Sforzα~スフォルツァ・ルファ~
zero→本作→本編→???
???
・それは三日前のことだ。
この何の変哲もない中学校。
季節は春。進級も起こり、新しい生活になじみ始めた頃、
3年生の後藤一也と、須田郁美は鍵と契約をした。
{汝、契約するか?それとも契約しないか?
契約する場合は一つだけ願いをかなえる代わりに他の能力者と戦ってもらう。
契約しない場合はこの場で記憶を消させてもらう。}
鍵から言葉が響く。
「契約するぜ。俺の願いは・・・」
後藤が考える。
受験生にとって不安な受験先を確定させると言うのもおいしい。
億万長者になると言うのもおいしい。
だが後藤はそれらを振り切ってある願いをした。
「離婚寸前な俺の両親を昔のように幸せな状態に戻してくれ。」
「一也・・・。」
{・・・その願い、聞き入れた。汝に能力を与えよう。}
鍵から言葉が響く。
「・・・私も、契約します。
私の願いは、この戦いでこの戦いに関係ない人に影響を及ぼさないようにすることです。」
{汝の願いも聞き入れた。汝にも能力を与えよう。}
二人の契約が済むと鍵は二人の体の中に入った。
それから三日。
さっそく二人は能力者との戦いに入っていた。
相手は、元永小百合。
「・・・能力者は倒さないと・・・!」
元永が言うと、後藤、須田の体を鎖が縛り付ける。
「鎖か・・・。」
後藤がつぶやく。
さらに鎖の緊迫が増し、二人の体が魅しついて行く。
「・・・このまま、押しつぶれて!」
元永が集中する。
だが。
「120秒が過ぎた。お前の命の終わりの時だ。」
後藤が言うと、後藤たちと元永の間の空間に穴が開く。
「え!?」
「・・・アウト・ホール・・・!」
空間に開いた穴は直後にあらゆるものを吸いこんでいく。
二人を縛っていた鎖もあとかたもなく吸いこまれていく。
「そ、そんな・・・・!」
元永も吸い込まれてしまい、穴ごと消滅した。
「・・大丈夫?」「ああ。大したことはない。」
「相変わらず戦いのときは暗いよね、一也って。」
「こんな戦い誰が望んでやるか。
俺が望んだのは、父さんと母さんが仲直りすることだけだ。」
後藤が言う。
二人は学校を出る。
どういうわけか、学校の外では能力が使用できなくなる。
二人は何度試しても使用できなかった。
「ただ今、母さん。父さん。」
「おお、一也か。」
「あら、郁美ちゃんも。」
「おじゃまします。おばさん。おじさん。」
二人が家に入る。
とても四日前までは離婚寸前だった二人とは思えない。
後藤と須田は幼馴染だ。
少なくとも物心ついたときには二人一緒だった。
約束をしていた。
死する時も二人一緒だと。
・契約してから後藤は毎日何人もの能力者を消滅させてきた。
後藤の能力はチャージした時間の半分だけ空間に穴をあけられるもの。
最大で120秒のチャージ。最大チャージで60秒間穴をあけられる。
須田の能力は細胞再生。たとえ手足が切断されても再生できる。
須田は前線に出ずに後藤が敵を殲滅する。
そしてダメージを受けた後藤の傷を須田が治す。
これを繰り返してこの一週間で20人以上の敵を倒している。
「・・・今日もか。」
放課後。
二人が廊下を歩いているとやはり敵がやってきた。
「俺は、容赦はしない。こんな戦い早く終わらせるために敵は必ず殺す。」
後藤がいい、チャージを始める。
だが。
「必ず殺す?それは俺の台詞だ!」
相手である猪狩が叫ぶ。
同時に周囲が凍っていく。
「氷か・・・。」
後藤はかわしていく。
だが、かわしきれずに両足が凍ってしまう。
「何・・・!?かわしたはずだぞ!?」
「かわせると思ってんのか!?てめえは、俺の恋人の小百合を殺した!
だから、契約した。てめえを殺す!それだけの為に!」
猪狩が言うと、さらに冷気は周囲を凍らせていく。
「・・まだ20秒だが、使うか・・・。」
後藤が空間に穴をあける。
それにより、氷が吸い込まれていき後藤は自由になる。
だが。
あけた穴が凍っていく。
「何!?」
「俺の能力は空間さえも凍らせる。
てめえがどんなに穴を開けようが穴を凍らせて塞ぐ。
俺が望んだ願いは必ずてめえを殺せる力を得ることだ!」
猪狩が言うと、後藤の体が完全に凍ってしまった。
「死ね!」
猪狩が後藤の体を持ち上げて窓の外から投げ飛ばす。
凍った後藤は地面に落とされて粉々になった。
「くくく・・・!ふははははははははははははははははははははははははははははは!!!!
