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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
クレナで生活する
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第168話―闘鬼神を連れてギルドへ行く―

 翌朝、朝めしを食べた後、コモンを見送り、依頼をこなす冒険者たちと共に、ギルドに向かった。今日連れているのは十に人ほどだ。そろいの紋章が入ったものをを身に着けているだけあって、何となく楽しいなと感じる。

 他の奴らは、下級から中級の依頼をこなすみたいだが、俺は上級以上を受注するつもりだ。ギルドを出たらバラバラになってしまうが、こうやって皆と街を歩いていると、改めてこいつらの長になったんだということを実感する。


 さて、下街を抜けて、花街へと続く門へとたどり着く。いつものように門番に睨まれるが、特に何かをする気はないので、黙って手続きを行う。闘鬼神の奴らも、俺に従い問題を起こすことなく、花街へと入っていった。


 花街を歩いて行くと、ふと、高天ヶ原の入り口の所に人だかりが見える。何だろうと気になったので、少し寄ってみた。すると、群衆の前にコスケが立っていて、何かを説明しているようだ。


「だから、さっきから言っているように忙しいから今日からしばらく休みだ!」

「おいおい、ふざけるなよ! こっちは遠路はるばる来たんだぜ!」

「そうだ! 楽しみにしてたのにふざけんじゃねえよ!」


 などと、群衆たちからはコスケに対して、怒りの罵声が聞こえてくる。にしても休みか……。何があったのかと思い、群衆をかき分けていく。


「うお!? 何だ、てめえ!」

「邪魔すんじゃねえ!」

「……あ゛?」


 ―死神の鬼迫―


 俺に押しのけられた奴らが、俺に向かって怒鳴ってくる。鬱陶しかったので睨み返すと、そいつらは黙り込んだ。


「ど、どうぞ……」


 と、俺の前に立っていた奴らが道を譲ってくれたので、ありがたいと思い、群衆の中を進み、コスケの前に立つ。


「よお、何かあったのか?」

「あ、ムソウさん! ……今日は普通ですね」

「昨日のことは忘れてくれって。で、何があったんだ?」

「はい、今日から明後日の準備で忙しくなるので、店をお休みしようと思いまして……」


 コスケは申し訳なさそうにそう言ってきた。明後日、というとケリスの宴会か。なるほど、それの準備で忙しいというわけか。そのため、今日から休み……てことは、俺もツバキたちに会えないというわけか。

 納得していると、背後からまたも群衆たちの怒鳴る声が聞こえてくる。


「ふざけんなよ! なんで、そいつ一人のために俺達が損しなきゃいけねえんだよ!」

「誰だ! そいつ! ぶっ飛ばしてやる!」


 などと、喚いている。コスケは、どうしたものかと俺の顔を伺った。こうしていてもらちが明かないから言えば? と頷くと、コスケは一つ咳ばらいをして、口を開く。


「王都の上級貴族、ケリス・ゴウン卿だ。文句があるなら、上街の貴族街の一番でけえ屋敷に住んでいるから、押しかけろ!」


 コスケの言葉を聞いた群衆は黙り込んだ。「ぶっ飛ばしてやる」と豪語していた男までも、顔色を悪くして、口を堅く閉ざしている。流石に、貴族が相手となると、何もできないようだ。

 皆は、それは仕方ないと渋々ながらも、高天ヶ原を去っていった。


 俺も、今日からしばらく、ツバキたちのことはあきらめるとコスケに伝えた。コスケは俺に申し訳ないと深々と頭を下げる。


「しかし、アイツらの言っていたことも間違いではないのですよ。ケリス卿のために多くの客がこないというのは少しな……」

「大変だな、妓楼も……」


 俺の言葉にコスケは頷く。聞くと、ケリスがここを使うのが一日だけだとしても、それまでに色々と準備をするわけだから、今日のように高天ヶ原は休みとなる。すると、客たちは高天ヶ原ではない、闘宴会が管理している他の妓楼へと足を伸ばす。

