11 読んだのか
ママから聞いたんだけどな。
シュウは勉強がクラスで一番で、それに女の子にも人気があるってな。
シュウ。
おまえはおじいちゃんに似たんだよ。
おじいちゃんも子供のころ、女の子にモテモテだったんだ。村一番の秀才で男前だったからな。
ところで。
シュウは文才ってなんだかわかるか。
文才っていうのはな、作文を書く才能があるってことなんだよ。
でな。
おじいちゃんにはこの文才があるんで、若いころから物語を書いてるんだ。
そうか、シュウは読んだことがあるのか。
どうだ、おもしろかっただろう。
わかんないって?
しょうがないか、シュウはまだ三年生だもんな。
それでな。
おじいちゃんは物語をいっぱい作って、何回も童話のコンクールに応募してきたんだ。
で、今な。
シュウのことを物語にして、ひとつ童話を書いてるんだが、すごくおもしろいのができそうだよ。
それにな。
コンクールに応募して入賞したら、なんと賞金がもらえるんだ。
おどろくなよ、一等賞の賞金は百万円だぞ。
シュウがほしいものはなんだ?
自転車か?
ファミコンゲームか?
なんでもいいぞ、百万円もあればなんでも買えるからな。
でもな。
おじいちゃんはときどき思うんだ。
やっぱり普通が一番だって。
なんでかって?
秀才で男前なのは、大人になったらいいことばかりじゃないんだ。いや、むしろつらいことなんだよ。
女にしつこくつきまとわれるし、ほかの男にはねたまれるし、あまりいいことがないんだ。
なので、おじいちゃんは思うんだよ。
普通が一番だってな。
でもしかたないか。
遺伝だもんな。
シュウは。
それを考えたら……。
シュウはやっぱり、おばあちゃんに似た方がよかったのかもな。
おばあちゃんは見てのとおりだ。
たれ目で、鼻はブタみたいだけど、あれでなかなか愛敬のある顔じゃないか。それに手足があんなに短くて、お尻が大きいのだって、体が頑丈にできてるからなんだ。
おばあちゃんは普通の女かもしれん。
だけどな、男からつきまとわれることも、女からねたまれることもないんだ。
それでな。
この物語ができあがったら、シュウにも読んでやるからな。
おもしろいぞ。
コンクールで一等賞まちがいなしだ。
ああ……。
おじいちゃん、ちょっと眠くなってきたな。
近ごろ。
おじいちゃんな、物語を書いてたらなんでか眠くなってしまうんだ。
年だもんなあ。
まぶたが重くなってきたよ。
シュウ。
この続きは……。
またな。
「あんた!」
「うん?」
妻の手に書きかけの原稿用紙がある。
「読んだのか?」
「私の鼻、ブタみたいだって?」
「いや、これは物語だから……」
「で、書くたびに応募してるけど、これまでどれだけ応募したの?」
「百回以上かな」
「それで一次通過は?」
「三回」
「二次通過は?」
「ない」
「そうよね、こんなの書いてちゃあ」




