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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
クレナで生活する
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第202話―三人でスライムを斬る―

 翌日、朝起きると討伐の支度をして、飯を食い、リンネとツバキを連れて、スライムの群れの討伐に向かった。

 場所はトウショウの里からそんなに離れていない場所だ。これなら、スライムの規模にもよるが、昼頃には終えるだろうと考えている。


 いつものように、リンネの背に乗り、目的地へと向かって進む。今日はクレナでは珍しく、道で魔物に遭遇することが多かった。と言っても、せいぜいが、下級のブルムだったり、ゴブリンだったりする。

 魔物が現れると、リンネは狐火を撃って、攻撃を始める。打ち損じたものについては、ツバキが刀を振ったり、俺が降りて闘ったりして、対処できている。ブルムなど、飛ぶ敵については、俺が神人化して対応したので、問題は無かった。問題があるとすれば……


「やはり、ムソウ様の攻撃ですと、素材が残らないのですね」


 倒した魔物の素材を集めながらツバキが、呟く。ツバキとリンネの攻撃で死んだ魔物の素材はまだ、残っている。狐火でやられた奴らも、焦げ付きながらも、原形をとどめるほどだった。

 しかし、俺が無間で斬ったり、神人化した状態の、気での攻撃を浴びた奴らは、その瞬間に、消し去っていった。これでは、素材が残らないので、討伐証明のしようが無いし、素材売却金も手に入らない。


「まあ、最悪俺は素手で戦う。それなら、素材は残ると思うからな」


 この際、無間を使わずに、普通の状態で、素手でスライムを倒すことにした。元々、スライムの攻撃もそこまで強いものでは無いし、無間が無くても大丈夫だろう。

 ツバキも、それなら、と言って、俺の提案を受け入れてくれた。


 その後、魔物の死骸を異界の袋に収めた後は、リンネの背中で揺られながら、前にミサキの召喚したリンガと闘った時の感覚を思い出していた。両手、両足に気を溜める感覚、その集めた気を研ぎ澄ます感覚など、無間を持たずに戦った時のことを思い出していく。

 ロウガンからも、そういった闘いの時の、気の使い方というのも教えて貰ったし、今回は、その実践と考えて闘うことにしよう。


 さて、しばらく街道を走り続けていたリンネだったが、少し逸れて森の中へと入ってもらう。その森を抜けた先にある平野に、スライムの群れが棲み付いているらしい。


 木々をかいくぐりながら、走るリンネの上で、ツバキはタスキを締め、刀の柄を握り出す。俺の方も、手に気を纏わせて、何時でも出られるようにした。

 そして、前方の木々が段々と減っていき、開けた景色が見えてくる。リンネは、鼻をスンスンと鳴らすと、体の周りに狐火を浮かばせ、俺達に合図するように吠えた。


「クワンッ!」

「行くぞッ! ツバキ!」

「はい! 斬波ッ!」


 森を抜けて、リンネの合図と共に、俺は飛び出す。ツバキはリンネに騎乗したまま、そこらに居たスライムの群れの中で、特にスライムが固まっているところに、斬波を放った。

 ツバキの攻撃は、そちらにまっすぐと向かって行き、辺りに居たスライムたちを倒す。

 攻撃を受けたスライムたちは、驚き、こちらを見てきた。ざっと数えただけで、500は居るか。シンムの里の時に比べると、だいぶ少ないが、ツバキの言うように、油断は出来ない。

 俺は、着地と同時に、そばにいたスライムたちに、気を纏った手刀を打ち込み、切り裂いていく。スライムはそのまま斬られたが、素材は残った。良し、このまま闘おう。


 そして、俺はスライムたちの中に飛び込み、目に入った奴から殴ったり、蹴飛ばしたり、手刀や足刀で切り裂いていく。リンネは遠方から狐火を放ち、攻撃しているようだ。

 しかし、狐火は、相手の強さに応じて、勢いや強さが大きくなる技だ。時々、生き残ったスライムが、接近していることもある。そんな敵は、ツバキがリンネの周りで刀を振り、対応している。

