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白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
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豊穣の加護 4

「『精霊の錬金術』とは言いますが、実際の所は精霊が人間の錬金術を真似た、"カタチだけは錬金術に限りなく近い別の何か"と言うのがこの技術を表す上で、最も適切な言葉でしょう」


「限りなく近い……ナニカ?」


 首を傾げながら聞き返すと、お姉さんは1つ頷いて続けて説明しれくれます。


「精霊の錬金術の始まりは、錬金術のアトリエに住み着いた精霊が人間の錬金術士の真似をした事だそうです。魔力の無い精霊は、その代用として精霊力を用いて調合を行い、後に100年程の時間を掛けて現在の形になったそうですよ。なので『カタチだけは限りなく近い何か』という訳です。実際、錬金釜に刻まれた術式も、人間の使う錬金釜のソレとは一部異なっていますし」


「と言う事は、人間の使う錬金釜と精霊の使う錬金釜は違う物って事?」


「はい。ですが、違いと言っても精霊力が弱い子達の補助したり、危険なアイテムが完成しない様に術式が刻まれている程度の違いですので、人間の使う錬金釜でも十分代用は可能です。……と言いますか、精霊力をある程度自由に操れるのなら、その制限が無いほうが使い勝手が良いかもしれませんね」


 そんな話しながら、蔦草に絡まれた、白地に草花のレリーフの様な模様が美しい古びた大きな錬金釜に、小ぶりな果実や白い花、透き通る茶色の宝石なんかを次々と連金釜に突っ込んでいくお姉さんを初めとした精霊一同。


 ちなみに、開墾の魔法石は『大地に属する力を持つ素材』と『力を封じ込める為の宝石』を錬金釜に突っ込んでグツグツ煮込み、最後に《地》属性の精霊力を込めれば完成。

 1回使い切りで、使用時に魔法石が土に返って無くなってしまう事を除けば、材料を集めるのも作るのも割と簡単なレシピだそうです。

 

「っと、これで材料は全部かな?」


 指定された材料の最後の1つである『樹液的な物』を錬金釜に投入して尋ねると、指定された以外の材料を適当に錬金釜に投入していた御餅精霊の1匹(?)が答えます。


「後は、《地》属性の精霊力を込めながらグルグルすれば完成ー」


 何かみんな指定された材料以外にも割と適当に材料を突っ込んでたけど、こんな雑な感じで良いのかな? と、少し困惑しつつも、草もちちゃんの1匹(?)が運んできた掻き混ぜ棒を受け取り、取り敢えず錬金釜をグルグルとかき混ぜ始めます。


「えーっと、《地》の精霊力を注ぐんだよね?」


 どうすれば良いのかイマイチ分かりませんが、取り敢えず錬金釜に《地》の精霊力を注いでみます。


 人間が魔力を変換して事象を結ぶのなら、精霊は精霊力で世界に満ちる力を導いて現象を起こします。

 精霊力とは、精霊にとっての魔力の様なものであり、精霊術を行使するのに必要な力と、その力によって導かれた世界に満ちる力の総称。……詰まる所、錬金釜に注ぎ込むのは、世界に満ちる力――今回は大地の力そのものと言う事になります。


 ……なるのですが、どの位注ぎ込めば良いのでしょうか? 匙加減を間違えると、砂糖を入れすぎたケーキみたいになるのかなぁ? それとも、入れすぎても平気なのかな?


 ボンヤリとそんな事を考えながら大地から力を導き《地》の精霊力を錬金釜に注ぎます。すると、不意に錬金釜がボコボコと沸騰したように沸き立ち、一瞬カッっと激しく光を放ったかと思うと、ボンッ! っと小さな破裂音を立てて錬金釜が白煙を吹き出しました。


「ぴゃっ! 爆発した!?」


 驚いて踏み台から足を滑らすと、待ち構えて居たかの様なタイミングで「はい、キャッチ!」っと空中でお姉さんに受け止められます。

 「あ、ありがとう」とお礼を言って下ろして貰うと、お姉さんは「いえいえ、大丈夫ですよ」と少し困ったように笑いました。そんな遣り取りをしているそ間に、錬金釜の淵で待機していた草餅ちゃん達は怖い物知らずに錬金釜の中を覗き込みます。


