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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第1章 異世界に飛ばされて
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閑話 【神話】グハンテンド王国の滅亡

本編との事実関係や時系列等は、御想像にお任せします。

「安息日たる本日、この教会を訪れた皆様に神の御加護がありますように。本日は聖典の中から、『グハンテンド王国の滅亡』を音読することと致しましょう」



◆―――――――◆―――――――◆―――――――◆



『グハンテンド王国の滅亡』

 昔、グハンテンドという国があった。グハンテンド王は戦を好み、侵略を目的として複数の隣国に度々戦争を仕掛けていた。また、国民も野蛮な者が多く、神を信じない者が多かった。国では犯罪が蔓延り、神をも冒涜するようになった。さらに、侵略した隣国の国民を人として扱わないような非道な行為を繰り返し、近隣諸国の安寧を脅かしていたのである。

 ある日、グハンテンド王を始めとするその国の重役たちが一堂に会して、会議が開かれていた。議題は戦争に関することが中心だったが、議事は滞りなく進み、会議は終盤にさしかかっていた。その場に男が一人、突然現れた。その男は黒髪に鮮血のような瞳の色という異国の風貌であったが、真新しい白い衣に身を包み、日に焼けた様子もなく、旅をしてここまで辿り着いたようには見えなかった。

 彼は自らを天使と名乗った。それを聞いて、その場にいた人々は爆笑したが、男は言葉を続けた。残虐な行いを改め、むやみな侵略や殺生を行わないように諭したのだった。そうしなければ、この国を亡ぼすという警告とともに。しかし、グハンテンド王はそれを聞いて怒り狂った。家臣に命じてその場で男の首を刎ねたのであった。その首は、大罪人のものとして、王城前でさらされたという。

 それから1か月が過ぎても何も起こらなかった。あの日の出来事は、皆の記憶から忘れ去られようとしていた。折しもその日は、南方の国を攻め落とすための進軍が開始される日だった。雲一つない晴れた日であった。

 進軍開始の予定時刻が近づき、王城の前の広場に軍が整列してその出発の時を待っていた。兵の一人があれは何だと叫んだ。皆が指さす先を見ると、南中した太陽に小さな黒点が見えた。眩しくてそれが何かは分からない。皆が目を凝らした。

 次第にその点は、大きくなりながら、上へと上っていった。何かがこちらに近づいてきているようだが、その正体は分からない。それが太陽よりも高い位置になった時、何かが明らかとなった。それは、一人の人影だった。純白の衣に仮面を着けた黒髪の、その人のような者は、頭上に光の輪が輝き、背中には4枚の大きな翼があった。天使だ。誰かが叫んだ。

 聞け。愚かな人間どもよ。天使が王城上空に到達したとき、その声は、王都中に響き渡った。我が名はフォセ。神より命を受けた天使である。間もなくこの国は亡ぶ。しばらくの間、自らの罪を省みるがよい。

 天使フォセがその手にもった剣を高く掲げるとその先から眩しく光る白い球体が現れた。その球体は次第に大きくなり、その下にある太陽よりも大きく見えるようになった。彼はその掲げた剣をゆっくりと振り下ろした。すると、その球体も静かに降下し始めた。

 それは非常にゆっくりだった。しかし、確実に地面に向かって落ちていた。人々は、その球体が王都を亡ぼすであろうことを悟り、一目散に逃げ始めた。混乱の中、転倒する人間も多かったが、人々はそれを無視し、踏んででも逃げようとした。だが、人々は城壁の外に逃れることができなかった。城門は大きく開かれていることは明らかなのだが、見えない壁のようなものがあって、どうしてもそこから先に行くことができない。城門の外には出ることは誰一人として叶わないが、外に出ようとする人々は次から次へと押し寄せる。見えない壁の付近では、光球の着地を待たずして、錯乱の中、何人もの人々が圧死した。

 暫く時が経過すると、その光球がさらに地面へと近づき、それが途轍もない熱を帯びたものであることがわかった。始めのうちは不快に感じる程度だったものが、次第に体を焼くほどの灼熱地獄へと変貌していった。熱い。苦しい。全ての人々が苦痛と共に、その身を焦がされながら絶命し、蒸発していった。

それから数十年間、その地は荒野となっていたという。



◆―――――――◆―――――――◆―――――――◆



「この一節の解釈は、非常に明快であると思われます。むやみに争いを引き起こし、人を傷つけるようなことはしてはならないのです。しかし、その禁止されている行為については意見が分かれるところでありまして、戦争自体を禁止しているのか、残虐な侵略行為のみを禁じているのかまではよくわかっていません。しかし、覚えておいていただきたいのは、一度警告があったということであります。神は我々が間違いを犯してもそれを改める機会を与えてくださるのです。この話の中では愚かな王の前に、天使を名乗る者が現れて警告するという象徴的な場面が描写されておりますが、現実にはこれほど分かりやすく神の使いが現れるとは限りません。我々も普段の行いを反省することがあるでしょう。それこそが我々に与えられた贖罪の機会であるわけです。己の間違いを気が付いたにも関わらず、それを改めないというのであれば、己の身を滅ぼすことになるでしょう。さて、この話に登場した剣は聖剣グハンティッシュと呼ばれ、オリハルコン製であったのではないかとの―――」



◆―――――――◆―――――――◆―――――――◆



A「また審判執行があったらしいな」

B「最近よくあるな。聖天使様もうんざりされているのではないか?」

C「ええ、そのとおりよ。執行官も気を病んでしまってさらに大変なの」

A「確かファスだったか。彼も将来聖天使以上は確実だという優秀な人材なのに、辞めたりされたらたまったものではないな。第一部隊の損失だけでもかなり大きいというのに、第三部隊での人材流出はできる限り避けたいところだ」

C「折角警告したのにあんなことになってしまったこともあるしね。ファス君の首を刎ねた現場を見ていたんだけど、流石にあれは頭にきたわ」

B「俺は、あんな馬鹿どもに警告する意味なんてないんじゃないかと思ったよ」

C「本当に頭の痛い話なのよ。今回の話は、記録が残るように手配したけどどれほどもつかどうか」

A「千年ももてばましな方だろう。第一、あの国の言葉は事実の記録には向かん。国名すらまともに残らないさ」

B「同感だ。僕もそんな気がしてるよ。あと、全員死んでるのに、なぜこんな話が残るのかと言う奴が必ず現れるだろうね」

C「それは間違いないわね」


お読みいただきありがとうございます。

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