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第2話「集金パーティのコード割り」

キャッシュはどうするか?基本的に銀行から借りなければいけない。金貸し屋だが、これが夢も希望もない連中であることが多い。集金パーティにスーツを着込み、グラス片手に私は活動へ精をだした。


「やぁ、サラザールさん」

「どうも、ロンドンさん」

「聞きましたよ、貴方の六六工廠も民間として帝国財政から追い出されたとか」

「ははは。私たちの工廠だけではありませんよ。一〇番台以上は帝国の支援も完全に打ち切られて、キャッシュゼロで開業ですよ」

「ですがーー帝国造船最新の機材はそのまま提供されているでしょう?」


ロンドンはインペリアルバンクの首領だ。帝国の半分の資金はインペリアルバンクの資金で回っている。銀行の銀行、帝国お抱えだ。……機材の話にやっぱり喰いつくか。魂胆はわかっている。老い先短い工廠に借金をさせ、債権回収で機材を売り払うのだ。どの工廠の機材もバラ売りすれば、星系をいくつも買ってまだ足りない巨額の資産だ。


「えぇ、良い機械です。スタンダードテンプレートも改変なしでインストールされていますし、独立のその日から生産を開始できました。不幸中の幸いでしたよ」


私はそこで、ギャラクティカバンクのセレネを見つけた。最近、銀行の保護艦隊に力を入れすぎて投資資金の準備が減っているあのセレネだ。


「あら、サラザールじゃない。それにインペリアルバンクのロンドンさんも」

「これはこれは、セレネさん。今ちょうど、サラザールさんの六六工廠の話をしていたのですよ。セレネさん、六六工廠へ一緒に出資しませんか?なんでもスタンダードテンプレートのおかげで事業が安定しているとか」


セレネが、片眉を跳ねあげた。やっべ。私は目を離しておいた。セレネは心を読むのだ。だがセレネは内心を口にしないという、ある意味希少なことをしてくれ、ロンドンを追い払った。計画通りだ。


「サラザール。あんた、テンプレートをあてにしてるんじゃないでしょーね」

「まさか。今は次期航宙商品の選定中だ。スタンダードテンプレートはその繋ぎだよ」

「そっ!聞けて安心したわ」


スタンダードテンプレートは所詮、古い規格なのだ。今までは、帝国宇宙海軍の大元が提供していたからこそ押しとおせたが、これからの支援は無くなったのだ。六六工廠単独で、星系制圧開発型要塞を売り込んでも売れるわけがない。あまりにも高すぎるし、そのせいで支工廠の一つを専属にもできない。他の工廠との分業もだ。スタンダードテンプレートは、標準化されているからこそ、必要なものを必要な瞬間に高速で提供できる補給線の確保を目的にしている。どこでも手作業をするための整備マニュアルでしかないのだ。帝国という巨大なネットワークの外では不要だ。


「それでどうなのよ。航宙商品のあてはあるのかしら」

「企業秘密」

「まあ、企業ですって」

「正確には、まだ仮想モデルでの実験データ待ちだよ。比較検討してからのお話だ」

「随分と悠長ね」

「慎重だと言ってくれ」

「ときには、無謀でも突き進んで形にしたものこそ勝利するのに」

「玉砕が落ちだ」

「時間がない考えは無駄って話よ」


セレネだって集金パーティで忙しいのだ。それだけ言い残して、他のパーティ参加者の元へと舞い戻っていった。


私も気にしている場合ではない。出資者を見つけなければいけないのだ。六六工廠が必要とするキャッシュは莫大だ。取り敢えずは、従業員に払う当面のキャッシュを確保しないと、スタンダードテンプレートの量産航宙商品の販売にも差し障る。


私はパーティ会場を見渡した。顔見知りばかりだ。それはつまり、六六工廠への出資を、六六工廠の事業拡大ではなく、破産による債権回収を目的にするような連中ばかりだということだ。身を守る以上に、六六工廠と従業員を守らなければ。


「やぁ、マルタさん」

「やぁ、テンショウさん」

「やぁ、ルルさん

「やぁ、マキナさん」

「やぁ、アクラさん」


私は今、一人ぼっちでディナーを貪っている。つまりはそういうことだ。なんだかよくわからない、生き物を模したのだろう細工されたものを食べたら、ウェイターらしき男にドン引きされたので食べるものではないようだ。いかん、阿保になっている。


「あ、あの、それ飾りですよ」

「知ってる」


遠巻きにいる金貸し屋や投資屋が、失笑しているのも知ってる。声をかけてきた男は、どこかたどたどしい物言いの男だった。顔に覚えはない。


「私は六六工廠のサラザールです」

「ども、ガンソード商会のソード、です」


集金パーティにいるということは、どこぞのキャッシュ富豪なのだろう。ひょろっとした体型なのに、ソードは丸顔だ。ガリガリだが、丸い耳に丸い鼻、スーツの上からでは尖った感じがまるでない。ガリガリなのに。


「あれは飾りでしたか」

「美味しく、なかったでしょ?」

「普通にただの不味い料理だと思ってました」


やべっ。得意げに話していたシェフの顔に青筋が浮かんだのを見つけてしまった。前には、野菜料理を吐いたのを根にもたれてるから気をつけないと。


「六六工廠、の」

「帝国財務局から追い出された、あの、一つですね」

「大変、でしたね……」

「残念なことにも、大変なのはこれからなのですよ」


キャッシュ地獄だ。販促部門も思うようにふるわっていないらしい。あたりまえだ。どの工廠からもまったく同じ航宙商品が販売されて、尋常じゃない値崩れを引き起こしていると報告があった。予定を切り上げる必要がある、わりと緊急事態だ。


「ガンソード商会のほうで、航宙商品をまとめ買いする人とかいませんか?安くしときますよ」

「あっ、間に合ってます。うちは一一工廠と専属契約、して安くおろして貰っているので……。


ソードは申し訳なさそうに言った。ほう、一一工廠が。となるとリリムのところじゃないか。やるな。


「一一工廠ですか。残念です。リリムさんのところですね」

「はい。うちの商会で、ちょうど機動兵器を欲していたんですよ。その時に、一一工廠さんのところから売り込みがありまして、渡りに船と大量発注をお願いしたんです」


私はそれ以上に深入りはしなかったが、ガンソード商会が機動兵器を大量に発注したというのが気になった。航宙商品として、明白に兵器を必要としたのだ。ただの商会がだ。それも大量に。


スポンサーを見つけることはできなかったが、機動兵器をどこの投資家も必要としているのだという空気を感じた。


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