第21話「よもやま」
パーティというものは大切だ。何せ生きたキャッシュが一堂に会するのだから、顔を広げておいて損はない。ただし、あくまでもがっつかず、紳士的に。
失敗を恐れていられるか!最低限の地位さえ守れていればいいんだ。挑戦なきものに進展はない。九割手堅く一割挑戦的に!
だが今回の集金パーティは大物の取り巻きが多く、中々話し合いといけなかった。そりゃそうだろう、皇帝一族が来ているのだ。私は、別に皇帝一族に売り込んでも利益がないので、話し合いの間、壁で待たされているお嬢さまがたと懇意になった。
知ってるんだぞ、皇帝はあくまでも決定するものであって、その他の調整は全部、帝国財務局が作るものだ。帝国財務局が作った書類を、皇帝が目にとおす。媚びるなら帝国財務局だが、いけ好かないうえに、この集金パーティには来ていない。
退屈なお嬢さまがたで輪を作った。どうせ、呼ばれるまで暇なのだ。食事でもしながら、のんびりしておけばいい。彼女たちには悪いが、航宙商品が売れはしないだろう。どこかで顔を覚えていてくれる、それだけで充分だ。
これもそれも皇帝一族のせいだ。どうせ、朕もどーたらこーたらで、強引にねじ込んできたのだろう。皇帝ならやる。皇帝の一族ならやる。悪ガキみたいな連中だ。
「まあ!」
皇帝に比べて、お嬢さまがたは聞き上手で、楽しそうに話を聞いてくれた。楽しそうな演技でも、楽しそうにしてもらうと嬉しいものだ。くどくどとは話さない、さらりと流していって、反応が良ければ話題を掘り下げる。お嬢さまがたにも話をふる。一人舞台にはしない、みんなが参加するお喋りであるようにする。仲間外れは寂しいものだ。
皇帝陛下は一人舞台を、標準日に八標準時間くらいやってた。
「そこで我らが戦友ウォークスは、助けだした姫殿下の誤解を解くことはなく、その背中を刺されるのです。姫殿下はウォークスの初恋の相手、また姫殿下自身もまたウォークスを好いていました。しかし、刺し、刺されるを良しとしてしまったのです」
「サラザールさま、ウォークスさまはどうして、ラフ姫さまのご兄弟を殺めたという誤解を解こうとはしなかったのでしょうか?」
「悲しい理由です。ウォークスは、もうすでに姫殿下の心が壊れていて、ウォークスを恨むことでのみ、生きていられている状況だったことを知っていたのです。そしてウォークスは、ずっと生き続けています。彼が生きている限り、愛する姫殿下もまた復習に駆られ生きて、ウォークスを追いかけ続けていきますから」
「歪な愛情ですね……」
話のタネは幾らでもある。時間潰しに都合が良いのだ。本気で吟遊詩人にでもなろうか、と考えた時期もあった。吟遊詩人の師匠に「お前はこれ一本で絶対に食っていけないから、趣味にしとけ」と念押しされたけど。
「ーーお話はこれでおしまいですね」
小鳥の羽音よりも小さい、ささやかな拍手がお嬢さまがたから貰えた。その中にはしれっと皇帝その人と、あとその他が紛れていた。せっかくお嬢さまがたに名前を売ろうと思ったのに、注目は皇帝の独り占めだ。やっと皇帝が「すまんな」と『話しかけてきた』のはそれからしばらくしてからだ。
「面白い話だなぁ、サラザール。俺の背中の皮下装甲の弱点を女にバラして刺させた、愉快な昔話にそっくりだ」
「はい。皇帝、奇妙な偶然の一致というものですね」
皇帝は昔、色々あったようだ。もしかしたら、刺されて死にかけて怒り狂った皇帝を停滞フィールドにぶち込んだ記憶が、私の中にもあるのかも知れない。最近はボケが進んで今ひとつ思い出せないが。
「売り込みはどうなんだ?」
「順調ですよ。民営化させていただいてから自由にやってますよ、六六工廠は」
自由だから色々挑戦しないと生き残れないがね。キャッシュは行動からだ。のんびり口を開けているのではなく、食べにいかなければいけない。気楽にやってるということにしよう。でなければ怖すぎて足が止まりそうだ。
「棘があるな」
皇帝が肩をすくめているが、工廠を帝国から蹴り出すのをあっさり認めたのを知っている。財務局からの要請だったが、皇帝がゴーサインを積極的にだしているのだ。
非情に切り捨てる。
捨てられる側はたまったものではない。だがそうでなければいけない者がいることも知っている。嫌な物知りだ。
「今後の予定はあるのか?」
善意ではないだろう。皇帝は六六工廠に探りを入れているのだ。それもあからさまにだ。
私は、六六工廠らしい微笑みで答えた。
「それは企業秘密です。皇帝陛下も、六六工廠の商売敵の一人ですから」
皇帝は別に驚きで顔を染めるわけでもなく、ただ「そうか」と言い残してさっていった。
さぁ!
これからだ。
仮にも皇帝さえ敵か味方に置かなければいけないのだから、まずは隣に立てるようにならないとである。
私は頭の中で今後の計画を組み立てた。恐れるだけだと選択肢は何もないだろう。だが、挑戦的であれと勇気をもてば、けっこう、色々と道があるものである。
さぁ、まずは恐れずに一歩。
進まなければ先はわからないのだから。




