第8話「共和国兵士の喋るおやつ」
グリンチ侵略共和国の兵士のおやつにされかけていた男を見つけた。集金パーティで顔見知りになった、ガンソード商会のソードだ。
「げげっ!?サラザール様!」
「ほらほら、出席者を摘むな。散った散った」
「は、はい……」
共和国兵たちの一団が、そそくさと退散していく。私はため息を隠せない。
「命知らずなんだな、ガンソード商会のソード」
「た、助かりました」
「どこか食い千切られたか?」
「いえ、どこも……」
「お前の幸運を祝せ」
グリンチ侵略共和国に、食われない保証もなく入るなんて無謀にもほどがある。例え丁重な招待状が送られてきたとしても断るものだ。お前を食ってやるという意味しかないぞ。
「ガンソード商会が何だってグリンチに首を突っ込んでる。死にたいのか」
「招待状、がきまして。それ、も、パクト王家直々の、刻印の封書、だったので断れず」
「阿保だな」
「面目なく……」
命を助けたついでだ。
「何か売り込みにきたんじゃないのか」
「え、えぇ、よくお気づきで」
「命張ってんだから、大量のキャッシュが絡んでるんだろ。うちの六六工廠が代理で仲介しても良いぞ」
「えっと」
「考えとけ。食われる前にな」
ソードは慌てていた。そりゃ、食べられたくはないだろう。
「機動兵器、売り込みにきたんですよ」
「お前、一一工廠のリリムから買い付けていなかったか?」
「それ、です。ガンソード商会が仕入れて、売っているんです」
「機動兵器をか?」
「はい。需要、高いんです」
「そりゃまたどうしてだ。そこらのワークロイドでもかまわないだろう」
ソードが不敵に笑う。
「退役軍人、が大量放出されてるのは、ご存知で?」
「知ってる」
「艦隊ごと、放出されて、海賊化、してるんです。民間市場は、そんなに、受け入れられませんから。正規軍人と正規兵器、の撃破は民間では、不可能、です」
そういうことか。確かに、民間火力で帝国宇宙海軍の艦船を沈めるなんて不可能だ。不可能ではないが、艦隊戦なんてされれば、船団なんて束で消滅する。だからこその機動兵器。船団の船に載せて、接近戦で牽制するつもりなんだ。海賊稼業は拿捕して幾らの世界。その拿捕活動を妨害することで、結果的の海賊の襲撃をかわそうというわけか。何よりこれなら、従来船の一区画にハンガーを用意してやるだけで済む。容量の大きい民間船なら、簡単だろう。
「機動兵器が流行ってるわけだ」
「一応、対艦装備、ありますから」
「乱戦になれば商品も傷つくしな」
「そういうこと、です」
私はソードと話をしながら考えた。これは、民間でも新造船を大量に買うつもりはない。機動兵器で凌ごうとしている。あるいは、拿捕を妨害できる能力を重視したほうがいいな。軍艦とは違う、敵を沈める能力ではなく、安全性を確保しつつ、大量に安く運べる航宙商品か。何はともあれ、今はガンソード商会しかデータがない。もっと他も集めないと駄目だ。
「で、うちが代理で売る話はどうなんだ?その機動兵器とやらを見せてみろ」
「企業秘密ですよ」
「法外な手数料は引かなない。ただの小遣い稼ぎだ。一割……くらいキャッシュを入れてくれるだけでいい。そうすれば、お前たちはグリンチで売れる。断るなら食われることだな」
商談はなった。口約束だが、この日のうちに、正式な契約として提出された。ガンソード商会グリンチ方面窓口として六六工廠が入ることになった。
これで、少しはキャッシュを稼げる。