「なにかできたです?」


「開墾の魔法石じゃなさそー」


「でも、魔法石にはなってるっぽい……かも?」


 若葉を模した様な光が宿る翠色の宝石を幾つか錬金釜から取り出して、光に翳したり、錬金釜の淵にコツコツと打ち付けて音を確かめたりする草餅ちゃん達。


「もしかしなくても失敗……かな?」


 何か爆発してしまった事と、草餅ちゃん達の会話から察するに、どうやら失敗してしまった様です。


「そうですね。一応失敗という事になるでしょうか? 何か完成していますけど……」


「うぅ、材料無駄にしちゃってごめんなさい」


 バッっと頭を下げます。材料を無駄にしちゃった上に、爆発までさせちゃって……うぅ、久しぶりの大失敗です。

 落ち込んでいると、お姉さんは錬金釜から取り出した翠色の宝石を眺め、困った様な何とも言えない微妙な表情を浮かべます。


「あ、いえ、材料の事は気にしなくても大丈夫ですよ。元々一番最初は失敗らしい失敗を経験してもらうつもりだったので」


「ふぇ!? ……それってどう言う事?」


 本当にどういう事でしょう? 内心材料を無駄にしてしまったのではないかと思って、少し落ち込んでいたのですが。


「申し訳ありません。精霊の錬金術は精霊力を使う都合上、強い精霊力を持った子が手酷く失敗すると周囲の環境が大きく変動したり、気象や天候それに季節すら変わってしまう事もあります。ですので、私の目が届いて何か起っても対処できる場所で、一度大きな失敗を経験しておいて貰いたかったのです」


 そんな怖い事になるんだ……と、驚いていると、お姉さんが「本当に申し訳ありません。私もあんな風に爆発するとは思わず……怖かったですよね」と、申し訳なさそうに目尻を下げ、僕の頭を撫でます。


「だ、大丈夫だよ! 結局驚いて転んだだけだし。それも、受け止めて貰って怪我もしなかったし。それに、お姉さんが言った様な事が起こる程僕の精霊力は強く無いと思うよ? 実際今回もちょっとポンッってなっただけだったし」


 精霊力を使ってした事と言えば、氷を出したりとか精々その程度。なので、失敗すると大変な事になると言われても、流石にそんな事になるとは思えないのです。


「それはどうでしょう?」


 お姉さんは手に持っていた翠色の宝石を、大樹から少し離れた位置に放り投げます。すると、宝石は花畑に落ちる直前に、何かの楽器を演奏したような高い音を立てて砕け散りました。

 直後、宝石の落下地点にあった花々が淡い光を放ち、タンポポサイズだった物が幼木程度の大きさまで変化して、その梢から色取り取りの花を咲かせます。


「この通り。加護の力が作用したと言う事を差し引いても、この宝石に込められた精霊力は決して弱いものではありません。もし今回の失敗が普通の失敗だったのなら、この辺り一帯が加護の力によって変化した新種の植物で溢れかえっていたでしょう」


 何それ怖い……。


「そんな大惨事になるなんて……と言うか、さっき宝石を投げ込んだ場所は大丈夫なの? 何か大変な事になってるけど」


 本来あの場所に咲いていた花は、樹木の様な大きさに成長したり、果実を実らせたりする様な植物ではなかったのですが、今は一様に幼木の様な大きさに変化して、白い花の模様ワンポイントが特徴的な、太陽の光を反射してキラキラ光る蜂蜜色の立派な果実を実らせています。


 そして、花畑の変化は今も徐々に広がっていて、花畑の一角を新手の果樹園に変化させていました。……ド不味い程の勢いで環境が汚染されています。


「あー……はい。多分大丈夫だと思いますよ。変化はもうすぐ終息するでしょうし、既に変化してしまった植物も、宝石に内包されていた分の精霊力と加護の力が尽きれば元に戻る筈です」


「アレって元に戻るの!? もう完全に別の植物に変っちゃってるのに?」


 変化が収まると聞いて少し安心しましが、アレは本当に元に戻るのでしょうか? 咲いている花自体は元の物と似てはいますが、その実もう別の植物です。


「変化を引き起こしているのは宝石に内包された精霊力と、加護の力……千歳ちゃんの中にある神様の力の一部です。精霊力のみなら変化などそうそう起りませんし、変化したとしても元に戻ったり、変化が固定化され新種の植物になと言う事は先ずありません。ですが、加護の力が関係した変化なら、込められた力が尽きれば変化が解けて元に戻りますし、場合によっては変化が固定化されて新種の植物として定着する事もあります。まぁ、今回は込められた加護の力が然程大きくないので、宝石に内包された力が尽きた時点で元に戻るでしょう」


