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白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
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結晶の蜂

知っていますか?

リンゴ。特にフジなど一部の品種に現れる蜜は、実は種子周辺の細胞が壊れて透明に見えているだけなのです。

 ゆえに蜜が無い同一品種と比較すると、蜜があるリンゴの方が痛みが早いのです。

 なぜそんなのが、この品質重視の社会で販売されているかと言うと。

昔蜜無しのフジを販売した際に一部の方々からクレーム染みた問い合わせがあり、市場でも蜜ありのリンゴの方がよく売れたので、現在の様な蜜リンゴ。と言う物が…。

 と言う話を、以前先生から聞いたのを思い出しました。

どうぞ、リンゴのご購入の際に参考にしてください。

 結晶蜂。

 かつて大森林のごく一部の地域に生息していた、宝石や水晶の様な美しい体を持つ蜜蜂の一種で、約500年前に乱獲により絶滅したと目されていた蜜蜂の一種です。

 

 この蜂は、他の蜂とは異なり、毒や針を持たない代わりに、周囲の景色に溶け込む透き通る体と、無音で飛行する能力。そして、自らの巣に結界を張る能力を有する、極めて特殊な進化を遂げた蜂でした。


 ですが、その進化が仇となり、宝石や装飾品の材料として高値で取り引きされ、大森林にいた野生の結晶蜂は勿論の事、養蜂で飼育されていた結晶蜂すら盗まれ、乱獲され絶滅してしまいました。


 当時、結晶蜂にはそれだけの値段が付いていたのです。ですが、それで蜂を盗まれる養蜂農家さんは商売上がったり。最終的には養蜂農家さん自体が結晶蜂を盗まれる前に売っていたそうです。末期ですね。


 そんな状況の中でも、結晶蜂の生き残りは居ました。

 何処に居たのかは、山椒魚さんがはぐらかして教えてくれませんでしたが…。


 山椒魚さんは、元々そこで結晶蜂が飼育していた人が居て、その関係でそこに結晶蜂が生息して居ることは知っていたそうで、世話をするために、巣箱の下に定期的に通っては居たそうなのです。

 

 ですが、最初の飼い主さんが飼育している時は毎年の様に分蜂して居たらしのですが。山椒魚さんでは、草を刈ったり、巣箱を修繕したりする事しかできず、飼い主が居なくなってしまった辺りから、蜂の元気がなくなり始め、遂には分蜂しなくなってしまったらしのです。


 最初はそれでも何とか生きていてくれればそれで良かったのですが、500年前の乱獲で元の生息場所である大森林の結晶蜂が絶滅してしまい。何とか繁殖させないと今度こそ本当に絶滅してしまうと言うことで、山椒魚さんら数名の有志が集まり結晶蜂の繁殖プロジェクトが開始されたそうです。


 そしてプロジェクト開始から約200年。試行錯誤し何とか飼育方法だけは形になったものの、分蜂は一向に起こらず、困った山椒魚さんは元々の生息場所である大森林にやって来て、そこから更に飼育方法を研究して300年。ようやく今年になってその成果が出て、約1200年振りに分蜂したそうです。


 で、何でそんな貴重なものが貰えるのかといいますと。

 本当なら毎年、少なくとも数年に一度は分蜂する筈の所、1200年間もの間分蜂していなかったせいか。1200年の間に発生した、本来女王になる筈だった固体や、特殊な固体が今回の分蜂で1つの巣に集まってしまいました。

 そんな特殊な蜂が集まった巣箱を通常の結晶蜂の巣の傍に置いておいて悪影響が出たら嫌だし、離れた場所に置いて自分で管理するのも面倒なので、以前から蜜蜂を欲しがっていて、尚且つ時間が有余っていそうな僕に譲渡しようという事になったそうです。


 そんなこんなで、飼育方法を教えて貰ったり、また生えてしまったキノコやら花やらを片付けたりしていたら辺りが薄っすら暗くなり始めてしまったので、山椒魚さんに送って貰いながら教会へ帰る事に。

 