これで俺の復讐は終わった!奴は死んだ!」
猪狩は笑い、去って行った。
「・・・行ったみたいね。」
須田が見る。
須田が外へ走る。
粉々になった後藤の残骸。
「・・・よかった。頭は無事見たい。頭が無事なら、再生できる・・・!」
須田が後藤のかけらを集めて再生を始めた。
頭が無事とはいえ体が粉々になっているため再生にはかなりの時間がかかる。
「・・・死なないでね、一也・・・!」
須田が集中する。
一方。
「何?奴がまだ死んでいないだと!?」
猪狩が驚く。
「ああ、そうだ。だからお前の願いは聞き入れられない。」
会話相手・伊藤が言う。
「ふざけるな!あいつは粉々になったんだぞ!」
「教えてやろう。あいつの隣にいたあの女。あいつは細胞再生能力を持つ。
頭さえ無事ならどんな深い傷を負っても再生する。」
「・・・ちっ、いつの間にかいなくなっていたと思ったらあの女・・・!」
猪狩が去ろうとすると、
「待て。情報料だ。20万出せ。」
「・・・ちっ!」
猪狩がカードを投げる。
「そいつの中には20万入ってらあ。
今から俺があいつを殺す!そうすれば100万払うんだろうな!?」
「ああ、払おう。そうだな、あの女。
須田郁美の首をとればさらに100万払ってやる。あいつは邪魔だ。」
「・・・けっ!」
猪狩が向かう。
「・・・恋人を殺されて復讐に走るか。
だが貴様はどんなにあがこうが俺の掌の上で踊る人形にすぎない。」
伊藤が静かに笑う。
・夜。
夜までかかった。
須田は後藤の家に連絡して遅くなると伝える。
現在、後藤は意識は戻らないものの肉体の再生は完了した。
「・・・あとは十分な休息が・・。」
須田が汗をぬぐう。
その時、周囲が凍っていく。
「!気付かれた!?」
須田は後藤を担いで走る。
「させるかよ!」
直後猪狩がきて須田を蹴り倒す。
「くっ!」
「やはり再生していたか・・・!小百合の仇・・・!」
猪狩が須田を蹴り飛ばし、後藤を締めあげる。
「さっさと起きやがれ!」
猪狩が後藤を壁まで投げ飛ばす。
「・・・くっ!」
後藤が目を覚ます。
「貴様は・・・!」
後藤が立ち上がる。
だが、まだ再生したばかりでふらふらする。
「貴様を殺す!」
猪狩がいい、後藤を殴り倒す。
「くっ!」
「能力にだけ気をつければ貴様など素手で殺せる!
いや、この手で殺す!」
猪狩がいい、無理やり後藤を起き上がらせてから殴り倒す。
倒れた後藤の腹を何度も何十回も蹴り続ける。
「そろそろ2分か。おらぁ!」
猪狩が後藤の体を凍らせる。
全身が氷漬けになる。
「これで終わりだ!2度と再生できないように頭をつぶしてやる!」
猪狩がハンマーを自転車のタイヤを拾って後藤の頭部へ振るう。
「・・・チャージ完了・・・!」
後藤は凍った意識の中発動を宣言した。
直後、空間に穴があき氷や自転車のタイヤが吸い込まれていく。
「馬鹿な!?」
「猪狩乱麻・・・!確かに俺は貴様の仇だ。
だがな、どんなに恨まれようが俺は負けてやるわけにはいかねえんだよ!」
後藤が吼え、猪狩の体が吸い込まれていく。
「馬鹿な、俺は・・・!小百合ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!」
その体が怨念ごと吸い込まれていき、消滅した。
「・・・くっ、」
後藤が膝まづく。
「一也!」
須田が支える。
「はあ、はあ、再生したばかりでまだ体が馴染んでいないか。」
後藤が血を吐く。
「・・・奴は死んだか。もろいな。威勢の割には。」
伊藤が笑う。
・猪狩との戦いから三日。
傷を治した後藤と須田はいつも通り学校に通う。
戦っていくうちに後藤はあることに気付いた。
能力者たちはグループを組んでいる。
少なくとも自分たち以外に大きなグループは二つ。
一つは不良グループだ。
現実に失望を抱いたものが鍵を呼びやすい。
不良などにはまさに相性がいい。
もう一方は天才たちだ。
「噂によれば有地も契約をしたらしい。」