「マ、マジですか……」


「マジです」


 軽く引く僕と、不思議ですよねー。とニコニコ笑うお姉さん。

 不思議は不思議なんですけど、それで良いのでしょうか? 今回だって一歩間違えたら大惨事になっていた筈です。他の種を駆逐するとかそう言う感じじゃないんです。周囲の植物が次々に覚醒して変化していくのです。それも、事情を知っている人が見てもドン引きして通報するレベルで。


 もしこれが元に戻らなかったらと思うと、ゾッとします。


 そんな若干の驚き余したままを果樹園化した花畑の方に視線を遣ると、怖い物知らずな御餅精霊が沢山集まって、実りたての果実を食んでいました。


「食べれるのかな? アレ」


 見た目的には食べれそうな感じなのですが、実際は毒ありなんて事も珍しくはありませんからね。それで何度酷い目にあった事か……。


「元が毒も無く食べるても平気な花ですので、果実になったとしても問題無いと思いますよ。……そうですね。お昼もまだですし、試しに1つ食べてみましょうか」


 お姉さんが、「此方にも1つずつお願いしまーす」と果物を食んでいた御餅精霊の皆に声を掛けると。ハイさー! と元気な返事と共に数匹の精霊が果実を此方に運んで来てくれました。


「ありがとう」


「ありがとうございます。それと、そろそろお昼にしようと思いますので、申し訳ありませんが準備をお願いします」


 お姉さん共々お礼を言って果実を受け取ると、水の精霊と思しき精霊の一匹(?)が、「わかったー。あと、ぐっとらっく!」と短い手を突き出して元の場所へ戻っていきました。


 後半の"あと、ぐっどらっく!"ってどういう意味? と首を傾げたたものの、曰く危険な物では無いとの事なので、お姉さんと2人して取り敢えず一口齧ってみます。

 すると、果実は何の歯ごたえも無く口の中で解け、果肉が様にドロリと舌の上で溶け出しました。


「ゴハッ!? ケホッ、ケホッ……あ、甘い!?」


 甘さのあまり思わず咳き込みます。それは、僅かに甘い花の芳香と、花の蜜を何十倍にも濃縮したかの様な喉がヒリ付く甘さが合わさった様な不思議な味でした。

 これは、生で食べるのにはあんまり適していないかもしれません……このままだと甘すぎて喉が痛いです。"ぐっとらっく!"ってつまりこう言う意味だったんですね。


「ケホッ! あぁ……これはいけませんね、甘さが強すぎて喉が焼けるようです。これは飲み物にでも加工する事にして、お昼は別の物にしましょうか」


「賛成ー」


 僕がコクリと頷くと、お姉さんは手に持っていた果実を錬金釜に投げ入れます。次いで、精霊術で吹かせたと思しき風が運んだらしい数種類の果実が空から錬金釜に降り注ぎました。


「では、調合しますので見ていて下さい」


 お姉さんが、掻き混ぜ棒で沢山の果実が入った錬金釜をグルグルと掻き混ぜると、先程と同じように錬金釜の中身が淡い光を放ち始め、程なくしてその光が徐々に弱まり始めました。

 そこで幾つかのガラス瓶が投入され、錬金釜の光が完全に消えると、投入された時とは色もデザインも大分変ったガラス瓶に入った、ジュースらしき物が完成しました。


「わー! 爆発してないし、それにビンに入ってる!」


「普通は爆発なんてしませんから……。それと、調合の最後に容器を投入すると、調合された薬等が投入された容器の中に入った状態で完成する様に術式が組まれているんですよ」


