表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の転生譚  作者: 優音 乙菜
第一章 教会
24/67

教会の日常 06

「あ!、そうでした、千歳にも伝えておかないといけませんね。彼女が目を覚ましましたよ」


 昼食を食ている最中にリディアが教えてくれた。

 

 僕が彼女を連れて来てから早数日、その間彼女はずっと昏睡状態だった。一応ここ2~3日は毎日夕方に様子を見に行って居たけど、彼女は微動だにもせずただただ眠り続けていた。


 怪我は治っていたし、感染症の方も見た感じはそんなに酷い症状は出ていなかったし日々順調に快方に向かっていたので、きっともう直ぐ起きるなかな?とは思っていたけど、まさかこんなに早く起きるなんて思ってなかった。


「いつおきたの?」


「ついさっきよ、でも少し話しをしてからまた寝かせたわ。だから、お見舞いがしたいなら何時もと同じ時間にね。それなら彼女も起きてる筈だから」


「うん」


 シスターの話しに頷きつつ、夕方まで何をして過ごすか考える。ハーシェとポルトは森の方に遊びに行くだろうけど、僕はシスターからは「当分森の方に行ってはいけません」と言われているので行けない。


 お昼寝をしたとしても夕方までは眠っていられない…いや、眠っていられない事は無いけど夜眠れなくなって半透明で浮いて居たりするアレに怯えながら夜を過ごす事になるのでそれだけは避けたい。

 

 かと言って、他にする事も無いし…あ!そうだ、どうせ森に行けなくて暇ならここ数日狩り続けたキノコを干すのはどうだろう?


 どうせ当分森に行けなくて暇だし、教会に居れば突然雨が降ってきたりしても対処できる。うん名案!…でも、まずは種類別にキノコを分別して、その後は毒と毒じゃ無いのに分けて…あとは…光ったり歩いたりする怪しいキノコ類の処理…は別に良いか!


 今回は放置しよ。何となく収穫しちゃたけど、歩くキノコとか正直怖いし。


 あと、植木鉢を見つけて花を植えたい。


 光る鈴蘭はきっと立派に豆電球の代わりを果たしてくれる筈だ。

 豆電球が無いと夜起きた時真っ暗で怖い思いをするし、この前なんてベッドの足に足の小指をぶつけて悶え苦しんだ。もうあんな悲劇が起きない様に光る鈴蘭には頑張って貰いたい。


 と言う訳で。


 昼食を食べ終わって睡魔に襲われる頃には寝起きにする事も決まったので安心して寝落ちた。そして目が覚める頃にはハーシェもポルトも遊びに行ったのか教会の中には居なかった。

 …予想して居た事とは言え実際に置いて行かれると何とも言えない複雑な気持ちになる。


「はぁ…」


 ため息を吐きつつ炊事場に向かい、そこで(ざる)を探してキノコの選別を始める。


 キノコの選別は、調理魔法の『食物鑑定』が使えるので割と問題なく進んだ。

 食べ物と多少の薬学の事に関してしか分からないけど、事食べ物の事に関してだけは万能だ。

 品質や毒の有無、その他にも、食材が持つ毒の解毒方法や毒を無効化する調理方法。そしてその逆に薬として調理する方法。他にも色々な事が分かる。

 

 キノコを選別していると、結構危ない毒キノコを見つける事もある。


 『絶対食べれるでしょ』何て思っていたキノコは「一口食べるだけで体中が麻痺してやがて死に至る」なんて怖い毒を持っていたり、明らかに毒が有りそうな真っ赤な地色に白のストライプが走ったキノコは「毒なし、煮込むとおいしい」と出た…世の中分からないものだ。


