第14話「六六工廠というヒト」
流れに身を任せていると、六六工廠のキャッシュが潤う、などという都合の良い話しなんてものはない。役員や、その他の従業員やら何やらの豊富な活躍に支えられているのだ。手足は無くなられては困る、そんなあたりまえのことだが、わりと経営陣などは軽視することがあると聞く。目の当たりにしている。
「サラザールさん、業務に大きな無駄がありますね。人件費をもっと減らせる筈ですよ。それに、顧客に対する意見調査にもキャッシュを使いすぎです。経営をもっと好転させてからでなければ、融資の継続は考えさせてもらわなければいけません」
「人件費をこれ以上削るということはありえません。人員と機材の稼働率と再配置によって最適化は完了しています。また現在の利益を維持しているのが、現在六六工廠の配置であることのデータ証明はこちらです。説明は必要ですか?」
古い基礎設計、低コスト重視、それらが噛み合って産まれた超低コスト新型艦は、結局のところが中身の古いままの商品なのだ。一〇〇〇年もののビンテージは現役であってもよく見る方で、基礎設計が一万年前のものが主流である。それは、スタンダードテンプレートのデータから起こされた標準的航宙商品だ。それが溢れている。
一掃したいのが正直な話だ。
ただ、新規設計にはリスクとキャッシュがかかる。今までの性能で充分と考えるのが主流だからだ。問題がないわけがない、事故が増えつつある。旧来設計には新型装備で、想定を超える負荷に晒されているのだから当然の話だ。新しい時代に古い体では耐えられないのに、長くもったほうだ。
「それに新設計の航宙商品を、グリンチでテストしているそうではないですか。調査ではすでに、二〇〇〇隻もの浪費が費やされてしまったとか。これほどキャッシュに余裕があるのであれば、より多く配当金をだせますよね?」
「基礎設計は確かにエンデミオン級のものを参考にしましたが、現在宇宙の技術を想定して改良強化および変更していますので、ゼロからのデータ収集が必要なのです。それは製造ラインから運用現場までの幅広いデータです。その為には、誤差が顕著になる二〇〇〇隻という必要最低な数を製造したんです。工数と運用による問題の発生率と隻数の関係を割り出したグラフは提出したとおりです」
インペリアルバンクの役人は、業務改善に関する要請書を残して消えた。疲れる男だが、出資者の手先なのだから、無碍にもできない。少なくない出資を受けているのだ。破産させて機材転売を目的にしている連中にだが、まあいい。後戻りできないところまで泥沼に引きずり込むか、さっさと出資活動を引き揚げさせるかだ。出資の満額返納要求は帝国法で禁止されている。あくまでも出資による配当金だけの要求と出資者としての意見陳述に限定する、というのが表向きだ。
「疲れるな」
「甘い飴をお持ちしました」
甘いものがを舐めると心が落ち着く。さぁ、次がまっている。私は気合いを入れ直した。