 囲まれたら厄介だからな。出来るだけそうならないように、闘っているつもりだが、やはり数は多い。何度か危なくなる時が俺にもある。

 だから、途中からリンネは、変化できるものの技ならすべて使うことが出来る獣人の姿になり、狐火では倒しきれなかったスライムも、ミサキの火球、ベヒモスの雷を使って、対応するようになった。


「ムソウ様! 後方のスライムが合体しようとしております!」

「了解!」


 ツバキは、リンネのそばで戦いながら、戦場全体を観察し、気になったことを俺に報告したりしている。俺はツバキの言葉通り、スライムの軍勢を突っ切っていく。前に立ちはだかるスライムは、俺の後ろから飛んできたツバキの斬波によって、蹴散らされていく。

 そして、まさにビッグスライムになろうとしているスライムの塊の前まで来ると、手刀を縦に思いっきり振り下ろし、スライムを倒した。俺は振り返り、手に大きな気を溜める。端まで来たからな。ここらで一度、数を減らしておこう。


「リンネ! 自分とツバキを護るように、結界を張れ!」

「……!」


 獣人姿のリンネは、俺の言葉に頷き、手を前に出した。すると、ツバキたちに向かっていたスライムが見えない何かに弾かれていくのがここからでも見える。

 結界の準備は整ったらしい。俺は、溜めていた気をスライムの群れに放った。


「剛錬掌波ッ!!!」


 掌から、極太の剛掌波が放たれ、スライムの軍勢に風穴を開けながら大爆発を起こす。爆発を受けたスライムは、体をバラバラにしながら、吹っ飛んでいった。攻撃が直撃したスライムに関しては、そのまま消滅してしまった。

 あ、この技になると、素材は残らないのか。気を付けよう。


 その後、土煙が晴れていくと、未だ100以上のスライムが残っていることに気付く。それも、3、4体ずつくらいに分かれて、いろんな場所に散らばっているようだ。こうなってくると闘いづらいし、逃げられる可能性がある。そうなると面倒だと思い、当初の作戦通り、固めることにした。


「リンネ! 幻術を使い、奴らを固めろ!」

「……!」


 再び、リンネは俺の指示に頷き、今度は手を合わせて祈り始める。すると、


 ゴゴゴゴゴゴ……


 と、地鳴りのようなものがあたりに鳴りだした。一体何が起こるのだろうかと思っていると、俺達の闘っていた平野の四方から巨大な壁が、地面を突き抜けて、せりあがってくる。

 呆気にとられる俺とツバキ、そして、スライムたちの眼前で、その巨大な壁は、徐々に俺達の周りを囲み、狭まるように動き出した。

 スライムたちは、それぞれ壁から逃げるように、真ん中の一点へと集中していく。俺はその中に、支給品として渡された疑似餌兼凝固剤を投げた。すると、スライムたちは、俺が投げたエサに飛びつき、段々と固まっていく。スライムたちはそのまま合体し、大きくなった。大きさからみると、ヒュージスライムってところか。

 しかし、ここまで作戦通りになるとは、リンネも大したものだな。リンネはヒュージスライムの姿を確認すると、ニヤッと笑って、手をパン! と合わせた。


 その瞬間、大きな壁はフッと消えて、辺りは先ほどまでの光景に戻る。急に壁が消えたものだから、ヒュージスライムの方も戸惑っているようだ。

 俺は、スライムに駆け出し、大きく跳躍した。スライムは俺に気付き、がぱあっと大きく口を開ける。俺は無間を抜いて、スキルを発動させた。


 ―すべてをきるもの発動―


「ッ!」


 スライムの体のあちこちに、切れ目が現れる。俺はその中でも、真ん中の大きな切れ目めがけて、大上段から無間を振り下ろした。スライムは口を開けたまま縦に裂け、死骸ははじけ飛ぶ。そして、大量のスライムの体液が俺に降り注いできた。