「有地が?」
「ああ、学校一番の天才だ。平凡な日常に失望してもおかしくはないだろう。」
後藤が言う。
ここまで能力者が多いにもかかわらず世間にその存在があまり知れ渡っていないのは
須田の願いのおかげだ。
その願いのおかげで一般人は能力の存在にすら気付かない。
能力者が一般人を攻撃しようと思っても能力が発動しない。
それどころか時間がたつにつれて
攻撃しようと思うことさえ思わなくなってくる。
ある意味最強の結界だ。
それゆえに須田を狙いに定めて襲ってくる者もいる。
そしてそれを後藤が殲滅する。
最強のコンビだ。
そんな二人の陰。
「・・・来たか。」
伊藤が見る。
伊藤がいる教室の周囲に不良軍団が来る。
結界を逆に利用したものだ。
武装した一般人に能力者のことを教えて攻撃させる。
これで能力者は一般人に抵抗できないまま一方的に襲われることになる。
だが、天才は違った。
能力を使ったトラップを仕掛けていた。
30人の不良が金属バットを持って教室のドアに触れる。
と、30万ボルトの高圧電流が流れて6人が半身不随になる。
さらに24人がいる床が転移されて24人が落下する。
「直接殺せないのが癪だがな。」
有地が笑う。
有地の能力は転移。一般人が相手では直接一般人を、または一般人に転移はできない。
だが例えば一般人が今立っている地面や床を転移させることはできる。
また、
一般人達の立っている真上の空間に溶岩を転移させることはできる。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」
一気に50人の不良の真上に溶岩が降り注ぎ、その全てが血だるまとなって死んだ。
「・・・さすがにやるな。」
不良集団の長である金子が状況を見る。
「・・・どうする?」
腹心である大川と、古川が訊いてくる。
「・・・俺達も行くぞ。伊藤秀吉と有地竜太。
この二人さえ仕留めれば奴らに手ごまはいない!」
金子、古川、大川が席を立ち、出陣する。
一方。
「・・・漁夫の利を狙うってことね。」
「・・・ああ。」
後藤と須田がそんな戦局を見ていた。
「でも、漁夫の利を狙うとはいえたった二人
、実質一也一人だけで2大勢力に挑むなんて大胆ね。」
「いくら俺でも無傷ではすまされない。ここで俺も死ぬかもしれない。
お前も人ごとじゃないぞ、郁美。」
「分かっているわ、さて、様子見としましょうか。」
後藤と須田が潜む。
「・・・来たか。たのむよ、中村さん。」
伊藤がいい、雇われの中村が教室を出る。
「・・・やれやれ。
芽吹もどっかで汚いことしてるようだけど、私もなかなか汚いね。」
中村がため息をつく。
と。
「雇われか。」
そこに大川が来た。
「大川、同じ傭兵同士仲間にならないか?」
「断るな。むしろ傭兵同士着いた側が着いた側だ。殺し合うのが仁義だろう?」
「・・・同感。下手な演技で後ろから撃たれても嫌だしね。」
二人がにらみ合う。
「行くぜ!」
大川がマシンガンを召喚して連射する。
中村はかわして物陰に隠れる。
「さて、チャージに時間がかかるね。」
中村が集中する。
「・・・奴の能力は特異空間へ引きずり込む技。
一体どんな空間に送られるかわからない。
だが、チャージに時間がかかる。少なくとも40秒はかかる。
だからそれまでに貴様を殺す!」
大川がバズーカ砲を放つ。
バズーカの弾丸が盾になっている壁ごと粉砕する。
「・・・死体がかけらもない。かわしたか。」
大川が判断し、バズーカを捨ててグレネード銃に持ち替える。
周囲に気を配りながらも歩いて行く。
「奴自身に戦闘能力はない。弾の一発でもぶち込めば片がつく。」
大川が判断する。
一歩、一歩する。
と、周囲の景色が変わっていく。
「やられたか。」
大川が判断する。
同時に天井から溶岩が降ってくる。
「・・・2VS1・・・いやそれに見せた能力か。」
大川は溶岩をかわして一瞬で360度を見渡す。
「・・・!そこか!」