 ということは、ケリスにますます金が入っていくということになるので、あいつだけが儲けるという仕組みになるというわけだ。


 何と言うか、横暴と言うか、ずるがしこい奴と言うか……。俺は頭を抱えたが、こればかりはどうすることもできないと思い、コスケから離れた。


 皆の所に戻ると、どうしたのかと尋ねてくる。ことの仔細を説明すると、皆は俺の方を残念そうに眺め出した。


「はあ~あ。リンネちゃんってのが見たかったのに……」

「残念ね~……」


 店が休みということのなので、リンネも今日は中で仕事をしているようだ。冒険者たちは、毎朝ここで俺が会っているという話をしていたので、会えるのを楽しみにしていたようなので、がっくりと肩を落としている。

 何で俺よりも残念がっているのだとも思ったが、俺の方も、リンネに会えなくて寂しいな、と思っている。


 すると、後ろからコスケに肩を叩かれた。


「ムソウさん、あちらを……」


 と、コスケは高天ヶ原の方を指さす。差された方向を見ると、妓楼の上の階の部屋の窓から、ツバキとリンネが俺に手を振っていた。


 あまり目立つことはするなと言っていたのだが、これなら話は別だと思い、手を振り返した。すると、肩を落としていた冒険者たちも表情を明るくし、手を振り出す。


「お、頭領、あの子がリンネちゃんか?」

「ああ。で、横に居るのがツバキだ」

「おお、ツバキ殿もこれまた……」

「リンネちゃんも可愛い!」

「え、もう少ししたら、あの二人も屋敷に来るのか?」

「ああ。皆、歓迎してやれよ」


 俺の言葉に、何度も頷く冒険者たち。男も女もツバキとリンネを見て、うっとりとしている。これなら問題ないとは思うが、一つだけ、手は出すなと言うと、もちろんだ! と俺の顔を見ながら怖がるように頷いた。

 そんなに厳しいことを言ったわけではないのだが……。まあ、いいや。


 ツバキとリンネに元気を貰った俺達は高天ヶ原を後にして、再びギルドへと向かった。


 上街の門はいつも通りすんなりと通してくれる。そのまま上街を進んでいくと、ショウブとすれ違う。


「よお、ショウブ」

「おお、ムソウ殿か。……なんじゃ? もう女装は良いのか?」

「ああ。勘弁してくれ……」

「そうか。それで、どうしたのじゃ? 大勢引き連れて」


 ショウブは俺の後ろの冒険者たちを差して、不思議そうに尋ねてくる。いつも俺は一人だからな。珍しいと思ったんだろう。


「今日からケリスが居るからな。揉め事にならねえようにせめて受注だけは一緒に行こうってことにした。女もいるしな」

「ああ、その話か……ちなみにじゃが……居るぞ」


 ショウブはギルドを指してそう言った。ああ、本当に居るのか。面倒だなと思い、俺含め、冒険者たちに顔を隠すように指示した。ある者は外套についている頭巾を、またある者は帽子や手ぬぐいなどで顔が分からないようにしている。俺も頭巾を深く被り、あまり、顔が覚えられないようにした。


「こんな感じで良いか?」

「ふむ、問題ないとは思うが、仮にケリス卿が絡んできても斬ったりしないようにの」

「わかってるって。じゃあ、またな」

「うむ」


 ショウブにそう言って、俺達は再びギルドを目指す。ショウブのことがよく分かっていない何人かの冒険者は、あれが三十台かよ、と呆気に取られて呟いていた。やはりこういう反応になるのだな。

 だが、結構強いぞと言うと、おっかねえと言いながら、ショウブの後姿を呆けて見つめる冒険者たちが俺にはずいぶんと間抜けに見えてしまい、少し笑った。


 その後、ギルドに到着し、中に入ると、辺りを伺った。

 ……居るなあ、ケリス卿。昨日も居た闘宴会の長の大男と、正室っぽい女まで居る。俺は一つため息をつき、冒険者たちにこそっと三人のことを説明した。皆、闘宴会の男と、ケリス卿を苦々しい目で睨んでいる。

 こいつらは元々、花街の浮浪者だからな。自由な出入りを禁じた張本人にはやはり良い気を持ってはいないらしい。一応、睨むのは辞めさせ、手を出すなと念を押すと、わかりましたと皆は頷く。


 さて、ケリス卿はというと、俺が昨日座っていた席に着き、辺りを伺っているように茶を飲んでいる。女装した俺でも探しているのか?