 ぬるぬるとしたこの体液はやはり苦手だなと思いながら、体の色々な部分を拭っていく。もちろん無間もだ。体液を払い、背中に背負った。


「……ふう、これで終わりか……」


 辺りを見ると、スライムの死骸しか目に入らない。生きているものはもういないようだ。ならば安心と思い、ツバキたちの方に歩き出す。


 今回の手柄はリンネだな。幻術を使い、スライムを一つにしたり、ツバキの指示を聞いて、遠距離攻撃を上手く仕掛けていたりと大活躍だった。


「よくやったな、リンネ。偉いぞ」


 いつものように、リンネを褒めて頭を撫でようとする。


 ……だが、リンネは、嫌そうな顔をして、ツバキの後ろに隠れて、泣きそうな顔で、俺の顔を見てきた。


「……え」


 リンネに頭を撫でるのを拒否されるということが結構衝撃的だった俺は、しばらく頭が真っ白になり、そんなリンネを目を丸くして、眺める。

 すると、ツバキがフフッと笑って、口を開いた。


「ムソウ様。流石にリンネちゃんも、スライムの体液まみれの手で撫でられたいとは思いませんよ」


 ね? と確認するように、リンネの頭を撫でるツバキ。リンネはうんうんと何度もツバキの言葉に頷いている。

 ああ、そういうことだったか。確かに俺は今、スライムの粘液まみれだ。リンネはこれが嫌だったわけで、俺のことが嫌いになったわけではないらしい。良かった……。


 俺は神人化し、自分の体を浄化した。スライムの体液は消え去り、若干ついていた生臭い匂いも取れた。一応、昨日綺麗にしたばかりだったので、手甲や鎧、首飾りに無間と、装備も綺麗にしていく。

 そして、体中の浄化が終わった後、そろ~っとリンネに手を伸ばした。


「だ、大丈夫か?」

「……!」


 リンネも恐る恐る、俺に寄ってきて、鼻をすんすんと鳴らす。すると、ハッと目を見開き、俺の手を持って、自分の頭に当ててきた。綺麗になっているようだ。

 改めて、今回のことを褒めると、リンネは嬉しそうに笑っていた。


 その後、神人化を解いて、リンネとツバキと俺で、スライムの死骸を集める。神人化のまま、光葬針の武者を出そうかとも思ったのだが、触れただけで浄化されてしまいそうなので、止めておいた。時間はかかるが、このままやっていこう。


 そして、スライムの素材456体分と、ヒュージスライム一体分、ビッグスライム一体分の素材を回収し終えた後は、再び神人化し、周辺の土壌を浄化してトウショウの里へと帰っていった。


 ◇◇◇


 トウショウの里に帰ってきた後は、そのままギルドに向かう。

 だが、ギルドにはケリスが居る可能性もあり、ツバキはまた屋敷で待たせた方が良いのかと思ったが、ここのところ、あいつの姿はギルドには無いし、最悪外套を被っておけばいいだろうということで、今回はツバキとリンネも、ギルドの報告に連れていくことにした。


 下街から花街に行く際の門の所では、またもやツバキが絡まれそうになるが、ケリスの羽を提示すると、闘宴会の門番は驚き、変な作り笑いを浮かべながら、すんなりと入れてくれる。

 便利なのは便利だが、やはり、この羽は気にくわないと言うと、ツバキは困ったように、そうですねと笑った。


 まあ、無事に花街まで来られたということは良いことであると思い、そのまま大通りを歩いていくと、高天ヶ原が見えてきた。

 時刻はすでに昼過ぎ。そろそろ開店の準備でもしているのだろう。掃除をしている奴はいない。

 ふと、ツバキとリンネを見ると、何か懐かしいものでも見るような目で、高天ヶ原を見ていた。


「寄っていくか? 少しの時間なら良いぞ」

「あ、いえ……なんだか懐かしいなと思っていただけです。それに、会いに行こうと思えば、何時でも会えますので、今日は大丈夫ですよ」


 ツバキはそう言って、ニコリと笑う。リンネも、ツバキの言葉にコクっと頷いた。二人がそう言うのなら、このままギルドに向かうかと思い、歩き出そうとした。

 しかし、俺は誰かから見られている感覚を察知する。その気配の方向を見上げると、高天ヶ原の上の階の窓で、トウリンが煙管をふかしながら、こちらを見ていることに気付いた。

