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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第2編ⅱ 浄化の杖
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再会②

 聖地ティシオネアの中央には、聖女ティシオンを讃えるために建てられたという聖ティシオン大聖堂があり、その前の広場には浄化の杖が地面に刺さっている。

 記録によれば聖堂が建設されたのは三百年ほど前だというから、杖はそれ以上前からここにあるということになる。


 二人は聖堂前に到着したが、巡礼者や観光客があまりにも多かったため、思うように動けずにいた。


「尋常じゃない混み具合だな。はぐれないように気をつけよう」


「抽選の登録に間に合うかしら」


 抽選の手続きは、聖堂の中で行っているらしいので、人ごみをかき分けながらやっとの思いで聖堂の入口の方へと向かう。

 聖堂の中に入るとシスターが登録希望者の整理を行っていた。


「はい、先抜者せんばつしゃの抽選登録を希望される方は、こちらの列に並んでください!」


 シスターが指し示す先には、長蛇の列ができていた。

 列は聖堂の長い廊下の遥か先の方まで続いている。

 時間までに手続きを終えられるのか、カントの頭に不安が過った。


「間に合うかな」


「並んでみるしかないわね」


 カントたちの心配をよそに、順番待ちの列は思いのほか早く進んでいった。

 列の先頭にはテーブルが設置してあり、その上には岩石の円板が置いてあった。

 石板には、魔法陣のようなものが刻まれている。


「石板に右手をかざしてください。手の甲に印が現れたら手続きは終了です。公開日である明日の朝まで印が残っていた方は、二次抽選を行いますので明日九時までにこの場所に集合してください」


 係員が並んでいる人たちに向かって声を張り上げていた。

 列の先頭の者が次々と手続きを終え、その場から立ち去っていく。

 列の進行が速いのも納得であった。


 ついにカントが先頭まで辿り着き、石板に手をかざすと右手に円陣が現れた。

 続いてアイリスも同じように手をかざす。


「間に合って良かったわね」


「ああ、そうだな。これからどうする?」


「杖のところにでも行ってみましょう」


 夕刻が近いため、日は傾いてきているが辺りはまだ十分に明るい。

 カントたちは聖堂を出ると、人ごみをかき分けて広場の中央へと向かっていった。

 これだけ人が大勢いるにも関わらず、広場には人がいない空白の部分がある。

 杖の刺さっている地点である。

 そこには円形の水たまりがあった。

 一見、噴水のようにも見えたが、どこからも水は吹き出していない。

 水たまりの中心は一段高くなっており、八人の兵士が石像を囲むように外側を向いて立っていた。


「浄化の杖はどこにあるんだ?」


「あの像の下よ。像の台座が空洞になっていてそこに入っているというわけ。普段は人目に触れないようしないといけないとされているから、石の箱が被されているのよ。この時期は警備も強化されているらしいわ」


 杖の周囲に水が張ってあるのも、人が近づかないようにするための工夫というわけだ。

 カントが警備兵の間からその先を窺うと、兵士の膝の高さほどの台座があるのが確認できた。


「あの台座の箱の中に杖があるのか。思ったよりも小さいものなんだな」


「そうね。全長もそれほど長くないと言われているわ」


 浄化の杖は、抜くことも掘り起こすこともできないため、全長が明らかとなっていない。

 杖は岩盤ではなく、土に刺さっている。

 見た目は普通の土であり、幾度となく調査がされたらしいが何故か掘ることがかなわないため、これもまた奇蹟の一つとされているそうだ。


「因みにあの像が聖女ティシオンをかたどったものらしいわ。ティシオンは美人だったという話よ」


「へえ、それはどれほどのものか、一度拝んでみたかったな」


 カントは、冗談交じりにそんな言葉をこぼしたが、それに答える声が背後からあった。


「あら、それなら貴方も知っている顔よ」


 カントが声の方向に振り向くと、そこには微笑を浮かべたイライザが立っていた。


「なっ!」


 カントは突然のイライザの登場に驚き、思わず腰の魔剣に手をかけた。


「あら、見てのとおり私は丸腰よ。戦う意思はないわ」


 イライザは両手をひらひらとして見せた。


「それに、こんなところで戦ったら被害が甚大なことになるしね」


 イライザの言うとおり、カントが本気で叩けば多くの人が巻き添えを食らうことになるし、パニックでケガをする人も少なくないだろう。

 彼女の言葉の真偽に関係なく、カントたちはイライザに手出しできない状況に置かれていたのであった。


「ここは人が多すぎるわ。場所を移しましょうか」



20170424追記

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