 ……馬鹿め、そんな女、もう二度と現れねえんだよ、と心の中で笑った。


 俺達が進んでいくと、闘宴会の男はぴくッとこちらに意識を向けたようだが、何もしないし、関わらないということを悟ったのか、すぐさま視線を元に戻し、辺りを伺っている。まあ、護衛みたいだからな。こちらから向かわない限りは大丈夫だろう。

 そして、女の方はつまらなさそうに、辺りを歩き回っている。これは、当たり前だな。自分以外の女にうつつを抜かす旦那に連れまわされているわけだからな。何でついてきたのだろうと思いながらも、正直こいつが一番面倒だ。

 時々凄い近くまで来るからな。あまり派手なことをするのは辞めておこう……。


 取りあえず、ケリス一行のことは無視し、依頼票の貼ってあるところまで来る。どんな依頼があるのかと確認しようとすると、後ろから声をかけられた。


「あ、ムソウさん」


 振り返るとミオンが立っている。俺も冒険者たちもミオンに挨拶するとミオンもペコっと一礼した。


「おう、何か用か?」

「はい。上でアヤメ様がお待ちですので、向かってください。そちらの皆様もお願いします」


 そう言って、ミオンは頭を下げる。アヤメの話か。何だろう。しかも、闘鬼神の奴らも一緒ということだ。何か知っている奴はいるかと皆の方を見たが、首を横に振る。どうやら知らないようだな。


 まあ、良いか。話が済んでから依頼の受注をすれば良いし、とミオンの指示に頷き、アヤメの待つ部屋へと向かった。そして、戸を叩く。


「冒険者ムソウだ。アヤメは居るか?」

「お、来たか。入れよ、ムソウ」


 戸の向こうから聞こえてくるアヤメの声は明るい。どうやら、悪い話では無いようだ。


 俺は手に気を集中させて戸を開けた。


 シュッ!


 戸を開けると共に、迫ってくる刃を掴む。そのまま、アヤメの首元にクナイを当てた。アヤメは苦悶の表情で、舌打ちしている。

 何が起きたのか分からないという表情の闘鬼神の目の前で、アヤメを強く睨みつける。


 ―死神の鬼迫―


「ゔ! それやめろって!」


 腰を抜かして、座り込むアヤメが頭を抱えながらそう言った。


「お前も、これ辞めろ! 毎度毎度、無駄なことするんじゃねえよ!」


 アヤメを叱ると、フッと笑い立ち上がり、刀を収めた。そして、ニカっと笑う。


「いやあ~、お前だったら喜ぶかと思ったんだが、違ったみたいだな」


 と、頭を掻きながら調子よく言ってくるアヤメ。毎回毎回、この部屋を訪れるたびに、俺はこのもてなしを受けるのか。こいつはこれを俺が喜ぶと思っているからな。四天女といい、俺をもてなすということがどういうことかわかっていないらしい。


 俺は一つため息をつき、明るい表情で笑うアヤメの襟を掴み、そのまま反対側の壁に押し当てた。


「カハッ!」


 苦悶の表情を上げるアヤメの刀を抜き、その刃を首筋に当てる。流石にこの行動はやばいと慌てたのか、後ろから闘鬼神の奴らが、俺を止めようとするが、そいつらを睨み、何もするなと言うと、冒険者たちは黙り、動かなくなる。

 そして、アヤメの方に目を向けた。


「……俺をもてなすならこれくれえしろ」


 刃をアヤメの首筋に少し当てると、目を見開き、じたばたとするアヤメ。これじゃ、何かの拍子に切れてしまうなとすこし刃を遠ざける。

 そして、更に力を入れて、アヤメを壁に押し付け、黙らせた。流石にアヤメは観念したのか、今までの行動に後悔したのか、俺の後ろで黙っている冒険者たちに救いの目を向ける。だが、冒険者たちは、先ほどから何もせず、ただただその場立っていた。


 俺はずっと黙って、アヤメを睨みつける。さて、これからこいつは何を言うかな? 場合によってはもっと恐ろしいことをしてやろうと、思いながら、殺気を強める。


 すると、アヤメは顔をこわばらせて、口を開いた。


「……い、以後……気を付ける」


 そう言って、頭を下げるアヤメ。……まあ、これは一応謝罪なのだろうなと思い、アヤメを放し、殺気を解いた。ガクッと膝に手をつくアヤメの目の前に刀を突きさして、執務室の長椅子に座る。話したいことがあるなら早くしてくれと、苛立ち気味に視線をやった。すると、息を整えたアヤメは俺の部下である冒険者たちに近づいていく。


