表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第2編ⅱ 浄化の杖
86/122

旅立ち

 開放的になった見た目は聖女の飲んだくれに付き合った翌朝、カントが目を覚ますと、外がいつも以上に騒がしいことに気が付いた。

 宿のロビーにいる主人に何かあったのかと聞いてみると、主人は興奮した様子で教えてくれた。


「昨晩未明に天使が現れたらしいですよ。私も今朝知ったのですが、モブ麦などを食べても良いというお告げがあったようです」


(へえ、天使って本当にいたんだ。見てみたかったな)


 カントはその場に居合わせなかったことを残念に思った。


「ところでカント様個人には何のお告げも無かったのですか?杖を抜かれた張本人ですので、直接何かお言葉を頂いても不思議ではないかと思ったのですが」


 言われてみれば確かにそうだ。

 杖のことに関してはカントに一言あっても良さそうなものだが、天使からの接触はない。


「常識がないことだけはわかったな」


「あるわけないでしょ。天使なのよ」


 そんなことを話しながらカントはアイリスと、聖堂前の広場へと向かうべく表へと出た。

 すると二人を待ち構えていたかのように、後ろから気配がした。


「どう?言ったとおりになったでしょう?」


 背後からイライザの声がした。


「いい加減、前から登場しろよ」


 文句を言いつつも、カントは律儀に振り返る。


「確かにお前が言ったようになったな。イライザは予言もできるのか?」


「いいえ、そういうわけではないけど……ね」


「いや、目配せされても何もわからないんだが」


 イライザにも言えないこともあるのだろう。

 カントはそれ以上追及するのを止めた。


「これから天使に出会うことがあれば、直接聞くのが一番いいわ」


「気軽に聞けるような奴だといいけどな」


 実際にそんな機会があるとは思えなかったので、カントは適当にこの話を流したのであった。


「イライザさん、今日はそんなことを話しに来たの?」


「今日は、一ついいことを教えてあげようと思って会いに来たのよ」


「いいこと?」


 カントは眉をひそめた。

 このパターンはいい話ではないような気がしたためである。


「警戒しなくても大丈夫よ。強制する話ではないから」


 カントの反応を見て、イライザはそう言葉を付け加えた。


「それで、どんな話なんだ?」


「ほら、汚染の原因が山の方にあったという話をしたでしょう?昔、あの辺りに行った時に面白いものを発見したのを思い出したのよ」


「へえ、どんなものなの?」


 この話にはアイリスも興味があるようだった。


「それは、行ってみてのお楽しみね。実際行くかどうかは貴方たちで考えればいいと思うわ」


(山ってカルバキア山脈だよな。絶対何かあるのは間違いない)


 この前ウルアたちと戦った際に、あの山脈には鬼の集落があるという話を聞いた場所である。

 この情報下で、何もないと思えるはずがない。


(これはスルー決定だな。アイリスは行きたいと言いそうな気がするが)


「あと、これも貴方にあげるわ」


 どうやってアイリスを説得して王都に連れ帰ろうか考えていると、イライザがカントに何かを手渡した。


「指輪?」


 受け取ったそれを見ると濃青色の金属でできた指輪だった。

 簡易な紋様が刻まれており、その色から何らかの魔金属で出来ているものであるようだ。


「解放のお礼も兼ねた私からのプレゼントよ。いずれ役に立つことがあるかもしれないから」


「イライザ、これって……あれ?」


 二人が視線を指輪から元に戻すと、いつの間にかイライザの姿はなかった。


「私はこれで失礼するわ。じゃあね」


 風に乗って何処からか声が聞こえてきた。


「別れも突然だったな」


 いなくなってみるとなんとなく切ないような気もする。


「元々住む世界が違うのよ」


「それは俺もだけどな」


「それもそうね」


 二人は顔を合わせ、寂しさを紛らわすように声を出して笑い合った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