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白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
27/67

メイドさんと 02

今回は戦闘描写があります?

 新緑を照らす太陽が、繁茂した木々の葉を通り抜けて木漏れ日を作り出す真夏の昼下がりの森の中。 

 互いに威嚇し合い、相手の攻撃を牽制しつつ睨みあう、千歳とその敵対者。


 戦いが始まって既に十数分が経過するが、戦況は戦いが始まった時から変わらず膠着状態。お互いに背中を見せれば攻撃される状況ではあるが。リディアとメイドさんはその光景を座って観戦していた。


「フシャーッ!」


「がぉおぉぉ!」


「千歳ちゃーん、がんばれ~」


 千歳は薬の材料を手に入れるために、ウナギと戦っていた。

 ただし、ウナギと言ってもただのでは無い。土ウナギと言う分類的には魚だが、水中ではなく大地に生息し、普段は巣穴から顔を出し獲物が巣穴の前を通り過ぎるのを待つ、狡猾な生物である。


 狡猾などと言っては見たが、その実生態的及び性能的には普通のウナギと全くと言って良い程変わらない生き物だ。全長70センチメートルのスレンダーな身体に愛嬌のある顔、そして申し訳程度の(ヒレ)を持ち、危険を感じればヌルヌルを出す。この世界では極々一般的なウナギの一種である。


 そして、そのヌルヌルこそ本日、千歳達が森を歩き回ってまで探していた薬の材料である。


「…それにしても何なんでしょうね?この今までの人生の中で初めて感じる様な凄まじい脱力感は。お互いに本気で戦っているのは分かるんですけど…なんと言うか…微笑ましい?」 


「それを言うなら滑稽でしょうね」


「………意外と辛辣ね」


 観戦する2人が雑談に興じる中でも、千歳とウナギは真剣そのもの。ファーリシア大森林カースト下位の両者がお互いに目的があって戦っているのだ。千歳は薬の材料を手に入れる為、ウナギは縄張りを守る為に。

 本来土ウナギは自分より強い存在が縄張りに入って来た場合は、巣穴に潜みそっと危険が通り過ぎるのを待つが。自分と同等の強さかそれ以下の生物ならば縄張りを守る為に戦う。


 ―――つまり、千歳はウナギと同等、またはそれ以下と実力と認められた………否、認められてしまったのだ。


「千歳ちゃん、行けぇっ!今だー!そこよー!!」


「はぁ…何となく分かっていましたが、まさかウナギと同じ次元だなんて…と言うかメイドさんは煽らないの」


「はーい、ごめんなさーい」


「フカーっ!!」


 背後で行われている会話に千歳が気を取られた一瞬の隙を狙って、ウナギが巣から勢い良く飛び上がり宙を舞う。

 そして、空中で口から数個の泥の塊を千歳に向かって吐き出した。


「?!」


 千歳は、突然の事に驚いて、咄嗟に体を屈め、腕を頭の上に被せて身を守る。


 べちゃっ。


 泥の塊は見事に命中し、千歳は頭の上から泥を被る。

 そして、ウナギは千歳が体勢を立て直す前に着地しヒットアンドウェイで巣穴に戻っていく。


 土ウナギの戦法は基本的に、目潰し目的の泥飛ばし、そしてヒットアンドウェイ、一撃当てたら安全圏へ戻り次の攻撃の準備をする。それを繰り返すのである。


「うぅ~…くらえっ!!」


 千歳は苦し紛れに石を拾って投擲するが、その石はウナギに届く前に失速し虚しく地面に落ちた。

 何が悪かったかは言うまでも無い、筋力不足である。転生前なら普通に届いた、たった3メートル程度の距離も1歳児の千歳の身体では高さ筋力共に不足しており届かない。


 そして、その隙を狙って、またもウナギが宙を舞い、千歳に向かって口から泥の塊を射出する。


 ビチャッ!