「お前らの上司ってか、頭領ってか……怖くねえか?」


 などと、同情を求めるようなことを言っている。流石に、この一件で闘鬼神の奴らが、俺に幻滅したら嫌だなと思い、頭を抱えていると、皆は予想していなかったことを口にする。


「いや、今のは支部長が悪いっすね」

「本当です。私たちの頭領に何かあったらどうするつもりだったのですか!?」

「しかも、それをもてなしってごまかすとはね……往生際が悪いってのいうはこういうことね……」

「アヤメさんは、頭領を怒らせるということがどういうことかわかっていないみたいですね」

「本当だぜ。領主様ならもう少し慎重に行動するべきだ! 自分の身の安全を考えろ!」


 と、冒険者たちからは俺を擁護する声とアヤメを罵倒する声が聞こえてくる。ここは自分の味方をしてくれるのではなかったのかとぽかんとするアヤメに対し、俺はやはりこいつの行動はおかしいし、それに対する俺の行動は間違っていなかったとこいつらが言ってくれているような気がして、嬉しかった。


 その後も、アヤメは闘鬼神の奴らの言葉を唖然としながら聞いていた。


 一通り、闘鬼神からの罵声が終わると、アヤメはわかったと頷く。本当に反省してくれたんだと胸を撫でおろした。

 しかし、すっかりアヤメが元気をなくしたなと、可哀そうに見えてくる。


「その辺にしとけ」

「了解です、頭領」


 俺の言葉に頷く、皆。アヤメは、はあ~~~、と長い溜息をついて、俺達を恨めし気に見ている。だが、すぐに、フッと笑い、俺の対面に座った。


「ふむ、部下とうまくやっているみたいだな」

「部下じゃねよ。家族さ」


 アヤメの言葉にそう返すと、そうかと頷くアヤメ。闘鬼神の奴らは嬉しそうに笑った。

 同じ家で、同じ風呂に入って、同じ釜の飯を食っているこいつらは、もう、俺の家族同然だと思っているからな。大事にしていきたい。


「で、何だよ、話って……」

「ああ。ギルドの調査団にお前んトコの者達に協力してもらうって話なんだが……」


 ああ、その話か。冒険者不足によって起こっている調査団の報告遅れや、内容の不一致には俺もまいっている。なので、俺の所の冒険者たちを使ってくれとアヤメに許可すると、承諾され、屋敷の連中も問題ないと提案を受け入れた。今日は正式に闘鬼神をクレナの調査団に加えたいとのことらしい。


「取りあえず、今いる奴らだけでも、手続きを済ませて良いか?」

「ああ、問題ないぞ」


 そう言って、皆の顔を見ると、頷き、アヤメの取り出した書類に名前と、使えるスキルや技を書いていった。俺はその作業をひたすら眺めるだけだ。

 俺の方は調査団には入らない。アヤメ曰く、俺には調査よりも、それで判明したり、未だ多くある討伐依頼の方に専念した方が良いということだった。それには納得しているので、問題は無かった。


「……お? お前は隠蔽スキル持ちか。なら即戦力だな」

「あ、はい。ありがとうございます」


 アヤメが一人の冒険者を褒めると、そいつはペコっと頭を下げる。魔物の動向を伺うという危険な仕事のため、隠蔽のスキルはあった方が良いらしい。魔物に気付かれず、なおかつ自分の命を護れるからな。


「あ、だったら、コモンに頼んでいる迷彩トカゲの素材も使えそうだな……」

「そういや、そうだったな。仕事をするときには全員に持たせるようにしておいてくれよ。その方が安全だ」


 迷彩トカゲの素材でできる武具は、隠蔽のスキルが無くても姿をくらませることが出来る。音やにおいまでは消せないが、それでも仕事をする上ではいくらか安全になるとのことだ。どれだけコモンが作ってくれるかは分からないが、調査に赴いてもらう際には、そいつらに持たせることにしよう。


