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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第1編 魔剣との出会い
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魔剣の力


「さて、それではこの辺りで始めましょうか」


 放課後、アリッサは、王から渡された魔剣の性能を確かめるため、カントを呼び出し、学園の奥にある演習場へと連れてきた。

 学園敷地内に演習場と呼ばれる場所は沢山ある。

 その中から、万が一暴発があってもいいように、ただ広いだけの演習場を選択したのである。

 この前の事故のように、実験のたびに大金貨100枚単位の損害が発生していては、学園の運営はすぐに立ちいかなくなる。


「さあ、それでは鞘から抜いてみて。固有魔法が使いたくなっても一番弱いものを選ぶのよ」


「善処します」


 魔剣に憑かれて暴走状態となった段階で、魔法を選ぶ余裕があるのか疑問に思ったカントであったが、指示どおりナイフを抜いた。

 右手でそれを抜いた瞬間、魔剣とカントの魔力が呼応し、右から左へ体中を何かが駆け巡るような感覚に襲われた。

 それは、一種の興奮作用をもたらすようだが、前の雷の閃光サンダー・ライトニングの一件とは異なり、予め暴走があるかもしれないという心構えがあることで、ある程度は自制することができた。

 カントは、再びナイフを鞘に納めた。


「ふう。酔ってしまいそうだ。右手に持っていると魔力が左に全部流れ込んでしまうようですごく気持ち悪いです」


「普段あまり魔力を放出しないからかもしれないわね。暫く様子を見る必要があるわ」


 普段から魔法を使っている大人であれば、この時点で「適正なし」と判断できるかもしれないが、被験者は魔法の経験が浅い子供である。


(適正があるかを判断するには時期尚早ね)


 アリッサは、まだまだ時間がかかりそうだと考えていた。

 これまで何百年も放置されてきた魔剣である。

 結論を出すまで数年かかっても遅くはない。

 このように思われたが、その考えはすぐに否定されることになった。


「でも、魔剣の性能ならわかりましたよ」


「え?」


 カントが暫く剣を持っているうちに、剣の性能が理解できたというのである。

 いわゆる、「剣が教えてくれる」という現象だ。


「ほ、本当なの?カント君」


 アリッサは半信半疑であった。

 魔剣がその力を使用者に語ってくれたというのであれば、それは適性があることを意味する。


「これは、火属性の魔剣ようです。固有魔法は8種類で、2つは自動発動型、6つは任意発動型ですね。あと、その他の効果もありますよ」


 8つの固有魔法。

 アリッサは、それを聞いただけでもこの魔剣の異常性を思い知ることになった。

 アリッサが知る限り、魔法武器の持つ固有魔法は最大で2つまでで、そのような魔法武器は稀である。

 ジェシカが持つ雷の閃光サンダー・ライトニングもこの前、その仲間入りをしたことで魔剣としての格がかなり上がったばかりである。

 それが一気に飛んで8つである。

 これだけすぐに魔法武器を取り扱えるようになるというのは、一種の才能といえるだろう。


「これまで、3つ以上の固有魔法をもつ魔法武器は無かったのよ。それだけでも凄い発見だわ」


 その言葉を聞いてカントはきょとんとした顔をした。


「あれ?ジェシカの剣も確か3つあったと思いますが。そういえば言う機会がなかったような気がしますね」


 アリッサは眩暈がした。

 色々と自分の常識が崩れていくような気がしたのだった。

 他の魔法武器の性能も確かめる必要があるのではないかという思いが次第に大きくなってきた。


「今度、結果の報告にでも、王城に行きましょう」


「はい、わかりました」


 このあと、この場で発動しても問題が無さそうな固有魔法を中心に実験し、8つの内4つは普段使用しても問題ないことが確認された。



  ※  ※  ※  ※ 



 後日、アリッサとカントが王城へと出向くと、王城内がやけに騒がしくなっていた。


「なにかあったのかしら?」


 入口付近では、王城内部の細かいことまでは情報がなく、衛兵たちからも明確な答えは返って来なかった。

 そんなことをしていると、奥に続く道の向こう側から10人ほどの集団が、宮廷魔術師などに追われながらこちらに向かってくるのが見えた。

 個人差はあるが、頭に角のようなものが見えた。


「あれは鬼のようね。どこからか王城に忍び込んで目的を果たした帰りかしら」


「止めないといけませんよね?」


 カントはアリッサを見上げ、返答を求めた。


「日頃の演習の成果を見せてあげなさい・・・と言いたいところだけど、貴方では色々と厳しいかもしれないわね。基本魔法は【アクセル】のみ使用を許可します。いいわね?」


「はい」


 鬼は通常一人でも倒すのに苦労するのに、それが今回は10人以上いる。

 下手をすると命を落とすおそれもあった。

 だが、一番の心配はカントが王城を破壊してしまうことであった。

 相手が手強ければ手強いほど、どちらの危険性も増してくる。


「上級種がいなければいいのだけれど」


 アリッサは、そんな不安を口にしながらも、腰にあったダガーを構え戦闘態勢に入るのだった。


「【アクセル】二重詠唱(ダブレット)!」



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