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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第1編 魔剣との出会い
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次の目的地

 王城襲撃の爪痕は、かなり大きかったようである。

 鬼たちも魔剣の奪取に重点を置いたのか、死者こそ出なかったものの、重傷者も含め多くの負傷者が出ていた。

 その深刻さは、城内にいる者の表情にも現れ、どんよりとした暗い雰囲気になっていた。


 事件を受けての対策を優先しなければならないということで、城内では緊急会議が開かれることになった。

 当然、学園の一生徒であるカントは蚊帳の外である。

 魔剣の新たな知見など報告が必要なことはいくつかあったが、あまり時間をかけて説明する猶予がなかったため、城外での戦闘などについて手短に報告を済ませた。

 アリッサも深手を負っていたが、命に別状はなく、緊急会議への出席も求められていたため、カントは一人学園へと戻っていった。


 学園へと戻ると、カントはアイリスの部屋を訪ねて行った。


「先ほど大きな炎の渦が見えたの。カントが関係してるんじゃないかと思ったんだけど」


 アイリスはカントの顔を見るなり、そんなことを言った。


「ああ、やっぱりそう思うよな」


 アイリスは、カントの魔力量や魔剣の保有の事実を知っている数少ない人物の一人である。

 あれほどの規模の魔法を使える者など限られているし、カントの関与を考えることは的外れな推理ではない。

 カントは、鬼の襲撃やその後の戦闘について、アイリスに説明した。


「鬼なんて滅多に姿を現さないのに、上級種がそれほどまとめて現れるなんて異例よね。私なんて、上級種がいること自体この前まで知らなかったし」


「大臣も似たようなことを言ってたな。鬼は、人目に付かないように隠れて住んでるから、普通目立つことはあまりしないらしい。そこまでして剣を手に入れたかったんだろうか?」


 神に背いた者である鬼は、その存在が知られないように細々と暮らしている。

 このため、集団で人前に現れるということが珍しく、まして騒動を起こすということなどさらに稀なケースであるから珍事ということになるらしいが、その中身は災害と呼んでもいい内容である。

 今回の襲撃の目的が、本当に魔剣にあったとすればそこまでしなければならないという理由があったことになる。


「魔剣は俺が取り返したから、鬼の目的は果たせなかったことになるけど、あの人数でまた襲撃されたら同じような結果になるな」


 確かにカントは、奪われた魔剣を取り返しはしたが、鬼を全員討伐できたわけではないため、根本的な解決には至っていない。

 後日、同じように襲撃される可能性も十分あり得る。


「今回被害が出て有力な魔術師が欠けたとするともっと酷いことになるわね。残りの鬼たちはどこへ行ったのかしら」


 カントはっとした。

 王城のことばかりに意識が向いていたが、鬼たちには王城以外にも襲撃する予定があったとしたらどうだろう。

 彼らが次に向かう場所を押さえておかないと、一般の場所を襲撃した場合、防衛戦力がある王城よりも被害が大きくなることは目に見えていた。


「王城の目的が宝物庫に保管されていた魔剣だったとすると、他の場所にある魔法武器を探すということが次の目的になるのかしら?」


「なあ、王城の宝物庫に魔剣が保管されているというのは有名な話なのか?」


「まあ、城に保管しているということぐらいは皆知っていると思うわ。お宝だから」


「それじゃあ、この辺りで魔法武器があることで有名な場所というとどこになるんだ」


 カントの質問を聞いて、アイリスの表情が急に険しくなった。


「それは……この学園ね」


 この学園は、雷切刀サンダー・スライサーという名前の大剣があることでも有名らしい。

 雷切刀サンダー・スライサーは、その名前のとおり、金属性とされる魔剣である。

 学園では年に一度、魔闘術大会が開催されることが恒例となっていて、その大会の優勝者が一年間魔剣を使用する権利を与えられるのだという。

 この大会は、一般人も観戦できるため、この学園が魔剣を保有しているという事実は世間一般にも知れ渡っていたのであった。


「前回の優勝者って誰だ?」


「入学前の話なんて知らないわ」


 大会の優勝者が所持しているということであれば、その人物が狙われる可能性があるということである。

 その人物が誰か分かれば忠告などができるというものだが、元々、強さとか権力というものにあまり興味を持たない性格だったこともあり、二人とも、この学園の有力者が誰なのかということを全く知らなかった。


「上級生に知り合いとかいないのか」


「いないこともないわ。でも、前にハウンドが言ったとおり、私、友達少ないから」


 そう言われては、カントも何も言えなかった。


 ガシャーン


 そんなことをしているうちに、少し離れたところから大きな音が聞こえてきた。

 カントが目をやると、鬼たちが寮の屋根伝いに駆けていく姿が見えた。

 アイリスも同じ光景を目にしたようだ。

 二人は目を合わせ、互いに頷く。


「「【アクセル】!」」


 二人の呪文を唱える声は、見事に一致した。


 学園寮の規則には、廊下は走ってはならないという規則があるが、二人は、そんなことを気にするつもりはさらさらない。

 鬼を追いかけるため、全速力で建物の外へと向かった。



魔法の属性ですが、

金→電気、木→風と考えると分かりやすいかと思います。

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