 取り敢えず笊の中でかさばらない程度に、毒が無くて食べれるキノコだけ選別して置いて、後のキノコは毒の種類と効果別に分けて『貯蔵庫』に戻しておく。


 その内リディアに薬の作り方を教えて貰おうと思って居るので取っておいて損はない筈だ。…多分。


 選別したキノコの石突きを取った適当な大きさにばらした後は風通しが良くて雨が降ったときに直ぐに回収できる場所にキノコが入った笊を置く。


 これで干しキノコの方は準備完了、あとは乾くのを気長に待つだけだ。


 う~ん、それにしても早く終わりすぎちゃったな………採って来た花を植える為の植木鉢でも探そうかな。


 植木鉢があるとしたら物置部屋か、地下室…は、フィルの実が沢山あって入れないから探すのは無理かな。

 無かったら諦めて別の物で代用しよう。もしも有るなら割れたコップとかでも十分だし。



 植木鉢を探す為に物置部屋に向かう。


 物置部屋。

 そこにはシスター2名がこの教会に来る以前から、物が大量に溢れていたらしい。


 物置部屋にある物は自由に持ち出して勝手に使っていいとシルバが言っていたけど、僕がここに来てから物置部屋から物を持ち出している人を見た覚えが無い。


 たまにシスター達が掃除しに入っているのは見るけど、その時も持ち込まれる一方で物が持ち出される事は無かった。


 実際に物置部屋に入ってみるとそこには、ぱっと見ただけでも、使えそうな物から全く用途が無い物、そして用途が分からない物まで。兎に角教会にある使わない物を端から詰め込んでいったのが見ただけで分かる部屋だった。


 こう言う場所を荒らすのは宝探しみたいでちょっと楽しそうだ。森に行けない内はここで宝探しをするのも有りかも知れない。


 

――――――



「あ!こいんみっけ」


 物置部屋を探索していると床の隙間に挟まった銅色のコインを見つけた。手ではちょっと取れそうに無い程深く挟まってしまっているので仕方なく一度外まで出て木の枝を拾って来て色々試行錯誤した末に、床に挟まったコインをゲットした。


 …最初こそコインを見つけた嬉しさがあったものの、少なくとも現在この大陸で流通しているお金ではないコインに、何か自動販売機の下にあった1円を必死になって拾った後の様な虚しい気持ちが押し寄せてきた。


「……はやくうえきばちさがそ」


 拾ったコインを『貯蔵庫』に入れて家捜しを再開する。だけど探せど探せど植木鉢みたいな普通の物があまり出てこない。


 出てくるのは、海外旅行のお土産で貰うような微妙な置物から、ピンからキリまでの布生地と一揃いの裁縫道具。使った気配が無い酒樽や酒瓶。そして刃の無い武器が数種類。壊れた農具に家を補修する為の木材、その他にも色々な物が沢山………よくこれだけの物を集めたものだ。


 植木鉢の代わりとして、辛うじて使えそうだったのは壊れた木製の桶が1つ…でもコレ土が入ったら持ち上げられないよね…転生する前なら持ち上げられただろうけど今は流石に無理!

 でもコレしか植木鉢の代わりになるもが無いからしょうがない。バケツ単体でなら運べるから土を入れたらシスターに…いや『貯蔵庫』に入れて運べば良いのか。『貯蔵庫』って本当に便利!


 色々気になるものは有るけど今日の所は花を植えないといけないので、適当な所で切り上げ物置部屋を出て教会から一番近い場所にある畑に向かう。

 そこで土を取って、光る鈴蘭を植えてそれを『貯蔵庫』に入れて自分の部屋まで運ぶ。

 そして、最期にコップに水を汲んで来て植物に水をあげれば作業は終了だ。


 ミキ…ミキ…ミシィ…


 水をあげて少しして、花の方から妙な音が聞こえて来たのでそっちを見ると花が巨大化して、その上株数自体も増えていた。


「………え?なんで!?こわっ!!」


 不気味…この世界の植物はこんな成長の仕方をするのだろうか?


