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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第2編ⅰ 前半戦
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強さの秘密

 大会第七回戦、前回の大会優勝者を下したイライザと闘技台の中央で対峙したところで、カントは試合開始のゴングが鳴るのを聞いた。

 試合開始早々、イライザはカントの元へと飛び込み、剣を振るった。

 カントはそれを剣で受け止める。


「貴方、小さいのによくここまで勝ち残ってこれたわね。勝ちは譲れないけど」


「譲れないものがあるのは俺も同じことだ」


 女性とはいえ、相手は大人。

 力では相手を押し戻せないので、自ら下がって一度距離をとり、勢いをつけてイライザの胴を水平に打ち抜いた。

 カントの手には重い衝撃が走り、手ごたえありと自覚する。

 しかし、振り向くとそこには余裕の表情のイライザがいた。

 その後も、連撃を幾度となく繰り出すものの、全て魔法で弾き返されて一太刀も通らない。


(強いな。流石、前回優勝者を倒しただけのことはある)


 肉体強化や防御強化などの魔法を行使して攻撃をはね返しているようだが、どのような魔法を使っているのか正体はわからない。


(手の内が分からないと対策しづらいな)



「貴方、防御魔法をずっと使っているなら長引くほど不利なんでしょう?さっさとかかってきたらどうかしら」


 息が少し荒くなってきたので、カントが一旦攻撃の手を休めるとイライザが話しかけてきた。


 彼女の言っていることは正しい。

 カントは常時魔法を行使しているので、試合が長くなるほど魔力を消費する。

 その一方で、イライザが必要に応じてその都度魔法を展開する技術を持っているのであるとすれば、戦闘時間が長くなっても問題はない。

 つまり、試合が長くなるほどカントにとって不利となるということだ。


(正論ではあるが、なぜそれを教える必要がある?)


 イライザの言葉は正しいが、それをわざわざ敵に教え挑発していることに、カントは疑問を持った。

 試合時間を長くしたいなら、何も言わずただ時間を稼げばよいはずだが、彼女はそうせず、カントの行動を誘った。


(何が目的だ?さっきの試合でカウンター技は使ってなかったし……、カウンター狙いの挑発ではないとすると、あいつも実は早く試合を終わらせたいということか?)


 どうやらイライザにも試合を長引かせたくない事情がありそうだ。


(効率よく魔法を使っているものだと考えていたけど、あいつも常時魔力を消費して何かをしているのかもしれないな)


 イライザを上から下まで、改めてまじまじと眺めてみる。


(【アクセル】の加速以外に何か魔法の効果が出ているようには見えないけどな)



 カントが攻撃を仕掛けないので、今度はイライザから攻撃を仕掛けてきた。

 やはり時間稼ぎをしている様子は見られない。


「あはは、やる気なくしちゃったのかしら!」


 イライザの攻撃は一層激しくなった。

 攻撃を受けていては考えもまとまらない。

 いつの間にか、カントは防戦一方となってしまっていた。


(まさか本当に効果がないのか?効果がないのに魔力だけ減るなんて……。ん?前にもそんなことがあったな)


 よくよく冷静に考えてみれば、カント自身にもそのような経験があった。


(でもそれって……)


 カントは、一瞬それを口にするか迷ったが、鎌をかけるつもりで言ってみることにした。


「あんた、魔法武器を使ってないか?」


「何故それを!」


 どうしてわかったのかと驚きの表情を見せるイライザ。

 カントの抱いた疑念が確信へと変わった瞬間だった。


 この大会で魔法武器の使用は禁止されている。

 魔剣を始めとする魔法武器は、一般的に高度な魔法を高効率で発動できるとされており、その使用を認めれば圧倒的優位に立つことができる。

 本人の実力とは関係ないところで優劣がついてしまっては、騎士たちのモチベーションの醸成にも繋がらず、大会の趣旨に反することから、ルールで魔法武器の使用や携行を禁止していた。

 魔法武器を使えば失格となる。


「はて、貴方もとんだ言いがかりをつけたものね。私が魔法武器を使っているという証拠はあるのかしら?」


 いつの間にかイライザは気を取り直し、平静を装っていた。

 普通に見れば、彼女が魔法武器を使用しているようには見えない。

 今の反応から使っていることは間違いないが、調べられても魔法武器が見つからない自信があるのだろう。

 よほど巧妙な隠し方をしているのだろうか。

 自信に満ち溢れた笑顔をカントに向けている。


 今ここで、彼女の不正の確認を申し立てることはできるが、もし調べても魔法武器が発見されなければ、カントにとって不名誉な事態となりかねない。

 それならば取るべき道は決まったようなものだ。


(要は普通に勝てばいいってことだ)


 非常に単純な話だ。


「そんな気がしただけだ。変なことを言って悪かったな」


 試合が終われば、不正を調べる時間はたっぷりある。

 今ここで白日のもとに晒さなければならないわけではないのだ。


 「さて、そろそろお遊びは終わりにしようじゃないか」


 彼女の向ける笑みに、カントも微笑み返したのであった。


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