 …ええ、結局リディアは自走するキノコを追いかけたまま戻って来ませんでした。


 まぁ、時々ある事です。前回は空飛ぶ綿飴みたいなのを見て追いかけて行って数日帰って来ませんでしたし、その前は移動中だったのか教会の庭先を歩いて横切っていたマンドラゴラを捕獲せんと走っていったきり1週間程戻って来ませんでしたから。

 

 シルバ程ではありませんが、普段の生活の端々か人間を辞めてる感が滲み出ているリディアです。大森林においてカースト最下位付近にいる土ウナギと対等の戦いしか出来ない僕が心配してもしょうがないでしょう。所詮今の僕など、野に放たれれば食べられるだけの存在なのです。自分で言ってて悲しい事ですが…。


 そうならない為の天使の能力なのですが、未だに1度も試した事がありません。というか今の今までその能力と自分の種族の事すらすっかり忘れていました。


 魔法の事もそうですが、日常生活では別に無くても然程困らなかったのです。それより何より優先して文字の読み書きを覚えたり、薬学を教えて貰ったり、その他の事をしていたりでどうにも天使の能力の確認や魔法の練習が後回しに。

 思い出す度に「何時か練習しよう」とは思うんですが、見事に毎回忘れてしまうんですよね。何故か。




――――――――




「「「ただいまー」」」


「ただいま戻りました」


 教会に帰って来ると、シルバが塩を漬けにしたであろう鶏肉っぽいお肉を外に出して干している最中でした。

 狩った獲物が相当大きかったのでしょう、解体の途中であろう全長2メートル程の巨大な鳥が炊事場の外にある木に吊るされていました。

 巨大な鳥です、あんなのに襲われたら僕など一呑みにされて終わりでしょう…。


「お帰り皆。それに、お久しぶりです翁」


「うむ、少し邪魔させてもらっているぞ」

 

「いえ邪魔など滅相もありません。リディアの姿が見えないと思っていましたが、もしや翁が子供達を送ってくださったのですか?」


「うむまぁのぅ、リディアがまた何か追いかけていったらしくな」


 それを聞いたシルバは、少し呆れた様子で呟きます。まぁ、何時もの事なので慣れた様子でもありますが。


「そうか…リディアはまた何か追いかけて行ってしまったのか…まぁ、何時もの事だ、その内帰って来るだろうから取り敢えずそれは良いとしよう。…それで、そちらのお嬢さんは一体…何故だか何処かで見た覚えもあるんだが」


 リディアの事は一時保留で、シルバは先程から気になっては居たのでしょう、ハーシェの掌で項垂れるサクに目をやり、切り出しました。


「サクは砂糖で森で拾って魔物が変なポーズで破れて落ち込んだの」


「ハーシェ…流石に今のじゃ分かんないよ…」


 言っている事が支離滅裂。ハーシェの意識は既にシルバとの会話には有りませんでした。

 彼女の視線はただ真っ直ぐに木に吊るされたチキンに向かっています。きっと夕食の事に意識を持っていかれているのでしょう。


 そんなハーシェの話を聞いて、シルバは数秒ほど考え込んだ後。


「なる程な大体分かった、では医務室に寝かせて様子を見よう。服の事は行商人でも来ないと如何し様も無いが、羽の治療方なら分かるから任せておいてくれ。

 あと、彼女を襲った魔物がまだ近くに居るかも知れないので、数日森の出入りは控えるように」


「えぇー!今のでわかったの!?」


「「全くもって(チビ)(千歳ちゃん)に同感じゃな(ですね)何で今ので分かるん(じゃ)(ですか)…」」


 二人も声を合わせ言います。


 シルバには、ハーシェの話から起こった事が理解出来てしまったようです。

 途中から実際に見ていた僕でもやっと分かる程度には理解不能な会話だったのに…。


「うーむ…強いて言うなら慣れだな。伊達に何年もシスターはやっていないさ」


 そう言ってシルバは微笑むのでした。


森に逃げた理由がちょっと弱かったので、後ろ5話分の、サクが襲われた魔物の種類を猪から鳥に変更しました。

 巨大な鳥に襲われたら取り敢えず、空との遮蔽物がある森へ…逃げますよね?こう…人間心理的に。

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