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白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
26/67

メイドさんと 01

 メイドさんが目を覚ましてから数日。森の奥に行ったり、勝手に包丁を持ち出して使ったりしたのが悪かったのでしょう。

「今日からメイドさんには千歳の面倒見役兼、面倒見係をして貰うことになりました。な・の・で! メイドさんの言う事を良く聞いて"良い子"にして下さいね」と、監視だと隠す気すら無い監視役を付けられてしまいました。


 そして、つい先日。監視役に任命されたメイドさんから、

 「千歳ちゃんとハーシェちゃんは、イマイチ滑舌が良くないですよね? 幸いな事に私も千歳ちゃんも暇ですし、ハーシェちゃん辺りを巻き込んで滑舌を良くする為の練習をしましょう」

 と提案があり、ここ数日はメイドさん主導の下、勝つぜ津を良くする為の発声練習と、それに平行したメイドとしての実技及び礼儀作法の指導が行われていました。……メイド云々のソレが必要かは疑問な所ですが。


 元々滑舌が良く練習に加わっていないポルトはと言えば、一度は誘われたものの「俺はメイドじゃなくて騎士になりたいんだ……だからゴメン」と言って、メイドさん主導によるメイド育成の授業ではなく、シルバに剣の指導を受けています。

 授業をする側のメイドさんも、「残念ですが仕方ありませんね。ポルト君は滑舌も良いですし……まぁ、生徒が2人も居るので良しとしましょう」と少し残念そうにしつつも、ポルトの事はアッサリと諦めました。


「はい、じゃあ私の後に続いて。お帰りなさいませご主人様」


「お帰りなさいませごしゅじん様」


「お帰りなさいませご主じん様ー」


 スカートの裾を摘まんでお辞儀をする動作を練習します。当然、今はスカートなんて穿いていないので、一応穿いているイメージで。

 僕はイマイチですが、ハーシェは見る見る内に発音が良くなっています。ですが、発声練習と平行して行っている、礼儀作法の方は、僕に一日の長が……って、その辺は勝っててもあんまり嬉しくないですね。


「もっと優雅に。お帰りなさいませご主人様」


「お帰りなしゃいませご主じんさま」


「お帰りなさいませご主人様」


 どうも上手くいきませんね。噛んでしまいましたし。


「いいですよ、ハーシェちゃんは滑舌が以前より格段に良くなっています。でも、お辞儀の方はもっと頑張りましょうね。千歳ちゃんは滑舌があんまり良くないですし噛んでもいますが、動きは完璧です。だからそっちの方を頑張りましょう!」


 グッっとサムズアップして良い笑顔で笑うメイドさん。何だかんだで褒められると嬉しいですね。テンションも上がります。


 ※運動神経が異常な程悪い千歳が、メイドさんが絶賛する程完璧に動けたのには理由がある。

 それは、朱里がまだ幼女と呼べる年齢だった頃の事。「メイドさんって可愛いよね。私ね、実は家に1人メイドさんが欲しいと思ってたの。だってメイドさんだよ? お姉ちゃんもメイドさん欲しいよね?でもウチはメイドさんを雇わなくては家事は十分間に合ってる。だからね、私考えたの。お姉ちゃん……メイドさんになって!」

 と、常人なら思いついても口にしない様な斜め上の発想を言い出して、千歳が10歳ぐらいの時分からじっくりと時間を掛けて、メイドとしての礼儀作法と所作を叩き込んだのだ。


 そして、その気の長い『メイドさん育成計画』も、あの事故が無ければ、後は、半年あまり本格的なメイド喫茶でアルバイトさせる事によって実を結ぶ筈だった。加えて言うなら『メイドさん育成計画』と平行して行われていた『ナースさん育成計画』『深層の令嬢育成計画』『巫女さん育成計画』等の、頭のおかしいとしか言えない計画もそう経たずに実を結ぶ筈だった。


 ……彼女は一体何処を目指していたのだろうか? と言うか、朱里は千歳を何処に向かわせようとして居たのだろうか?


