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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第2章 第1編 魔剣との出会い
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武術演習

 王立魔術学園の実技科目には、魔法の演習のほかに、音楽や美術、馬術など様々な科目が用意されている。

 中でも、武術と呼ばれるカテゴリーの中には、剣術、槍術、斧術と細分化されており、生徒のニーズに合わせたきめ細かな教育を提供されていた。


 この世界において戦場において多用されるのは、武術と魔法を組み合わせて戦う、魔闘術と呼ばれる戦闘術である。

 このため、魔力が十分にあればそれほど武術に自信がなくてもなんとかなるのだが、そもそも魔力が十分あるという条件を満たす人間が数少ない。

 貴族の家庭では、魔力の増大は難しいが、武術であれば努力次第だと子供に教えることが多いようで、貴族であるならば、武術の技を磨き、戦力の底上げをすることは常識となっていた。

 このため、武術の演習科目は、選択科目も含めて大盛況である。


 カントは、騎士となったため長剣を捌く術を身に付けたいと思っていたが、思わぬ障害が待ち受けていた。


「まさか、長剣術に年齢で受講制限があるとは思わなかった」


 長剣初級演習の科目は、12歳以上が受講条件となっていた。

 長剣を扱えるほど身体が発達していないからというところにその理由があるらしいが、アイリスとカントの二人はそこまで理解していない。


「子供が振り回すと危ないからかしらね」


「それならナイフだって危ないだろう。短剣術の授業は受講制限がないみたいだぞ」


 カントは、目当ての長剣術の授業が受けられないとわかったので、代わりに短剣術の授業を受けようと計画していた。

 王より託された魔剣がナイフであるため、基礎を身につけておいて損はない。


「アイリスは何にするんだ?」


「私は棒術かな」


「へえ、そんなのもあるんだ」


 カントはそれ以上にコメントできなかった。



  ※  ※  ※  ※  



 短剣術の授業に期待し、張り切って参加したカントであったが、その内容はつまらないものであった。

 まず少しの説明がされたあと、木剣を使っての素振りをみっちりさせられた。


「二人ペアで組合いとかじゃないんですか?」


「基礎の無い者にいきなり剣を持たせて戦わせるとして、何ができるんだ」


 生徒の一人が質問していたが、教官に一蹴されていた。

 素人同士が対戦しても、ケガ人が増えるだけであるからだ。

 この世界の鍛錬方法も、カントのいた世界とそれほど差はないようである。

 楽して技術が身に付けばいいが、そんなうまい話はないということだ。


「お主も、この授業を受けていたのだな?」


 カントが真面目に素振りをしていると、同じ受講生の一人が話しかけてきた。

 確かヒッグス・ブライン――魔法基礎演習で同じグループになった平民の男子生徒である。

 グループにたった6人しかいなかったので、あの魔法演習の授業の中で自己紹介はなかったものの、顔と名前は把握できていた。


「確か、ブライン君だったか?長剣の授業を受けようとしたら12歳以上だったからな。ひとまずこちらにしたんだ」


それがしのことは、ヒッグスと呼んでくれていい。某も大剣の授業が受けられず、こちらにきたのだ」


 ヒッグスによると、大剣の実技科目は13歳以上で受けられようになるそうだ。

 長剣よりも待たねばならないため、それ以外の剣技の取得を考えての受講であるらしい。


「それじゃあ俺もカントでいいよ」


 ヒッグスは平民の出であるため、出会って早々に関係がこじれたりという心配はなさそうである。


「カントは、早朝剣の素振りをしているだろう?あれを見て某と同じ境遇ではないかと思ったのだ」


「よく知っているな。最近始めたばかりだというのに」


 カントは、アイリスに剣を貰って以来、朝に素振りを行うようになった。

 騎士になったとはいえ、突然剣が振るえるようになるわけではない。

 これまで、剣など持ったこともないカントであったが、いずれ上手く扱えるようになるために、鍛錬を密かに開始したのであった。


「某も朝は鍛錬をしているからな。お主の姿を見かけるようになったのだ」


(俺も、もっと周りを見ないといけないな)


 カント以外にも朝鍛錬をしている生徒は珍しくなかった。

 顔見知りがいないカントにしてみれば、誰がいようとあまり気にしていなかったのだが、自分がいたことは、他人の目にしっかりと映っていたことを認識させられたのであった。


「あの剣、騎士の剣ではないか?」


 ヒッグスは、周りを気にしながらカントの耳元で囁いた。


「よくわかったな」


 そこまで観察されていたことにカントは驚いた。


「ああ、やけに立派な剣で、しかも新品の剣だ。カントが功績を立上げたのではないかと思ったのだ」


(鞘の王家の紋章の部分は隠しているんだが、それでも見ている人間にはわかるんだな)


「今のところは、秘密にしているんだ。他言無用で頼むよ」


「相分かった。某の口はオリハルコンよりも固い故」


 見る目を持つ者が、興味を持って見れば色々なことが分かってしまう。

 そのことに気が付いたカントは、暫くの間、木剣での練習に切り替えることにした。




お読みいただき、ありがとうございます。

次回は、魔剣の性能を確かめる予定です。

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