ファーストキスはレモン味
「鈴城飛鳥さん!好きです!付き合って下さい!」
「…私、」
ザァッと風で木が揺れる音と共に呟かれた言葉に僕は思わず
「任せて下さい!」
そう答えていた。
「巧真、お前何食ってんの…?」
「レモンのはちみつ漬けにレモン水、あとレモンの汁に浸した唐揚げ」
「お前レモン嫌いじゃなかったっけ」
「そうも言っていられない理由が出来たんだよ」
「ちょっと聞くけどよ、そのおにぎり何で黄色いの…?」
「レモン入ってるから」
「…うまい?」
「不味い」
真顔で返すと友達は呆れたようなため息と共に去っていった。
「鈴城飛鳥さん!この3日間ずっとレモンを食い続けて来ました。僕と付き合って下さい!お願いします!」
「歯磨きしてきたの?」
「へっ!?」
「あなたの口、ミントの香りがする」
「し、しまったぁ!!!」
盲点だった。
彼女がファーストキスはレモン味じゃなきゃ駄目だというからレモンを食い続けてきたが歯磨きもレモンでなくては駄目だったのだ!
「くそぅ!僕のバカロウ!」
「…ふふっ。面白い人ね」
「はへっ!?」
「そういうの嫌いじゃない。ちゃんとファーストキスをレモン味にしてくれるなら付き合ってあげる」
「あ、う?へっ!?ほ、本当に!?」
「えぇ」
「や、やったぁ!!!」
その時僕は浮かれて結構重要なことを聞き逃してしまっていた。
「そういう素直なところ大好きよ?昔から、ね」