 閑話休題


 一通り発声練習を終えると、メイドさんは何処からとも無く週刊誌と同じぐらいの幅がある薄い木の板を持ってきました。


「さて、次はコレを頭に載せて歩いてみましょう」


 薄い木の板をハーシェの頭に載せるメイドさん。


 何だか懐かしいですね。朱里ちゃんにせがまれてメイドさん修行をして居た時は、よく植物図鑑を頭の上に載せて歩く練習をしたものです。何でも「良い? これは全ての基礎にして最も重要な事なの」とか言ってましたが、一体何の練習だったのやら。

 10歳頃から初めて毎日欠かさず練習して7年目になって、やっと朱里ちゃんから合格を貰う事が出来たのは、今となっては良い思い出……なのかな?


「千歳ちゃんは、まだ小さいからもう少し軽いものからね。じゃないと潰れるか転ぶかしそうですから」


 転ぶと言うのは有り得そうなので何とも言えませんが、潰れるなんて物騒な……。流石に木の板一枚じゃ潰れませんとも。


「じゃあ、乗せますね」


 僕の頭には、教会で使っている木製のお皿が乗せられました。


「では、歩いてみて下さい」


 出来るだけ真っ直ぐにですよーという言葉を背に、ハーシェ共々ゆっくり一歩踏み出します。


「ふっ! よっ! はっ! メイドさん見てー、上手ー?」


「わわっ!?」


 右にフラフラ、左にフラフラしつつも、頭の上の物を落さない様に歩くハーシェと違い、僕は一歩目を歩み出した時点で頭の上のお皿を落してしまいました。


「うーん、流石に千歳ちゃんにはまだ早かったみたいですね。暫くは喋りの練習をしましょうか……綺麗な歩き方の練習はもう少し大きくなってから頑張ろうね」


「はーい」


 もうちょっと成長したら、頭の上の物も落さず歩けると思うんですけどね。


「ハーシェちゃんの方は何とか大丈夫そうなので、そのまま続けましょう。取り敢えずの目標はフラフラせずに歩ける事ですかね」


「はいはーい!」


 元気良く返事を返してから、頭の上に物を載せて相変わらず左右にフラフラしながら歩くハーシェを横目に、滑舌を良くする為の発声練習を続けます。

 そして、午前中一杯メイドさん主導のメイド育成の授業を受け、お昼を食べてお昼寝の時間になり、目覚めると特にする事も無くなり、何時の様にメイドさんと何をして時間を潰すか相談します。


「で、今日は何をしましょうか?」


「とくに思いつかないよ……メイドさんこは何かやりたい事ないの?」


「無いですね! と言うか思いつかないです! ぶっちゃけ、この辺りって木と林と森しかありませんからね!」


 今日も概ね何時も通り。やる事も無くやりたい事も無く、特に何も思い付きません。


「じゃあ、今日もお掃除でもする?」


「そうしたいのは山々なんですけどねー、もうお掃除出来る場所が無いんですよ。毎日毎日お掃除してた御陰で教会は何処もピカピカです」


 ですよねー。


 森へ行く事を禁止されて以来、特にやる事も無く暇だった僕達は、お昼を食べてお昼寝して起きると、その後は暇を潰す為に教会の中を掃除して回っていました。

 元々あまり大きくは無い教会です。どんなに丁寧に掃除しようと、2~3日無心で掃除洗濯し続ければ掃除する場所も洗濯する物も無くなってしまいます。御陰で教会はピカピカ……残っている場所と言えば、リディアが管理している調合部屋や、フィルの実で一杯の地下室など、流石にそう言う場所は掃除出来ません。