 そうやって、皆が書類に名前を書いていき、手続きは滞りなく終了した。


「よし、これで終わりだ。ご苦労だったな」

「はいよ。また何かあったら言ってくれ。出来ることなら協力するからな」

「ただ、先ほどのようなことはやめてくださいよ」

「ああ。頭領が次にマジで怒ったら、領主さんの首が飛ぶかも知れないからな」


 俺に続いて、冒険者たちは笑い、アヤメはぐぬぬと黙った。闘鬼神の奴らも、だんだん俺に似てきたなと苦笑いし、アヤメの部屋を後にする。

 今後、調査の仕事が発生するときは、俺を介してか、登録された冒険者たちがギルドに来たときに指示されるそうだ。これで、依頼の内容に不備が出ても大丈夫だろうと思い安心している。


 実のところ、俺も皆には期待している。最初の依頼だけでなく、俺が旅に出ている間に取り組んだ依頼についても、皆失敗は無かったからな。元は花街で行き倒れていたにも関わらず、冒険者としての腕は優秀なようだ。取りあえずは皆と共に依頼にどんどん取り組もうと思っている。


「さて……と。んじゃ、依頼を確認するか」


 俺達はそう言って、再び、貼りだされた依頼票を眺めた。さて、どんな依頼があるかな……。


 ……


 火炎獣の討伐及び素材の採集 報酬銀貨500枚 さらに素材の売却金 要戦闘向きスキル、可能ならば、水氷雪系魔法の行使者

 大王オオトカゲの討伐 報酬銀貨500枚 さらに素材の売却金 要戦闘向きスキル

 サキュバスの討伐 報酬銀貨1000枚 素材は依頼主の全て依頼主のもの 要戦闘向きスキル ※男性のみで受注しないこと

 ミニデーモンの群れ討伐 報酬銀貨300枚(討伐数により変動) 要戦闘向きスキル 近接戦特化スキル

 デスニアの群れ討伐 報酬銀貨200枚(討伐数により変動) さらに素材の売却金 要戦闘向きスキル 可能ならば火、雷系魔法の行使者

 ナオリグサの採集 報酬銀貨100枚 要採集、鑑定スキル

 火炎鉱石の採集 報酬銀貨200枚 魔鉱塊ならば銀貨500枚 要採集、鑑定スキル

 ゴブリンの討伐 報酬銀貨100枚 さらに素材の売却金 要戦闘向きスキル


 ……


 ……うわあ、ほとんど討伐依頼だな。そうは言っても俺が居ない間にも増えたみたいだ。ひときわ目を引くのが、このサキュバスの討伐、報酬が桁違いだ。

 皆に話を聞くと、サキュバスというのは、ハーピィたちと同様、男を誘惑し、その精気をむさぼる悪魔のことらしい。これこそ、マシロでハクビと闘ったルーシーの種族に近い感じだな。

 この依頼の奴はそこまでは強くないとのことだが、魔力や、戦闘能力はハーピィの比じゃないらしく、女相手でも上級はいくという。


「過去に男だけで構成された数十人の冒険者を、たった一匹のサキュバスが壊滅させたって話は聞いたことあるな」


 などと、冒険者たちは言っている。なるほど、下手したら上級以上の魔物ってわけか。こいつらには荷が重そうだな。

 だが、俺はルーシーの時も特に何も感じなかったし、そこまでは心配ないかなと思い、今日の所はこの依頼にしようと依頼票を手に取った。


「じゃあ、俺はこれを受けるか」

「フフッ、頭領なら心配なさそう。けど気を付けてね」


 と、一人の冒険者が口を開く。こないだダイアンらと共にハーピィの討伐に参加した女の冒険者だ。リアじゃない。確か名前は……ルイといったかな。


「ん? 何がだ? ルイ」

「こないだは、クインハーピィは倒したけど、生き残ったハーピィたちがそのサキュバスに与しているかもしない。それに調査団の情報は当てにならないから、ひょっとしたらすごく強い個体も居るかも知れないよ」


