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第6話「求められるものが売れるが、売れなければわからない」

難しいな。


シスバスタイン案、エルドリッヒ案、どちらも設計に不備ありとして数度の設計修正を求めている。これ自体には別に特別なことではない。双方の想定した環境を更新するたびに、細かな修正で設計を詰めているだけだからだ。長期的な修正が必要な期間というわけではない。そのあたりは、人工知能による自動最適化ソフトが時短に貢献して様々だ。


選択は、どちらかに決断するが、設計に対して細かい指示をだすのは私の仕事ではない。


各支工廠から、各種の申請書が提出されている。支工廠には権限を与えているが、流石に他の工廠や大規模な資源の購入、惑星における傭兵事業などは、法務部を混ぜての精査がいるのだ。


一々口出しはしないが、グレーな事業には許可を出させるし、六六工廠の方針にも従ってもらう。それを守る元締めが必要だが、全てが全てに目を光らせはしない。


問題は多いな。


六六工廠の民営化で、熟練技術者の流出とその補充の申請が目立つ。大量に発生した退役軍人の囲い込みにもキャッシュがかかるのだ。技術者が勝手に辞めるのはともかく、中には受け持っている工廠の機材を勝手に売り捌こうとする者もいる。キャッシュにして夜逃げだ。


流石に、見逃すほど甘くはない。


警備部門が家畜用飼料転換炉に投入する有機資源は、当面の間、減ることはないだろう。肉100%の生きた肉ならば、肉食の種族も喜ぶ。幸か不幸かはわからないが、何千人かの提供による珍味は、気性に多少の問題はあるが優秀な技師集団でもある、パクト人のファーストワン社と技術協定を結べた。


パクト人は、旅人を国家ぐるみで拉致して捕食している噂で有名だ。一部に限れば、それは噂ではない。パクト人の主星では、どこかの不幸が珍味として食肉加工されている。悪人ほど美味いそうだ。パクト人の味覚は硬くて不味いものを求める。


人食いだが、キャッシュの羽振りは良い。赤い大地の主星の地下にはネストをそのまま重工場として組み込んでいる。六六工廠もその工場拡大計画用に機材を納入できることになった。勿論、珍味という賄賂を使ってだ。


リストアップされた、裏切り者を……ではなく新しい珍味の輸出に許可をだす。


新しい販路だが、パクト王家との付き合いは頭が痛い事態になるまえに予防線を貼り続ける必要があるのは面倒だ。パクト王家摂政ド・ラパは女王の傀儡でしかない。野心はあるが、遺伝子とネストへの忠誠は本物だ。細いが、キャッシュを産む線を一つ確保した。パクト系の事業に従事する者には特別手当をあてられるよう、新しい予算も捻り出しておくか。精神的にはキツイだろう。


他のの工廠も独自の路線を固めてきていた。


調査報告書によれば、方針はそれぞれだが、少なくともどれも成功しそうだと考えられるだけの方針だ。


ほとんどの交渉は、帝国宇宙海軍をまったく相手にしない方針のようだ。感情論というよりは、大規模な受注がないと判断してのことだろう。


次の報告書では、帝国財務局のさらなる緊縮がほぼ確定したとあった。これにより既存艦の改修と廃棄で財務への負担となっている軍事費を削減する狙いだ。新規採用は当面なく、改修事業も内定しているとなれば、食い込めるものがない。さっさと次を目指すべきだ。


となれば、帝国宇宙海軍への納入のための案である、シルバスタインの案はその意味を薄めるだろう。貴族の私艦隊に売る販路も無いわけではないが、連中はお抱え商人から購入する。商人は、伝手と義理で受注を割り振るだろう。


商人か……。


商人に現物を売りつけて、他でバラ売りさせる道もある。


販路が一つしかないのは、不安しかない。柱は多いほうが、家を支えやすいものだ。

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