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14、少女の名前はチャーハン



「……で、これからどうするつもりだ、ピヨちゃん」

「とりあえずクユユの安否確認ふぁ」

「無事ならそれで良しか? その敵とやらはどうする?」

「ちょっかい出してくるんなら、ぶっ潰ふ、やめろクシナ」


 俺とクシナは今、シルジアの背に乗ってクユユの居る町へ急いでいる。

 

 俺はシルジアと作戦会議だ。

 クユユが無事ならそれで良し。

 ……にしたいのだが、あのチンピラの大将はそれを良しとはしないだろう。だったら見つけ次第、ぶっ潰すまでだ。


 この作戦会議にクシナは参加していない。

 何故なら俺にちょっかい出すのに夢中だからだ。


 クシナは俺の頬をびよ~んと伸ばしている。


「ピヨちゃんふにふにね。ハムスターみたい」

「やめふぉ、邪魔だ」

「ふふふ、照れちゃって」


 言ってぶにゅっと頬を掴むクシナ。

 痛い、やめろ。照れてねーし。

 

 だがクシナには負い目はあるため、強く言えない。くっそ。


「この口から水を吹いて、火も吹く。ただのヒヨコとは思えないわね。何か隠してるんでしょ? 実はヒヨコじゃなくて、別の何かとか。協力するんだから、少しは教えてくれてもいいんじゃない?」

「それは我も思った。ただのヒヨコにしては、実に強力な能力を持っている」

「いや、別に何か隠してる訳でもないし」


 そうです。私はヒヨコです。


 姿形もただのヒヨコだし。

 それに別のなにかってのもあり得ない。

 俺はニワトリの楽園で生まれた。

 そしてニワトリに育てられたのだ。

 たった五日間だけど。


「俺はヒヨコだ。それは変わりない」

「私が今まで見てきたヒヨコって火は吹かなかったけどね。不思議なピヨちゃん」


 またびよ~んと頬をクシナに伸ばされた時、ふいにシルジアが足を緩めた。何かの気配を察したらしい。


「ピヨちゃん、何者かが接近している」

「待てシルジア、敵じゃない」


 シルジアの警戒通り、巨大な影が俺達を覆った。

 俺はこの影の正体を知っている。

 ジータだ。

 どうやら狼を撒いて来たみたい。

 

 翼を翻してジータが接近してきた。

 

「……ピヨちゃん、その熊はなんだ、何者だ」

「シルジアってんだ、ちょっと協力して貰ってる」

「……? 協力? ピヨちゃんは何をしようとしている」


 まあジータが不思議に思うのも無理は無いか。

 だって事の始まりを知らないんだからな。

 だが、熊の事しか聞いてこなかったな。

 

「ジータ、この金髪娘の事は聞かないのか?」

「無用だ。狼から全てを聞いて来た。クシナと言ったか娘よ、お前がこの町に来た理由もな」

「あら、全部聞いたの? じゃあ話が早いじゃない、私はピヨちゃんの敵じゃないし、あなたの敵でもない。今はどっちかと言うと、ピヨちゃんの味方ね」


 ジータは難しい顔をしていたが、どうにか事情は飲み込めたようだ。あの狼から何か聞いたみたいだったが、今は関係ない。今はクユユに集中すべき。


 俺はジータに全てを話した。

 またチンピラに襲われたこと。

 そしてクユユに危険が迫っている事。

 

 すると、ジータの取り巻く雰囲気に怒気が生じた。


「クズ共が……、俺達を狙うならまだしも、か弱い娘にまで手を出そうとするか。八つ裂きでは済まさんぞ……!」


 僅かに殺気を帯びたその声は酷くトゲトゲしてた。

 辺りに居た小鳥達は逃げるように飛び立ち、俺とクシナを背に乗せるシルジアも恐怖しているのが気配で分かる。クシナも僅かに震えた。

 

 怖いわ。

 これが竜の殺気か。

 

 けど殺気を周囲に撒き散らす事はジータはしない。

 次の瞬間には殺気が治まり落ち着いた声に戻る。


「ならば、ピヨちゃんよ、急ぐとしよう。シルジアとやら、お前の足では遅い、俺の背に乗れ、町へ急ぐ」

「我も同感だ。ここはジータ殿に従おう」


 シルジアが足を止めた。

 俺達はジータの背に乗って町へとひとっ飛びだ。

 