 術式云々は良く分かりませんが、なんか便利ですねー。薬学で作った薬もこんな風に出来たら、瓶詰めの手間が省けるのに……。


「ビンの形と色が変ったのは?」


「飲み物の調合とは別に、ビンを調合して形を変えたんです。ある程度慣れるとこう言う事も出来ますよ。と言う事の説明の為と、何よりそのままでは少々味気なかったので」


 ピンッっと緑のグラデーションが入ったガラスの瓶を指で弾いて見せるお姉さん。

 錬金釜から取り出されたガラス瓶には、それぞれ違った色のグラデーションが入っていて、揺れる木漏れ日を受けて地面にステンドグラスの様な模様を映し出していました。


「そんな事まで出来るなんて凄い! 何か全然出来る様になる感じはしないけど!」


 何をどうしたらあんな事になるのでしょうか? さっきは何が何だか分からない内に爆発してしまいましたし……。


 そんな事を考えていると、お姉さんはクスリと笑い、人差し指をピンと立てて学校の先生の様に話してくれました。


「大切なのはイメージです。先程は失敗を経験して貰うと言う目的があったので敢えて教えずに調合して貰いましたが、精霊の錬金術に於いて調合を行う場合、どんな風にどの程度力を込めるかイメージしながら精霊力を注がないと、調合が上手く行かず、最悪先程教えた通りの事が起ります」


 爆発したり、不思議な物が出来たりするのはレアケースですけど。と、少し肩をすくめて苦笑するお姉さん。


「うーん、イメージかぁ……イメージしながら精霊力を注ぐって、具体的にはどんな感じでしたら良いかな?」


「そうですね……具体的にどうと言う決まりは無いのですが、例えば私なら、開墾の魔法石を作る時は、大地をふかふかにするイメージで《地》の精霊力を注ぎこむみますし。先程のジュースなら、果実を切って絞ってジュースにするイメージで《風》の精霊力を注ぎました。曖昧でも、どんな事をしたいのかイメージしながら精霊力を注ぐと割りと上手くいきますよ」


「曖昧だと、また爆発したりしない?」


 酸素の入ったフラスコにマッチを近づける燃焼実験を、音と煙だけ派手みたいな爆発でしたが、少し……いえ鯖読みました。結構怖かったので出来ればもう爆発は勘弁して欲しいところです。


「大丈夫だと思いますよ、物は試しです。お昼の準備が出来るまでにもう一度チャレンジしてみましょう……ね?」


 しゃがんで僕の両肩に手を置き、目線を合わせて言うお姉さん。その後ろでは、草餅ちゃん達が既に材料を錬金釜に突っ込み始めていました。


「う、うん」


 出来れば数日ぐらい間を置いてからにしたい所ですが、教会から精霊の領域は微妙に遠いですし、明日以降もお姉さんがこの精霊の領域に居るとは限りません。

 お姫様の手紙の件からしても、どうもお姉さんはここに住んでいると言う訳では無さそうですし。


 と言う訳で、再チャレンジする為に、ニコニコと笑うお姉さんから掻き混ぜ棒を受け取り、錬金釜の前に立ちます。


「ふかふかにするイメージで……」


 錬金釜をぐーるぐーると掻き回しながら、精霊力を注いでいきます。すると、錬金釜の中身が淡い光を放ち、段々と素材が混ざり合い始めました。

 先程とは違ってボコボコともしていませんし、強く光ったりもしていません。……これはもしかして、もしかするのではないでしょうか?


 そんな事を思っている間に錬金釜の光が徐々に弱まり、光が完全に消えると、錬金釜の底に十数余りの茶色の宝石の中に正六角形の模様が浮かぶ魔法石が完成していました。


「ば、爆発してない!」


「いえ、だから普通は爆発なんてしないんですって……でも無事に成功した様で安心しました」


 お姉さんは錬金釜から取り出した魔法石を光に翳し、色々な角度に翳して「うん」と1つ頷くとホッと胸を撫で下ろします。

 そして、錬金釜の淵に張り付いて調合の様子を眺めていた草餅ちゃん達は、釜の底に降りてバリバリと魔法石を齧り始めました。


「これは、なかなか」


「パリパリー」


「やっぱり、作る人が違うと味が変るです」


 周りから徐々に集まって錬金釜の中に大量に詰まりながら、感想を口々に魔法石を食べる御餅精霊の皆の様子を見て、うんうんと頷いてお姉さん自身も手に持っていた魔法石を口に放り込みました。


「美味しいれふ」


 幸せそうな顔でモゴモゴと口を動かす精霊の皆さん。

 もしかして魔法石って美味しかったりするんでしょうか? 飴玉みたいな感じとか、玉羊羹みたいな感じで。そう思うと、少し食べてみたい気持ちも湧いてきます。


 そこで、ふとジュースのビンすぐ横で、小さな藤籠に入れられた状態で置かれていた件の失敗魔法石が目に付きました。


「…………」


 手を伸ばそうとして一瞬悩みましたが、かなり食べられてしまったらしく残り数も少なかった事と、何より好奇心が背中を押して宝石に手を取らせます。

 宝石を口に放り込むと、僅かな甘みと強めの酸味。そして、芳醇な香りが口の中に広がりました。


「……白葡萄味?」


 見た目からしてそんな感じの色合いでしたが、実際食べてみてもこんな味だったんですねー。想像した通りな味すぎてちょっと拍子抜けしていると、先程の呟きを聞いたらしい、苺大福……もとい、小さな尻尾に熱くない炎を燈した火の精霊が、失敗魔法石を齧りながら不思議そうに此方を見ていました。


