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白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
34/67

落ち込むと生えて来るアレ

炬燵の魔力が…くっ!一度入ったら中々出られないじゃないですか!

誰ですか?炬燵出したのは!いい仕事してますね(キリッ)

「はははははは…アハハハハハハ…ハハ…」


 サクは服がダメになってしまって以来、壊れた様に生気のない目に涙を浮かべて何か呟いたり無気力に笑ったり、不意に無表情になって呻いたりするばかりです。


 そんな彼女は先程まで半裸でしたが、いい加減可哀相だという事でメイドさんの持っていたハンカチを服代わりに身体に巻き付けて服の変わりに着せ、服についてはそれで取り敢えず保留。僕が服を作る云々という提案は全力で却下され、後の事は『取り敢えず教会にサクを連れて行ってから考える』という事になりました。


 却下された理由が、ハサミや針を使うので危険。僕には無理というものだったので今夜の内に何着か作って見返すつもりです。一晩あれば、サクの着ていた服を複製する事ぐらいできますし、ちょっと頑張れば替えの服を何着かと下着を作る事も出来ます。

 伊達に女性者下着を着せられていた訳ではありません、形状・質感・デザイン何かも覚えていますので問題無いですし、サクのスリーサイズも何となくは把握出来たので問題なしです。


 問題なし…なのですが。にしても


「僕って信頼が無いねぇ…なんで?」


 確かに、5歳の子供に刃物やら竈がある炊事場を使わせたり、ハサミや針を含む裁縫道具を使わせたくないその心境は痛いほど分かります。ですが、ハーシェとポルトは5歳の時にはもう、小さなナイフを持って森に入り、炊事場で簡単なお手伝いをしていました。

 ですが僕はどうでしょう?持っているのは丸みを帯びた刃が着いたとは言えない鈍ナイフ、包丁や竈がある炊事場に至っては出入り禁止を食らってます。


 この差は一体なぁに?


「しょうがないじゃないですか、だって普段が普段ですよ?」


「チビ、胸に手を当ててよーく思い出し居てみろ」


 …思い返せば。

 何も無い所で何故か良く転んで、リディアからは薬を貰い。勝手に大森林の奥地まで行って怒られ、監視役にメイドさんを付けられました。

 泉にも、何度も落ちましたし、教会の雨漏りしている場所が腐っていて、そこを踏み抜き嵌って動けなくなった事も数回。

 畑に生えていた変わった植物を引き抜いたら、それが教会に宿を求めてやってきていたドリアードさんだった事も一度や二度ではありません。

 理不尽に大蛇に絡まれる事だって珍しい事ではありませんし、ブレイブバードというチョ〇ボに似た生き物の大移動に巻き込まれて、大森林の入り口付近まで一緒に連れて行かれてしまった事も何度か。

 冬には誰かが投げたであろう雪玉が頭に当たって気絶したり。真夜中に部屋の屋根が雪の重みに耐えかね崩れたらしく、早朝に凍えて目が覚めた事もあります。


 他にも、思い出し始めると、芋づる式に色々と思い出されてきてます。あろう事か前世まで遡って。


 思い出される過去に思わず涙が流れます。何でしょう、自分のせいで起こった事も多いですが、些か自分のせいではない理不尽が多い様な気がします。気のせいでしょうか?…気のせいですよね。きっとそう。




 ―――――――




「………ぐすっ」

 

 千歳は『どよ~ん』と陰鬱な空気を発しつつ、同じく陰鬱な空気を発していたサクの隣で膝を抱える。

 

 千歳は、何時も不運な出来事を記憶の隅に追いやり良好な精神状態を保っている。だが、その負の記憶は消失した訳ではなく、思い出さない様に仕舞い込まれているだけで、記憶の中には確かに存在する。


 今回は、その追いやった記憶が詰まっている記憶のパンドラの箱を開けてしまったのだから、こんな状態になってしまうのも致し方の無い話。

 更に質が悪い事に、千歳のパンドラの箱には希望と言う物が存在していない。開放したが最後、延々負の記憶を吐き出し続ける本家のパンドラの箱よりも酷い使用の箱となっている。


「いや、そこまで腐らんでも」


「あーあ…千歳がいじけた!」


「困ったな…このまま放っとくと、たぶんまたキノコとか生えるぞ」


 彼の言葉を少し訂正しよう。既に頭から1本、赤地に白の水玉模様のコントラストがキュートなのが生えてきている。

 他にも、千歳の周りの地面には妙におどろおどろしいワラビだとかゼンマイだとかの暗くてジメッとした場所に生えるような山菜もキノコに続いて、着々と生え始めている。


「だよねーどうしよう?」


「ねぇ、キノコって何の事ですか?」


「あれ?メイドさんは見たこと見た事無いんだっけ?千歳が凄くいじけて腐るとキノコとか生えるんだよ、そこらじゅうから」


 初めてキノコ等が生えたのは、千歳が3歳の時。通称【第一次キノコ繁殖事件】の時である。

 きっかけや経緯は些細な事だった、教会に宿を求めてやって来た冒険者が歪んだ嗜好の持ち主で、千歳が失敗する所を見ては罵倒し馬鹿にして、トラウマや開けてはいけない箱を開けて遊び始めたのが始まりだった。

