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第1部:憎き悪友とのくだらぬアレコレ


 冴木(さえき)は私と同じ大学の、同学年同学部の男だ。茶色がかった黒い髪とシルバーフレームの眼鏡が特徴といえば特徴、顔立ちは整ってこそいるものの青白く痩せ気味な体型その他諸々から病的な雰囲気を感じさせる。性格はマイペースの上にマイペースを重ねたような完全利己主義人間で、感情論を否定する癖に本人は合理的というのを徹底的に無視してその時の気分で動き、大して頭がいいわけでもなく講義に出てもロクすっぽノートをとらないくせに履修した科目は全てパスしているという奇妙で奇怪な男である。なぜだ理不尽だろう私にも単位をよこせ教授ども。

 まぁ何が言いたいかというと、冴木という男は愚にもつかぬクソ野郎・オブ・クソ野郎ということであり、どうしてそんな奴と純粋可憐な清純乙女たる私――若干の誇張表現には目を瞑っていただきたい――が友人関係を結んでいるかといえば、諸説あるものの、きっかけと言うべきモノは確かにあった。


 それは、大学というのが寄生すべき友人を見つけるべき場所であるということを知らなかった一回生の頃の話だ。


『やぁやぁそこのお嬢さん、お困りではないですかな?』


 とある講義でグループ研究などという七面倒くさいことこの上ないモノをする羽目になったものの、未だ友人と呼べる人間を見つけられずにいた私に声をかけてきたのが冴木だった。


『グループ研究で組む相手がいないんだろう? 偶然にも俺もそうだ、今回だけでも構わない、よかったら一緒に組まないか?』


 しかしながらこの男、さっきも述べた通り屑の上に泥を塗したような男で、その本性を知った頃には時遅し、その時の研究レポートのほとんどを私が手がけ提出することになる。更にその後、奴は簡単な打ち上げだと言って赴いた居酒屋で酔った顔を笑みに歪めながらぽんぽんと私の肩を叩き、


『お疲れ様、恩に着るよ花子さん』

『誰が花子さんだ、誰が。だいたい、もうこれで私は用済みだろう。次は他の奴に頼むんだな』

『まぁまぁまぁまぁ、そう怒りなさんなよ。俺はアンタに借りができたんだ、せめてこれを返すまでは縁を切らずにおこうや』

『そんな縁はいらん。むしろ、率先して切って――』

『だから、そうカッカすんなって。アンタ、他に知り合いがいないんだろう? この先、こういうケースだって頻繁にあるだろうし、お互い助け合っていこうぜ』

『むぅ……!』


 何かしらの暴言でも吐いてやろうと思ったが、この下衆野郎の言葉は的を射ており、当時の私は何も言い返せないまま頷く他に無かった。


 ――大丈夫。他に頼れる知り合いを見つけたら、切り捨てればいいんだから。


 そんな、根拠もない自信を抱いて。

 そして。

 結局のところ。

 私は、三回生の春を過ぎ、初夏を迎え、梅雨に入った後でもなお、冴木と縁を切ることができずにいた。

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