表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/43

3、ミミズとの激闘

 ひゅうぅぅぅ~。

 風が吹き、木の葉が舞う。

 

 対峙する俺THEヒヨコVSミミズの生死を掛けた頂上決戦だ。

 一方負ければ餓死、一方負ければ捕食。


 そう、互いに死を賭けた戦いなのだ。

 お互いが負けられない。


 ミミズは何やら歴戦の戦士の様な雰囲気を醸し出しているが、こちらは戦闘に関してはてんで素人。前世で空手も合気道もやっていなければボクシングすらやっていない。


 帰宅部だ。帰宅部なのだ。俺は。

 

 今更ながらに後悔の念が押し寄せるが、事が起こってしまったからにはもう遅い。やるしかないのだ。


 というか、俺の体って今ヒヨコだし。

 空手とかやってても意味ないし。人間じゃないし、ヒヨコだし。


 そうだ。ヒヨコの武器を使えば良い。

 体格では足のある俺が素早さで有利。

 そして俺が持つ武器は鋭いクチバシだ。


 いくぜ!


 つつく←


 もう一度、風が吹いたのを合図に俺は駆け出す。

 眼前、ミミズの懐(?)に瞬時に飛び込み。

 そして鋭いクチバシを突き出した。


 ……が、躱されてしまった。


 弱点かどうかは分からないがミミズの頭部を狙ったのだ。

 しかし、ミミズは上体を起こした体でヒョイッと頭を右に逸らしてクチバシ躱す。


 こいつ……出来る!


「へへへ、甘えよ」

「ピヨ! ピヨ!」


 煽られた怒りで俺は何度も何度もクチバシを突き出した。


 つつく←

 つつく←

 つつく←

 つつく←


 何度も何度も何度も何度も。

 つつく! つつく! つつく! つつく!


 しかし全てがミミズに躱されてしまう。

 なんてことだ。ミミズってこんなに強かったのか?


 俺の息が切れて、攻勢がミミズに向いてしまう。

 ミミズは何故か軽いフットワークで右に左に動き、俺の視線を惑わせてきた。その刹那、俺の顔面にミミズの頭突きが飛んでくる。


 まずい……っ! 殺られる!


 ポムぅ。


「な……んだ……と!?」

「……ピヨ?」


 俺は確かにミミズの頭突きを喰らった筈だった。

 だが、まるでこんにゃくが顔面に直撃したみたいに痛くも痒くもない。


 そう、ミミズの攻撃は俺にはダメージ0!

 あいつが歴戦のオーラを出していたのは、どうやらミミズ界隈での話でのようだ。ミミズの頂点に立ち、己に酔って力の差を見誤る。それが今のミミズ。


 ヒヨコとは戦った事がないらしいな。


 俺がじりじりと近くへと寄って行くと、ミミズはバックステップを執って高らかに宣言した。


「ふっふっふ! 今のは俺の大技だったが、今度は最終奥義をお見せしよう!」

「ピッ……ピヨ!?」

「喰らえ! ミミズバースト!」


 ガサリ……。


 ミミズは最終奥義名を叫んだ瞬間、背後の茂みから黒い影が姿を現した。

 影の正体……狼だ。つい先刻、ニワトリ達を蹂躙した。 


 このミミズ……狼を召喚しやがった……。

 まさかミミズが獣を使役してるとは、とんだ異世界クオリティ。

 この世界にもテイムが存在するのね……。

 

 【獣使役者】(ビーストテイマー)ミミズ。クソ! なんてことだ!

 このままでは殺されてしまう!


 そう、俺は思っていたのだが、


 パク。


「あんらああああああああああああああ」


 ミミズは狼に食べられてしまった。

 どうやら狼はタイミング良く現れただけらしい。


 ミミズは死んだ、しかし、俺が劣勢なのに変わりはない。


 俺はニワトリの赤ちゃん。

 そして俺の最終進化状態のニワトリは、狼には全く刃が立たなかった。


 故に勝ち目はない。


「へへへ、少し痩せてるが、美味しそうなヒヨコだ」


 狼はよだれを垂らしながらこちらに一歩、また一歩と近付いて来る。 

 伴って俺も後ずさりをしていく、やばい食われる。


 再び、狼が一歩踏み出した瞬間、俺の視界には無数の牙を生やした狼の恐ろしい口が迫っていた。


「グルアアアアアアアアアア!」

「ピヨオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 あまりの恐ろしさに、俺は半狂乱になって叫んだ。

 すると、叫びを上げた俺の口から炎が噴射された。


 ん? 自分で言ってもなんだが炎!?


「ぐああああああああああああああ!? 熱っ! 熱っ!」


 顔面を真っ赤な炎で燃やしながら、狼はもがき苦しみ始める。

 やがで炎は全身に燃え移り、プスプスと美味しそうな匂いを漂わせる狼が出来上がった。


 異世界転生とはチートが付き物。

 俺もその例に漏れずという奴か?


 ミミズだって狼だってニワトリだって、言葉を理解出来てしまうし。

 ミミズの攻撃を受けても無傷(これはチートなのか?)だし、なんせ炎を吐くことも出来た。


 まあ、なんにせよ、目の前にこんがり肉があるのだ。

 餓死する前に食べねば。


 

 そうして俺は腹を満たすのだった。

 

 ありがとう御座います、オオカミさん

 自然の恵みです。

  


 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