 ああ、なるほどな。そう言われたらそうかも知れない。今までのことを考えるとサキュバス種の魔物が他にもいるかもな。例えば、禁煙種であるデーモンとか……。

 だがまあ、そう言った魔物も誘惑さえはねのければ、せいぜい下級から中級くらいの魔物らしいし大丈夫だろう。


「忠告ありがとう。だが、そうなったら殲滅しておくよ」


 ニカっと笑ってルイにそう言うと、皆は、流石頭領と黙り込んだ。


「にしても素材は依頼主のものというのが気になるな。誰か何かわかるか?」


 依頼票を読みながら、疑問に思ったことを口にすると、また一人の冒険者が手を上げる。こいつはクナイなど投擲武器を使う男の冒険者で、名前はカサネ。

 少しやせ気味だが、礼儀正しさでは闘鬼神の中では群を抜いている。先ほど、隠蔽スキルがあるとアヤメに褒められた奴だ。


「サキュバス種の素材……というか、血は強力な媚薬と聞いたことがあります。恐らく花街で使うのでは?」

「……なるほど。近々あそこの貴族が宴会もすることだしな。ひょっとしたら……」


 俺はケリス卿を見ながらカサネの言葉に頷いた。すると皆も、ああ、と言って頷く。恐らくということだが、何となくこの依頼を受けるのが嫌になったが、報酬の額もかなり高いので、この依頼を受けると決めた。


 その後は、闘鬼神の奴らが何を取り組むか、決めていく。それぞれ話し合い、誰がどの依頼を受注するか決めていくようだ。場合によっては集団で行くこともあるからな。どういった配置にすればいいか、俺も皆の輪に加わる。


「火炎獣は前からあるな。中級だし、そろそろ行っておくか……」

「あ、じゃあ俺も行くぜ。依頼のある場所は何度か行ったことあるしな」

「私も行こっかな。あまり多用は出来ないけど、放水(強)なら使えるし。そういや、アンタもそうだったよね?」

「はい! 私も行きます!」


 と、燃える虎のような魔獣、火炎獣の討伐には、ツバキを美しいと言っていたアビ、罠を仕掛けるのが得意なマルス、ハーピィの討伐に加わったルイ、魔法使いの女で、皆よりも一回り年下の、闘鬼神の妹分ロロの四人が向かうことになった。

 主にマルスが仕掛けた罠に、アビが魔獣を追い詰め、罠にかかったところを水の魔法を使えるルイとロロが一気に弱らせるという作戦のようだ。ここはそこまで心配ないだろうな。先ほど俺に忠告してくれたように、ルイは頭もよく回るみたいだし。


「んじゃあ、俺達は火炎鉱石の採集に行くか?」

「だな。こないだの雷光鉱石の時と違って、雷が無いからお前も安心して良いぞ」


 こないだ雷光鉱石の採集に行った三人は、今度は火炎鉱石の依頼に取り組むみたいだ。飯を誰よりもうまそうに食べるアレン、屋敷の作業の時にてきぱきと動き、大工たちから褒められていたルーク、そして……


「うおっ! 採掘場所、シンコウ山じゃねえか! ……いいか、火山には火山雷というのがあってだな……」


 前回、雷光鉱石の時に雷に当たり、大きな音に敏感になってしまった、ハルキ。火山にも雷があると言って、何とか二人を説得しようとあれこれと言うが、


「うるせえ! とにかく行くぞ!」


 と、一蹴され、渋々二人と火炎鉱石の採集依頼を引き受けるようになった。何だかんだで仲が良いらしい。


「ふむ……シンコウ山って俺が噴滅龍を倒したところだな。一応、殲滅はしたがオウガの生き残りが居るかも知れないから気を付けろよ」


 俺が忠告をすると、アレンとルークはニカっと笑う。


「おう、任せとけって!」

「コモン様の防具があれば何とかなるさ!」


 ルークはコモンから貰った鎧を自慢げに俺に見せてきてそう言った。コモン曰く生半可な攻撃は大丈夫とのことだが、万が一という可能性がある。


「そうかも知れないが……よし、お前たちも一緒に行ってくれないか?」


 そう言って、他の冒険者たちの中から二人ほど指名した。先ほどアヤメに苦言を一番最初に言ってくれた剣士マグルと、武術の心得がある女拳闘士、レイランだ。二人はすぐに頷いた。


「了解っす」

「わかりました」


 こいつらの役目は主に、他の三人の護衛という名目だ。シンコウ山には他にもワイアームも居たし、あのあたりは魔物が多いからな。腕に覚えのありそうなこいつらが、三人を護り、その間に採集の方を完了させるということなら大丈夫だろう。


