118 壁の中の女
その日。
オレは会社帰りに同僚と飲み歩き、アパートへ帰りついたのが夜の十二時をまわっていた。
――うわっ!
玄関のドアを開けたとたん腰を抜かしそうになった。
なぜか目の前に女がいたのだ。
もちろん見たこともない女である。
女が部屋にいるだけで驚くことなのに、その女は正面の壁から裸の上半身をせり出した状態でいる。それに何で壁の中にいるのかもわからない。
ただ、その女は若くてきれいだった。
胸も豊満である。
女はオレを見ると裸を見られるのを嫌ったのか、急いで壁の中に引っ込もうとした。しかし大きな胸が壁に引っ掛かってしまったのか、うまく中に入り込めないでいる。
――待てよ……。
オレによからぬ好奇心が湧いた。
壁の向こう側は風呂場。
ということは……。
胸から下は壁の向こう側にある。しかも上半身が裸からして、胸から下も同じ状態であることは容易に想像できた。
オレは靴を脱ぎ、大急ぎで風呂場に駆け込んだ。
だが……。
風呂場に女の姿はなかった。
それでまた、オレは急いで玄関に戻った。
が、女はもう壁から消えていた。壁に穴らしきものもない。
――飲み過ぎの幻覚だったのだろうか。
オレは頭を強く振った。
と、そのとき。
壁の中から女の声がした。
「このスケベエが!」