 ツバキとリンネにそちらを指さすと、二人はハッとし、ペコっと頭を下げる。トウリンはフッと笑って、手を振った。そして、満足したのか、中へと引っ込んでいく。


「良かったな」

「ええ。トウリン様、お元気そうで何よりです。そう言えば、ムソウ様は今でも、四天女様の中では、トウリン様に一番好意的なのですか?」


 急に何を聞いてきているのだろうか。これは、以前宴会で言ってきたことだよな。元々、色仕掛けとかしてくる女が苦手な俺は、トウリンみたいに、話すが上手く、俺の知らないことを色々と知っている奴に好感を持てると言っただけなのだがな。

 訳が分からなかったが、ツバキの質問に答えた。


「まあ……そうだな。何度も言うが、好きでもない男に、見境なしに色目を使う女よりは、話していて楽しくなる女の方が良い」

「では……ムソウ様からご覧になられた私は、どちらかと言えば、どちらですか?」


 ……ああ、なるほど。ツバキの質問の真意が分かった。俺は少し悩んだが、ツバキの質問に、正直に答えることにする。


「お前と話すのは楽しいよ。共に戦うのも楽しい……俺はそう思っている」


 ツバキは満足げにニコリと笑って、そうですか、と頷いた。最近は、その辺りは落ち着いてる気がするし、以前に比べると、今のツバキと居る方が楽しい気がする……。


 ……さて、その後、高天ヶ原を離れ、上街へと向かう。ここでは、ショウブ一家の者達は、すんなりと俺と、更にはツバキも入れてくれる。

 高天ヶ原に居た時に、ナズナの護衛で、何度もここを通っているので、顔なじみも多いらしい。簡単な手続きだけで、上街に入ることが出来た。


 そして、そのまま天宝館へと向かった。スライムの素材を査定するためだ。そう言えば、ツバキと共に、天宝館に普通に行くのは初めてだよな。前は、古龍ワイバーンの時だったので、そこまで、一緒に居たわけでは無いし。

 天宝館の中に入ると、ツバキはうずうずとした様子で、辺りの武具の商品棚を眺めていた。なんとも、子供みたいな反応だなと笑ってしまう。

 ツバキは、クナイや鎖分銅が並べられている棚や、小手などの防具や、闘いで効果を発揮する装飾品の棚を見ては、目を輝かせたりしている。

 やれやれと思い、ツバキの肩を叩いた。


「そんなに欲しけりゃ、いくつか買ってやるよ」


 そう言うと、ツバキは、パッとこちらを振り向く……が、すぐに表情を曇らせた。


「よろしいのですか?」

「構わねえよ。お前は俺の護衛だろ?なら、強くないといけないからな」


 俺の言葉にツバキは、ぱあっと笑顔になり、頷く。本音を言えば、いつも世話になっているのだからな。出来ることはしておきたいし、ここに来ることをツバキは楽しみにしていたからな。褒美と言うのはやはり必要だと思っている。


 そして、必要な分だけの金を渡して、ツバキが買い物をしている間に、俺はスライムの査定をしようと、受付に向かった。いつも居る女に依頼票を渡すと、すぐに奥からヴァルナが出てくる。いつもと違い、今日は元気そうだった。


「よう。仕事の方は落ち着いたのか?」

「ああ、ばっちりだ……っと、今日は妖狐と……女騎士も一緒なのか」


 ヴァルナは、俺の肩の上のリンネと、俺達とは離れた所で買い物をしているツバキを見ながら、不思議そうな顔をする。事情を説明すると、なるほどとうなずき、ニカっと笑う。


「ああ、それで騎士のお嬢さんは、買い物か。妖狐の嬢ちゃんは買い物しなくて良いのか?」

「キュウ」


 ヴァルナの問いに、リンネは頷く。一応、魔獣用の装備もあるということらしいが、リンネは、今も付けている耳飾りがお気に入りのようだ。他のものを買う必要は無いようだな。