「……暇だねー」


「ですねー……何処かに何かやる事は落ちていないものでしょうか?」


 メイドさんと2人して暇を持て余しながら、机に突っ伏してダラダラして居ると、薬の入った瓶を持ったリディアが部屋の前を通るのが見えました。


「「…………」」


 じーっと、リディアが通り過ぎて行くのを目で追って、見えなくなった頃になってメイドさんが、ポツリと言いました。


「千歳ちゃん……私、良い事思いついちゃったかも知れません」


「奇遇だねぇ、僕も良い事思いついちゃったかも」


「ダメかも知れませんけど、聞くだけ聞いてみましょうか」


 ・


 ・


 ・


「薬の作り方……つまり、薬学を教えて欲しいと?」


 メイドさんと一緒にリディアを追いかけて、薬学を教えて欲しいとお願いします。

 すると、リディアはポカンと呆けた顔をしながら、聞き返します。


「うん、教えて」


「是非ともお願いします」


 リディアは、フムと少し考え込んだ後頷きました。


「良いですよ」


「ほんと!?」


「ええ、千歳は良く怪我をしますし、メイドさんも記憶を取り戻せなかった時に稼ぐ方法があった方が良いでしょう。傷が治ったとしても、大森林で行方不明では、元の職場では死亡扱いでしょうし」


 「うっ」っと苦々しい顔をするメイドさん。


「記憶を失ったままでも職探し、取り戻しても職探しですか……それも、後者は与り知らぬ所で退職扱い」


 溜息を吐いて、虚無を感じる笑みを浮かべるメイドさん。大変ですもんね、受験とか就職活動とか。


「まぁ、メイドさんの事は半分冗談としても、薬学を学びたいのなら喜んで教えましょう」


 ダメかとなーなんて思っていましたが、予想に反して良い返事が貰えました。そして、予想外に先生リディアが張り切って、僕達はお願いした足でそのまま外に出て材料の採取の勉強を兼ねた野外実習となりました。



―――



 当たり前と言えば当たり前ですが、薬を調合するには先ず材料が必要です。そして雑草と言う名の植物は無いと言う言葉もある様に、一言に薬草と言ってもその数や種類は膨大です。採取方法を教えて貰いつつ足元を見れば、昨日まで普通に踏んで歩いていた植物が薬草だった何て事も決して珍しくはありません。


 そう、例えば、この辺りでは別段珍しくない、木陰に生えている黒くて小さい花を咲かせる植物とか。


「シスターリディア、ハガクレ草の採取終りました」


 黒い花を籠一杯に採取してリディアに渡します。

 

 ハガクレ草は、この後作る薬に必要な材料の1つで、木陰や何かの物陰なんかの湿気が多い場所に自生する植物です。

 この辺りでは然程珍しい訳でもなく、春先から秋の終わり頃まで目にする……ともすれば、数が多いので森の中で何気なしに踏み抜いていたりする様な植物です。


「良く出来ました。では次はユピナ草ですね。ユピナ草は、えぇーっと、多分この辺りに……あ、ありました。コレです」


 リディアは、ガサガサと草むらを漁り、パッと見雑草にしか見えない草を根っこごと掘り起こして、根に付いた土を払い落としてから何枚かの葉を千切って僕達に見せます。


「これがユピナ草です。ユピナ草は、日当たりと風通しが適度に良い場所を好み、夏も盛りになると青くて小さな花を付けます。

 生憎と今は時期が早く花が付いないので他の草と混じって見つけ難いかも知れませんが、そう言うときは茎や葉の根元を見て下さい。この通り、淡い青色をしているので見れば直ぐに分かる筈です」


「「はーい」」


 リディアに言われた通りに、適度に日当たりと風通しが良い場所を重点的に探します。すると、探した場所が良かったのか暗に沢山生えていただけなのか、探し始めて数分と経たない内に最初の1本を見つける事が出来ました。


「あった!」


「こっちにもありましたよ!」


「2人とも見つけられたみたいですね。では、それを採取して此方へ持って来て下さい」


 採取したユピナ草(仮)をリディアに見せて、本物のユピナ草で合っているか確かめて貰らって、ちゃんと本物のユピナ草だと太鼓判も押してもらえたので"(仮)"が無事い取れました。

 曰く、ユピナ草は根から花まで全ての部位が薬として使えるので、何かと重宝するそうです。特に、根と葉は合わせて煎じると簡単な解熱鎮痛剤になるので、もしもの時は思い出して下さいとの事。


