豊穣の加護 2
物凄く遅くなってしまいました。申し訳ありません。
スランプが長引いております……何時もは2~3日で治るのですが、今回は何か重症です。変態成分が足りてないからでしょうか? ……そろそろ、朱里ちゃんにパンツを被って貰わないとダメでしょうか……。
お姉さんや草餅ちゃんに先導されながら、精霊の領域へ通じる"扉"があると言う場所を目指して緑の生い茂る森を歩き始めてから20分程。
教会を出た頃はまだ真上に昇り切っていなかった太陽が真上まで昇りきるった頃に、ようやく目的地である"精霊の刻印"が刻まれた岩の前まで辿り着く事が出来ました。
精霊の領域――そこは外界とは隔たれた場所に存在する為、辿り着くには"精霊の刻印"という精霊力に反応して術式を展開する魔方陣の様な物に精霊力を注ぎ、外界と精霊の領域を繋
ぐ"扉"を開くか、特定の場所で合言葉を言って門番役の子に領域側から"扉"を開けて貰うか。そのどちらかの方法を取るしかないそうです。
その上で、精霊では無い人間には精霊の刻印が見えず、精霊力が無ければ精霊の領域へ通じる扉は開けない。例え、精霊と契約した精霊使いや、精霊が認めて連れて来た諸々。それ以
外にも精霊を利用して精霊の領域に入ろうとする者が扉を潜った場合、"精霊の回廊"と呼ばれる精霊の領域に入る資格が有るか否かを判断する場所へ送られるそうです。
草餅ちゃん達には刻印を使って扉を開く程大きな精霊力が使えない事と、後者の方法の方が好み――人間の真似をして門番とか、そう言う事がやりた子が多いのだそうです――だそう
で、普段は後者の方法で"扉"を開いて出入りしているそうですが、お姉さんが扉を開けるだけの精霊力が使える事と、何より刻印のある場所の方が距離的に教会から近いという事で、今
回は前者の方法を使う事となりました。
「では、今から"扉"を開きますので少し離れていて下さい」
「はーい」
「「「わー」」」
僕と草餅ちゃんが揃って数歩分後ろに下がると、それを確認したお姉さんは刻印に精霊力を注ぎ始めました。
すると刻印が燐光を放ち始め、その光がやがて複数の円と模様、そして象形文字を組み合わせて構成された様な魔方陣を形成しました。
「こほん――『森を見守る大樹が守護する地へ続く扉よ。我が求めに答え眠りを解き、真の姿を現したまえ』」
お姉さんが力強く呟くように唱えると、魔方陣の円や文字がまるで歯車が動く様に回転し、やがて形状を変えて虚空に光で構成された扉を形作りました。
その扉にお姉さんが手を触れると、光で構成された扉が現実の質量を持って居るかの様な重厚な音を立ながらゆっくり開いていき、そこから見える風景が蜃気楼の様に徐々に歪んでい
きました。
「石畳の道……この扉の先が精霊の回廊って場所?」
扉から見える蜃気楼に映っていたのは、森に飲み込まれた石畳の道でした。
管理されているのか、石畳の道の両サイドに光る鈴蘭が植えられていたり、森の下草が適度に刈られていたり間伐されていたり。所によっては日の光さえ遮ってしまう様な大森林の原
生林とは違い、日の光が差し込む良く管理された森でした。
「回廊じゃないよー」
「お家直通です」
精霊の領域=お家。ですか……。まぁ、精霊の領域と言うのは精霊にとっての村や街みたいな物らしいですから、お家と言えばその通りなのでしょう。
「直通って……回廊を通らないとダメなんじゃないの?」
精霊の領域には、外界では既に絶滅してしまった植物が保護されていたり、希少な鉱石や宝石とか龍の牙や鱗なんかの錬金術や薬学の貴重な素材が沢山ストックされているからこそ、
精霊の回廊があるそうなのですが、直通だとその意味が無い様な……。
「「「?」」」
フワフワと浮きながら不思議そうな顔で此方を見詰める草餅ちゃん達。……何故そこで不思議そうな顔を?
「精霊なら直通ですが?」
「一応人間のつもりなんだけど?」
種族がアレなので、あまり自信はありませんけど。……そう言えば、天使って人種に分類される種族なのでしょうか?