大川がグレネード弾を2発放つ。
何もない虚空を貫く2発の弾丸。
だが何かに命中して爆発した。
やがて空間が元に戻っていく。
大川が見ると、弾丸が爆発した場所。
そこに下半身だけの死体があった。
「・・・さて、ボス達はどうなっているかね?」
大川がグレネードをしまって走る。
一方。
「見つけたぜ、伊藤。」
金子、古川が伊藤の前に来た。
「・・・金子か?なんだお前か。」
「貴様、この俺を侮辱するってのか?」
「ああ。お前程度ではな。
まあ、奴の前のウォーミングアップにはなるとうれしいのだが。」
伊藤が椅子から立つ。
「さあ、どこからでもどうぞ。」
伊藤が笑う。
「行かせてもらう!」
金子が走る。
金子が伊藤の顔面に拳を叩き込む。
「・・・なんだ?」
伊藤は無傷だった。
「・・・俺の能力は闘志がある限り一切傷を受けない。
だから殴りたい放題だ!」
金子が伊藤にパンチやキックの連打をぶち込んでいく。
「・・・なら、その闘志を除こうか。」
伊藤が手を掲げる。
「無駄だぜ。俺の能力で相手は自分の能力を説明しないと能力を発動できない!」
古川が言う。
だが。
「・・・殲滅。」
伊藤の掌の先、1メートルの位置を中心に空間が吸い込まれていく。
「何!?」
金子が驚く。
「ぐああああああああああああああああああああああ!!!」
古川は吸い込まれていく。
「吸引の能力か!?」
「違うね。言っただろう?殲滅だと。」
伊藤が言うと、集束が収まる。
古川が重力作用で床に落下する。
「・・・相転移砲、発射。」
そして、集束された場所から超エネルギー砲が放たれた。
「何!?」
「相転移とは空間を上書きする空間エネルギーのこと。
当然上書きされる空間に存在するものは消滅する。
だから言っただろう?殲滅すると。」
言葉さえも相転移され、
空間に波紋が広がる。
広がった波紋は景色を灰燼へと還す。
黒い灰は地面に落ちる前に消える。
そして新たな景色が広がっていく。
その景色に伊藤以外は存在していなかった。
「さて、そろそろ出てくるかな?一縷、そして異界の強きものは。」
伊藤が笑う。
直後。
伊藤の首にナイフが刺さった。
「・・・驚いたよ。俺に気付かれずに潜入して一撃入れるとは。」
伊藤の背後。
そこに一人の少女がいた。
「阿部さんか。その能力、触れたものを起爆させる能力か・・・。」
「分かっているなら郁美のため、ここで死んでね。」
阿部が言う。
同時に首に刺さったナイフが爆発する。
「・・・けど、こううまくいかないみたいね。」
阿部が構える。
「・・・いや、危なかったよ。」
伊藤は無傷だった。
「ギリギリでナイフと爆発を相転移させなければ死んでいた。
阿部さん、次の相手は君でいいのだろうね?」
伊藤が立ち上がる
・廊下。
「・・戦いが激しくなっているな。」
後藤が言う。
「そうね。
今好美をスパイに使っているけど、これでほとんど戦いは収まったはずよ。」
「好美を・・・?一人でか?」
「大丈夫よ、好美なら。あの子は忍者なんだから。」
須田が言う。
直後、激しい音がする。
「・・・・不安だな。」
二人が向かう。
向かう途中で何度も同じ音がする。
二人が到達する。
伊藤がいた教室。
そこは消し飛んでいた。
「い、郁美・・・!」
瓦礫の中から阿部が出てくる。
「・・・仲間か。」
その先に伊藤がいた。
「能力以外でも相当強い。金子と古川を瞬殺した相転移砲を5発もしのぐとはね。
けど、その体でどこまでやれるかな?」
伊藤が言う。
よく見れば阿部の体の形はおかしかった。
へそから右の腹が消し飛んでいた。
同じように右肩も消し飛んでいた。
「好美、大丈夫か!?」
「ええ、気をつけて。そいつの能力は空間を上書きする相転移よ!」
「相転移・・・!現在唯一の永久機関と噂高いあのエネルギー・・!」
「好美!すぐにこっちに来て!」
須田が言う。
「細胞再生の君か。やっと阿部さんの動きを鈍らせたんだ。