 千歳は今度は避けようとしたが、足が縺れて転び、ウナギの吐き出した泥は千歳の後頭部に直撃した。

 だが、千歳は転んだ事にも泥にもめげず、地面に着地するウナギの方に向かう。


「絶対逃がさないからっ!」


 千歳は逃げるウナギを何とか掴み、ウナギが逃げないように四苦八苦しながら、足元に置いてあった鞄の中から小瓶を取り出し粘液の採取を開始する。


「フーッ!フカーッ!」


「こっのっぉ、逃げるなぁっ!」


 そしてそこからはもう泥仕合。ウナギを掴んだり逃げられたり、泥を飛ばされたり絡みつかれたりして、最終的に必要な量のヌルヌルを集める事には成功したが。

千歳はウナギの吐き出した泥やヌルヌルでベタベタで、大変な事になってしまった。具体的にはベタベタでドロドロ、しかも体力を消費しすぎてグズグズだ。


 ウナギは今後の採取の為に巣に戻され、千歳はベタベタでドロドロのグズグズ状態で、自慢げに採取したヌルヌルをシスターに見せていた。

 しかしながら、採取した分より千歳の身体に付いているヌルヌルの方が多い、だが、そこは同伴者2人の気遣いによりスルーされた。


「それにしても酷い状態ですねー、泉まで行って水浴びでもしましょうか」


「えー…何時もと同じで良いよー」


 千歳は心底嫌そうな顔をしてメイドさんからの提案を拒否する。


「何で何時も泉に行くのは嫌がるんですか?」


「だって泉の水って冷たいし、それに…」


 泉と言うのは、常時大量の水が湧き出して溜まっている場所である。当然水は冷たい、雪解け水より氷でキンキンに冷やされた水より冷たい。

千歳は一度泉に連れて行かれて、余りの水の冷たさに体調を崩してから「絶対にもう行かない」と心に固く誓っていた。


 本当の所は冷たい以外にも、泉に行きたがらない理由があるのだが、メイドさんはそれを知る由も無い。


「まぁ、何でも良いです。とりあえず泉に行きましょう、帰りは全裸でも問題ないですよね!替えの服とか持ってきて無いですし」


「嫌だよ、って、え!?ちょっと―――ぎゃあぁぁぁぁぁぁあぁーーーーー」


 メイドさんは手ごろな長さの棒と蔦を拾って、その棒に手足を縛り付けて担ぎ上げた。


 体格差とは理不尽。両腕両足を木の枝に縛り付けられ、地に足が付かない高さまで持ち上げられてしまえば、もう声に出して抗議するか、身体を揺すって抵抗するしかない。


「ちょっとぉ!嫌だぁつってっばぁ、行きたくないっ」


「ちょっと暴れないで下さい、落しちゃいますよ」


「いやだぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー死んじゃううぅぅーーー」


「イヤですねー水浴び程度じゃ死にませんってー」


 メイドさんは笑いながら千歳を泉まで運んでいく。

 そして、千歳を泣きながらそれに抵抗し。

 リディアはそんな2人を見て疲れた顔をしている。


「…メイドさんって意外と人の話しを聞きませんよね」


「何か言いましたか?」


「いえ…何も、私は一度教会に戻って着替え何かを持って来ますから先に行っていて下さいな」


「はい、ありがとうございます」


「いやあぁぁぁぁぁぁぁあ、帰るぅーーー何時もと同じで良いからぁーーー桶に水汲んで身体拭くからーーー」


 教会に住んでいる千歳以外の人間は普段から泉に水浴びに行っているが、千歳だけは頑なに泉に行くのを嫌がって、何時も濡らした布で身体を拭くに留まっている。


「そんなドロドロなのにタオルで拭くだけとか何言ってるんですかー、たまには水浴びもしないとダメですよー」


 こうして千歳は泉に連行された。 

読者様からご指摘いただいた部分を順次直していこうと思うので、来週は投稿できるかわかりません。

 一応大筋は変えないつもりですが、年齢等の変更は加わると思いますが、その辺りはご容赦ください。


9月5日 改稿

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