 ジータは鼻が利くためクユユの現在の居所を調べられる。その結果、ジータは町の中央らへんにあった公園にへと翼を下ろした。


 けど、そこにクユユの姿はない。

 これがどういうものかは、ヒヨコの小さな頭でもすぐに分かった。


 既に誘拐されている。


「ピヨちゃん、クユユの臭いはここで途切れている」

「途切れるってなんだ、どこかに移動しているのなら、匂いは辿れる筈だろう? いや、まさかな」

「そのまさかだ。消されているのだ。僅かな臭いも感知できない」


 その後もジータは鼻をすんすんと鳴らしていたが、一向にクユユの臭いが何処に向かったかは分からなかったらしい。


 これでクユユの誘拐は確実か。

 気付くのが遅すぎた。やっべぇな、どうするか。

 俺が頭を抱えていると、クシナが奇妙な事を言い始める。


「ジータだっけ、それとシルジア。この辺りにネズミの臭いって感じない?」


 クシナに言われてジータもシルジアも鼻をスンスンし始めた。そして二匹の何かに気付いた声が重なった。


「確かに、我の鼻にはネズミの臭いを感じられる」

「それも大量にな。クシナ……、貴様、何か知っているのか、知っているのなら全てを話せ」

「いや、そんな迫まられても、可能性の話をしただけなんだけど」


 ジータの言う通り、クシナは何か知っているような感じだった。

 

 いきなり何でネズミがどうとか言い出したんだ?

 まるで誘拐の犯人がネズミだと知っているような言い方じゃん。


 それはちょっと俺からも話をさせてもらいたい。


「クシナ、俺からも頼む。何を知ってるんだ?」


 そう訊ねると、クシナが人差し指を立てて「まあ、あくまで可能性の話だけど」と切り出した。


「この街にネズミの魔物が居るって聞いて、私はそのネズミの魔物を討伐しに遠路はるばるここに来たって訳」

「魔物の討伐?」


 俺が漏らした疑問にはジータが答えてくれた。


「この娘は魔狩り士だ。魔狩り士とは読んで字の如く、魔物を狩る者のことを言う」


 ジータの言葉にクシナはコクリと頷いた。

 そして話を続ける。

 

「……で、私はもしかしたら魔物が一枚絡んでるかもって思って、ネズミの話を切り出したって次第よ、あいつら頭いいからね、人間と手を組んで悪巧みってのも業界ではたまにあるし」


 クシナの言った、魔物と人間が手を組む。

 それはチンピラの言葉からも頷けた。


 チンピラの口から出てきた二人の名前。

 ロウフェンとクリステル。

 恐らくこいつらのどっちかがネズミの魔物か。

 そういうことだろう。

 

 それにしても、魔物とやらはクシナの言う通り随分と頭が良いようだ。クユユを誘拐したのも俺達の無力化が狙いか。


 そしてその誘拐したぜって事実を、わざとクユユとネズミの臭いを残す事で俺達に知らせた。ということはもう何もするな、抵抗しようとするなって言いたいのか。


 だとすれば、俺達が抵抗しようと画策しないか、見張りを付ける必要があるな。何かしようとすれば、静止を促す役目が。


 調べてみるか。

 俺達を監視している奴が居るかどうか。

 危険感知、ヒヨコサーチだ!

 

【鼠】【鼠】【鼠】【鼠】


 よしよし。

 やっぱり居たな、ネズミの糞野朗が。


 俺は皆に小さい声で耳打ちした。


「クシナ、ジータ、シルジア、ネズミの糞野朗が俺達を監視してる。数は4匹、丁度、俺達の数と一緒だ。一匹も逃がすな」


 隠れている場所は視線を使って指し示す。


「行くぞ、ぶっ潰せ!」


 俺のその言葉が合図だ!

 各々がネズミの監視員を仕留めるために動き出す。


 俺もベンチの物影に隠れてたネズミに向かって走り出した。

 

「ウギョ!? ば、バレた! 何で!?」

「ヒヨコサーチだ!」


 有無も言わさず蹴りを叩き込む。

 たかがネズミだ。

 人間を一撃で仕留めるヒヨコキックに耐えられる筈もなく、キュ~と鳴いて動かなくった。


 振り向けばジータもクシナもちゃんとネズミを仕留めていた、


 シルジアは仕留めていなかった。

 いや、ちゃんと仕留めてはいたのだが、仕留めた奴が違う。ネズミを尻尾を掴んでいたのは、一人の少女だった。


 え? 誰?

 と思ったけど、ジータはこの少女を知っている様子。


「お前……、まさか」

「久しぶりニャね、ジータ」


 あざとい口調であいさつを交わす少女。

 青い髪の毛の上には猫耳が乗っていた、そしてケツからは二本の尻尾を生やしている。だが誰かは分からない。


 スキル«考えるヒヨコ»を使って分かった。

 俺はコイツを知っていた。正確には話に聞いただけだが。



 名前:チャーハン

 種族:猫又(魔物)

 性別:メス

 年齢:3歳

 

 

  チャーハン?

 

 



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