姉が姉なら、妹も 02
パンツ!
3月某日 日曜日 早朝
「フッ……良い朝だ……私はここで終わるとしても悔いは無いだろう……本当に良い朝だ」
柔らかくて暖かい抱き枕を抱きながら、私は思う…何処で間違ったのだ…と。
――― 事態の深刻さに気付いたのは、ほんの数分前。
目が覚めると、私はお姉ちゃんを抱き枕にして寝ていた。寝て居る最中の私は、お姉ちゃんに気付かれずに、お姉ちゃんを抱き枕にする事に成功したらしい。
これは、とても喜ばしい事だった、自分の成長を感じた。目覚めると最高の抱き枕が胸の中……気付いた時は喜びに打ち震えたさ…
だが、同時に小さな絶望も心の中に芽生えた。私はかなりガッチリとお姉ちゃんを抱きしめて居た、そんな状態お姉ちゃんを離す必要がある。
…だがそれは無理だ。お姉ちゃんは明け方になって来ると眠りが浅くなる、お姉ちゃんを離す為には、お姉ちゃんの頭の下私にある右腕と、ガッツリ絡んだ両足を引き抜かなければならない。
そんな事をすれば、お姉ちゃんは起きてしまうだろう…ミッションは失敗だ…どうせ失敗ならとことん楽しんでやろうじゃないか。
そう思った瞬間に心の中で芽生えた小さな絶望は消え去った。
「むにゅぐにゅ」
お尻も揉んでいた。
「スーハースーハー」
髪の匂いも嗅いでいた。
「う゛ーいや~」
お姉ちゃんが起きそうでも気にしない!
「ぺろぺろpr」
お姉ちゃん髪ってこんなに良い味がする物だったのか!!
ふふふ、私は覚醒したのだよ。もう変態と呼ばれようと構わないわ、軽蔑するならすれば良いわ!!
「みゅ~…(もぞもぞ)」
ヤバイヤバイヤバイ、本当にヤバイ、お姉ちゃんが起きちゃうよ!!!。
私、本当は変態だなんて思われたくないし軽蔑もされたくないッ!!。今回の事は、本当に出来心だったんです…お願いですから起きないで下さいぃぃぃッ!
「…ん~…………すぅ」
良かった…起きなかった……って安心してる場合じゃないよ!。まだミッションは失敗と決まった訳じゃない、諦めたらそこで試合終了だ。
考えろ、考えるんだ私……………あぁ、良い匂い…はっ!!違う。今はこの状況を打開する策を考えなくては。
私が、集中が続かないこの状況で考え出せた策は3つ
1.寝ぼけて部屋を間違えた、と言い訳をする。
これは無しだろう、お姉ちゃんの下着は女物に変わっている、しかも、元の下着は私のパジャマのポケットに入っている。
これは不味い、非常に不味い。いくらお姉ちゃんでも、これでは私が犯人だと気付いてしまう。だから、この作戦は無し
2.正直に、添い寝がしたかったと言う。
これも無し。理由は1と大体同じだ。…せめて下着の事さえ無ければ……いや、悔やむまい。私は男物の下着を穿いたお姉ちゃんも嫌いでは無い、むしろ何か萌えるし滾る…だけど、お姉ちゃんには、女物の可愛い下着を着けていて欲しかったんだ…。
3.酔っていた。
この中では、これが正解だろう。気付いたらお姉ちゃんの部屋に居た事にしよう、起きたらお姉ちゃんを抱き枕にしていた事にしよう。ついでに下着の事がばれても酔っていた事にすれば良い。
この作戦が成立するのは、昨日お酒が私達に振舞われたからだ…そう考えると、お父さんにも感謝しなきゃね。お酒を子供達と飲みたいって言ったのはお父さんだしね!。
さぁ、方針は決まった。私は寝たフリをして、お姉ちゃんが起してくれるのを待つ。そして、お姉ちゃんを上手く言いくるめてこの状況を打開する!!
