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41 証拠
深夜。
ある立派な屋敷に、二人組の男が盗みに押し入らんとしていた。
「ソワソワするんじゃねえ」
兄貴が子分に向かって叱咤する。
「だって、兄貴。こっちの世界じゃ、あっしらにとっちゃ初めての仕事。さっきから、どうにも足が地につかねえんで」
子分の声はふるえていた。
「なあーに、心配することはねえ。証拠さえ残さなきゃあ、ぜったい捕まりっこねえんだからな」
兄貴の方は自信たっぷりである。
「ですが、前にドジふんだじゃねえですか」
「あんときはたしか足跡から……。こっぴどい目にあったな」
「ええ、はりつけの死刑になっちまって。ですんで……」
「心配すんな、今度はだいじょうぶだ」
「ほんとですかい?」
「もちろんだ。オレたちには足がねえ。だから、アシがつくことはねえのさ」
兄貴は大きくうなずいてみせた。
閻魔の屋敷を見上げ……。




