5 犬語会話薬
博士はついに、多くの愛犬家が長らく待ち望んでいた薬を完成させた。それは犬語会話薬で、これを飲むと犬と会話ができるようになるというものであった。
博士は完成したばかりの薬を飲み、愛犬ポチに向かってゆっくりしゃべりかけた。
「ポチ、ワシの言葉がわかるか?」
「うん」
ポチがコクンとうなずく。
「おっ、わかるんだな」
「ねえ、博士。ボクと博士、なんで話ができるようになったの?」
「この薬のおかげだよ」
博士は手にした薬を見せた。
「ワシがこの薬を飲んで、オマエら犬と話せるようになったんだ」
「じゃあ、これからボク、いつだって博士と話ができるんだね」
「もちろんだ。この薬を飲むと、ずっと効果が続くからな。毎日、話ができるぞ」
「うれしいな」
ポチがシッポをふってよろこぶ。
――そうだ! 女房にも教えてやらねばな。
妻には長いこと苦労をかけてきた。だれよりも薬の完成を喜んでくれるはずだ。
博士はキッチンに向かって声をかけた。
「ポチ、どうしたの?」
妻がキッチンから出てきて、首をかしげながらポチに歩み寄る。
博士はうれしそうに妻に薬を見せた。
ワン、ワン、キャイーン