動きを元に戻されたらさすがの俺もバッテリー切れになる。
だから、ここで消えてもらう。」
伊藤が言うと、空間が軋む音がする。
「来るか、相転移!」
後藤が構える。
その時。
「ずいぶんと苦戦しているようだな、伊藤秀吉。」
そこへやってきた男。
「・・・来たか。海東一縷。」
伊藤が見る。
「・・・しかしこれだけの力がそろっていながら奴は現れないようだな。」
海東が周りを見る。
「奴・・・?」
後藤が構える。
その後ろで須田が阿部の傷を治す。
「まあいい。まずはお前との決着をつけようか、秀吉。」
「ああ。雑魚ばかり戦わせられて退屈していたんだ、一縷。」
二人が構える。
同時に空間が軋んでいく。
「・・・!二人同じ能力か!?」
後藤が気付く。
「相転移砲、発射。」
二人同時に相転移砲を放つ。
ぶつかり合う二つの相転移砲。
今ある空間が左右から砕け散っていく。
景色が灰燼となって地に着く前に消える。
「・・・・チャージ・・・!」
後藤がチャージを開始する。
相転移の影響で空間が固定するまでに時間がかかる。
だがそれを待たずに伊藤と海東が拳を激突させた。
「分かっているだろうが、いくら奴をおびき寄せるためとはいえ決着はつける。手加減をするつもりはない。」
「分かっているさ。」
二人が殴り合う。
「あの二人の環境は?」
後藤が訊く。
「伊藤秀吉。年齢は私達と同じ。
能力は相転移。望んだ願いは相手の願いを一時的に無効すること。
海東一縷。年齢同じ。
能力は相転移。望んだ願いは同じ能力者同士の激突に勝利した時、地球を滅ぼすこと。
二人は幼馴染。両親ともに死亡。両親4人は仲が良かった。
二人の父が兄弟、母が姉妹。
しかし3年前に兄弟姉妹喧嘩。
秀吉と一縷以外の兄弟も含めた悲惨な争いがあった模様。
結果、あの二人以外の親族は全滅。」
阿部が言う。
「・・・血のつながった者同士の戦いか。同じ能力を持つわけだ。」
後藤がにらむ。
と、二人の激突の衝撃が3人に飛来する。
「危ない!」
阿部がかばう。
「好美!?」
「あなた達を失うわけにはいかない・・・!」
阿部が倒れる。
背中が相転移されていて内臓が丸見えになっていた。
「好美!今再生を!」
須田が再生させる。
「・・・!まだ相転移砲同士の激突が起こるぞ!」
後藤が見る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
二人同時に相転移砲を放つ。
衝撃は学校全体を包む。
須田の願いの力によって一般人に被害はなかった。
「・・・まずいな・・。」
後藤がつぶやく。
須田は気絶。
阿部は右足が折れている。
後藤も腹に砕けた壁の破片がいくつも刺さっていた。
「・・・今のでチャージ分も使っちまった・・。
もう一度120秒チャージするしか・・・!」
後藤がチャージを再開する。
だが。
「・・・させない。」
伊藤が後藤の前に立った。
「勝ったのはお前か・・・!」
「俺は、勝ち続ける。貴様にも。」
伊藤が後藤を蹴り飛ばす。
「クナイ!」
阿部がクナイを投げる。
クナイが伊藤の首に刺さる。
「爆!」
阿部が念じると、クナイが爆発して伊藤が倒れる。
「くっ・・・!ダメージを受けすぎて反応が鈍い・・・!」
伊藤が立ち上がる。
「・・・これで終わりです。」
次の瞬間には阿部が背後にいて鎖で伊藤の体を縛りつけていた。
「起爆させます。」
「・・・俺の負けだ。これで、地球が滅ぶことも亡くなる・・・。」
伊藤が目を閉じる。
だが、次の瞬間。
「いや、この星は散るさ。」
声がする。
同時に
「相転移砲発射!」
相転移砲が放たれた。
「何!?」
伊藤が目を開くと先には海東がいた。
空間に波紋が広がる。
景色がボロボロと傾けたジグソーパズルのように崩れ落ちていく。
闇に落ちた景色のかけらは闇色に染まって消えた。
そして新たな景色が作り出された。
「・・・くっ!」
後藤が血を吐く。
「な、なんとか郁美は守り切ったか・・・!・・だけど・・!」
