第9話「統合案A1」
シルバスタイン案とエイドリッヒ案は、最終的には統合されることとなった。機動兵器主流の風潮に対応することを設計に盛り込んでいくと、両者の設計局は似た結論に近づきつつあったからだ。
統合案A1として、設計が進められることになったようだ。六六工廠管理の中でデータのやり取りが頻繁にかわされていた。
ベースフレームには、シルバスタイン案の装甲・構造材一体型のフレームを採用しているが、基本的なレイアウトはエイドリッヒ案の民間輸送機能を優先している。低い推力だが高効率での加速を発生させるために、エーテル抵抗を低くとりつつも、お尻はふっくら、エンジンを束ねたブロックが目立つ。大推力の単発エンジンは主流ではない。小型のほうが、多くのドックでの整備に都合が良いのだ。
そんな新しい設計は花形ではあるが、私が設計するわけではない。ドックの空きをせめてカラにするために、中古船舶業者と契約を取り付けつつ、再生産業としてドックの穴埋め中だ。どこにでもいるスクラップ業者から、廃艦を買い上げ、修理して転売だ。
艦隊戦があれば、大量のデブリ化した戦艦やらが渦を巻く。屑鉄だが、それを処理する業者も必要なのだ。キャッシュを払い、払われ、事業を拡大中だ。少なくともドックの空きで遊ばせておく時間を減らす。無駄に遊ばせられる余裕は作らせない。デブリ産業は利益換金率が高い。初期投資がちょっと高いが、グラビティキャッチャーや高圧縮加工機、分子分離システムやら再加工工場などは、元々六六工廠にある機材が使える。航宙商品は工廠の主力だったからだ。
現在の六六工廠のキャッシュ源は二つだ。グリンチ方面への売りでガンソード商会の窓口による手数料と、スクラップ業者から買い付けたデブリの再生だ。あとは軍民手広く、ドックでの修理を受注している。他にも日に日に利益が下がっている、スタンダードテンプレートの商品もあるが、もはや生産するだけ浪費になっていた。
金属資源を採掘惑星から購入せず、デブリの屑鉄から再生しているのが泣きを誘うな。それでもドックや工作施設の多くを閉鎖して、最小限の施設に人員を集中することで日銭を支えている状況だ。空きドックが勿体無いが、全ドックを埋めて稼働させる余裕がないのも実情か。
統合案A1は、この二つの産業を考えて設計変更を繰り返している。仮想実験でのデータも悪くない数値だ。そろそろ試験艦の建造に着手できるかもしれない。ドックのスケジュールと、必要とされる建造資源などの備蓄をもう少し進めておくか。
主力の航宙商品予定の、統合案A1のデータを見る。機動兵器などの拿捕活動への備えとして、攻撃的運用の重力アンカーなど至近距離でエネルギーシールドの有無を問わず破壊する兵器が積み込まれている。飛び道具ではないので誤射はない。密集した船団の間でも運用可能なように考えた兵器なのだそうだ。
色々考えているものだ。