「ネリヴ味じゃないです?」


「ネリヴ?」


 ネリヴはここより標高の低い場所で実る果実で、失敗魔法石に良く似たエメラルドグリーンの果肉と、多量の果汁と癖の無い甘さが特徴の割とリーズナブルな果実です。

 果肉は生食以外に使い道はありませんが、種は煎じると疲労を回復する効果のある薬となります。……アレは葡萄とは余り似つかない果実の筈ですが。


 食べたのが違う魔法石だったのかな? と首を捻っていると、その隣に居た小さな尻尾の先に宝石の付いた地の精霊が、更に不思議そうな顔で言います。


「バナナ味では?」


 三者三様な、食い違わない味の感想に皆してポカンとした顔になります。一体どういう事でしょう? 確かに白葡萄味で白葡萄の香りがした筈なのに……。

 首を傾げていると、お姉さんが藤籠に入っていた失敗魔法石を手に取って口に放り込み、ふむ……と顎に手を当てて考え込みます。


「恐らく、食べる時にイメージした通りの味になるのでしょう。実際、私が食べた限りでは葡萄とネリヴとバナナの味がしていますし」


 全部味ですか……混ざると微妙そうな組み合わせですね。そんな事を考えている内に、飴玉……じゃない。失敗魔法石が溶けてなくなりました。

 コレって本当に元宝石なのでしょうか? まぁ、塩も鉱物ですし、調合されて宝石がそう言う物に変化したと思えば納得できない事も無くは無い様な?


「何かもう魔法石なのか、それとも新手のお菓子なのか怪しくなってきたね」


「ふふっ。確かに私達の場合は、普通の使い方をするよりも、おやつとして間食する機会の方が多いですから良い得て妙かもしれませんね。ですが、魔法石に込められた力を味覚として感じる事が出来るのは、私達の様な精霊や妖精を初めとする一部の人種ヒトシュぐらいなものですので、魔法石を食べ物としてプレゼントする時は注意してくださいね」


「う、うーん。機会があるかな?」


 流石に元宝石を食べ物として人に渡すのには抵抗があります。何となく消化に良くなさそうなイメージがあって。お腹壊しそうですよね。


「妖精や人魚マーメイド龍人ドラゴニュートの方なんかは、病気や怪我の療養時に魔法石を食べて滋養を付けたりする事もあるそうですよ?」


「魔法石って栄養あるんだ……」


「栄養はどうか分かりませんが、魔法石に込められた魔力を取り込む事で治癒能力を高めるそうです。私達からすると味だけの物なので、イマイチ分かりませんけど」


 等と話していると、パンや保温瓶っぽいものに、見た事も無い野菜や果実が詰め込まれた、大きめなバスケットを持った精霊の一団が遣って来ました。


「へいお待ちー」


「お昼ー」


「ごっはーん」


 バスケットを上から下から支える御餅精霊達。上から引っ張ってる方は兎も角、下から支えている方は鏡餅の下の段みたく大分平たくなっています。

 少し心配になってバスケットを受け取ろうとすると、「つ、潰れちゃいますよ!」と慌てて手を出したお姉さんが代わりにバスケットをさらっていきました。


「流石に潰れはしないと思うけど」


「このバスケットは所謂魔法道具で、空間魔法によって内部が拡張されているので見た目より量が入っていてかなり重いですよ、大体20キロぐらいありますよ?」


「あ、それは無理……かも」


 20キロは流石に厳しいかも。潰れはしないまでも、受け取ったら重さに耐えられずにそのまま地面にベシャッ! っとしそうな気がします。

 と言うか、このバスケットの中には、何がどれだけ入っているんでしょうか?

3/28 一週間の癒しが終わってしまった……。でも、続きそうなので2期に期待!

まだ、優しい世界で続く彼女たちの穏やかな旅をみていたいですから。


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