 リンネの返事に、ヴァルナはそうかと頷く。そして、ツバキはそのまま買い物中ということを確認すると、俺とリンネを、以前、剣山甲を解体した作業場へと案内する。今回はそこまでの数ではないからな。一応、ヒュージスライムも居るということを伝えたが、問題ないとのことだった。


「依頼票には、600以上のスライムとあるが、今回もそれより多かったか?」

「いや、それくらいだったな。ただ、死骸が残らなかった奴らも居たから、正確な数字は分からない」

「ふむ……それだと、完全達成と見てくれないかもしれないが」

「問題ねえよ。この量ならそれなりの額になるだろ?」


 と言って、俺はヴァルナの前にスライムの死骸、更にヒュージ、ビッグスライムの死骸も並べる。それを見たヴァルナは、まあなと頷いた。


 その後、いつも通り、俺は部屋の隅に腰かけ、リンネを膝の上に置いて撫でながら、ヴァルナたちの作業を眺めていた。スライムの解体というのはいたって、単純だ。俺が持ってきたスライムの死骸を何人かで絞る。

 すると、大量の体液と、薄く透明な膜に分かれる。膜の方は特に必要が無いので廃棄するが、体液とその中にある核は、武具や、装飾品の材料になるので、残している。あれで、それぞれ銀貨100枚ほどらしい。

 だが、ビッグスライムになると、質も良くなるので、一匹当たり、銀貨300枚、ヒュージになると、銀貨500枚になる。

 ああ、合体すると、価値が上がるのだったら、最初から一気に固めておいて、ヒュー自以上のスライムくらいになったところを、倒せばよかったかもしれないな。次からスライムの軍勢と闘う時はそういう戦い方でいこう。


 素材が解体されていく光景を見ながら、次からはどうやって戦えば良いのか考えているうちに、ヴァルナたちの作業は終わった。いつものように、すぐにヴァルナが、査定売却票を渡してくれる。


「ほい、終わったぞ。今までお前が持ってきた素材の中で一番楽だったな」

「まあ、俺としては金になるなら何でも良いんだけどな」


 ヴァルナの言葉に笑って返すと、ヴァルナはそれもそうだな、と頷く。


 そして、ヴァルナと別れて、買い物をしているツバキの元に向かった。女の買い物は長いからな。もう少し待った方が良いかと思っていたのだが、既にツバキは買い物を終えて受付の所に立っていた。


「あ、ムソウ様、おかえりなさい。査定の方はよろしいので?」

「ああ、問題ない。お前も買い物は終わったのか?」


 そう言うと、嬉しそうな顔で頷き、買ったものの一部を見せてくれた。魔物の爪や牙で出来た、棒手裏剣、クナイ、鎖分銅が主だ。後は、着物や、髪を結ぶための帯などである。

 武器ばかり買っているのは、何となく違和感があるが、コイツらしいなと思った。


「クナイってのは、また珍しいな。俺の真似か?」


 ツバキが見せてくれた品々を眺めながら、そう言うと、ツバキはクナイを手に取って、ニコリと笑った。


「どちらかと言うと、この方ですね」


 ツバキは懐から、以前俺が渡した、前の世界のツバキの彫像を取り出す。ああ、なるほどと思い、頭を掻いた。


「なら、今度そいつに教えていたように、クナイの投げ方でも教えてやるよ」

「本当ですか!? ぜひ、お願いします!」


 ある程度のことは、独学でいけるだろうが、実戦的なことについては、前の世界ではツバキよりも、俺の方が上手かった。

 あいつに教えたことをこちらのツバキにも教えてやろう。そうすれば、戦略的な面でも幅広くなるからな。


 さて、天宝館の用事は済んだ。俺達は、そのまま、報酬を受け取りにギルドへと向かう。一応、ケリスのこともあるので、ここからツバキは外套を被り、リンネは俺の懐の中に入る。

 中は温かいのか、リンネはそのまま温かそうに顔を緩めていた……。


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