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第10話「利益の縄張り」

A1試験艦の建造許可申請にサラザールの名前を使ったときだ。来るべくして来た問題と私は直面した。


会合の顔ぶれは、他工廠の支配者の面々だ。六六工廠の私のような、だ。


議題は無秩序な営利活動による、利権侵害の防止だ。お互いを食いつぶし合うのはやめよーよ、といったところであるが、先日に、デブリ回収を巡って艦隊戦が勃発してしまった。小規模だが、大規模化するのは目の見えていた。それゆえの緊急会合だ。


「頭が痛くなるぞ」

「薬を準備しておきます」

「ありがとう、ベルベル」


私はライブメタリカを差して、ホログラムを起動した。……案の定、修羅場から会合は始まっていた。


会合の目的は、各工廠自治の尊重なのではあるが、実際は「テメェらうちの縄張り荒らすんじゃねぇぞボケクソが!」とお上品に口論している。工廠が可能なキャッシュ稼ぎなんて、他の工廠責任者連中だって思いつくものだ。当然、宙域がかぶれば損害で取り分が減る。他の工廠との譲歩やら交渉もあるが、ときには致命的な利益の損失回避から実力行使せざるをえない機会もある。


「九一工廠と四〇工廠の紛争は問題だぞ」

「で、その九一と四〇はどこだ?」

「議論はさせない。状況報告だけで、我々が判断することになった。これは九一工廠と四〇工廠の共同での提案だ」

「……工廠間で仲良しゲームはしてないが、思い切りすぎだぞ」


紛争工廠同士では結論せず、の前例になるのだろうか。となれば万が一、他の工廠と戦争になった場合、戦後を有利にするためには、他の工廠との繋がりが重要になるな。


「ぐだぐだ話したところで、無駄な時間を費やすだけだ。状況はこれだ」


ホログラフに新しい映像が立ち上がる。


コールドブリッジ星団での大規模な艦隊戦の推移だ。原因は、コールドブリッジ星団をかつて席巻していたコールドブリッジ自由軍の残骸、デブリ回収だ。随分と大規模なデブリスペースだったようで、四〇工廠と九一工廠は大規模なスクープ船団を派遣して、そこでかちあわせてしまった。


初めは未確認船団を互いに海賊と誤認、先遣の数隻が交戦してしまった。あとはだるま式で戦場が拡大して、デブリの海の中で、星が一つ二つ消滅するだけのささやかな艦隊戦が数日に渡って続いたというものだ。デブリ回収船が発生したデブリを固めて亜光速で投射するということまでしている。互いの機動兵器が至近距離での乱戦に、敵艦内部での破壊活動や、艦内での局地戦……なるほど。


会合は、とりあえずコールドブリッジ星団でのデブリ事業を四〇工廠と九一工廠に均等な総質量になるよう調整されることになった。会合に参加した工廠から、大きな損害を負った四〇工廠と九一工廠を共同で支援しつつ、そのデブリ事業によって生みだされた再生資材を買い取る形でだ。


六六工廠も支援のキャッシュをだした。再生資材だけでなく、戦闘推移のデータのコピーを双方の視点から貰い受けた。


会合はさっさと終わり、私は特に何も話していない。


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