第20話「成功ばかりの優しい世界は存在しない」
圧力が強まっていた。シェア争いというヤツだ。諜報活動を抜かれた。営業で売り込むときの提示コストや改修スペックに建造から廃艦までのパッケージングコストを他工廠に知られていたのだ。何も知らずに、古いデータのまま営業して惨敗した。
「業績が伸び悩むな」
営業開拓も上手くはいかないらしい。妨害工作というよりも、純粋にライバルと比較される機会が激増しているからだ。六六工廠のアクティ級は満点で押しだすほどのものではないが、環境にあった性能で安く、充分に自慢できる航宙商品ではある。だがそれは、やはり、工廠独自の航宙商品であり、他の工廠でも可能な技術レベルでしかないのだ。個性を育てるのにも、まだまだ時間がかかる。
個性になるまでの経験をもっと積ませてやりたかった。幸いこれに関しては、パン諸藩同盟やグリンチ侵略共和国の技術陣の個人的な交流から育ちつつはある。
他の工廠との競合になったときの決め手は、航宙商品や工廠に対する好感度くらいだ。性能には、劇的な違いはないのだ。ないのだがアクティ級に似たような航宙商品は今、ざっと一〇〇はいる。民営化した工廠の数より少し多いくらいだ。
営業活動にも失敗が目立ち始めた。どこの勢力も、もっとも始めに手をとった工廠を贔屓にするから、後から割り込む隙はない。どこも開発能力に大差はないのだから、懇意にして割引きしてもらうほうがお得だ。早い者勝ち、というやつである。
六六工廠が得たのは、グリンチ侵略共和国と母なるエルドラの水連合だ。……ラオ武装教会からいつのまにか、完全に母なるエルドラの水連合側の工廠になっているのに驚きはない。当分の間の受注残はあるが、新規建造バブルはいつまでも続くものでもない。数が数なので、キャッシュの問題ではないのだが、他の勢力にまったく見向きもされなくなるのは問題だ。
大問題といえる。
焦りからか、バルドのように独断先行をするものが増えてきた。当然、ことごとく失敗しているが、厳罰にしなければいけない。
始めの勢いは良かった。とんとん拍子に大規模な契約が纏まって、その度に六六工廠のドックは賑わいを取り返していった。
だが今は変わったのだ。
過去の楽は忘れよう。
踏ん張りどころだな。
六六工廠の本当の実力が求められている。生き残れるかは、私だけの力ではない。六六工廠の全員の力がどこまでこの宇宙で通じるのかが試されている。
六六工廠を死なせるものか。私はあらためて固い決意をもった。