「で、残ったお前らはどうする?」

「俺達は全員、ミニデーモンの方に行くっす。人数も多いし、相手も下級だから殲滅狙いで」


 残った冒険者のうち、棒術と気を合わせた技を使うという男、チャンが後の二人を指してそう言った。

 残ったのはチャンと同じく近接攻撃が得意な者達ばかりだ。魔法が効きづらいミニデーモンにはちょうどいいかも知れないな。


「なるほど……ただ、それもデーモンも居るかも知れないからな。気を付けろよ」


 マシロでそうだったからな。あの時はデーモンロードなんてのも居たし、意気揚々と依頼に向かったウィズとレイカは散々な目に遭った。

 流石にデーモンロードは居ないかも知れないが、普通のデーモンは居るかも知れない。俺とハクビは特に苦労した覚えはないが、相手は超級以上の魔物だ。遭遇しても倒すことは考えるなと伝えると、三人は強く頷く。


「うっす!」

「頑張りまっす!」

「その時は全力で逃げるっす!」


 チャンに続いて、短刀を両手に持ち、身軽な体さばきで敵を翻弄する戦い方をする女冒険者チヨと、トンファーという珍しい武器を使うチョウシという男はそう返事をした。

 他の依頼に取り組む奴らにも同様に、無理そうなら逃げろとだけ伝えた。ダイアンのこともあるし、それくらいでは怒らないからと言うと、安心した皆はコクっと頷く。そこは素直に頷いてくれ……。


 さて、それぞれが受ける依頼票を持って、ミオンの所に行き、受注の手続きをする。皆は特に何事もなく受注することが出来たが、俺の番になると、


「え、サキュバスの討伐にムソウさんだけが行くのですか?」


 と、止められる。男だけ、しかも一人だからな。流石に心配になり、どうしようか悩んでいるミオンに闘鬼神の奴らが口を開く。


「ミオンちゃん、大丈夫だって。頭領だぜ? 魔物の色香には惑わされねえよ」

「それに強いからね。心配はないと思うよ」


 などと言いながら皆は笑っている。お前らは俺のことを少しは心配してくれと思ったが、俺のことをよく分かっているようじゃないかと感心した。

 皆の言葉を聞いたミオンは、フフッと微笑み頷いた。


「わかりました。皆さんのお言葉を信じますね。では、ムソウさん、こちらが今回の依頼の詳細と、支給品になります」

「ああ、ありがとう。またすぐに帰って来るからな……」

「は、はい! お待ちしておりますね!」


 オオイナゴの時も剣山甲の時も驚かれていたからな。今回も早く帰ると伝えると、ミオンは笑って、頷いた。


 その後、ミオンに別れを言って、何とかケリス卿を上手くかわしながらギルドを出た。そして、トウショウの里の門の前に立つ。

 他の、俺とは違う依頼にそれぞれ出る皆の顔を見渡した。


「じゃあ、また依頼を終えて元気に帰って来いよ」

「へへっ! そりゃ、頭領にも言えることだぜ」

「まあ、私たちは特に心配はしてないけどね」


 などと言いながら、皆は笑っている。そら見ろ、やはり心配はされていないか。だがまあ、俺も、強すぎる頭領、エンヤのことは一切心配していなかったからな。

 それだけ、俺の強さを信用してくれているということかと思い、俺も皆に続いて笑った。


 その後、それぞれ依頼の場所へと向かい旅立っていく。シンコウ山に向かう奴らにはいったん屋敷に戻って馬車を使うようにと指示した。俺とたま、ジゲンがここに来るときに使った馬車だ。

 まだ、十分使えるだろう。今回の中で一番遠い場所だからな。そうしろと言うと、チャンたちは屋敷の方へと歩いて行く。


 一人になった俺は、神人化した。今回の指定場所は少し遠いからな。飛んでいった方が楽そうだ。ただ、いつもよりは妓楼に寄ることがないので、取りあえず晩飯までには帰れればなと思い、ゆっくりと行こうと思っている。


 ふと見ると、もう闘鬼神の奴らの姿はどこにも見えなかった。早いなあと苦笑いする俺。


 違う方向に向けて歩き出しても、帰る場所は一緒だ。頑張って依頼をこなして、また一緒に飯を食おう。


 心の中でそう思い、俺もサキュバス討伐の指定場所に向かって飛び立っていった。


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