていった。あっという間に、五十体以上の神兵が倒れていく。


 サネマサはジゲンの言葉を聞き、ハッとした。こんな状態になっても、自分を信じているジゲンを見て、更に奮起する。


「……そうだ……俺はもう……無様な姿は見せねえ! すぐにあいつらに追い付いて、何もかも護ってやる!!! 俺は、人界の“武神”だッッッ!!!」


 刀を握る手に力を込め、サネマサは巨大な竜巻を起こし、取り囲む神兵達を薙ぎ払っていく。竜巻により吹き上げられた敵は、ジゲンの雷にことごとく撃ち抜かれていった。


 そして、二人の眼前に敵が居なくなると、ジゲンとサネマサは顔を見合わせた。


「行くぞッ、サネマサ! ケリスは後じゃッ!」

「おう!」


 二人は地面を蹴り、屋敷に近づく魔物たちを追って全速力で駆け出した。ケリスは、倒れた神兵を見渡し、更に苛立ち始める。


「フンッ! ならば我自ら引導を渡してやる! 神術・魂葬波ッッッ!!!」


 ケリスは屋敷に向けて魔剣を向けた。すると、倒れた神兵達の体から、光るものが飛び出て、魔剣の切っ先に集中する。それは段々と大きくなり、膨れ上がっていった。


「ハアアアッッッ!!!」


 ケリスが気合を入れると共に、凄まじい熱量と力を持った、一本の光線となり放出される。

 それは、辺りに居た神兵達に埋め込んだ魂を集約し、攻撃技に変換したものだった。人間や魔物、何人分の力か計り知れないそれは、ジゲンとサネマサをあっという間に追い抜き、屋敷に向けて飛んでいった。


「クソッ! まだ、あんな技を!」

「クッ! たまああああああッッッ!!!」


 屋敷に居る、自分が最も護りたい存在の名を叫ぶジゲン。


 だが、無情にもケリスの攻撃はどんどん屋敷へと向かって行き、自分たちの前に居る魔物たちの群れさえも追い抜き、ムソウの屋敷へと迫っていった。


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