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14、スキルを取得しました

 夜。

 学校も終わってクユユの自室。

 勝利のお祝いにと差し出されたパンを摘む。

 

 パクパク。

 うん、うまい。


 森の中で木の実で食いつないでいた時の事を考えると涙が出てくるというものだ。こんな贅沢を出来るのは偏にクユユのお陰、感謝せねば。



 そんなクユユは今は居ない。

 クユユは両親想いで良く家事の手伝いをしている。

 今も、食事が終わり、お風呂掃除だと言って自室には不在だ。


 つまりは俺の自由時間。

 別にナニをナニするという訳ではない。

 本能は理性で制御出来る。落ち着け、落ち着け。

 俺は獣ではない。落ち着け。


 俺が今、誰の目にも触れずに検証したいことはスキルについて。


 頭に流れる謎の機械音。

 それについて探るのだ。


 突如として脳裏を過る機械音。

 それを故意的に呼び出せないか。

 それを俺は今考えたい。


 ……でも、どうすれば?

 いやいや、分からん。

 

 確かこう……見たな、前世で。

 映画とかで、目の前に手を持ってくるとテレビ画面みたいな物が浮かび上がるのだ。SF的なアレ。アニメとかでもたまに見る。あれに自分の詳細な情報が乗っているのだ。


 目の前でタッチパネルを操作するみたいに手を持ってくる。


 …………。

 ふと思ったのだが、俺の手って手なのか?

 羽じゃね? 羽だろこれ。

 

 しかもまだ飛べない未熟な羽。

 ていうかニワトリって飛べたっけ?

 飛んでる所は見たこと無いな。


 いや、でも待てよ。

 それはあくまで品種改良されたニワトリだ。

 俺は野生で生きてたニワトリの子ども。

 

 待て待て待て。

 スキルについて考えてたら、いつのまにか飛べるか飛べないかについて自分と議論していた。落ち着け俺。



 ていうかそもそも«スキル»って何だ?

 技? 術?

 前世で良くやっていたゲームで考えると……。

 駄目だワカンネ。


 «ドラゴンブレス»【闇】

 «放電»


 これってどう考えても技だろ?

 ってことはだ。

 スキルは技、つまり魔法的なアレだ。



『スキルを取得しました』

『取得スキル:«考えるヒヨコ»』



 突如として俺の頭の中に例の音が流れる。


 え、今? 今!?

 何だ«考えるヒヨコ»って!

 称号じゃねーか!


 ……なるほどなるほど。

 技と術の一括りなのね。

 «考えるヒヨコ»が技に入るかは些か疑問だが。


 

 カサ……。


 

 …………。

 そこまで考えていると、右隣りから嫌な音が聞こえた。

 あれだ、この音はゴキブリだ。

 黒光りするキモいやつ。


 頭を音の発生源の右に向けると、木製のタンスが目に入った。


 今までは考えこんでて気にならなかったが。

 男として、いや雄としての本能がくすぐられるブツが収納されている引き出しが、不意に視覚に飛び込んでくる。


 青とか白とか黄だとかピンクとか。

 そんな可愛らしい色した下着……ぱぱぱパンツだ。


 無造作に1段だけ開放された引出しから、綺麗に収納された宝物があった。そんな宝箱の中に一点だけ黒い模様がある。

 

 ゴキブリだ。


 そう、ゴキブリ。退治しなきゃいけない奴。

 俺はあいつを退治しなきゃいけない。

 

 だからあの宝石が収納されてる宝箱に飛び込んでも、なんら咎められることではないのだ。


 いやいやいや、待て、俺。

 さっき本能は理性で制御出来ると言ったばっかりではないかかかか。


 あの宝石は無垢なる少女の下着だだだだだ。

 俺みたいな獣が汚してはならないのだだだだだ。

 俺は一切も手を出しません!


『スキルを取得しました』

『取得スキル:«本能に抗うヒヨコ»』


 ふざけんな。

 さっきから意味不明なスキルばかり取得しやがって。

 荒ぶってんなおい。荒ぶってんのは俺か。

 せめて効果を教えろ、意味不明が過ぎるぞ。



«本能に抗うヒヨコ»

効果:本能に抗がったヒヨコ。


 

 なんか頭ン中に文字が浮かび上がる。

 効果を教えろと考えたら浮かび上がったのだ。


 そうか、そういうことか。

 考えればいいんだな。

 

 «本能に抗うヒヨコ»の説明がなんの説明もしていないのが腹立つが、それはおいとくとして、«考えるヒヨコ»についても知りたい。


 知りたい……そう考えると、またも頭の中に文字が浮かび上がった。


«考えるヒヨコ»

効果:考えたヒヨコ。

 

 ふざけんな。

 効果じゃねぇソレ。

 考えたってもう完了してんじゃねぇか。

 チェックマークみたいになってんぞ。


 カサカサカサ……。

 キィキィ!


 そうしてる間にも、右隣りからカサカサとゴキブリがクユユのパンツを蹂躙している音が聞こえてくる。


 あんのエロゴキブリめ!

 俺のパンツに何してやがんだ!


『スキルを取得しました』

『取得スキル:«本能を認めたヒヨコ»』


 くそクソ糞。

 ついうっかり、俺のパンツと考えちまった。

 アレは俺のじゃねぇ、クユユのだ。

 獣か俺は。いや……物理的に獣なんだけど。



 ふと、部屋の扉の奥から声が聞こえてくる。


「ピ~ヨちゃ~ん! 一緒にお風呂はいりましょう~!」


 おお?

 クユユの声か?

 いや……でも妙に低いし野太いな。


 お風呂? 一緒に? クユユと?

 しょうがないな~。指名ならば俺も抗えない。

 

 本日のビックイベントだ!

 そういえば、転生してから一度もお風呂に入ってないな。

 

 声のした扉へと振り向くと、恐らく40過ぎ後半のおじさんがぬぅっと顔を出した。


 顔を出したおじさん(40後半)はクユユ(ピチピチ)と同じで白髪だ。顔立ちもクユユ(ピチピチ)に少し似ているのだが、おじさん(40後半)は少々ほうれい線と小じわが激しい、そしてなにより男だ。


 あ……クユユのお父様ですか。40過ぎ後半の……。

 何の用ですか? 


「お風呂入りまちょうね~。くちゃいくちゃいでしゅからね~」

『ピイヨオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?』


 あああああああああああああああああああ!

 あああああああああああああああああああ!



『スキルを取得しました』

『取得スキル:«抗えなかったヒヨコ»』

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