 最初こそ耐えていた千歳だったが、それが1日中続くと話しは別である。遂に耐えられなくなった千歳がいじけて腐り、【第一次キノコ繁殖事件】が始まったのである。


 初めてキノコ等が繁殖し始めた時には、謎の自然現象だと思われていた【第一次キノコ繁殖事件】であるが。【第二次キノコ繁殖事件】の際も、【第一次キノコ繁殖】時と同様にキノコ発生の中心地で陰鬱な空気を発していたのが千歳であったため、事件との関連性が疑われるようになった。

 そして、一連の【キノコ繁殖事件】の原因が千歳であると断定される現象が発生した。それが【冬の花園事件】と【教会花畑化事件】である。


 千歳が初めて味のある物を口にした時、実は教会の外では異常が起きていた。冬なのにも関わらず、教会周囲に花が咲き乱れるという天変地異が起こっていたのだ。


 結局この時は、花の精霊の悪戯か何かという事で処理されたのだが、その後の度重なる【キノコ繁殖事件】と、その後に起きた【教会花畑か事件】と千歳の感情の上下のタイミングが完全に一致して居た事と、全ての事件を通して千歳がキノコや花の繁殖の中心地に居た事で千歳が事件の原因だと断定された。


「何それ?何の冗談ですか?」


「「冗談じゃない(よ)(ぜ)」」


 そう2人が声を合わせて言った時には、既に千歳の周囲には薄暗い場所に生えるであろう山菜類やらキノコ類が繁茂し始めていた。【第三次キノコ繁殖事件】の始まりである。


「凄く調子が良い時には花とかも生えるんだよー」


 【教会花畑化事件】の際には、教会の建造に使われた約300年前の木材から芽が出て花が咲くという異常事態と、何処から来たのか分からない色とりどりの花が教会の建物内で咲き乱れるという異常事態が発生した。


「まぁ、チビは加護持ちじゃしな」


「「かごー?」」


 ハーシェとポルトにとって加護とは未知の単語である。一応、ハーシェも加護持ちではあるが、ハーシェの持っている加護は意識的に自覚できる類の加護ではないので、彼女は加護については無自覚だ。


「神様の愛護と呼ばれる特別な力の事ですよね?」


「そうじゃ、それも異常な程に強いな。系統的には生命干渉系じゃと思うんじゃが何せ神の力じゃ、詳しい事は良くわからん」


 本来の【豊穣の加護】の効果と言えば、僅かに植物の成長を早める事と、多少品質を向上させる事。異常成長やらの効果は無い。ましてや、キノコが生えたり、花が生えたりする事などありえない。まさに異常である。


「へぇ…千歳ちゃんがねえ?でも感情の上下で色々生える加護とか…何の役に立つんですか?」


 キノコやら花やらが生えるのは食糧確保の面でも、あまり役には立たない。千歳の気分が異常に下がった時に生えるキノコ等は、食べるとテンションが下がり、何事に対してもやる気が起きなくなったり、暗い気持ちが襲ってきたりするし。花は逆に、香りを嗅ぐと、気分が良くなったり、不思議な幸福感やら全能感に包まれたりする…一応、依存性は無い。


 キノコの方は、シスターリディアが試しに食べて被害を受け、数日自室の隅で膝を抱えて陰鬱な雰囲気に苛まれ。花の方は、シスターシルバが撤去作業中に被害を受け、数日間妙なテンションで過ごし、ちょっとした黒歴史になった。


「いや、チビの加護の本質は別の所にある。そもそもキノコが生えるだけの加護とか何の役に立つんじゃ?神もその様な迷惑極まりない加護は与えんじゃろう。キノコや花以外に何か別に心当たりは無いか?」


「そういえば、千歳ちゃんの部屋に光る鈴蘭っぽい植物と光るキノコが植わった鉢植がありましたね。ルームランプとか言ってましたけど」


 最初は光る鈴蘭しか植わっていなかった鉢植えだが、他の鉢植えが見つからなかった事もあり、千歳は光るキノコも同じ鉢植えに植えてしまったのだ。その後、光るキノコも光る鈴蘭同様妙な進化を遂げ、今日も元気に発光し続けている。


「ほぉ、それは珍しい物を見つけたものじゃな………ってルームランプ?」


 ルームランプという単語に山椒魚は目をパチクリさせる。


「そういえばあったねー、あのデッカイのでしょ?」


「デッカイ?」


 その単語にまたも山椒魚は目を瞬かせ、首を傾げる。


「あの木とキノコの事か?」


 光る鈴蘭は植え替えた時点で、草花ではなく幼木といえるレベルにまで成長している。面影は残っているのだか、とても元の植物とは同じ物には見えないだろう。


「木?それはもうワシの知ってるのとは別物じゃ…」


「でも、実際そうなってますし…ねぇ千歳ちゃん」


 そこでメイドさんが千歳の方を見ると、千歳の周囲には日当たりのいい場所とは思えないような光景が広がっていた。 


「え…?」


「あぁ…やってしもうた…」

教会は築300年以上の建築物です。

基礎と地下室と外壁等は、堅牢な石で出来ていますが、屋根と床、そして内装は基本的に木製です。


 元は、旅人や行商人の宿として作られましたが。時が経つにつれ、取りに帰って来る者が居ない荷物(教会までの道中に落ちていた物(魔物に襲われた行商人の荷物やら)や、行商人が不要と判断し置いて行った荷物」)が散乱し、半ば物置の楊になり、それに従い泊まる者も減少し、シスター達が来るまで録に手入れすらされない様な状態に。


 御陰で屋根と床及び床下は雨風や雨漏りが原因で所々脆い状態に。

 扉やら窓やらもそこそこにガタが来ています。



 屋根やら床やらが抜けたのはその辺りが原因です。

 

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