大阪、船場のビートルズ
最後のダジャレが笑えるか、どうか‥‥
先ずは方言のことを書く。
僕は生まれも育ちも長崎の市内である。
高校までを市内で過ごし、大学を博多で過ごした。高校の時の悪友が京都産業大学に行き、京都旅行の際、泊めてもらった。
夜、今で言う『王将』に行き、僕はお冷やの追加がほしくて、「水ばくれんね」と店員に頼むと変な顔をされた。この「ば」もなかなか厄介で、「を」が必ずしも「ば」に置換できない場合もある。
例えばテレビドラマで「人生ば生き抜く」と言うかもしれないが、長崎っ子は、「人生、生き抜く」と表現するはずである。ここいらの説明は難しい。
僕は現在、関西圏に住んで30年になろうとする。
住みはじめて、最初に驚いたのが「やんちゃ」という言葉である。
九州でも関東でも、子供が水鉄砲で大人の服を濡らす程度のことが「やんちゃ」であろう。しかし大阪では、極端なことを言えば殺人であっても、「あそこの次男坊、昔っからヤンチャやってんなぁ」と使う。
中学生の頃、長崎の大村とか島原から市内へ転校生が来て、トランプのポーカーをやり、彼らが「5のワンペア」などと申告し、そのイントネーションが変で、皆がはやしたてたことがあった。他府県から見たら、目糞鼻糞ではあろうが。
同様に大阪弁も、テレビで聞かれるのは、船場は道修町方面の言葉であることが多いと思う。
有名な「もうかりまっか」など、大阪でも決して使うことはない。
使うのは、別れの際の「ほなな」。また「あほか」「oooちゃうねん」「ちゃう、ちゃう」「あかんでぇ」。これらは日常的に使う。
相づちをうつ時の「そうなん?」は、基本的には神戸の言葉と思う。
吉本の喜劇などで、「oooでおまんにやわ」、「oooやさかいに」、「oooでおま(っせ)」、「あきまへん」、「あかなんだら」‥‥このあたりの用語は船場の言葉と、僕は思う。
特に、「oooやさかいに」なんて、地元の高齢者しか使っていない。
それでも、東京や九州の友人とメールのやりとりをする時は、意識して船場言葉で入力することもある。
ビートルズが1965年、船場のスタジオに来た夢を見た。すでに相当な知名度であったにもかかわらす、スタジオ録音のテープなど、何度も繰り返し使用し、《あかなんだら》新しいものと交換するというケチケチぶりであった。彼らであれば、録音のすべてを封切りテープを使用するのが相当であろう。でも、さすがにモニタースピーカは、B&Wであった。
『ヘルプ!』なんか、「テイク13」であっても全員がだらけてしまい、しまらないこと、プロにはあるまじき態度であった。
特筆すべきは、『アイ・フィール・ファイン』の導入のブーンは、ジョンがレコーディングの際、アクシデントで録音されたと伝説ではなっているが、それはウソかもしれない。
没(公式には未採用)となったテイクにも、何回もしっかりと録音されていた。
映画『ヘルプ!』の中、『恋のアドバイス』の録音が終了し、担当技師から、「何か雑音が‥‥」と指摘され、全員で再生しながらチェック。リンゴなど、〔ええやん!ええやんかぁ?〕とばかり、手でリズムをとるというシーンがあったが、いやはや、かれらのNGの数もすさまじく、ただ、あきれるばかりだった。
歌詞の間違いもずいぶん多かった。
『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』では、ジョンが単なる人称代名詞を何回も間違える。その他にも、リズムの違い、くしゃみや鼻水、そして最も多かったのが、何故かなかなか全員がノリきれないという理由‥‥‥
『デイ・トリッパー』の、何回も重なるNGに、本人達も少しイライラとしてきたようだ。
グループのリーダーも、ジョンからポールに少しずつ、ほんの少しずつだが移行していくような、微妙な時期だったのかもしれない。
業を煮やしたポールはついに言った。
いつもは優しく、優等生的な雰囲気だった彼も、怒り心頭であったのか、捨て台詞のように、
「こんな演奏、おまっかいな!!」
録音の様子は、ほぼ正しいとは思っていますが‥‥