……どうすんの?コレ。
初カキコ…ども…
コレ、どうやって捕まえりゃ良いんだ?
サムターに与えられた新しい任務、お尋ね者ジェイムズ兄弟の追跡は新たな段階に移ろうとしていた。
任務を受けてから数時間、しかも任務とは関係なく飲みに来た酒場で兄弟を見つけてしまったのである。しかも、昼間の列車護衛で追い払った強盗団の一味と一緒である。
――さて、どうしたものか。
ジェイムズ兄弟2人と列車強盗3人、合わせて5人。対してこちらは俺1人。圧倒的不利である。
「列車に大砲を乗せてぶっ放すなんて、ぶっ飛んだことを考える保安官もいたもんだな。」
ジェイムズ兄弟の兄である、ジェイムズ・エドは酒を飲みながら呟く。言っていることはごもっともな意見だ。
「だよなぁー……しかも、列車に乗り込んだ仲間は全員やられちまったんだよ!」
列車強盗の一人が放った言葉を聞いた途端、サムターの動きは一瞬だけ、動きを止めた。
(顔は、見られてないよな?)
列車に乗り込んだ強盗を倒した男がカウンター席にいるのだ。バレてしまえば、報復を受けるのは避けられない。
「仲間を殺した奴の顔は見えなかったのか?」
ジェイムズ兄弟の弟、ジェイムズ・フォードが尋ねた。
「遠かったからな……うまく見えなかった。でも着ていた服は分かるぜ。グレーのジャケットだ。あとグレーの帽子をかぶっていた。そこのカウンターにいる奴の服と同じような色だ」
サムターの持っていたグラスが手から滑り落ちる。驚きで手が強張ったのだ。動揺を隠そうとしてはいるが、手の動揺だけは隠しきることができなかった。
(これは……もしかしてバレた?)
気付かれたかもしれない――緊張がさらに高まり、全身の冷や汗が止まらない。
「ほーん……南軍の制服みたいな色か?」
「そうそう!そんな感じだよ!」
……そんな感じっていうか、うん。正解。だって強盗を制圧したの俺だもん。
(そろそろ本当にマズいかもしれん。そろそろ店を出た方が良いか?)
こちらの正体に勘付かれる前に席を立とうとしたところ……
「列車強盗どもに軽12ポンド砲をぶっ放すのは最高だったな!」
別のテーブル席から威勢の良い声が聞こえてきた。そのテーブルには共に列車護衛をした砲兵隊がいた。
「……」
その声はジェイムズ兄弟や列車強盗にも聞こえたらしく、全員黙り込んで砲兵隊のほうを睨みつけている。
「あぁ……神は俺らの味方らしい」怒りと喜びが混ざり合ったような、興奮を隠しきれていない声が強盗のテーブルから聞こえる。
強盗どもはホルスターから銃を取り出し、弾が入っているか確認している。一つ一つの動作から激しい憤怒が感じられる。
(あー……。これガチでマズいやつだ)
絶対に関わりたくないので「店主、おあいそで」と一言だけ言って代金を渡し、席を立つ。そして店から出よう早足で出口に向かう。
「サムターじゃないか!同じ店にいたのに気づかなくて申し訳ない!こっちに来て飲もうじゃないか!」
このタイミングで、砲兵隊がこちらに気づいてしまったらしい。
「こいつが俺らに大砲ぶっ放しやがった保安官か?」
強盗の一人がドスの効いた声で呟いた。ジェイムズ兄弟と強盗団のテーブルからはまっすぐな殺意が、砲兵隊のテーブルからはまっすぐな期待のまなざしが向けられている。視線が痛い。二重の意味で。
やっぱり今日は厄日だ――サムターの嘆きなど、誰も知る由がない。
「お前、保安官か?」
強盗団の一人が尋ねてきた。全身から嫌な汗が噴き出し、心拍が早まる。
「ワタシ、ナニモ、ワカラナイネ」
よし、関係ないフリをしよう。まずはカタコトの移民のフリだ。
「ん……コイツ移民か?」
(列車強盗は俺のことを移民だと思っているらしい。これなら何とか……)
「サムター!もう酔っぱらっちまったのか?!」また砲兵隊が話しかけてきた。テーブルには酒が入った瓶が景気よく3本も置いてある
(……砲兵隊ぃぃぃぃ!あとちょっとだったのにぃぃぃぃ!)