「さて、後の材料は森の中に生えているので、移動しましょうか」


「え、でも森は……」


 入っちゃダメってリディアが……。


「……必要なので特別に許可します」


 一瞬の間の後に溜息が吐き出され、「1人で置いて行くとまた何かやらかしそうですし……心配なのですよ」と顔を抑えて困った様に言うリディア。

 隣でその様子を見ていたメイドさんは、一番深い傷があった場所に手を触れて「なるほど……」と神妙な面持ちで妙に納得した様に神頷きました。解せぬ。


 別に1人で置いていかれても大人しく待ってるのに。と、少しむくれていると、先程まで神妙な顔で眉を寄せていたメイドさんに「まぁまぁ」と肩をポンポン叩かれます。


「何はともあれ1人でお留守番とかにならなくて良かったじゃないですか。では、早速森へゴー!」


 気を取り直して「おー!」とメイドさんの後に続きます。


 森へ向かう途中や森で薬草を採取して教会へ戻る途中も、薬草を見つける度にリディアがその薬草の説明をしてくれるので、時折足を止めてその説明を聞きつつ調合部屋へ向かいます。

 是一切は説明してくれた5倍以上の種類が生えていたそうですが、今日は初日と言う事もあって、割と何処にでも生えていて用途の広い薬草に絞って、見分け方や採取方法を説明してくれたそうです。……それでも若干パンク気味ですがねフフフ。


 教会に着いたら、採取した薬草を見ずばで洗って調合部屋へ。


 この教会は約150年程前に、旅人や商人の宿として、綺麗な水が沸いていて比較的山道に近い場所を切り開いて作られたそうです。そんな立地条件の御陰で綺麗な水や農業用水に困る事はありません。加えて、塩や日用品等の生活必需品や、薬瓶等の少し変わった品も、山道を通る行商の人から買うか、依頼して通りがかりに持って来て貰う事も出来ます。


 ……ただ。例外的に、ドライフルーツや青果物を除いた、砂糖や蜂蜜等の甘味類なんかは行商の人に頼んでも手に入れる事が出来ません。


 この世界では砂糖における砂糖は、一部の地域でしか育たない小さな花が付ける糖の結晶を加工した希少で相当高価な品らしく、売っている所は愚か実物を見た事すらありません。聞いた話では、一国の王や貴族に大商人ぐらいしか口に出来ない品で、何でも匙一杯で豪邸が建つ程だとか。


 僕の知ってる砂糖は、近所のスーパーで売っていた一袋1キロ入り170円(税込み)ぐらいの物なので、前世との落差が半端じゃないです。


 蜂蜜も同様に希少で高価な品であり、養蜂農家が飼育できる蜂は飼育が難しく、集める蜜の量も少ないそうで、年間瓶3つ分ぐらいの量が採れれば良いほうなのだとか。

 現在一般的な養蜂農家が飼育している種類以外だと、クリスタリア大陸の最西端にある港町から船で2日程行った場所にある無人島の魔境に、1匹のサイズが30センチ程あり、目に見えない程の速度で移動して、巨大な魔物も一刺必殺で葬るヤバイ蜜蜂が居るそうです。


 その蜂が集める蜜は、質も良く量が非常に多いそうですが、気性が荒く凶暴な為に蜜の採取は命がけで、飼育は難しい……と言うか無理なのだとか。

 確かに、そんな蜂の所に蜜を採りに行ったり、飼育したりはしたくないですね。


 それ以外だと、500年程前までこの辺りに生息して居た『結晶蜂』と言う宝石の様な蜂でしょうか? その見た目故に売買の為に乱獲されて絶滅してしまったそうで、今となっては大陸中央にある学術都市と言う場所に標本と僅かな資料が残るのみだそうですけど……。

 ただ、十年程前に大森林の奥地付近……つまり、この辺りで目撃されて、一角千金を目指す冒険者の方々による捜索が行われたそうです。結果は、絶滅説を裏付けるモノとなったそうですが。

