第7話「パクト王家と共和国」
気が重い。
パクト王家のパーティに招かれた。宇宙でも悪名高き、グリンチ侵略共和国の面々揃い踏みだ。捕虜を積極的に食うことで有名だ。
秘書のベルベルちゃんは表情が死んでいた。
「ベルベル、顔にはだすな」
「はっ。申し訳ありません」
ベルベルはパーティ会場の食事を見ていた。同族の丸焼きで串焼きだ。
「女王陛下!」
「おぉ!?サラザール殿じゃないか」
「白々しいですなぁ!声をかけられるのを待って、こちらをチラチラ見ていたではありませんか!」
「はっはっー!やはり気づかれてたんだね!」
パクト王家の頂点支配者、エム・ラー女王陛下が地を揺らしながら近づいてきた。声が大きい。
「浸食戦争以来の長い付き合いの友人が、やっとこのパーティにでてくれて余は感無量だ」
「パクト王家には六六工廠が世話になりますから。顔をだしとかないと」
「まるで、できればパーティにでたくなかったかのように聞こえるぞ?」
「人食いパーティですから」
私は肩をすくめた。
「はっはっー。正直な男だ。ーーおい!サラザール殿らに合った部屋と料理へ案内しろ」
エム・ラー女王陛下のご好意で、パーティ会場から離れた一室を設けてもらった。テーブルの上に準備されたのは、どこでも基本的に食べられる当たり障りのない高級料理の数々だ。
「キャッシュか」
エム・ラー女王陛下がグラスに赤い酒を注ぎながら訊いてきた。私のほうからも、エム・ラー女王陛下のグラスに酒を注ぐ。
「いや、今回は本当に義理を通しただけです。出資者のパーティに顔を出しておく、義理をですね」
「殊勝だ」
エム・ラー女王陛下の巨体には指先ほどでしかないグラスをあおる。
「変わりないのか。工廠の民営化は強硬されたというよりは、切り捨てられたと聞いておる」
「パクト王家の友人がいたからもっている状況です」
「ふっ。友情に乾杯だな」
「戦友ですね」
「そうだ。戦友は死か裏切りまで、戦友であり続ける」
数奇な運命だ。私がパクト王家との繋がりをもったのは、グリンチ侵略共和国の浸食戦争からだ。
「余の武勇伝を自慢してもよいか?」
「勘弁してください」
「後ほど思考結晶として送ろう」
「ありがとうございます」
私のグラスの酒を飲み干す。酒ではなかった。ジュースだ。
「仕事なのに酔わせるわけにもいかんだろう?」
驚きが顔にでていたようだ。
それから二、三、世間話をしたが、私のほうから話を切り上げさせてもらった。パクト王家の長も公務があるのだ。パクト王家側の侍従もどこかホッとしていた。
「また生きて会えると良いな。余の食卓にあがっていると悲しくなる。パーティを好きに楽しんでいってくれ。あるいは帰ってもよい。別れの挨拶なんて、余にしてくれるなよ?」
エム・ラー女王陛下はそう言い残して退室していった。
「サラザールさま!この魚美味しいですよ!」
「……食べとけ、食べとけ。給料を次に払えるのかわからないからな」
「ーー!?」
「冗談だよ」
パーティの趣旨は、グリンチ侵略共和国の新生を祝してだ。今まで敵対してきた種族が、食卓に並ぶ日も遠くはないだろう。