「千歳ちゃんには精霊力がありますし、人間と言うより精霊寄りですから問題なく扉を越えられると思いますよ」
「問題なく通れちゃうんだ……」
そう言えば、さっきも同じ事言ってた様な……。まぁ、女神様も同じ様な事言ってましたし、それに今は気にしても仕方がないので、取り敢えず精霊云々は気にしない事にしましょう
。
あんまり気にし過ぎると、また頭からキノコとか生えますし。
「ええ、何の問題も無く。……あ! そうでした。地図を渡しておかないといけませんね」
そうでした。と思いついた様に、ポンと手を叩いて、手品の様に古びた紙を取り出して見せるお姉さん。……本当に何処から取り出しているのでしょうか?
「地図なら割と大雑把なのだけど、教会にもあるよ?」
とは言っても、十数年前に起った戦争以前の物らしいので、多少国の形が違ったり今では存在しない国が記されていたりしますけど。
「人間の国の地図ではなく、各地に存在する精霊の領域と"扉"のある場所を記した地図ですよ」
差し出された地図を受け取って見てみると、今とは形が微妙に違う大陸の地図上の所々に精霊の刻印と同じ印が付けられ、そのすぐ下に扉を開く為の合言葉と、魔法の杖や、何か壷っ
ぽい物、結晶っぽいマークが小さく記されています。
探してみれば僕達の今居る辺りにも、刻印の印と壷っぽいマークが記されていました。
マークの意味は良く分かりませんが、恐らく刻印の印がある場所に精霊の領域とそこに続く扉があるという事なのでしょう。
「良いの? 僕が使うと多分他の人に見られちゃうと思うけど?」
地図に記されている目印の場所は、大きな街のある場所だったり(相当古い地図のようで、一部の街には"今は"と但し書きが付く場所もありますが)、ここ(大森林)の様に人工物が
無さそうな場所だったりします。街のある場所かその近所ならまだしも、1人で遠出とか絶対にしないですからね。寂しいし怖いですから。
「大丈夫ですよ。この地図は私達精霊以外が見ても白紙にしか見えませんし、別段領域の場所を秘匿していると言う訳でもありませんので」
「そうなの!?」
精霊の領域なんて今まで聞いたことありませんでしたし、リディアとおじさんの様子からしても、秘匿されている物とばかり思って居たのですけど。
「はい。現にこの地図にある領域の6分の1程は人間にも知られていますし、知られた所で実際に扉がある場所まで来て、その上で領域まで入れる人は極々稀ですので」
お姉さんがそう言うと、草餅ちゃんの一匹が同意するかの様に激しくジャンプして自己主張し始めました。
「ですです。他の所はたまーに精霊使いの人とか山菜取りの人とか来るらしいですけど、ここは全然です」
「宿泊できる場所も用意してるのにー」
溜息混じりになって、しゅん……と、頭上のこの目を萎れさせる草餅ちゃん達。それは、宿泊できる場所まで用意したのに人が来ないのでは落ち込みもしますよね。本業の宿屋さんだ
ったら商売上がったりです。
「大森林を通る人は出来るだけ明るい内に森を抜けようとするし、お泊りする人も山道の傍にある教会に泊まっちゃうから。……それに、ここに宿泊できる場所があるって知っ
てる人も少ないんじゃ無いかな?」
僕がそう言うと、草餅ちゃん達は「あ!」っと此方を向いて声を上げ、口を半開きにしたまま固まってしまいました。
「道理でー!」
「全然人が来ないと思ったら!」
「そう言えば、看板とか出して宣伝してなかったかも!」
一集まってガヤガヤと話しだす草餅ちゃん達。……一箇所に集まると、何か和菓子屋さんのショーケースの中身みたいですね。
そんな事を考えつつ草餅ちゃんの方を見ていると、ゴゴゴ……と言う重たい音を立てて、ゆっくりと扉が閉まり始めました。
「あ……扉が」
「あら、本当……。皆さん、お話は一旦中断して中へ。扉が閉まりますよー」
お姉さんが手を上げてクイックイッっと動かすと、草餅ちゃん達は話を中断して「「「はーい」」」と打てば響くと言った感じで返事を返して、扉を潜り始めました。
「では、私達も行きましょうか」
「うん!」
後ろから肩を押すお姉さんに返事をして、扉を潜る草もちちゃん達の最後尾に続いて精霊の領域へ続く扉を潜るのでした。
パンツ……パンツ……。