 それ以降も、数年に一度のペースで目撃情報が上がっているそうで、話を聞いて僕も探してみては居るのですが、結果は残念。蜜を集めない蜂は時々見つけるんですけどね。


 とまぁ、そう言う事情があって甘味類が手に入らない訳です。女神様も一部の調味料や香辛料は手に入り辛い的な事は言って居たので、ある程度は覚悟していましたが、まさか砂糖や蜂蜜が高いなんて思いもしませんでした。


 閑話休題


 調合部屋に入ると、そこは他の部屋とは明らかに作りや雰囲気が違い、炊事場にある竈よりお大きな竈が1つと、小さな竈が2つ。そして大き目の机の上に並べられた、薬を作る為の機材や材料


 調合部屋は、他の部屋とは一線を画した雰囲気を持つ部屋です。壁に吊るされた幾種類もの薬草に、本や水晶が所狭しと詰め込まれた棚。床には付箋がされた専門書や図鑑が何十冊と積まれた塔が乱立し、所々には失敗作と思しきヤバそうな色の薬が入った瓶が散らか……いえ、置かれています。

 部屋の隅には魔女がかき回していそうな壷っぽい鍋が置かれ、中央に置かれた大きな机の上には、薬研やフラスコを初めとした薬を作る為の器具や材料が置かれていました。


 混沌とした室内ですが、掃除は行き届いているのか積まれた本などに埃なんかが積もっている様子は無く、床に積まれた本など以外の部分は生理整頓が行き届いて、作業がし易い環境が整えられています。


 恐らく一部の惨状は、文献や資料を使って新薬の研究をしている内にこんな事になってしまったのでしょう。

 時々、夜に起きてトイレに行ったりすると、調合部屋から「う~、出来ないよぉ。分かんないもん、何で失敗するのぉ……」とか、リディアらしくない弱音が聞こえてくる事がありますし。


「では、今日は初めての薬作りという事で、作るのが比較的簡単で材料が集まり易い胃薬を作ろうと思います。工程に沿ってゆっくり説明をしていくので、分からない所があったら聞いて下さいね」


「「はい」」


 メイドさんと一緒になって元気に返事をします。


「では先ず、採取して来た薬草を種類別に擂り鉢で出来るだけ細かく磨り潰して下さい」


 リディアの指示に従って、採取して来た薬草を出来るだけ細かく磨り潰します。こういう事をしたのは転生する以前に蓬を磨り潰して以来です。

 ゴリゴリぐりぐりしながら薬草を磨り潰していると、蓬餅よもぎもちの事が頭を過ってヨダレが……。それを怪訝そうな様子で見ていたリディアが、突然ハッっとした顔をして「……それはそのまま食べると苦いですよ」と僕に注意します。


 別に食べようなんて思ってませんから!


「出来ましたね、上出来です。薬の効果が今すぐ試せないのは口惜しいですが、調合も素材の配合比率も完璧だったので効果の程は間違い無いでしょう。

 ですが、このままでは保存が利かないので乾燥させて磨り潰してから丸薬にする予定です。この薬は乾燥させた薬草でも同じ配合で同じ効果を持つ薬が作れるので、調合方法と配合比は忘れないように」


 2人してコクリと頷くと、リディアも初めての授業で緊張していたのか、ホッっと一息吐いて授業の終わりを告げました。


「では、今日の授業はこれで終ります。あと、これからは調合部屋を自由に使ってもらって構いませんが、作った薬は一旦私に見せる様にして下さい」


「うん」


「分かりました」


 こうして僕とメイドさんはリディアの弟子になりました。

妹による徹底的な訓練の末に千歳が得たのは、普通の男の子として生きて行くにはとても必要とは思えない淑女の立ち居振る舞いと気品、物腰でした。


 一体彼の妹は何処を目指していたのでしょうか? それは彼女以外誰にも分りません。……案外何処かを目指してた訳じゃなくて、自分の欲求に従っただけなのかも。

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