乙女の恥じらい
予定を変更して前話に追記することにしました。
このため、短くなっています。
鞘から抜けなかった魔剣は、カントの手によりその姿が明らかとなった。
その性能が未知であったため、その場でカントに手渡されることはなく、王立魔法研究院にて分析されることになった。
このため、その剣――正確に言えばナイフ――を取りに来るように研究院の所長が呼びつけられていた。
「ほう、これが例のナイフですか。どんな特性があるのか楽しみですなあ」
「分析にはどの程度かかる?」
「一週間もあれば十分でしょう。結果をまとめ、また報告に上がります」
「うむ。頼んだぞ」
「それでは、私はそろそろお暇いたします」
大臣と所長の間で話がまとまったようだったので、カントは寮へと帰ることにした。
※ ※ ※ ※
カントが帰ってからも話は続いていた。
「それにしても非常に美しい色をしておるな」
大臣がその桃色の刀身を覗き込むと、鏡のように自分の目が映って見えた。
魔金属をここまで磨き込むとは相当高い技術が必要となる。
「そうですね。それにしてもあの少年は素晴らしい。今まで誰も姿さえ見ることを許さなかった魔剣に認められたわけですから」
「今までどの男にも心を許さなかった初心な乙女を口説き落としたようなものじゃな」
「そして脱がされて気が付いたら別の男が目の前にいるというわけですね」
「なるほど、今の状況にぴったりですな。ははは」
下品な大声で笑いながら盛り上がる男性陣を、待女を含めた女性陣は白けた目で見ていたのであった。
ふと所長がナイフに再び目をやるといつの間にかナイフが鞘に収まっていた。
「おや?誰かナイフを鞘に納めたのですか?」
皆は顔を見合わせ、それぞれの顔を横に振る。
「どうやら、魔剣の認めた者が近くにいないと駄目なようですね」
エリザベスは冷めた声で皮肉たっぷりにそう指摘した。
乙女のガードは想像以上に堅かったようである。
そして、やはりその場にいる者では誰も鞘から引き抜くことができなかった。
結局、分析はカント立ち合いのもと学園内で行うということが、本人も学園長もいないのに決定した。
因みに、このナイフはこのエピソードから、後に「恥じらう乙女」と呼ばれる異名を持つことになる。




