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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第1編 魔剣との出会い
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決死の覚悟

(相手が一人なら何とかなる)


 一人で十分だという紫の鬼の言葉を受け、ジェシカはチャンスだと確信し、攻撃を仕掛ける。


「【サンダー・アロー】二重詠唱ダブレット!」


 同じ属性の魔法の発動を魔剣が強化し、剣の先から放出する。

 加速のもとに放たれたそれは、直撃するはずであったが、鬼はそれをあっさりとかわした。


(速い。計算外だわ)


 残念なことにジェシカは、鬼に上級種がいるという知識を持ち合わせていなかった。

 下級種ですら珍しいこの世界において、その存在程度であれば皆知ってはいるものの、鬼の詳しい知識を得る場など殆どない。

 その事情は、ジェシカも同じであった。


 鬼は急速にジェシカに接近し、殴りかかった。

 ジェシカは咄嗟にガードするが、後方へと大きくノックバックする。

 ガードに使った腕は、ビリビリと痺れている。

 身体が強化され大きなダメージとはならないが、攻撃は非常に重かった。

 腕の痺れに気を取られていると、今度は側面に蹴りが飛んできた。

 今度はガードが間に合わず、軽い体は20メートルほど宙を舞う。


(このままでは何もできないまま負ける)


 ジェシカは飛ばされながらそう思った。

 体勢を立て直し、鬼に向かって剣を構える。


(「なんとかなるかも」じゃない。なんとかするんだ!)


 攻撃を受けたことで、これまで中途半端だったジェシカの覚悟が、確固たる決意へと変わった。

 その思いに反応したかのように、剣は新たな力の存在をジェシカに語りかけた。


 固有魔法【閃光加速ライトニング・アクセル


 急加速したジェシカは、鬼に接近しそのまま鬼の後方へと抜けた。


「ぐうぅぅ……」


 ワンテンポ遅れて鬼から鮮血が迸り、痛みに耐えようとする声が上がった。

ジェシカは方向を転換し、鬼の背中めがけて剣を突き刺した。


「ぐふ!」


 剣は鬼を貫通し、根元まで突き刺さった。


金属性固有魔法【サンダー・ボルト】


 魔法の発動源からの直接攻撃を浴びた鬼の体は黒焦げになった。


「ヤビオ!……貴様、許さんぞ!」


 紫色の鬼の名前と思われるものを叫び、今度は赤色の鬼が襲ってきた。


「サンダー・ボルト!」


 ジェシカは、魔法でこれを迎撃する。

 しかし、正面に魔法陣のようなものが現れ、魔法は反射された。

 ジェシカは慌ててそれを避けるが、その先にはまた別の鬼がいた。

 一人の鬼が倒されたことで、残りの鬼たちも動き出し、総攻撃という様相をみせている。


 一人が体当たりを仕掛ける。


(軽い)


 五人の鬼の内、四人は先ほどの紫の鬼と比べると、速度も圧倒的に遅く、数が多くてもそれほど問題にならなかった。

 注意しなければならないのは、紫の鬼と同等の能力があるとみられる赤い鬼だけである。

 ジェシカは縦横無尽に駆け回り、赤い鬼と数々の攻防を繰り広げつつ、隙を見てその他の鬼を打ち取り戦闘不能にしていく。

 圧倒的不利とみられた戦いは、魔剣の新たな能力の解放により、ジェシカが優勢となり、次第に戦力差も開いていった。

 ついに、その場はジェシカと赤鬼の二人だけとなってしまった。


「まさかここまでやるとはな。小娘だとナメすぎていたようだ」


 赤鬼も余裕のある発言をしないようになった。

 少女一人から魔剣を奪い取ることにここまで苦労することになるとは、思ってもいなかったようだ。


「だが、お前の強運もここまでのようだな」


 赤鬼は、ジェシカの変化に気が付いていた。

 ジェシカの纏う黄色い魔力のオーラが薄くなり始めたのである。

 それは、魔力の枯渇により【サンダー・アーマー】が解けかかっていることを意味していた。

 

(まずい。もう限界なのがばれているわ)


 ジェシカは既に、上級鬼一人を討伐し、下級鬼四人を戦闘不能にしている。

 それは、上級魔術師としても十分な成果であった。

 それでも、最後に魔剣を奪われてしまっては何の意味を持たなくなってしまう。

 ジェシカはをそれを理解し、なんとか気力で踏ん張ろうとするが、無情にも視界は霞んでくる。


(悔しい。こんなところで)


 足元がふらつく。

 目の前にカントの姿が見えたような気がした。


(こんな時にまで……カントが見える……なん……て……)


 ジェシカは、意識を失い倒れ込んだ。


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