 …まぁ、取り敢えず株数が増えて巨大化しただけだし、豆電球としての役割を果たすのには問題無いし、ちょっと怖かったけど、少しの間観察した結果、何の変化も無かったのできっと大丈夫だろう。…大丈夫だと良いなぁ。


 花の様子は気になるけど、お見舞いにも行かないといけないので自分の部屋を後にして医務室に向かう。

 医務室にはシスター達と女の人が居て、女の人は手にボロボロのメイド服を持って、それを眺めながらポカーンとして居た。

 

 でも、少しして僕の事に気が付いた様で、こちらを向いて不思議そうな顔をした。


「君は…シスターさんがお見舞いに来るって言ってた子かな?」


「あぁ、君をここまで連れて来た子だ」


「どうも、ちとせです」


「へぇ、千歳ちゃんか~私をここまで連れて来てくれてありがとう、私は…思い出せないから適当に呼んで」


「おもいだせない?」


 思い出せないってどう言う事?記憶喪失かな?あの時も沢山出血してたし怪我もしてたからもしかしたらそのせいかも知れない。


 出血多量や傷が原因で記憶障害に陥る事もあるらしいからね。


「彼女、ここに来る事を思い出せないらしいんですよ」


「えぇっ!!なにもおもいだせないの!?」


「そうなのよ、名前も元々住んでいた場所も思い出せないのよね」


「なまえも…こまったね」


 名前も思い出せないで行き倒れ何て何処かのゲームの主人公みたいだ。きっと彼女には農業の適正が有るに違いない。


「そうだな、何時までも君とか貴女とかでは不便だしな…何か名前の希望はあるか?」


「うーん、そうですね。じゃあ、この服に因んでメイドとでも呼んで下さい」


 女の人はここに来た時に着ていた服を持ってニコニコしながら言った。本当にそんな役職名みたいなので良いの!?


「む?それで良いのか!?」


「はい、あんまり普通の名前にして元の名前を思い出した時に愛着が沸いちゃってたら困るじゃないですか。だからメイドで良いんですよ」


「そうですか?ではメイド、これから宜しくお願いしますね」


「よろしくねめいどさん」


「はい、宜しくお願いしますね」


 メイドさんの名前が決まった後は、メイドさんと一緒に食堂まで向かう。そこで、皆の自己紹介を済ませて夕食になった。


 メイドさんの夕食は、病み上がりと言う事も有りフィルの実だった「味が無いですね」とはメイドさん談。

 そして、「体調が完全に完全に回復するまでの間食事はこれです」とリディアが言うとちょっとガッカリした顔をして居た。


 そして食事が終わった後は各々自分の部屋に戻って行った。


 この教会は割と小さな建物だけど、今は住んでいる人数が少ないので各人に一部屋ずつ部屋が与えられている。


 正直、夜寝る時とか1人だと怖いので皆同じ部屋の方が良いのだけどシルバが『せっかく部屋が余っているのだから使わないのは勿体無いだろ?』と言うので、僕も1人で歩ける様になった頃に部屋を貰ってしまった。


 シスター達に部屋は要らないと直談判したけど『ハッハッハその内慣れるさ』と笑って流されてしまった。無念。


 閑話休題


 自分の部屋に戻ると、植えた花が仄かに部屋の中を照らし良い仕事をしていた。


 ランプの様に淡く青い光りを放つ花の1つ1つから光りの粒が雪の様に零れ落ち、幻想的な雰囲気を放っている。


 なにが光っているのか気になったので、近づいて観察して見た。だけど結局、花の中に光りの珠が浮いているのは分かったけど、それがどうやって浮いて光っているのかは全然分からなかった。


 ………世界は不思議に満ちている。


 まぁ、何はともあれルームランプ(花)が良い仕事をしてくれている御陰でもうベッドの足に足の小指をぶつけたり、周りが見えなくて壁にぶつかるなんて悲劇は起こらなくなるだろう。


 それに植物もこれ以上は変化しそうにないので今日はもう寝よう。

 今は大体5~6時間ぐらい連続で起きてるのがやっとだ。5歳児は体力の限界が来るのが早いのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