…状況を打開するとは言ったものの、お姉ちゃんって暖かい場所に居るとなかなか起きないんだよね。
さて…どうしたものかねぇ……お尻でも揉もうかしら……。
「むにゅむにゅ。むにぃ」
「う゛~」
新 発 見 。お姉ちゃんのお尻を強めに揉むと、うなされて私の胸にお姉ちゃんの顔がグリグリと…うへへ……っと、いけない、いけない、馬鹿なこと考えてる場合じゃなかった。
「むにぃ」
「ん゛~」
うへへ…うへへへへへへへへへへ。
「むぎゅ!」
「ふぎゅうッ!!?」
っと、いけね~、ちょっと強くやりすぎちゃったよ、起きちゃったじゃん…いや、起すつもりだったから別に良いんですけどね。もうちょっと楽しみたかったとかじゃないですからねッ!……さてと…寝たふり、寝たふりっと。
「ふぇ!?…ふぇ~?…………………ふみょ!!」
…気付くの遅ッ!!
「ん~~んーーー(ずるずる)」
…あぁ、お姉ちゃんが私の腕から抜け出していく……胸元が寂しい。
「………………………あえ?、あぁりひゃんがにゃんれこぉに?」
全然喋れてないから、口回ってないから。ついでに口元ヨダレ付いてるから…これは人の事言えないか、私なんて顔中自分のヨダレまみれだしね☆乾燥して少しかぴかぴするよ。
「おひ………起きて~」
おいおい、あんまり揺するなよ。実はもうおきてるんだから…さてと、そろそろ起きてあげますか。
「おはよう」
「おはよう。…なんれ……なんで朱里ちゃんが僕の部屋に居るの?」
「…お姉ちゃんと地下室で別れた後、少しの間飲んでいた所までは覚えている…」
嘘です、実は地下室の掃除をしてました、おかげで地下室は隅から隅までピカピカさ。
「体調は大丈夫?具合悪くない?頭痛くない?吐き気は?」
「うん、ダイジョブだよ」
「よかった~二日酔いにはならなかったみたいだね」
うわ~、何か罪悪感が…ごめんよ、お姉ちゃん…。
「……あれ?。そう言えば何で僕パジャマ着てない…ん……あれ?…パンツが!?……あれ!??」
やっと気付いたか…さて、どう良い訳したものか…まぁ、いつも通りアドリブかな。
「朱里ちゃん…これは違うの…何かの間違いだから!!起きたらこうなってたのっ!だから違うの!!」
………あれ?、何か良い方向に勘違いしてる?しめたッ!!これはチャンス。私のパジャマの右ポケットに入ってる元の下着さえ隠し通せば…いける!!
取り敢えず笑顔だ、笑顔でこの状況を早めに終了させる。この状況が長引くのは良くない、何せ私のパジャマの右ポケットには、この状況を一変させてしまう物が入っているのだから。
「大丈夫、きっとお姉ちゃんは、寝ぼけて間違えたのよ。私だって部屋を間違えたのよ、下着を間違える事くらい誰にでもあるわよ。」
「間違えた…寝ぼけて…」
お姉ちゃんが、膝を抱えて俯いてる……そんなに落ち込まないでよ、良心が痛むじゃない……あと何か興奮する。
「取り敢えず着替えよ…ね」
そうしたら私は良心の呵責から開放されて、その上お姉ちゃんが今着けてる下着も手に入る…一石二鳥よ!
「…うん」
本当は『私が着替えさせてあげようか?』と言いたい所だが、そんな事を言ってやぶ蛇になったら嫌なので言わない。
「じゃあ、私も自分の部屋に戻って着替えてくるから」
下着姿のお姉ちゃんを目に焼き付けてから、ゆっくりと部屋を出る。
この後は一度部屋に戻ってから、右ポケットに入った宝物を枕の下に隠して、着替えて再びお姉ちゃんの部屋へ向かう。その後は、お姉ちゃんの部屋で回収ミッションを行う予定だ。
何か私、今とっても充実してる!!これが生きる実感…素晴らしい物だ。
「ふふふ」
思わず笑みが零れた。
自分の事だけど、つい昨日まで後悔を引き摺っていた人間とは思えないわね…
「これも全部お姉ちゃんのおかげ…か」
1人呟きながら、窓の外を見る…そこから見えるのは、去年の桜の季節とあまり代わり映えしない景色、光を取り戻し再び色づき始めた私の世界。
「うん、今日も良い天気だ」
きっと、良い一日になる。そんな予感がした。
パァァァァアァァァァンッツ!(発狂)