後藤が見る。
2メートル前にいた阿部は伊藤もろとも消滅していた。
「・・・残るは貴様だ。」
海東が後藤をにらむ。
・相転移砲で消し飛んだ教室。
青空が見える屋根のない廊下。
海東は血だらけでそこに立っていた。
全身傷だらけで左腕はなかった。
それでも立っていた。
立って相転移砲を放って伊藤と阿部を消し去っていた。
「はあ、はあ、願いがかなった・・・!秀吉をこの手で倒した。
これで、この星は滅ぶ。」
「・・・おいおい・・・!」
後藤が見る。
だが、星に影響はない。
「・・・なぜ、何も起きないんだ?」
海東が疑問する。
「見えなかったのか?」
腹から大量の血を流しながら後藤がよっこらせっと立ち上がる。
「相転移砲が命中する寸前に好美が鎖を起爆させて伊藤を殺したんだ。
そのあとで相転移が二人を消し飛ばした。
確かに相転移で伊藤を消し飛ばしたがそれはすでに死体。
貴様があいつを殺したわけではない。」
後藤が血をぬぐう。
「・・・好美、お前が救ってくれたこの命、この星。
俺は無駄にはしない。海東一縷!この俺が貴様を倒す!」
後藤が言う。
「ぬかせ!」
直後海東が後藤の目前にいた。
同時に海東の拳が後藤の腹にぶち込まれる。
「くっ!」「くっ!」
二人同時に苦痛を上げる。
後藤は数メートル殴り飛ばされる。
「・・・今のはきつかった・・・!
奴が万全な状態だったら心臓がつぶれていた・・・!」
後藤が立ち上がる。
腹の骨が砕けていた。
一方で海東の殴った拳はすでに限界を迎えていて、殴った瞬間に骨が砕けた。
そのせいで威力が半減したのだ。
「はあ、はあ、ダメージを負いすぎた・・・。
だが、勝ってみせる・・・!勝ってみせる・・・!」
海東が構える。
「相転移を使う気か!?」
後藤が驚く。
「そうだ・・・!一発でも使えば貴様など消滅する。」
「馬鹿か、一発でも使えばお前の体まで相転移されるぞ!」
「黙れ・・・!俺は誰にも負けるわけにはいかない!」
海東がチャージしていく。
それだけで全身にひびが入っていく。
「・・・お前の最期の勝負、受けて立つ!」
後藤も構える。
互いにチャージが完了する。
「相転移砲!」「アウト・ホール!!!」
互いに最後の技を繰り出す。
放たれた最後の砲撃。
海東が相転移砲を放つ。
後藤が空間に穴をあける。
空いた穴が相転移砲を吸いこんでいく。
「馬鹿な!?」
「何も相転移させる空間はこの空間でなくてもいい。
あけた穴には別の空間がある。その空間を相転移させた。
そして、ゲームセットだ。」
後藤が言うと、海東の体が消えていく。
「お、俺の体が相転移されていく・・・!」
「・・・お前の負けだ。
生きたいと言う意志はどんな意思にも負けはしない。」
後藤がいい、海東の体が景色となって砕け散った。
闇の中に景色の破片が溶けていく。
だがその闇の中。
その闇の中にわずかな光があった。
そこには6つの景色があった。
「・・・平和に暮らせ。
相転移の先でしか実現できなかった幸せな永遠で。」
後藤がつぶやく。
・二日後。
校舎は元に戻っていく。
「そっか。好美が・・・。」
「悪い。俺は好美を守れなかった。逆に守られてしまった。」
「いいんだよ。一也も笑わないとだめ。
好美が折角命をかけて守ったのにそんな悲しい顔されたら悲しむでしょ?」
そうなだめる須田の瞳には水気があった。
「・・・そうだな。」
後藤がつぶやく。
風が吹く。
暖かい南風だ。
「・・・決めた。」
「え?」
「この戦いの黒幕を探そう。」
「黒幕?」
「ああ。伊藤が言っていただろう?俺達でも海東でもない「奴」を。
きっとそれが黒幕だ。そいつさえ倒せばこの戦いも終わるはずだ。」
「・・・じゃ、もう誰も殺さなくていいの?」
「ああ。これからは極力戦わない。そして、」
風がやんだ。
「郁美、お前は必ず俺が守り抜いて見せる。何があっても・・・。」
「・・・一也・・・。」
そしてまた風は吹く。