動揺で落ち着いてなどいられなくなる。できることならば砲兵隊の奴らをを殴って黙らせたいところだが、強盗団とジェイムズ兄弟が目の前にいて、軽はずみな行動はできないのでとりあえず砲兵隊がいるテーブルを睨みつける。
「移民じゃねぇらしいな……」
あ……終わった。酒場にはピリピリとした、陽気さの欠片もない雰囲気が張り詰めている。
外は完全に暗くなり、客はほとんど家に帰ってしまった。酒場にいるのは俺、砲兵隊4人、ジェイムズ兄弟、強盗団3人、あと酒場の店主。
……どうすんの?コレ。
「なぁ、そこの南軍兵。お前、サムターとか言ったな」
強盗がこちらを睨みながら話しかけてきた。帰りたい……
「おい、聞こえてんだろ、サムターさんよぉ……」強盗は先ほどと同じように不機嫌な様子だ。
「何だ?」
仕方がない。いちおう言葉を返しておく。できるだけ話したくないのだが。
「俺らの仕事を邪魔しやがったクソ保安官がこの町にいるんだけどよぉ……。そのクソ保安官ってのはお前か?」
「人違いじゃないか?俺は保安官じゃない。俺のジャケットを見ろ。保安官のバッジなんて着けていないだろ?」
保安官はジャケットやベストに星形ないし五芒星型の金属製バッジを着けている。逆に俺みたいな保安官補佐だとバッジは着けていない
「……そうかよ。ならそこのテーブルにいる奴らは?」
先ほどよりも不機嫌な様子で尋ねてきた。引き金にはまだ指を掛けていないが、拳銃のグリップを握っている。下手なことしたらすぐにぶっ放すとでも言いたげな様子だ。
「彼らは俺の同僚だ。保安官なんかじゃない」
「そうかい。じゃあ今日の昼間、どこにいた?」
強盗の目からは、あからさまな敵意が向けられている。おまけに銃口も向けられている。
「……尋問みたいな聞き方はよしてくれよ。拳銃も机に置いてくれ」
強盗は拳銃を机の上に置き「今日の昼間、どこにいた?」と再び聞いてきた。逃す気は微塵も無いらしい。
「ダグラス市内にいた。ここから数ブロックほど行ったところにある建物の中だ。そこで会議をしていた」
強盗の方を向き、何も知らないといった様子で堂々と答える。こういう時にオドオドしてはいけない。相手から向けられる疑いの目がより強いものになってしまうからだ
「そこのテーブルにいる4人!お前はこのサムターってヤツの同僚なんだよな?」
次は砲兵隊に尋ねてきた。何かぼろを出さなければ良いのだが……
「ああ!サムターは俺らの同僚だ!しかも命の恩人だぞ!強盗どもを近距離で薙ぎ倒してて俺らを救ってくれたんだ!」
強盗は再び黙り、張り詰めた空気はさらに凍り付いた。どうやら事態は悪化したらしい。
「俺らは保安官なんかじゃあ、ないだろう!俺はこれで失礼……っうおわぁ!」
あまりにも危険な状態で落ち着くことができなくなり、再び逃げようと強盗のテーブルに背を向けた瞬間、鉛玉が張り詰めた空気を切り裂いた。
「保安官が犯罪者相手にしっぽを巻いて逃げるなんて、情けねぇじゃないか」
強盗は銃口を俺に向けてきている。勿論、引き金にも指を掛けていて、いつでも撃てる状態。まっすぐな怒りをこちらに向けてきている。
――戦闘もやむなし、か。
「おい保安官!なんか言ったらどうだ!」
強盗が銃を握りしめて叫ぶ。その語気はさらに強くなっている。
(一人ぐらいやっても、許されるだろう。生け捕りにするのは難しいが、死体を持ってくるのは簡単だ……一気に楽な仕事になった。)
「俺は保安官じゃない」無愛想に言い放ち、強盗の方をを睨みつける。
「まだ言ってんのかテメェ!」引き金に掛けてある人差し指に力が篭る。
「俺は保安官補佐だ」
言い終わるのが先か、撃つのが先か、瞬時にホルスターから拳銃を取り出し、鉛玉を食らわせる。
「テメェ……!」
強盗が前のめりに倒れたが、まだ話すだけの気力があるようだ。念のために、もう一発撃っておく。この手の連中は諦めが悪いので一発じゃ黙らないので処理が面倒で困る。
2発食らわせられた強盗は沈黙した。
(まずは1人)
呆気に取られている強盗とジェイムズ兄弟のテーブルに視線を向け、銃口を突きつける。
「――さて、強盗諸君、それとジェイムズ兄弟。見ていたと思うが、俺は銃を突きつけられたからコイツを射殺した。これは正当防衛だ。そうだろ?」
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