110 大氷河時代
近未来。
海はすべて凍り、大陸は氷で覆いつくされ、地球は大氷河時代に突入していた。
十年前。
太陽に異変が起きた。黒点が大きくなるとともに輝きが急速に衰えていったのだ。
それにともない地球は急速な寒冷化が進んだ。
植物が消えてゆく。
動物が消えてゆく。
地球はもはや生物が容易に住める星ではなくなり、人類は滅亡の危機に突き進んでいたのだった。
ある都市の地下街。
二人の白衣の男がいる。
この二人はたった今、生命維持装置の冷凍睡眠カプセルに入ったばかりだった。
「あとは天命を待つだけだ」
「太陽が再び輝き始めるのをな」
「幸運を!」
「人類に幸運を!」
最後の会話が終わり、そこでカプセルは自動的に閉じられた。
二人が眠りにつく。
わずかな太陽光でも発電する装置と冷凍睡眠カプセルが正常に作動し続ければ、この二人が目を覚ますのは数千年後になる。
この冷凍カプセル。
人類が滅亡を逃れるため、わずかな望みをかけて開発したものだった。百万基ほどが世界各地の地下街に設置され、その中には同じ数の人間と動物たちが眠っていた。
かれらは地球の選ばれしものたちである。
そして二人の男は、この地下街のカプセルを最後まで管理してきた科学者であった。
一週間後。
地球に降り立つ宇宙船があった。
かれらは氷となった星を脱出し、数年の間、宇宙を放浪してきたものたちだった。
宇宙船の一室。
二人の異星人の科学者が話している。
「この星も氷となっている」
「食料となるものがあればいいのだが」
「調査の結果を待とう」
「ああ、朗報をな」
と、そこへ。
船外に出ていた調査隊員たちがもどってきた。
隊員の一人が報告する。
「地下で大量の食料を発見いたしました。しかも、どれもが新鮮で美味しそうでした」




